トヨタの謎のEV(とPHEV)発表から感じる疑念とは?【それでテスラに勝てると思ってる?】
おはようございます、@kojisaitojpです。個人的な都合ですが、この記事がどうやら200記事目になるようです。当初は旅行・ホテルを中心に書いていたので電気自動車関連の記事はまだ半分もありませんが。
CleanTechnicaがトヨタの発表について、
『そのペースはとても遅く、シェフが鍋敷きを使わずにどうやって熱いフライパンを拾うかを考えようとしている』
と表現し、トヨタが以前使った「キッチンとシェフ」という表現とかけて、痛烈に批判しています😅https://t.co/gGlKR0Zoa6
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) February 12, 2021
まぁこの揶揄のされ方は口は災いの元という格言通りの内容で、「優秀なシェフとキッチンがある」と豪語した社長の発言からきているわけですが、「素手でどうやって熱いフライパンを拾えるの?」とネタにされています。
昨日は韓国起亜自動車のEV化戦略を軸に話したのでトヨタのことにはあまり触れられなかったのですが、よくよく記事を読んだり、北米トヨタのホームページを見ていると様々な「疑念」がわいてきました。
そこで今日は「トヨタ」が北米市場で発表した2種類の電気自動車(BEV)と1種類のPHEVを巡って私が感じた「疑念」について語ります。
目次
「PHEVの方が優れてる」と宣言しながらBEV(電気自動車)を売るのがトヨタ流?
昨日も話したように2021年内にトヨタが北米市場に「2車種の電気自動車(BEV)」と「1車種のPHEV(プラグインハイブリッド)」を投入すると発表しました。
これまでのトヨタのEVと言えばレクサスの「UX 300e」と「C+Pod」だけという状況でしたから一気に進化させてきました。
ですので評価できる点ももちろんあります。
- 電気自動車用のプラットフォーム「e-TNGA」の採用
- パナソニック製(と思われる)バッテリーの航続距離は300-600キロと推定
私が「このメーカーは電気自動車に本気」と判断する指標である「電気自動車用(要はエンジン搭載車とは違う)のプラットフォームを使用」することと「バッテリーを自社またはバッテリーメーカーとの協業で安定確保」の2点を一応満たしてはいるようです。
バッテリーに関しては昨年の段階でRAV4のPHEV用の小さいバッテリーでさえ調達が遅れていたことを考えると予定通り確保できるのかはまだわかりません。
まさかマツダ「MX-30」のように日本市場で500台、ホンダの「ホンダe」のように1000台というようなふざけた生産台数にはならないとは思いますが。
それでもここまでは「ようやくトヨタも電気自動車(BEV)に本気になってきたのかな?」と感じさせるものです。
2車種もミッドサイズのセダン(カローラかカムリ級との予想)とスバルとの共同開発とはいえSUVを用意できそうなことはさすがです。
しかし問題は北米トヨタのホームページ(英語)に掲載された余計な一言です。
Toyota to Debut Three New Electrified Vehicles for U.S. Market – Toyota USA Newsroom
PLANO, Texas (February 10, 2021) – Toyota Motor North America (TMNA) announced plans to debut in the U.S. market this year, three new electrified models – two BEVs and a PHEV.
トヨタのコメントを一言で要約してみると「EVとPHEVでは環境に対する影響は同じである」ということです。
発電用の電力が石炭やガスなどの化石燃料だったら、結局は発する二酸化炭素の量は同じでしょ?と言いたいようですが、このトヨタの用いるアメリカの電力供給割合は現在のように再生可能エネルギーが大幅に増えてからのデータではありません。
また「バッテリーの生産の際に工場で二酸化炭素を産出するからガソリン車と変わらない」という批判も、工場で処理できる二酸化炭素とガソリン車の排気ガスとして排出される二酸化炭素を同列に論じることはできません。
最後に車両を購入した際のトータルコストについても述べられており、車両価格が割高な電気自動車(BEV)よりも車両価格の安いPHEVを買った方がガソリン代などを込みにして考えてもお得だよとまで言っています。
だから「電気自動車(BEV)だけがエコじゃない」と言い放ったトヨタ社長の見解がきっちり盛り込まれています。
「ホームページに俺の意見も書け」とでも指令が下ったのでしょうかね(笑)。
これでは「電気自動車(BEV)とPHEVの両方を発売するけどPHEVの方が性能が良いからね」と発売前にオフィシャルで宣言してしまったことになります。
やはりガソリンエンジンへの執着を捨てられないのでしょうか。
少し前にマツダが発表した「ポエム」と揶揄された、ガソリンエンジンの優位性とエンジンへの「哀愁」を漂わせた論文に近い臭いを感じてしまいます。
本気で電気自動車に力を入れるのならなぜこのような「余計なこと」を言ったのでしょうか?
やはり本音はPHEVやハイブリッド、つまり「内燃機関(エンジン)を搭載した車」を売りたいということなのでしょうか?
