「F-150Lightning」「サイバートラック」がアフリカの電力を変える?【V2Hと再エネ】
こんばんは、@kojisaitojpです。月に一回くらいは書くことしているアフリカのEVと再エネを巡る状況ですが、正直に言うと私があまり関心がない国から面白い話が出てきました。
アフリカにEVを投入するとV2GやV2Hを通してむしろ電力供給が良くなるという話。フォードF-150 Lighteningなら更に良しという。
We Need More Vehicles Like The Ford F150 Lightning: An African Perspective https://t.co/hTOtRbazIm @cleantechnicaより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 15, 2021
関心がなかったのは南アフリカ共和国で、他のアフリカ諸国とは経済水準が違うので情報を出しても他のアフリカ諸国には役に立たないという理由からでしたが、この話なら他のアフリカ諸国にも応用が効くのでは?と思いました。
もちろんここで話題のフォード「F-150Lightning」はまだアメリカで予約がスタートしたばかりですので、輸出されるのはまだ数年先の話です。
アメリカでは既に予約が10万台を超えているようで(ガソリン車のF-150の既に1/10)爆発的に普及することは間違いありませんが。
EVをただ走らせるのではなく「V2H」「V2G」としても活用することで電力の供給調整に貢献するというのは今年の冬に「電力不足」が言われている日本にも参考になる話かもしれません。
というわけで今日は南アフリカから来た「EVピックアップトラック」がアフリカでいかに役に立つのかについて「車としての側面」と「蓄電池(V2H)としての側面」の両方からアプローチします。
目次
フォード「F-150Lightening」の「V2H」がアフリカを救う?
アフリカでは元々ピックアップトラックが人気で(道路事情や荷物を運べるという事情から)、アフリカで特に裕福な国である南アフリカ共和国でトップの売上を誇るのはトヨタの「ハイラックス」です。
ちなみに2位がフォードの「Ranger」、3位がいすゞの「D-MAX」と売上の17.5%をピックアップトラックが占めています。
冒頭で引用した記事では「この市場にフォードF-150Lightningが投入されるとアフリカが変わる」とまで述べられています。
「電力もロクに供給されてないアフリカでEVなんて無理でしょ?」と思う人もいるかと思いますが、実は逆です。
引用された記事で述べられているEVのメリットは「輪番停電」への対応です。
というのも先日の記事でも述べたようにフォード「F-150Lightening」は車のバッテリーから外部への電力供給が可能です。
ちなみに外部への電源供給は日本メーカーのEVでも「日産・リーフ」「三菱・アイミーブ」「ホンダe」などで可能です。
日本でも東日本大震災の後に「計画停電」が行われたことがありますが、送電網も発電も貧弱なアフリカでは「輪番停電」と言って様々なエリアが時間ごとに停電になるというのが日常です。
フォード「F-150」に搭載されている100kWh級の巨大バッテリーであれば何日電気が止まっていてもEVからの電力供給によって電気を使うことができます。
EVを蓄電池として活用するという隠れたメリットは私のブログでも何度も触れていますが、ピックアップトラックのように巨大なバッテリーが搭載されているEVはうってつけというわけです。
ということは私が「意地でも買う」と宣言しているあのピックアップトラックも同じようにアフリカで歓迎されるかもしれません。
サイバートラックの場合オプションで屋根に太陽光パネルを搭載することもできる予定ですので、アフリカの大地を走るのにはF-150Lightning以上に便利かもしれません。
もちろん車両価格が高いのでピックアップトラックをサクッと買える国は南アフリカ共和国などの一部の国に限られるでしょうけど、この役割を中古の「日産・リーフ」などに担わせることも可能なわけで、停電が頻発するアフリカで電力供給を絶やさないアイテムとしてEVが活用できるということです。
日本でもV2Hの自動制御がスタート
日本でもこのような「EVを用いた電力の需給調整」を自動で行うシステムが稼働するようです。
EVが電力の供給量の調整に貢献するという俺が前から提唱してるやり方。 https://t.co/937BRJJhVJ
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 16, 2021
福岡県のアークエルテクノロジーズは、経済産業省/資源エネルギー庁「令和3年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金(ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業)に採択され、実証実験が8月からスタートするようです。
この事業が特徴的なのは「V2Hを自動制御で調整する」という点で、電力の供給量やその時間帯の電気代に応じて、電力の市場価格が安い時間帯にEVの充電が行われるだけでなく、高い時間帯には市場からの電力購入を制限し、EVから家庭等に電力が供給されるといった制御を自動で行うというシステムです。
日本でも今年の夏以降に既に「電力不足」の問題がささやかれていますが、電力供給が逼迫する時間帯にV2Hを利用してEVから家庭に電力を供給する方向に切り替えられれば電力不足など全く起きなくなる可能性があります。
反対に電力が余る時間帯(例えば太陽光などは晴れの日の昼間などは余ることがあります)はEVに充電を行うように切り替える(もちろんパワーウォールなどの家庭用の蓄電池に充電するのもあり)ことでせっかく発電した再生可能エネルギーを無駄にすることなく活用できます。
なんて言うと必ず「机上の空論だ」と攻撃され、「仕事で一日中車で出てるからそんなことできるわけねぇんだ!」となぜか怒り口調で言われたりします。
自家用車の「90%」が動いていないという衝撃! 脱炭素社会はEVへの置き換えより「世の中の仕組み」変更が最優先だった
政府が発表した2050年までに脱炭素社会を実現することは容易ではない。EVで欠かせないリチウムは世界の自動車をすべてEV化する資源量はなく、一方で脱炭素化しなければ自然災害の甚大化は収まらない。では脱炭素社会を実現するために必要なのはどんなことなのだろうか。
個々人の事情で自動車をプラグインできない人がいようとも統計上「自家用車は90%以上の時間駐車場に停めたまま」というのが客観的事実です。実際の稼働率は4%くらいという数字もありますので、仕事などで動き回っている車以外の96&の自家用車を利用して電力の需給調整を行うことは可能です。
「CASE」という用語を使って何回か解説したことがありますが、「S(share)」などはその今までであれば自宅の駐車場に置きっぱなしだった自家用車を「カーシェア」などに活用する、完全自動運転導入後は「ロボタクシー」として稼いできてもらうというの同じように「車に乗っていない時間」の活用法です。
もちろん「自分の車に他人なんか乗せたくない」「V2Hに使用してバッテリーが消耗するのは嫌だ」とか言うのは個人の自由です。それであればこれまで通りに高いコストを払って車を所有すれば良いだけですので。
自分が運転する以外の目的に車を使用し「車に稼いできてもらう」というこれまでは不可能だった選択肢が実現可能になってきているという事実が重要なのではないでしょうか?
