佐川急便が商用車を中国製EVにする衝撃とは?【日産(三菱)以外は終了?】
こんばんは、@kojisaitojpです。テスラ・モデルSをカーシェアして山中湖まで来ているのですが、そのことに触れる前にこのニュースに触れないわけには行きません。
昨日から見たいの我慢してたんだけど予想通りヤフコメがカオス(笑)。
佐川 中国製EVを7200台導入へ#Yahooニュースhttps://t.co/80Gea1R4Md— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) April 14, 2021
昨日リリースされた情報で「きっとヤフコメはこういう反応するだろうな」と予想通り過ぎて笑えてしまったわけですが(笑)。
「何で中国なんだ!」「日本勢は何やってるんだ!」「もう佐川なんか使わない」など様々な批判を佐川急便に浴びせていますが、先に結論を言ってしまうと「じゃあ佐川急便の要求に見合った軽規格のEVバンを提案できた日本メーカーっていたの?」と思ってしまいます。
しかもこのEVバンは「ベンチャーのASF(東京・港)が手を挙げ、20年6月から共同で企画開発。実際の車両は広西汽車集団が供給するという」とあるように企画したのは日本の会社です。製造したのがあくまで中国メーカーというだけ。
iPhoneと同じ構造なのわかりますよね?iPhoneにも裏側に「Designed by Apple in California,Assenbled in China」と書いてあります。
「カリフォルニアのアップルがデザイン(企画)したものを中国で組み立てています」というのと今回の佐川のEVバンは全く同じ構造です。
「中国製品なんか不買だ!」と噴き上がっている人に限ってスマホはiPhone(じゃなかったら韓国製のGalaxy)、履いている靴下やパンツはユニクロだったりします(笑)。
という冷やかしは置いておいて今日は「佐川急便が中国製EVを採用することの衝撃」について解説します。
目次
なぜ佐川急便が中国製EVバンを採用したのか?
今回佐川急便が商用のEVバンの導入を発表した背景にはもちろん「脱炭素」と以前私のブログでも触れた「ESG投資」との絡みがあります。
「脱炭素に後ろ向きな企業」と判断されると世界の投資マネーが逃げて行きますので会社としては賢明な判断です。
今回は佐川急便本社のみのEV化ですがいずれは関連企業や佐川から仕事を請負っている個人事業主もEV化を拒否すると契約を切られる可能性が高いです。ESG投資は下請けやサプライヤーの脱炭素化にもチェックが入りますので。
「ESG投資」「SDGs」で世界から見放される日本?【EVがハイブリッド?・再エネが原発?】
今日は「ESG投資」とその指標でもある「SDGs」について説明します。環境や人権などに配慮した適切な企業運営ができているか世界から厳しい目に晒されるので「ハイブリッドもEVだ」とか「二酸化炭素出ないから原発推進」のような頓珍漢なことを言っていると世界の投資マネーが逃げていき、日本が世界から見放されることにつながります。
また最近の高騰するガソリン価格を考えると会社全体の大幅な経費節減にもつながります。一旦配送センターに充電器を設置する費用さえ負担すれば長期的には間違いなくプラスになりますので。
「何で日本メーカーじゃないんだよ!」とヤフコメなどで怒る気持ちはわからなくはないですが。
ですが現在の日本メーカーでは唯一三菱が「ミニキャブMiEV」という商用の軽バンEVを生産していますが、価格面で中国メーカーに遠く及びません。
MINICAB-MiEV | 商用車 | カーラインアップ | MITSUBISHI MOTORS JAPAN
三菱自動車のオフィシャルWebサイトです。
三菱「ミニキャブMiEV」に関しては以前日本郵便が導入したことで話題にはなりましたが、車両価格が243万1000円と今回の中国メーカーの約2倍、それでいて搭載バッテリー容量が16kWhで航続距離が約150キロとほぼ互角のスペックですから佐川急便がどちらに関心を示すのかは論じるまでもありません。
コスト面で「現状のガソリン車の軽ミニバンの130万~150万円を下回る水準」というのを日本メーカーが作るのは現時点では非常に困難かもしれません。
それでも今回の佐川急便のように7200台という超大口のオーダーなのですから何とかならなかったのかな?とは思いますが。
そういう問題を無視して「何で中国なんかに頼むんだよ!日本メーカーに発注しろよ!」とネット上では怒っている人多数なのでわかってないなと思うのですが。
じゃあ今回のEVを企画したASFという日本の会社が日本の自動車メーカーに声かけてないと思います?
