「F-150Lightning」「サイバートラック」がアフリカの電力を変える?【V2Hと再エネ】

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こんばんは、@kojisaitojpです。月に一回くらいは書くことしているアフリカのEVと再エネを巡る状況ですが、正直に言うと私があまり関心がない国から面白い話が出てきました。

関心がなかったのは南アフリカ共和国で、他のアフリカ諸国とは経済水準が違うので情報を出しても他のアフリカ諸国には役に立たないという理由からでしたが、この話なら他のアフリカ諸国にも応用が効くのでは?と思いました。

もちろんここで話題のフォード「F-150Lightning」はまだアメリカで予約がスタートしたばかりですので、輸出されるのはまだ数年先の話です。

アメリカでは既に予約が10万台を超えているようで(ガソリン車のF-150の既に1/10)爆発的に普及することは間違いありませんが。

EVをただ走らせるのではなく「V2H」「V2G」としても活用することで電力の供給調整に貢献するというのは今年の冬に「電力不足」が言われている日本にも参考になる話かもしれません。

というわけで今日は南アフリカから来た「EVピックアップトラック」がアフリカでいかに役に立つのかについて「車としての側面」と「蓄電池(V2H)としての側面」の両方からアプローチします。

フォード「F-150Lightening」の「V2H」がアフリカを救う?

フォード「F-150 Lightening」
アフリカでは元々ピックアップトラックが人気で(道路事情や荷物を運べるという事情から)、アフリカで特に裕福な国である南アフリカ共和国でトップの売上を誇るのはトヨタの「ハイラックス」です。

ちなみに2位がフォードの「Ranger」、3位がいすゞの「D-MAX」と売上の17.5%をピックアップトラックが占めています。

冒頭で引用した記事では「この市場にフォードF-150Lightningが投入されるとアフリカが変わる」とまで述べられています。

「電力もロクに供給されてないアフリカでEVなんて無理でしょ?」と思う人もいるかと思いますが、実は逆です。

引用された記事で述べられているEVのメリットは「輪番停電」への対応です。

フォード「F-150 Lightening」その5

というのも先日の記事でも述べたようにフォード「F-150Lightening」は車のバッテリーから外部への電力供給が可能です。

ちなみに外部への電源供給は日本メーカーのEVでも「日産・リーフ」「三菱・アイミーブ」「ホンダe」などで可能です。

「ホンダe」

V2Gの仕組み

日本でも東日本大震災の後に「計画停電」が行われたことがありますが、送電網も発電も貧弱なアフリカでは「輪番停電」と言って様々なエリアが時間ごとに停電になるというのが日常です。

フォード「F-150」に搭載されている100kWh級の巨大バッテリーであれば何日電気が止まっていてもEVからの電力供給によって電気を使うことができます。

フォード「F-150 Lightening」

EVを蓄電池として活用するという隠れたメリットは私のブログでも何度も触れていますが、ピックアップトラックのように巨大なバッテリーが搭載されているEVはうってつけというわけです。

ということは私が「意地でも買う」と宣言しているあのピックアップトラックも同じようにアフリカで歓迎されるかもしれません。

サイバートラックの破壊実験

サイバートラックの場合オプションで屋根に太陽光パネルを搭載することもできる予定ですので、アフリカの大地を走るのにはF-150Lightning以上に便利かもしれません。

太陽光パネル搭載のサイバートラック

もちろん車両価格が高いのでピックアップトラックをサクッと買える国は南アフリカ共和国などの一部の国に限られるでしょうけど、この役割を中古の「日産・リーフ」などに担わせることも可能なわけで、停電が頻発するアフリカで電力供給を絶やさないアイテムとしてEVが活用できるということです。

日本でもV2Hの自動制御がスタート

充電中の日産リーフ
日本でもこのような「EVを用いた電力の需給調整」を自動で行うシステムが稼働するようです。

福岡県のアークエルテクノロジーズは、経済産業省/資源エネルギー庁「令和3年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金(ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業)に採択され、実証実験が8月からスタートするようです。

この事業が特徴的なのは「V2Hを自動制御で調整する」という点で、電力の供給量やその時間帯の電気代に応じて、電力の市場価格が安い時間帯にEVの充電が行われるだけでなく、高い時間帯には市場からの電力購入を制限し、EVから家庭等に電力が供給されるといった制御を自動で行うというシステムです。

