「電力不足だから日本で電気自動車が普及しない」のもフェイクニュース?【再生可能エネルギー】
おはようございます、@kojisaitojpです。年末年始にかけての「豪雪」もそうでしたが、何でもいいから理由をつけて「日本では電気自動車は普及しない」ということにしたい人々がかなりの数いるようです。
全国の電力会社の電力がこの寒さで逼迫しているようで、節電の呼びかけがなされている。この程度で電力不足しているようだと2030年からの電気自動車へのシフト策は危険すぎると思う。
— なかなか (@nem_125395) January 13, 2021
ニュースなどにも出ているように現在日本の各地で「電力供給」が限界に近づいているようで電力会社などが節電を呼びかけている状況なのですが、
まるで「電気自動車を否定できる材料なら何でも使ってしまえ」的に電気自動車に攻撃を仕掛けてくる層が一定数いるようです。
シャブ(反EV広告費)にまみれた自動車評論家、モータージャーナリストと名乗る全員に読んでもらいてぇ記事だな。 https://t.co/kFXY4tMFz3
— やけにテスラに詳しい悟空 (@saiyajinmars) January 13, 2021
「電気自動車は寒さに弱いから凍死する」のようなフェイクニュースもそうですが、何か起きる度に「日本では電気自動車は普及しないんだ、日本には向いてないんだ」という話が出てくるのは「誰がそういうニュースで得をするのか?」という目線でも考えた方がいいかと思います。
というわけで今日は最近起きている「電力不足」の原因とそれに対する対策、電気自動車を普及させるために必要な「再生可能エネルギー」の普及について考えてみます。
目次
「電力供給が不足した原因=電気自動車」ではない
そもそも今回急に「電力供給が逼迫」した原因は何なのでしょうか?
なぜ電力ひっ迫を招いたLNG不足を予測できなかったのか 深刻な電力不足と電力市場の高騰は少なくとも1月末まで続く
電力不足が深刻さを増している。最大の要因であるLNG(液化天然ガス)の不足はなぜ起きたのか。その背景には、電力自由化や再生可能エネルギーの拡大といった電力システムの変化がある。発電事業者が適正なLNG調達量を判断しにくくなっていたのだ。
発電の燃料となるLNGが不足しているというのが原因で、中国と韓国によるLNG輸入量の増加、産ガス国での生産設備トラブル、新型コロナ影響によるパナマ運河の通関手続き遅延などいくつかの要因が絡み合って発生したようで、「こいつが悪い」と断言するのは難しいようです。
記事によると、あえて言えば余裕を持った量のLNGを輸入しなかった電力会社に問題があるようです。
「やっぱり日本では原発が必要なんだ」的に原発推進論者が現れたりもしますが、それは今回は無視します。
「原発」とか「ガソリンエンジン」とか「オリンピック」とか私に言わせれば全て「昭和の遺物」です(笑)。
東日本大震災からもうすぐ10年経ちますが、たったの10年で全てを忘れて「やっぱり原発は必要だ!」とイキリ立つような人間を私は信用しません。
もちろん現在研究中の「第四世代原子炉」などの安全性が証明されるのであれば話は別ですが、少なくとも現行の原発を再稼働するというのは論外です。
今回は、LNGが足りなくなる以前に「再生可能エネルギーがもっと普及すればそもそも供給懸念にならなかったのでは?」という観点から未来のエネルギーを考えます。
世界で急拡大する「再生可能エネルギー」
再生可能エネルギーと言っても「太陽光」「風力」「バイオマス」「地熱」など様々ですが、ここはヨーロッパの中でもノルウェーのように資源に恵まれた国ではなく、イギリスを例にして考えてみます。
何となくのイメージもありますが、日当たりが悪く(ロンドンの日照時間の短さは有名です)、再生可能エネルギーには向かないと思われるような国でさえこの位再生可能エネルギーを伸ばしているという記事です。
Solar & Wind Power Growth In UK From 2012–2020 (Charts)
At the end of 2020, I published a report on solar power, wind power, and fossil fuel power market share changes from 2010 to 2020. A helpful reader, Mike Dyke, directed me to UK data for the same period. Below, you can see how wind power and solar power grew in the country as coal
記事の中から資料を引用しますが、この10年で太陽光や風力が順調に増加し、石炭が激減しています。
実際にイギリスでは2012年から2020年の間に再生可能エネルギーのシェアが6%から35%まで増えています。
片や日本の場合まだ18.5%、イギリスの半分です。電力供給がピンチになるたびに「だから原発が必要だ」とか「日本は火力以外無理なんだ」のような極論が飛び出しますが、本当に再生可能エネルギーは増やせないのでしょうか?
