「できない理由」を探すより「どうすればできるのか?」を考えるべき?【典型例が地熱発電】
こんばんは、@kojisaitojpです。アメリカで既に予約が10万台を突破しているフォードのピックアップEVの「F-150Lightning」ですが、面白い活用法が提唱されています。
少し大袈裟に言うと「EVがテキサスの電力供給の救世主になるかも」という記事。「電力不足のくせにEVが」といちゃもんつける日本との違い。
Can Electric Pickup Trucks Save the Grid in Texas? – https://t.co/2RFYeGnT5W— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 17, 2021
ここのところブログでもTwitterでも私のテーマは「なぜできない理由を並べる人が大量に生まれるのか?」なのですが、この再生可能エネルギーという分野でもちょっと論じただけであらゆる方向から再エネに対する批判が押し寄せてきます。
「できない理由」の多さではEVと再エネが「伏魔殿」のような領域だなと個人的には思ってますが(笑)。
まぁ原発を何がなんでも死守したい電力業界、ハイブリッド車・内燃機関車(エンジン)を何がなんでも維持したい日本最大の自動車メーカーがいる領域ですから当然と言えば当然ですが。
昨日の記事では「EV」をターゲットに「できない理由」を並べる人々を問題にしましたが、今日はできない理由を並べる人がEVと並んで多く見られる「再生可能エネルギー」について語りつつ、実は日本に最適の再生可能エネルギーがあることも紹介します。
目次
EVと再エネを「V2H」「V2G」で結びつけることがテキサスを救う?
日本でも今年の冬以降の電力の供給不足が警戒されていますが、アメリカではそれどころではないくらいピンチを迎えているようです。
大寒波の次は熱波が襲うと言われているわけで電力供給をどうするかはアメリカでも死活問題。
Extreme Heat Broken Gas https://t.co/orltB6h7Al— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 17, 2021
先日私のブログでも取り上げましたが、テキサス州は今年2月に大寒波に襲われ、多くの発電所が寒さに耐えきれず大停電を起こしてしまいました。
気候変動の影響の一つに「寒さと暑さが極端に訪れるようになる」というのがありますが、今年の夏は熱波が警戒されているようです。
2月の時は寒さが原因で発電所の設備が凍結して使えなくなったのが停電の原因でしたが、今後は暑さに耐えられなくて石炭や天然ガスのプラントが止まってしまうのではと言われています。
またテキサスで大停電というリスクが迫っている中で一つの解決策として「EVとV2H・V2G」が提唱されていたのが冒頭の記事の内容です。
太陽光などの再生可能エネルギーを蓄電池やEVに蓄えて、災害時や電力供給が危なくなった時には反対にEVから家庭やグリッドに電力供給することで停電を回避するという秘策が推奨されています。
似たようなことは先日南アフリカ共和国を例に話しましたが、実は先進国でも同じようなリスクを抱えています。
以前の記事では「停電になっても太陽光発電とパワーウォールを設置した家は無関係」で救われたという点にスポットを当てた記事でしたが、テスラ車の場合には現時点ではV2HやV2Gが装備されておらず(実はオンラインアップデートでできるようになるという説もありますが)、あくまでも太陽光とパワーウォールを設置した家だけが無傷だったという内容にとどめておきました。
しかし冒頭にも引用したフォードの「F-150Lightning」は外部への電力供給が可能で、当然「V2H」や「V2G」も可能です。
こうなるとEVの車としての側面だけではなく「蓄電池としてのEV」という面にもスポットが当たってきます。
特にフォード「F-150Lightning」では100kWh級の巨大バッテリーが搭載されていますので、「これ一台でテスラのパワーウォール(13kWh)何台分の電力を蓄電できるの?」という話になります。
「できない理由」を並べる方々なら「まだ発売してもいない車の話されても現実味がない」と言われるかもしれませんが、別に「F-150Lightning」を用意しなくても初代初期型の日産リーフを用意してもバッテリー容量が24kWhと、テスラのパワーウォール約2台分の電力を蓄電できます。
