ガソリン車・水素燃料電池車(FCV)と電気自動車(BEV)は共存できない?【消滅するガソリンスタンド】
こんにちは、@kojisaitojpです。「多様性」という言葉を自分たちに都合の良い方向に利用しようとしていますが、相手にされてない人たちがいます。
Toyota Asks Lawmakers To Support Advanced Powertrains, Not Just EVs
Whenever it looks like Toyota might really dive headfirst into EVs, it takes a step back and wants credit and support for its “other” green contributions.
アメリカ政府に米国トヨタが「ハイブリッド車も電気自動車や水素燃料電池車と同じように優遇してくれ」とロビー活動を行なっていた際に「Diversity(多様性)」という単語を多用していました。
要は「車の世界もEV一択ではなく多様性が必要だ」という主張なのですが、最初に結論を言ってしまうと、残念ながら「ガソリン車・ハイブリッド車」と「電気自動車(BEV)」を両立させることはできません。
「古くから存在するガソリン車・ディーゼル車とこれからの技術である水素燃料電池車を一緒にするな!」と怒る方はいるでしょうが、ガソリンスタンドも水素ステーションも結果は一緒です。
ちなみに電気自動車の文脈でよくたとえに使われる「スマホvsガラケー」であれば共存は可能です。今ではスマホ使う人が圧倒的多数派になっていますが、ガラケーを今でも使っている方はある程度はいます。
実際に用途が「ただ電話をかけるだけ」とかだとむしろガラケーの方が使いやすいという場面もあります。
「じゃあ電気自動車(BEV)とハイブリッド、FCV(水素燃料自動車)も同じように共存できないか?」と疑問を持つでしょうが、先に言ってしまうと不可能です。
理由は簡単です。「ガソリンスタンドが消滅する」からです。
今日は「電気自動車(BEV)」と「ガソリン車・ハイブリッド車」が絶対に共存できない理由について考えます。
目次
EVに関係なく消滅を続ける「ガソリンスタンド」
別に電気自動車(BEV)の普及に関係なく日本国内のガソリンスタンドの数は1996年から減っています。
理由はなぜでしょう? 先に言ってしまうと「ガソリンが売れない」ことと「経営者の高齢化」です。
「ガソリンが売れない」というのはEVの話ではなく、ハイブリッド車やガソリン車の燃費が良くなったことが関係しています。
1996年からガソリンスタンドの数が減っていると言いましたが、トヨタが初のハイブリッド車「プリウス」を発売した1998年以降ガソリンスタンドの減少幅が急激になっています。
燃費が良くなれば消費するガソリンの量が減りますので、ガソリンが売れなくなり、ガソリンスタンドの廃業につながります。
このようにガソリンの販売量が減り、利益がでない構造になってきたのですから廃業するガソリンスタンドが増えてきても何の不思議もありません。
そしてこれに輪をかけるのが「経営者の高齢化」です。
ガソリンスタンドが最も多く誕生したのは1960年代です。前にも話題にしたことがありますが「高度経済成長」の時期で「3C(Car、Cooler、ColorTV)」を買って生活を豊かにすることが「国家目標」として流通していた時代の話です。
日本人の自動車保有率がどんどん上がる時代でしたので、当然のようにガソリンスタンドも必要とされ、日本各地に誕生しています。
ところがガソリンスタンドのガソリンタンク(地下にある)の寿命は50年です。交換費用は約1億円と言われています。
前回の東京オリンピックが1964年ですので、この年にガソリンスタンドを開業した経営者のお店は2014年時点でガソリンタンク交換代として億単位での整備費が必要となっています。
「儲からないからもう設備投資してまで続ける必要ないや」という止めるきっかけになりやすいですよね。
しかも例えば1964年に30歳でガソリンスタンドを開業した人が2014年時点で80歳、現在だと90歳です。
「引退」の時期ですよね? 実際に後継者難(要は子供がガソリンスタンドを継いでくれない)もガソリンスタンド閉鎖の理由で上位に入っています。
資料では確認してませんが、昨年2020年などは「コロナでお客さんが全く来なくなったからもう潮時かな」とガソリンスタンドを閉鎖するきっかけとなったお爺さん経営者がそれなりの人数いたことも容易に予想できます。
現在はまだそれなりにガソリンスタンドが残っているので「充電よりガソリン給油する方が簡単」と思う人もいるでしょうが、現在1%未満の日本の電気自動車普及率が50%になったらどうなるでしょうか?