日本でも「再生可能エネルギー」は供給可能
先ほどのグラフを見ての通りで、日本の場合太陽光は順調に増えたのですが、イギリスなどと比較すると風力が圧倒的に足りません。
電力逼迫時に再エネはあてにならないという声もあるので、エビデンス投下。太陽光は夏に風力は冬に強い。再エネ同士の適度な組み合わせが有効で、その点で日本は太陽光偏重でなく風力も早くから大量導入を進めていれば…、という話。#インスタ映えするデータとエビデンス https://t.co/xDiv0Mgm7G pic.twitter.com/IjfmnwYxen
— 安田 陽 (@YohYasuda) January 12, 2021
このように「風力が足りない時期には太陽光が充実する」「太陽光が足りない時期には風力が充実する」のが日本の特徴であり、それぞれが補い合うことができればいつの時期でも適切な電力量を確保できるということです。
もちろん引用されたグラフの目盛りを見ての通りで、風力は太陽光の1/10ですから、今後更なる増加は必須です。しかしこの相関関係を生かすことで、太陽光の弱い季節も安定した電力の供給が可能になります。
「太陽光発電投資」などのように「再生可能エネルギー=太陽光発電」というノリで突っ走ってしまったのが諸悪の根源だったようですが、それならそれで太陽光を叩くのではなく風力を増強すればいい話です。
投資としての「太陽光発電」ってどうなの?【デメリットなし?】
昨日は蓄電池との関連で説明した「太陽光発電」を今日は「投資」という観点から見てみたいと思います。東日本大震災の直後に注目され投資した人も多かった太陽光発電が最近は不評です。二酸化炭素の排出量をゼロにするという国家目標を達成するためにも不可欠なはずの再生可能エネルギーの中で「太陽光発電」の現状にアプローチしてみます。
批判だけしていても何も生まれません。
まぁそれはそれで悪いことではなかったのですが、おかげで太陽光以外の再生可能エネルギーの発達が遅れてしまったとも言えます。
洋上風力発電のポテンシャルは国内の全エネルギー需要を超える
資源エネルギー庁によれば、風力(20kW以上)のFIT認定量は、19年6月末時点で約717.8万kW(内、洋上風力は27.7万kW)に達している。経済産業省と国土交通省は、国内洋上風力発電導入量を今後10年間で、原発10基分に当たる1,000万kW(10GW)の発電能力を確保する案を軸に導入目標を設定している。
洋上風力発電が実現すれば、よく電気自動車嫌いの方々がいう「電気自動車の電力のために原発10基必要になるぞ」という野次に応える電力が簡単に手に入ります。
日本の場合陸地の面積は決して大きい国ではありませんが、周囲を海に囲まれた海洋国家ですので、洋上の風力を利用するという内陸国にはできない方法もあります。
他にも火山があり地震大国である日本の特徴を生かした「地熱発電」も今以上に有効活用できます。温泉との兼ね合いが難しいとの声もありますが、共存も可能な技術も進化しています。
日本国内に存在する資源である「太陽光」「風力」「地熱」、他には「バイオマス」などをフルに活用すれば、自然条件に左右されず安定した電力供給が期待できます。
石炭にしろ、LNGにしろ、再生可能エネルギーにしろ、(安全性が証明されればの条件付きで)原子力にしろ、電力供給手段を多様化・分散化させることで、何か問題が起きた時もカバーできる安定した電力のある国になるために必要なことです。
「電気自動車=電気を消費するだけ」という思い込みも捨てるべき
少なくとも「脱原油」「脱中東依存」というのはオイルショック以来の日本の目標だったはずです。
東日本大震災における原子力発電所の事故によって原子力の限界・怖さがわかってしまったらもう諦めるような目標なのでしょうか?
まぁ諦めた結果が今回のようにLNGの供給不足でピンチを作ってしまったわけですが。
であれば「火力発電」に代わる、というか火力発電がダメになった時の代替として機能するように「再生可能エネルギー」を育てる必要があると思います。
ちなみに電力不足の際になぜか叩かれる「電気自動車」にもこのような有益な使い道があります。
むしろ一家に一台日産リーフがセーフティネットになるんじゃないの? https://t.co/N6tliKlSZr
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) January 13, 2021
「V2h」については以前の記事でも触れましたが、バッテリー容量の大きい電気自動車を「蓄電池」として充電しておいて、災害などのいざという時の非常用電源にしたり、今回のような電力供給が危ないと言われる朝や夕方の時間帯にリーフから(i-MiEVでも可能です)電源を取ることで電力消費を減らすという手段も可能です。
現行の家庭用蓄電池で最大のテスラ「パワーウォール」でさえ容量は13.5kWhですが、日産リーフの場合最も容量の小さい車種でも24kWhと2倍です。
実は最強の蓄電池でもあり、セーフティーネットにもなる存在が電気自動車かもしれません。
「Vehicle to Home」で災害時・停電時も安心?【日産リーフ・三菱アイミーブの別の用途】
「Vehicle to Home(V2h)」という言葉を知ってますでしょうか? 電気自動車は「蓄電池」として活用することが可能であり、災害時・停電時も車から電気の供給を受けて日常生活を送れるという隠れたメリットがあります。航続距離が少ない初期型のリーフや軽自動車の三菱アイミーブの隠れた活用法を今日は紹介します。
自宅に太陽光パネルや蓄電池を設置するのは賃貸などでは難しいかもしれませんが、充電さえ可能であればリーフやアイミーブに電気を貯めておくというリスクヘッジが可能でいざという時に自分を助けてくれるかもしれません。
新しい技術の揚げ足を取って叩くより、有効活用する方法を考える方が人間として前向きな生活が待っています。
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