常識的に考えたら最初に声かけますよね。会社の概要を見たところ代表取締役から役員まで全員日本人のようですし。
「佐川急便が乗り気なのですが、このような商用のEVを作れますか?」くらいの打診をしてないと考える方がおかしいです。
そしてそのような日本のベンチャーからの打診に「こんな価格で作れるわけないだろ」とか「EVなんかよりハイブリッドの方がいいから佐川さん説得してよ」など余計なことを言ったり位のお話にならない返答を日本の自動車メーカーがしてそうなこと位予想が付きます。
で、止む無く中国メーカーに打診したら快諾してくれたというのが真相ではないでしょうか?
もちろん私の個人的な予想ですが。
真面目に予想すると日本メーカーは「コスト面で無理」と断りを入れた可能性があります。もっとうがった見方をすると「EVなんかよりハイブリッドにした方がいいよ」と余計なことを言って交渉を決裂させた可能性もありますけど。
ちなみに触れてませんでしたが電気自動車でよく言われる「航続距離ガー問題」については配送用のバンのように毎日決まったエリアしか走らない商用車という分野では全く心配はないです。
配送拠点の駐車場に普通充電器を設置すれば荷物を積んでいる間に充電できますので全く問題ありません。このサイズのEVであればバッテリー容量が小さいので充電にも時間はかかりません。
以前「商用車のEV化は乗用車より簡単」という記事を書きましたのでよろしければご参照ください。
商用車(運送業)の電気自動車化は更にガラパゴス?【中国の足音が】
世界の電気自動車化の流れは乗用車のみならず商用車のバン・ワゴンなどにも広まっています。しかし相変わらず社用車を電気自動車にしたり、会社に充電設備を設ける経営者が少ないのが現実です。そんな中国から上陸した新しいメーカーの作った電気自動車が日本のメーカがなかなか作ろうとしない格安のEVトラックを日本に投入します。
昨年12月に記事を書いた際に「中国メーカーの足音が」などと何となく書いていたことが実現してしまいましたね。
なぜか「上から目線」が多い車業界
いや、ベンチャー企業からの打診であればもっと冷たかった可能性もありますね。
ほんそれ。
別件ですが今まて何度も、そして今もそれ体験してますよー今に見てろって憤慨してますワタシヽ(`Д´)ノプンプン— 革榮 月・火定休/OPEN13:00〜17:00 (@kawazakae) April 14, 2021
実際体験すればわかりますが、日本の車メーカーのディーラーや街中の中古車店などは客に対してもビジネスのパートナーに対しても上から目線で来ることが多いです。
私の場合だと車の修理などでよく喧嘩になることが多いですが、なぜか車屋というのは「うちはこの値段でしかやらない。嫌なら他行けば」的な態度で来るお店が多いです。
で、怒って他行くと大体こちらの希望通りに修理してくれるお店は見つかります(笑)。
例えば修理を安くあげたいので「部品をネットで調達して持ち込みで」というと拒否(ネットで用意するのはディーラーなどと同じようにBOSCHなどの有名メーカーのものでも拒否されます)、中古車の登録や名義変更などで「自分で登録に行きたいから手数料引いてくれ」と頼めばそれも拒否と自分たちのやり方以外のものを全否定してくるお店が多いです。
なんていうのをTwitterなどで発言すると「そんなの当たり前だろ!」とこれまた上から目線で注意してくる人がいたりするのですが「なぜ当たり前なのですか?」という返しにマトモな返答ができる人をこれまで見たことがありません。
「ぼったくり体質が当たり前、常識」な業界であればそれは終わってる業界だと思うのは私だけでしょうか?
