これでいいのか?日本メーカーのEV化戦略【マツダ編】
こんばんは、@kojisaitojpです。これまでEVに対して日本メーカーの中で最も後ろ向きのように思われていたこの会社が動き出しました。
EV好きもEV嫌いも自分に都合の良いように解釈してるけど25%をBEVに持っていくならやる気は感じるよ。
2030年には4台に1台がEVになる! EVもPHEVもHVもひとつのアーキテクチャーから生み出すマツダの次世代テクノロジー発表 | 自動車情報サイト【新車・中古車】 – carview! https://t.co/uRXbALHNq2— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 19, 2021
まぁEV好きの方々に過去に幾度となく挑発的な行動を取ってきた会社ですのでEVファンからの評価はひどいもので、「こんな計画じゃ論外」というような雰囲気です。
後でマツダがEVに対してやらかしてきたことの数々は紹介しますが、EV好き・EV推進派をこれでもかと攻撃するような内容のものばかりですので仕方ないと仕方ないですが。
一応言っておきますが私も「BEVが25%」だからまだいいものの「電動車25%」なんて計画を発表してたら「この会社もう終わりですね」と酷評する記事を書くつもりでした(笑)。
ですが2030年でBEVの比率が25%という目標はホンダが先日発表した40%と比較すると物足りないですが、前に進もうという意志は感じます。
そこで今日はマツダが先日発表したEV化計画の内容と将来の展望について考えてみます。
目次
マツダの「2030年までにEV比率25%」という計画は妥当なのか?
今回のマツダの発表は「マツダ中期技術・商品方針オンライン説明会」において「マツダ サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言2030」に基づき、2030年に向けた新たな技術・商品方針を発表」というものでした。
「SKYACTIV マルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」というEVプラットフォームから製造される商品として、ハイブリッド5車種、PHEVを5車種、EVモデル3車種の計13車種を、2022年から2025年に発売するとのことです。
現時点で「MX-30」しかEVを発売していないマツダのこれまでのEVに対する姿勢からするとかなり変わった印象を受けます。
「2030年時点での生産での電動化比率は100%、EV比率は25%」という目標はホンダのように「2040年までに全車EVとFCV」とか、ジャガーの「2025年までに全車EV」、GMの「2035年までに全車EV」と比較すると物足りないですし、正直「ぬるい」とは感じます。
ですが過去にこの会社がEVに対して取ってきた態度からすると「マツダなりに進歩したのでは?」と思うところですので、私は強く批判する気はありません。
反対に今回の発表を「ご安心ください、マツダはエンジンを捨てません」のように内燃機関車に都合の良いように解釈するYouTuberなどを見ていると「梯子外されるぞ」と思ったりもします。
EV推進派を愚弄した「マツダ論文」と「LCA(ライフサイクルアセスメント)」
しかし今回の発表を素直に称賛できないのはマツダがこれまでEVに対してやってきた数々の所業があるからです。
例えば一部では有名な「マツダ論文」は今でもアンチEVの方々が「EVはエコじゃない!」と叫ぶ根拠となっています。
マツダさんの Well To Wheel 計算は正しく、電気自動車のライフサイクルCO2排出はガソリン車より多いのか? | EVsmartブログ
最近よく聞くWell To Wheel (WtW)。油田から車のタイヤまでという意味で、実際にエネルギーのもととなる資源の採掘から、車が走るところまでのエネルギー消費を合計してみても、電気自動車は環境にやさしいのでしょうか?
ヤフコメなどなぜか「EVも再エネも否定したがる空間にいくと必ずコメントに上がってくるのが「EVは走行中に二酸化炭素出さなくてもバッテリー製造時に二酸化炭素を排出するからガソリン車とトータルの排出量は変わらない」などの発言ですが、こういう発言に根拠を与えているのがこの「マツダ論文」と呼ばれるものです。
測定方法にかなり疑問があり、しかもEVの方は16万キロでバッテリー交換をすることにされている(いつの時代の話?)のでEVになるべく不利なデータを駆使して書かれた論文であることは明らかなのですが、EVを叩きたい勢力には今でも都合の良いように利用されています。
またEVの方は今後「再生可能エネルギー」の使用量が増えて、バッテリーを生産する工場の電力もユーザーが充電する電力も再生可能エネルギーになった場合には大幅に二酸化炭素の排出量が削減できるということにも全く触れていないのも問題です。
「EVは火力で発電した電力で充電するので二酸化炭素ガー」というEV叩きによく使われるフレーズも実はこのマツダ論文が提供していたと言えます。
ですので「EV化とか言う前にまず論文を撤回しろ」とEV好きの方々が怒る気持ちもわかります。実際に似たような論文を発表した過去のあるフォルクスワーゲンは撤回してますし。
他にもEV好きに対するこのような「挑発行為」まがいのことをやったこともあります。
今日の二子玉川のイベント、個人的ハイライトはコレ
EVのイベントなのに、瓜二つなのをいいことに【ガソリン車のMX-30】を持ってくるマツダ pic.twitter.com/HuHuJluINp