蓄電池として活用するフォード「F-150」

日本でも今年の夏以降に既に「電力不足」の問題がささやかれていますが、電力供給が逼迫する時間帯にV2Hを利用してEVから家庭に電力を供給する方向に切り替えられれば電力不足など全く起きなくなる可能性があります。


反対に電力が余る時間帯(例えば太陽光などは晴れの日の昼間などは余ることがあります)はEVに充電を行うように切り替える(もちろんパワーウォールなどの家庭用の蓄電池に充電するのもあり)ことでせっかく発電した再生可能エネルギーを無駄にすることなく活用できます。

なんて言うと必ず「机上の空論だ」と攻撃され、「仕事で一日中車で出てるからそんなことできるわけねぇんだ!」となぜか怒り口調で言われたりします。

個々人の事情で自動車をプラグインできない人がいようとも統計上「自家用車は90%以上の時間駐車場に停めたまま」というのが客観的事実です。実際の稼働率は4%くらいという数字もありますので、仕事などで動き回っている車以外の96&の自家用車を利用して電力の需給調整を行うことは可能です。

「CASE」という用語を使って何回か解説したことがありますが、「S(share)」などはその今までであれば自宅の駐車場に置きっぱなしだった自家用車を「カーシェア」などに活用する、完全自動運転導入後は「ロボタクシー」として稼いできてもらうというの同じように「車に乗っていない時間」の活用法です。

もちろん「自分の車に他人なんか乗せたくない」「V2Hに使用してバッテリーが消耗するのは嫌だ」とか言うのは個人の自由です。それであればこれまで通りに高いコストを払って車を所有すれば良いだけですので。

自分が運転する以外の目的に車を使用し「車に稼いできてもらう」というこれまでは不可能だった選択肢が実現可能になってきているという事実が重要なのではないでしょうか?

EVピックアップトラックの普及でアフリカでも「トヨタ・ハイラックス」はオワコンへ?

フォード「F-150 Lightening」
本日取り上げたフォードの「F-150Lightning」に限った話ではなく、「アメリカの新興EVメーカーが更に格安のピックアップトラックをアフリカに投入するかもよ」と言いたいところなのですが、その可能性があった一社である「Lordstown」が悲惨なことになっています。

以前私も取り上げたことのある「Lordstown Motors」のCEOとCFOが辞任、しかも資金繰りに困っているようで来年まで会社が持たないのではという報道です。

まぁアメリカという国は日本と違いベンチャー企業が潰れればまた新しいベンチャーが誕生し、生存競争に生き残った会社だけが世界で戦えるようになるという国ですから、「Lordstown」が仮に潰れたとしても同じようにピックアップトラックを製造するベンチャーは現れるでしょう。

開発途中の「Lordstown」の施設を買い取るのなら更に手っ取り早いでしょうし。

新しいことをやろうとすると失敗ばかり恐れて「失敗したらお前が責任とれ」とか「なるべく経費がかからないようにやれ」と安易に言ってしまう日本企業とは違います。

現在であればトヨタの「ハイラックス」がアフリカで最も売れているピックアップトラックですし、乗用車であればハイブリッド車の「プリウス」がナンバーワン(ただし中古)の売上を誇るのがアフリカ市場です。

しかし以前も指摘したように乗用車では既に中国メーカーなどがアフリカにEVを投入し始めていますし、主に業務用などで使われるピックアップトラックなども本日指摘したような「移動手段としての車」以上の役割を果たすことが認知され始めると状況が変わる可能性は大いにあります。

「電力網もロクにないアフリカでEVなんか普及するわけねぇだろ」的なナメた言い方をする人が日本には多い(アフリカ方面に中古車を輸出してる業者でさえこういう暴言を吐きます)ですが、電力網がなくてもその場に太陽光パネルと蓄電池代わりにEVでもあれば発電できてしまうというシンプルな事実に気づくべきでしょう。

実際に自然が溢れるアフリカでは再生可能エネルギーの開発が盛んなことは以前も指摘しましたし、これに絡んでいるのが豊田通商などの日本の商社だというところが何とも言えません。

いずれにせよ日本で「EVなんか普及しない」「再エネは向いてない」的に「できない理由」を並べたてている間に世界規模でEVと再エネによる産業革命のような状態が進行しているのは間違いないようです、

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