一般に四人家族の一日辺りの電力消費量が10kWh前後と言われていますのでリーフのバッテリー容量でも数日分の電力が蓄電されています。
これを「V2H」として家の電源に繋げば自宅の電力が賄えますし、「V2G」としてグリッドに接続して給電してやれば電力供給が逼迫している時間帯の電力不足を解消できます。先日の記事でも述べたように「自家用車はその9割の時間を自宅の駐車場で過ごす」と言われているわけですので、仕事などで朝から夜まで走り回っている車などは考慮に入れなくても電力供給の調整に協力できるEVは無限にあります。
「できない理由」を並べて全否定するのではなく「どうすればできるようになるのか?」考える必要があります。
「実際そういうパターンに当てはまる人って人口の何%なの?」という少数の例外を持ち出して、その例外に当たる人が困るからEVはダメだ、再エネはダメだと「重箱の隅」を突くように全否定してくるのが「できない理由」を並べる人の共通した行動パターンです。
と先に「うちは朝から晩まで仕事で走ってるから無理なんだよ!」という「できない理由」を想定して先回り的に語ってしまいましたけど。
日本にも迫る電力の「供給不足」と「できない理由」を並べる人々
日本でも年明けに電力供給がギリギリという状況に陥りましたが、次の冬も既にこの状況です。
[社説]電力不足の解消へ万全を期せ
電力は私たちの暮らしや経済を支える血液だ。止めるわけにはいかない。それが揺らぎかねない事態である。梶山弘志経済産業相はこの夏の電力需給がここ数年で最も厳しく、この冬は東京電力の供給エリアで供給不足に陥る恐れがあるとの見通しを示した。政府は消費者や電力会社と緊密に連携して目先の逼迫を回避するとともに、中長期で供給力を安定的に確保する仕組みを整えなければならない。需要に対する供給の余裕度を示す
今の時点で今年の冬に電力の「供給不足」が懸念されていますが、ネット上では「電力が足りないのにEVなんてけしからん」とか「今すぐ原発を再稼働しろ」的な目先しか見ていないような短絡的な議論ばかりで呆れてしまいます。
原発は一度稼働すると止められない(正確には止めるのにまた長い年月が必要)上に東日本大震災を見ての通りで地震が多発する日本には全く向いていない発電方法です。
にも関わらずちょっとした工夫で可能になる再生可能エネルギーをボロクソに罵るような言葉を浴びせて原発は推進では意味不明、まさに「支離滅裂な思考・発言」になってしまいます。
EVの話同様に再生可能エネルギーの話をしても「できない理由」を並べて「日本は再エネが世界で最も向いてない国だ」的なことを言う人も非常に多いです。
- 太陽光発電→梅雨があったり日照時間が不安定
- 風力発電→台風が来るから耐えられない
- 洋上風力発電→日本だと浅瀬がほとんどない
- 地熱発電→温泉や国立公園に迷惑がかかるからダメ
EVの時と同じように次から次へと「できない理由」を並べる人が現れて、ボロクソに批判してきます。
まぁこのような「できない理由攻撃」も「それいつの時代の話?」というピントのズレたものが多くて、例えば現在であれば風力発電も台風の影響を受けない仕様のものも開発されてますし、洋上風力発電であれば浅瀬以外にも設置可能なものがあります。
地熱発電も後で詳細に解説しますが、これまで「温泉が枯れた」ような例は少なくとも日本では一件もありません。それどころか温泉を地熱発電に活用する例すらあります。
日本は世界3位の地熱資源大国なのに発電所建設が進まなかった3つの理由
2011年の福島第一原発事故直後、再生可能エネルギーとして一躍脚光を浴びたのが「地熱エネルギー」。火山国の日本にとって、うってつけの発電方法に思えるが、現在、地熱発電の電力供給量が54万kWと総発電量の0.2%にすぎないのはなぜか。地熱発電の歴史と現状や、将来について、九州大学名誉教授で現在地熱情報研究所代表の江原幸雄氏に話を聞いた。
ですがそういう風に再生可能エネルギーに対して敵意をむき出しにする人が絶賛するのが「原発」だったりするのが呆れるところです。
私から見れば「原発こそ地震が多く、大地震の際には津波も押し寄せる日本に最も不向きな発電では?」と思うのですが、反論すると大体何のコメントも返ってきません。
「できない理由」を並べ立てておいて後は知らないでは「批判だけなら誰でもできるよ」と一言言って終わりです。
「できない理由」が殺到する地熱発電が実は日本に最も向いている
