フォルクスワーゲン(VW)の驚異の電動化プランを検証【日本もトヨタもオワコン?】

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こんにちは、@kojisaitojpです。一昨日フォルクスワーゲングループが「POWER DAY」というテスラの「Battery Day」を彷彿とさせるネーミングで、今後のEV化戦略についての発表がありました。

この動画を全て見れば内容はわかりますし、既にEVを扱うブログやYouTuberが「Power Day」については解説していますが、当然私の立場からも語らないわけにはいきません。

内容は次の項目からお話ししていきますが、先に感想を言ってしまうと一言だけ「驚異のEV化戦略」です。

テスラを追撃できるのはフォルクスワーゲングループしかないかもなと思いました。

ですので今日は一昨日開催されたフォルクスワーゲンの「Power Day」で発表された今後のEV化戦略について語ります。

全車電気自動車化(BEV)へのロードマップが「Power Day」

フォルクスワーゲンPowerday
まず初心者向けに言っておくと本日の話はフォルクスワーゲン一社の話ではありません。

「フォルクスワーゲングループ」はフォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーなど複数の自動車メーカーを傘下に持つ世界最大規模の自動車メーカーで、昨年2020年はトヨタについで世界2位、2019年以前は5年連続で販売台数世界一を誇る巨大グループです。

日本では変な序列(偏見?)があるようで、ポルシェやアウディの方が上であるかのように錯覚している人も多いですが、実はグループのトップがフォルクスワーゲンです。

さてそのフォルクスワーゲングループが一昨日の「Power Day」において今後の電動化戦略を発表しましたが、主な要点は以下の5つのポイントです。

  • 30%〜50%のバッテリーのコストダウン
  • ヨーロッパ全域に240GWh規模のバッテリー生産能力(2030年までに)
  • Northvoltへの出資で最大40GWh/年を製造
  • 2025年までに欧州で18800基、米中加で約2万基以上の急速充電器を設置
  • V2Xなどを導入して「電力供給」にも貢献

次の項目でそれぞれのポイントについて説明します。

まず最初に「バッテリーの変化」について、次に「バッテリーの調達方法」について、そして「充電スポットの整備」と「V2Xなどの蓄電池としての活用」について順番に解説します。

30%〜50%のバッテリーのコストダウン

フォルクスワーゲンのバッテリー
今回フォルクスワーゲングループが発表した新しいバッテリーである「ユニファイドセル(Unified Cell)」は従来のパウチ型と違い角形のバッテリーになり、角形のためスリムなスケートボード形の電気自動車プラットフォームにすぐ組み込むことができるのがメリットです。

そしてこの「Unified Cell」を全車種に適用します。これまでの電気自動車では車種ごとにバッテリーセルのサイズが違いましたが、それが統一されるということです。

文字通り「Uni(単一)」で「Unified(統合された)」バッテリーということです。

全体の80%の車種に共通のセルのバッテリーを採用することでコストを削減できる(大量生産できるゆえ)メリットがあります。

ただしバッテリーの中身はEVのグレードによって使い分けるようです。

  • 最も廉価なグレードには「LFPバッテリー」
  • 中間のグレードには「マンガン系バッテリー」
  • 上位グレードには「三元系バッテリー」

フォルクスワーゲンのLFPバッテリー

最も廉価なモデルには「LFPバッテリー」という最近テスラがモデル3(スタンダードレンジプラス)でも使用しましたが、レアメタルであるコバルトを使わないゆえにコストダウンが可能なバッテリーを用います。

50%のコスト削減が可能だというのはこのグレードを指します。

フォルクスワーゲンのマンガン系

次に中間のモデルにはいわゆる「マンガン系」と呼ばれる、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を正極材料に使用している電池を使用します。

マンガン自体が強固な結晶構造を持つのが特徴で(熱安定性が高い)、また原材料も安価(コバルトの約1/10)です。

30%のコスト削減が可能だというのはこのグレードを指します。

フォルクスワーゲンのNMCバッテリー

そして最後のハイパフォーマンスが要求されるプレミアムなモデルには三元系(NMC)の電池が使用されます。

三元系とは、ニッケル、マンガン、コバルトの3つの頭文字を取った化合物系の電池で、コバルトを使用するのでコストはかかりますが、最も性能が良いバッテリーなので高級車などのハイパフォーマンスが要求されるモデルに使用されるようです。

フォルクスワーゲンの全固体電池

このグレードには「全固体電池」を2025年までには実用化させることも表明しています。

それぞれのバッテリーのメリット・デメリットについては今日は他にも触れるテーマがあるので触れませんが、後日取り上げたいと思います。

ノースボルト社への出資とヨーロッパ全域で240GWhの自社でのバッテリー生産

ノースボルト社のバッテリー
上記のバッテリーを生産するためのプランも発表されています。

フォルクスワーゲングループで2025年までに年間150万台の電気自動車を生産する予定ですが、当然現在のバッテリー生産能力では足りません。

そこでまずフォルクスワーゲン社が出資しているスウェーデンのNorthvolt社への出資比率を高めることでフォルクスワーゲンに独占的にバッテリーを供給させる予定です。