EVピックアップトラックの普及でアフリカでも「トヨタ・ハイラックス」はオワコンへ?
本日取り上げたフォードの「F-150Lightning」に限った話ではなく、「アメリカの新興EVメーカーが更に格安のピックアップトラックをアフリカに投入するかもよ」と言いたいところなのですが、その可能性があった一社である「Lordstown」が悲惨なことになっています。
ローズタウン・モーターズ、CEOとCFOが辞任-不正確な発表判明
電気自動車(EV)の米新興企業ローズタウン・モーターズは経営トップ2人の突如の辞任を発表した。また取締役会の調査により、受注に関して不正確な発表を行っていたことが判明したとも明らかにした。
以前私も取り上げたことのある「Lordstown Motors」のCEOとCFOが辞任、しかも資金繰りに困っているようで来年まで会社が持たないのではという報道です。
まぁアメリカという国は日本と違いベンチャー企業が潰れればまた新しいベンチャーが誕生し、生存競争に生き残った会社だけが世界で戦えるようになるという国ですから、「Lordstown」が仮に潰れたとしても同じようにピックアップトラックを製造するベンチャーは現れるでしょう。
開発途中の「Lordstown」の施設を買い取るのなら更に手っ取り早いでしょうし。
出来ないなら出来る様に人を増やす
出来ないなら出来る様に設備を増強する
出来ないなら出来る様に予算を付ける方策を考える
出来ないなら出来る様にする為のスケジューリングを考えるこれが経営陣の役割なんですけどね(日本以外)
— おじさん (@ojisan4648) June 15, 2021
新しいことをやろうとすると失敗ばかり恐れて「失敗したらお前が責任とれ」とか「なるべく経費がかからないようにやれ」と安易に言ってしまう日本企業とは違います。
現在であればトヨタの「ハイラックス」がアフリカで最も売れているピックアップトラックですし、乗用車であればハイブリッド車の「プリウス」がナンバーワン(ただし中古)の売上を誇るのがアフリカ市場です。
しかし以前も指摘したように乗用車では既に中国メーカーなどがアフリカにEVを投入し始めていますし、主に業務用などで使われるピックアップトラックなども本日指摘したような「移動手段としての車」以上の役割を果たすことが認知され始めると状況が変わる可能性は大いにあります。
アフリカでも電気自動車(BEV)に市場を奪われる日本勢?【「ORA BLACKCAT」の脅威】
電気自動車化に向けて舵を切っているのは先進国だけではない、実は再生可能エネルギーの発電に適した自然があるアフリカも同様だということは前に話しましたが、ついにアフリカで「BlackCat」と呼ばれる中国の格安EVが販売され始めました。電気自動車で普及しないゆえに輸出する中古車もロクにない日本勢はいよいよピンチです。
「電力網もロクにないアフリカでEVなんか普及するわけねぇだろ」的なナメた言い方をする人が日本には多い(アフリカ方面に中古車を輸出してる業者でさえこういう暴言を吐きます)ですが、電力網がなくてもその場に太陽光パネルと蓄電池代わりにEVでもあれば発電できてしまうというシンプルな事実に気づくべきでしょう。
実際に自然が溢れるアフリカでは再生可能エネルギーの開発が盛んなことは以前も指摘しましたし、これに絡んでいるのが豊田通商などの日本の商社だというところが何とも言えません。
アフリカに輸出される中古車も電気自動車化?【想像以上のペースです】
日本では売れないような多走行・低年式の中古車がアジアやアフリカの発展途上国に輸出されるのは昔からの流れですが、その中古車にも電気自動車化の波が押し寄せているようです。ですが日本から輸出できる電気自動車が日産リーフのみなのもあり、韓国のヒュンダイなどもアフリカ市場に参入してきて、日本の独壇場だった世界にも変化が見えます。
いずれにせよ日本で「EVなんか普及しない」「再エネは向いてない」的に「できない理由」を並べたてている間に世界規模でEVと再エネによる産業革命のような状態が進行しているのは間違いないようです、
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