先ほどの日本のベンチャー企業の話に戻ると「そんなにコストかかるなら日本メーカーじゃなくて中国メーカーに打診してみようかな」と思っても不思議ではありません。
客として接しても、ビジネスで接しても「上から目線」で対応してくるのが自動車業界という印象は間違ってないと思います。
現地メーカーを経由してEVの海外輸出を図るのが中国メーカーの戦略?
さてわざと最後まで出しませんでしたが、今回佐川急便のEVを製造する中国メーカーは「広西汽車集団」と言います。
中国の会社名を表記するときは漢字だったりアルファベットだったりとバラバラなので気づきにくいところですが、広西汽車集団とアメリカのゼネラルモーターズ(GM)、上海汽車集団が合弁で設立した会社が「上汽通用五菱汽車(Shangqi Tongyong Wuling Qiche)」と言います。
気づきましたか「Wuling」ですよ、あの。
はい、あの「Wuling Hongguang Mini EV(宏光ミニEV)」、中国では現在世界最強と言われる「テスラ・モデル3」を上回る驚異の売り上げ台数を誇る格安EVを販売するあの会社です。
「宏光MiniEV」改め「FreZe Nikrob EV」ヨーロッパ上陸の衝撃とは?【激安EV】
超激安のEVとして紹介している中国の「Hongguang Mini EV(宏光MiniEV)」がラトビアのメーカーにプラットホームを提供して 「FreZe Nikrob EV」という名前でヨーロッパ市場にデビューします。ヨーロッパの安全基準を満たせばいずれ日本市場にも上陸できますので日本メーカーの脅威になります。
数日前の記事では「Wuling Hongguang Mini EV(宏光ミニEV)」をラトビアのメーカーと共同開発で「FreZe Nikrob EV」としてヨーロッパの安全基準を満たす車両として販売予定のあの会社です。
意外な形で日本市場に参入ですね。これで日本の自動車メーカーが脅威を感じないようでは正直終わってます。
中国メーカーはヨーロッパや日本市場に現地の企業と組むことで上手に参入してくるようです。
もちろんBYDのように世界中にバスを輸出(日本でも既に多数のバス会社が導入済)しているように自社で輸出している会社もありますので「中国メーカー」と一括りにはできませんが。
「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大中?【バスも日本オワコン?】
乗用車のみならずバスの分野でも電気自動車化は進んでおり、実は中国の「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大しており、日本のバス会社にも導入されています。路線バスだと運行する区間も決まっており、バスを電動化することは乗用車よりも簡単ですし、整備や燃料代がかからなくなることから今後どんどん普及する可能性が高いです。
ただ今回の佐川急便が「商用車」というカテゴリー、BYDの場合も「バス」から参入(実は一部のタクシーも)と自動車市場のど真ん中ともいうべき「乗用車」では乗り込んできていないというところが上手いなと思うのは私だけでしょうか?
(こちらもXpengなどは乗用車をノルウェーに輸出し始めているので会社によって違いますが)
乗用車に比べると中国製への反発は少ないでしょうし、何より毎日かなりの距離を走る商用車であれば実際に走行したデータも大量に取れます。
これがまだまだ実用化されて初期の段階にあるEVにおいてはとても重要で、後日乗用車を本格的に輸出する際の助けになることは誰でもわかることです。
以前も中国は「絶対に負けない」ような手堅い戦略で攻めてくるということに触れたことがありますが、商用車から入って実績が積み上がってから乗用車も輸出というのは非常に手堅い、賢明な戦略だと思います。
しかも「中国」という単語だけでも反発を招くことをわかっているのか、今回はASFという日本の会社、ラトビアの件も「Dirtsモーターズ」という現地の会社と共同で開発という仮面もかぶっているわけで本当に上手いです。
さて私としては頑張ってない日本メーカーについて「きっと水面下で開発しているはずだ」とか「EVなんていつでも作れるけどあえて作ってないだけ」的な妄想は一切抱く気になりませんが、このままだと既に本格的にEVを開発・販売している日産と三菱以外は全滅の可能性すらあります。
もし「EVなんていつでも作れる」というのが本当であれば今回の佐川急便の決定に対して危機感を持ってすぐにでも発売して欲しいところです。
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