それによりドイツとスウェーデンにあるそれぞれ年間20GWhの生産能力をそれぞれ40Gwhに引き上げます。

フォルクスワーゲンのバッテリー工場

更にそれだけでも150万台を賄うには足りないのでヨーロッパ全域にテスラの「ギガファクトリー」のような自社のバッテリー生産工場を2030年までに4箇所設けることを表明しています。

1つの工場で40GWhの生産能力があるので合計6つで240GWh(バッテリー容量50kWhの標準的なEVだと500万台分)と驚異のバッテリー生産体制を整える計画です。

中国メーカーや日本メーカーの電池の生産能力については以前書いた記事がありますので、よろしければご参照ください。

2025年までに欧州で18800基、米中加で約2万基以上の急速充電器を設置

フォルクスワーゲンの急速充電
「バッテリー」と「充電インフラ」の二本柱が今回の「Power Day」のテーマとなっていましたが、「充電インフラ」も自社で整備することを表明しました。

具体的には2025年までに欧州で18800基、米中加で約2万基以上の設置計画です。

ヨーロッパのアイオニティ

日本国内で採用されているチャデモ規格の50kWという出力とは別次元の最大350kWの出力を持つ急速充電器(最低120kW)を一つの充電スポットにつき4基〜10基設置する予定です。

これまではこの規模で充電インフラを自社で設置したのはテスラだけでしたが、フォルクスワーゲンも自社で設置することを表明しました。

フォルクスワーゲンの充電時間

またバッテリーの性能向上により、450キロ分の充電する時間が現在の25分から17分に(2025年)短縮され、2025年以降は更に短縮され12分まで持っていくと宣言しています。

比較すること自体が間違いだと思いますが、ついにガソリンの給油と大差がない充電時間になってきました。

V2Xも導入して「電力供給」にも貢献

フォルクスワーゲンのスマートグリッド
そして「電力供給」にも踏み込んできたのも既存の自動車メーカーの中ではまだまだ少ない試みです。

充電インフラの整備においてイギリスやドイツでは石油産業のBP社、スペインやイタリアでは現地の電力会社とタッグを組むことにより、充電ステーション、オフィスや工場、住宅などで発電された再生可能エネルギーを充電ステーションで使用するのみならず、電気自動車を蓄電池として使用する「ハブ」として活用する構想も明らかになりました。

電気自動車(BEV)がこのような「電力の需給調整」を担うハブとして機能することで、せっかく発電した再生可能エネルギーを無駄にすることなく蓄電することが可能になります。

私のブログでも何度か触れていますが、「電力需要の少ない時間帯に充電し、電力需要の多い時間帯には蓄電池として活用」することは「電力供給」の不安を和らげることにつながりますので「EVが普及すると電気が足りなくなる」というのは真っ赤な嘘で、むしろ再生可能エネルギーをバランス良く消費することにつながります。

フォルクスワーゲンと比べると日本もトヨタもオワコン?

フォルクスワーゲンの主力事業
このようなフォルクスワーゲンやテスラなどの電気自動車への攻勢を見てもなお「EVが環境に良いとは限らない」「EV化すると雇用が失われる」「EV化すると

フォルクスワーゲングループ全体のCEOであるディース氏は以下のように発言しています。

「eモビリティはレースに勝った。したがってバッテリーと充電がフォルクスワーゲングループの中心ビジネスとなった」とはっきりと勝利宣言しています。

これ以前の発言で「フォルクスワーゲンは水素燃料電池はやらない」とも明言していますので、事実上ヨーロッパでは電気自動車(BEV)一択で今後やっていくということです。

そして繰り返し言っているようにこの流れに中国と中国の新興EVメーカーが乗っかり、アメリカもバイデン政権の発足によりテスラのみならずGM・フォードなどの旧来の自動車メーカーも既に電気自動車(BEV)一本で行くことを明言しています。

そして世界の定義ではこの電気自動車の定義にハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)は入っていません。中国はまだハイブリッド車に含みを残していますが先日の記事でも書いたように燃費規制をどんどん厳しくしており、いずれはプリウスでも超えられないような基準になって中国市場から退場させられる可能性が高いです。

賄賂のイメージ

「電動車」という謎のガラパゴスカテゴリーを作ってハイブリッドもOKだよと言ってしまったのは日本だけです。

今からどうやって一度決まってしまった世界の流れをひっくり返すつもりなのでしょうか?「EVなんてどうせ失敗して、後からハイブリッドを採用するようになる」などとヨーロッパや中国を見下したような発言をしている自動車ジャーナリストなどもいますが、世界の中心が日本だとでも思っているのでしょうか?

「550万人の雇用を守る」「Appleが車でビジネスしたいなら40年かかる」的な日本国内では耳障りの良いことを言って、一部の支持者から喝采を浴びているようですが、現実の自動車市場ではすでに裸の王様かもしれません。

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