「できない理由」を並べられて批判の対象にさせることが多い再生可能エネルギーの中でも特に「地熱発電」は抜群に日本向きだと言える理由があります。
- 火山大国で温泉も豊富に出るので地熱資源が世界3位
- 世界の地熱発電の7割以上が日本企業の設備を使用という世界シェア
あまり知られていませんが、実は「地熱発電用タービン」の世界シェアは日本企業が7割を占めています。
以前アフリカのケニアが「自国の発電量の半分以上を地熱で賄っている再エネ大国」であることについて解説しましたが、ケニアで地熱発電を行っている会社は東芝や豊田通商などの日本企業です。
日本だと「温泉が枯れる」と反対運動(実際枯れた例はないので風評被害)が起きたり、地熱資源の多くが国立公園の地下にあるため「認可を得るまで10年」という気の遠くなる手間がかかるなどの理由で簡単にはできない地熱発電の技術をケニアをはじめとする海外で存分に発揮している状況です。
せっかく日本メーカーが今でも世界でトップクラスの技術を持つ領域なのに肝心の日本で活用できないのでは非常にもったいないです。
地熱発電開発しやすく、小泉環境相 9月までに要件明確化
小泉進次郎環境相は1日の閣議後の記者会見で、自然公園で地熱発電の開発を許可する要件を明確化し、開発しやすくする方針を明らかにした。自然保護の特別地域での開発を「原則として認めない」としてきた関係通知を見直す。今後、有識者による検討会で議論し、9月末までに詳細を決める。小泉氏は「環境省自身が再生可能エネルギーを増やすために汗をかく」と強調した。地熱発電は稼働までの期間が10年以上と長く、203
ようやく日本国内でも規制を緩和して地熱発電をやりやすい方向に進む意向を示していますが、政府内には根強い原発推進派も多数いるので今後どうなるかは不明確です。
原発より安全でベース電源になる「地熱発電」が「できない理由」を駆逐する
結局高度経済成長期にベース電源として地熱発電よりも原子力発電を選んでしまったツケに今苦しんでいるというのが日本の再生可能エネルギーを巡る状況です。
世界でホットな地熱発電 出遅れ日本も「地殻変動」
脱炭素の流れを受け、世界で地熱発電が盛り上がっている。再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力のように天候に左右されない安定性が評価され、発電容量は10年で4割増えた。世界3位の潜在量を持ちながら原子力優先で出遅れた日本も、政府が2030年に発電所を倍増させる方針を掲げ、にわかに「地殻変動」が起きている。「地熱は稼働までの期間が長いが(温暖化ガスの排出量を13年度
「地熱発電」は24時間365日、常に安定した電力を発電できる「ベース電源」としては最適です。太陽光だと日照時間と天候、風力だと文字通り風量が安定しないのは事実であり、ベース電源としては使いにくいですが、地熱であれば使えます。
地熱発電用のタービンの世界シェアの7割を日本のメーカーが占めているにも関わらず、自国で活用できないから海外に活路を見出すという非常に残念な状態が続いています。
同じように安定した電力供給が可能であるにも関わらず事故のリスクがほぼゼロの地熱発電と地震や津波などの災害で常に事故のリスクを抱える原発のどちらに将来性があるのかはもはや論じるまでもないことだと思うのは私だけでしょうか?
「いや、地熱だと稼働するまで時間がかかるから原発で」などと「できない理由」を持ち出してためらっていると永久に原発を捨てられない日本になってしまいます。
できない理由を並べてしまって、せっかく世界トップクラスの埋蔵量を誇る「地熱」を有効活用できないのでは「脱炭素」など夢のまた夢です。
「ガソリンエンジンを捨てられない日本」「原発を捨てられない日本」が世界から見て魅力のある国に映るでしょうか? 私にはそうは思えません。
徐々に国自体が貧乏になり「インバウンドくらいしか収入源がなくなるのでは?」と危惧される日本ですが、世界からの観光客に「まだガソリン車走ってるの? 排気ガス臭いんだけど」とか「まだいつ事故起こすかわからない原発使ってるの? 怖くて行く気なくす」などと思われれば新型コロナウイルスが終息した後も観光客が戻ってこないという悲惨な状況が待っているかもしれません。
「できない理由」を並べて現状維持のまま衰退していくのではなく、「どうすればできるようになるか?」考えることが未来を切り開くのではないでしょうか?
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