— なわい (@nawaEV) March 28, 2021
3月に二子玉川で開催された『EV:LIFE FUTAKOTAMAGAWA』というEVのイベントにガソリン車のNX-30をEVのMX-30の横にシレっと展示してたことも怒りを招きました。
EVのイベントにわざわざガソリン車を持ってくるという行為自体が「EVとそのファンに喧嘩売ってるの?」と言われても反論できない挑発行為です。
このような過去の所業からEVファンには嫌われているマツダです。
このような経緯があるのでEVが好きな人ほど今回のマツダの発表が「手ぬるい」と批判したくなる気持ちはわかります。
マツダ唯一のEV「MX-30」の低スペック
またマツダが唯一発売したEVである「MX-30」についてもその電気自動車としての性能が「???」なものでEV界隈では手厳しく批判されています。
航続距離がEPA基準で200キロに行かない、「BMS(バッテリーマネージメントシステム)を搭載」と発表している割に気温の低い場所で充電すると充電速度が全く出ないなど(BMSが搭載されているのであればバッテリーヒーターが暖めるはずなので安定して充電できるはず)かなり酷評されているEVです。
以前私のブログでも取り上げたように2020年の発売当初はヨーロッパのいくつかの国で売り上げランキングに入ってきてヨーロッパでマツダが人気が相変わらずあるなと思ったのですが、ユーザーからは大きな失望を招いたようです。
「テスラ方式」からは程遠いマツダ「MX-30」のアップデート【ディーラー行く意味あるの?】
「テスラ方式」のソフトウェアアップデートでMX-30のリコール対応を行うと表明したマツダですが、そのアップデートはオンラインではなくディーラー行くという旧態依然なもので、そこがテスラ方式なのかという感じです。片やLFPバッテリーの不具合が指摘されていたテスラはオンラインでサクッとアップデートしたのと対照的です。
しかも不具合が出た際のリコール対応を「ディーラーでソフトウェアのアップデート」というテスラ辺りから見ればありえないような旧態依然な会社の姿勢を感じさせる一面もありました。
せっかく他のEVと差をつけることのできる内外装のデザインセンスの良さを感じされる車体でありながらEVとしての性能が最低レベルという残念な車種でした。
次に発売するEVでこの低スペックをどこまで進化させることができるのかに会社の命運がかかっていると言っても言い過ぎではないでしょう。
日本メーカーの中ではヨーロッパでの人気が高く売り上げ比率も高いのですから、EVが成功しないと会社そのものが経営危機に陥る可能性をようやく認識して、遅ればせながらEVに本腰を入れる姿勢を表明したのが今回の発表なのかなと少しは期待したいところです。
遅れたEV化計画でマツダは追いつけるのか?
今日はマツダが発表した今後の電動化戦略とこれまでの所業(笑)について見てきましたが、問題が山積みとはいえ「2030年のEV比率が25%」というのは以前の5%という全くやる気のない計画から前進したことは評価してもいいと思います。
プラットフォームについてはハイブリッドやPHEVとも共通という点に疑問を感じますが、それでもEVを意識した専用プラットフォームを開発した点は評価してもいいでしょう。
残された問題は、
- バッテリーの調達はどうするのか?
- ディーラーにすら充電器を置かない姿勢を改める気はあるのか?
バッテリーをどこから調達するのか?それとも自社で生産する体制を整えるのかについてはマツダ側から全く発表がないので不明ですが、「MX-30」のように「このバッテリーサイズ(35.5kWh)が最もエコだと判断した」とかいう意味不明の理由で航続距離が短くなるようなEVを次も出したら間違いなくユーザーは離れていきます。
EVにおいて内燃機関車におけるエンジンのような役割を果たすバッテリーの重要性については以前も何度か解説していますのでよろしければご参照ください。
「技術があっても量産できない」と詰んでしまうのがEV?【自社バッテリーの必要性】
「EVのバッテリーが消耗するから交換が必要」って本当なの?【蓄電池として第二の人生もあり?】
EVのことをよく知らない人の抱く誤解の一つに「バッテリーが消耗・劣化する」というのがありますが、スマホのバッテリーと違いEVのバッテリーは電池が劣化しないように様々な工夫がされていることを日産リーフを例に説明します。また車としての使用が終わった後も「蓄電池」としてV2Hで活用し続けることができるのもEVのメリットです。
バッテリーで世界シェアのかなりの部分を握る中国メーカーに依存するようであれば安全保障上も好ましくないですし、何よりEVの基幹部品でもあるバッテリーを他社依存という姿勢は「本気でEVやる気あるの?」と思われても仕方のない部分です。
私の見解だとそれ以上に「ディーラーにすら充電器がない」のと「トヨタ・日産・ホンダ・三菱が出資しているeMobilityPowerに1円も出資していない」という充電インフラに対する姿勢の方が問題だと思いますが。
他社が設置した充電インフラにただ乗りするような姿勢こそが「実際にEVを購入して運用するユーザーの目線」を全く意識していないという会社の姿勢を物語っているようで好ましくはありません。
この辺りに今後どのくらい変化が見られるかが、マツダという会社が生き残っていくにあたって注目すべきポイントかと思います。
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