片やテスラは25000ドルで「モデル2」を2022年に発売?
片や飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラはイケイケで攻めてきています。
Tesla’s $25,000 Model 2 Will Be Sold Globally, Tom Zhu Says
Tom Zhu, president of Tesla’s operation in China, spoke in an interview with Xinhua Net, the Chinese state media outlet, about the hot recent news that Tesla China is developing a $25,000 vehicle. In the interview, Zhu provided new info about Tesla’s $25,000 EV. He said that it would be sold globally. Zhu said that […]
以前の記事で「モデル2」と思われるコンパクトハッチバックEV(ベースはモデル3)の情報が漏れてきた話をしましたが、「ギガファクトリー上海」で製造された車両が全世界に輸出される、しかも価格が25000ドル(約260万円くらい)という価格も驚異です。
2021年から適用される日本の新しい補助金システムが適用される間に日本で発売できれば200万を切る可能性もあります。
最初はロードスターやモデルSなどの高級車から始めて資金を充実させた上でモデル3、モデルY、モデル2と徐々に小型のセグメントにも進出してきているテスラの勢いは既に世界中の自動車メーカーの脅威になってきています。
当初は2024年くらいから販売開始と言われていた「モデル2」がこのペースだと2年早くなります。
日本メーカーが「電気自動車(BEV)はまだ早い」と言っていつまで経っても前に進まない間にテスラが驚異的なペースで市場を奪っていきます。
また以前少し触れたことがありますが、バイデン政権もテスラを後押ししてくれるようです。
The Biden administration just made a sub-$30k Model 3 a reality — Tesla to gain access to another 400k $7,000 EV tax credits through the Biden administration’s #GREENActhttps://t.co/hzSVzjoGbu by @ResidentSponge
— TESLARATI (@Teslarati) February 11, 2021
「累積販売台数が20万台」を超えた自動車メーカーには7000ドルの税控除を適用しないというトランプ政権時代からのEV支援策を、既に20万台を超えているテスラやGMにも解放するという電気自動車の販売促進策をバイデン政権が打ってくることが濃厚のようです。
排除されてたメーカーがいずれもアメリカのメーカーですから、反対する声はほぼないと思えます。
これが実現するとテスラはアメリカ市場では価格面でも「無敵」になります。同時に今後ハマーやキャデラックなどの電気自動車化を予定しているGMにも強大な追い風となることでしょう。
片やトヨタとパナソニックのバッテリー開発に政府が資金提供をするというプランが出てきたことをこの前お話ししましたが、政府などの公的機関が絡むとビジネスの速度は大幅に低下します。
下手をすると2021年末までにテスラが「モデル2」を発表した場合には、バッテリー事業はまだ稼働すらしていないという可能性もある位日本メーカーの動きが遅いです。
エンジンに未練タラタラなトヨタがテスラと戦えるの?
日本国内であればお抱えの自動車ジャーナリストやマスコミに大量に広告費をぶち込んで「電気自動車はダメ」というイメージを植え付けることができるのかもしれませんが、世界の電気自動車化の流れは止められません。
新興国、発展途上国でもこんな感じなのに https://t.co/Dcl7g50x1l
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 12, 2021
アフリカ諸国はいくつだしたので今日はアジアで探してみましたが、タイ辺りでも「電気自動車化30%」などの目標を掲げて電気自動車への転換を目指しています。
バンコクに一度でも行ったことがあればお分かりでしょうが、あの排気ガスが電気自動車化でゼロになったらもはや別世界です。
そんな世界の流れを無視してPHEVの優位性をアピールしてくるという今回の発表を見ると「もしかして何か企んでる?」という気もしてきます。
そっか、ショボいEV発売すればPHEVの方がいいやと意図的に誘導できるのか。
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 12, 2021
もう陰謀論(笑)の世界になりますが、これまでがこれまでだけにこのようなことを計算づくでやってくる可能性も否定できないと思ってしまいます。
私の場合はこれまで乗ってきたガソリン車もルノー、シトロエン、ジャガー、フォルクスワーゲンと全て輸入車なのもあり「トヨタ」というブランドには何の思い入れもないのもあってついつい厳しい見方をしてしまいます。
あえて言えば以前タクシーに追突された時に1ヶ月ほど代車でプリウスに乗ったことはありますが、私の場合飛ばす(笑)のもあって特別燃費が優れているという感じはしませんでしたし(確かリッター20キロも行かなかった記憶が)、搭載しているエンジンも小さいので「パワーないな」という感想くらいしかありませんでした。
まぁ変にバイアスがかかって過剰な期待をする自動車ジャーナリストよりは役に立つ立ち位置かなと勝手に思ってますけど。
それもあってヨーロッパ・中国・アメリカが電気自動車化(しかもPHEVすら排除する方向が多数派)を進める中で、今もPHEVやハイブリッドの優位性を説くような企業からはオワコン臭しかしないのです。
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