単純にガソリンの消費量が半分になりますので、ガソリンスタンドの数も今の半分になる可能性が高いです。
つまり電気自動車が普及すると徐々に徐々にガソリンが不要になりガソリンスタンドが減る」→「ガソリンを給油するだけでも一苦労」→「じゃあ電気自動車にしようかと電気自動車乗る人がますます増える」とどんどんガソリン車に乗るユーザーが減っていきます。
これは「水素燃料電池車」でも同じです。今書いた文章の「ガソリンスタンド」という単語を「水素ステーション」と置き換えればほとんど同じ内容になります。
いや、そもそも「水素ステーション」の数自体が現在も少ないのでガソリンスタンドより早く消滅する可能性すらあります。
このように電気自動車(BEV)が普及すると自然とガソリンスタンドや水素ステーションが消滅していきますので、「ガソリン車・水素燃料電池車」と「電気自動車(BEV)」は水と油、両立しない関係なのです。
そこに「多様性を尊重しろ」的な人種差別などに抗議する際によく使われるフレーズを使って絶叫したところで「儲からないビジネス(ガソリンスタンド)なんてやらないよ」と言われてしまって終わりです。
田舎では明白に「ガソリンスタンド<自宅充電」
「田舎では電気自動車が充電設備が不足しているから充電ができない。よってガソリン車は無くならない」ようなことを言う人がいますが、多分田舎に住んだことのない都会に住む人間がテキトーに言った発言でしょうね。
現実は逆です。
町唯一のガソリンスタンド 議会で反対意見も「公設民営」で営業再開へ 町民の生活か採算性か
自家用車や除雪車への給油、灯油の配達などで町民の生活を支えてきた福島・三島町のガソリンスタンド。町内にはこの1カ所しかなかったが、2020年5月に営業を終了した。冬には大雪が降る三島町。高齢者への灯油の配達や災害時に燃料補給を行うことなどを理由に、三島町は、町がスタンドを譲り受けて民間に運営してもらう「公設民営」方式での再開を目指して準備を進めてきた。しかし、9月の議会では議員の理解が得られず、執行部側はいったん議案を撤回。10月29日に開かれた議会でも、採算性の低さや周辺の町との協力体制の検…
既に田舎の方がガソリンスタンドが減少しており、このニュースも町に一件だけ残ったガソリンスタンドを町が経営に参加するという条例案で揉めたという話です。
結果としてかろうじて維持は決まったようですが風前の灯です。地方の小さな自治体だと町に1箇所残せるかどうかというレベルに陥っています。
これが電気自動車ならどうでしょうか? 確かに小さな町に充電器を設置することは例えば町役場・村役場などの公共施設以外は難しいかもしれません。
しかし田舎であればあるほど「持家比率」は上がります。自宅に充電器を設置する工事など10万円もあればできますし、現在であれば補助金を活用して更に安くすることが可能です。
国からの補助金は法人のみ対象で、会社や集合住宅のみが対象ですが、個人宅へは住んでいる自治体が出してくれることが多いです。
また新車で買った場合にはテスラや日産などがほぼ無料で充電器の取り付け工事までやってくれることが多いので、設置してもほどんど持ち出しなしでできます。
となると田舎でガソリンスタンドを求めてさまようこともなく、自宅に帰ったら充電器に繋ぐだけで翌朝には満充電です。
どっちが快適、どっちが楽でしょうか? 既に答えは見えていると思います。
「自動車業界550万人の雇用を守る」発言は嘘?
今年の年明けに某自動車メーカーの社長が「EV化の流れが拙速すぎる」とEV批判をした上で「自動車業界550万人の雇用を守る」と発言し物議をかもしました。
この「550万人」という数字は自動車メーカーだけではなく、部品メーカー、その下請け・孫請け、運送業(タクシー・トラックなど)・ガソリンスタンドなどの自動車に関わる人全てを含むらしいのですが、「ガソリンスタンド」が閉業に追い込まれるとその時点で550万人から目減りするのですが、言ってる当の本人すら気づいていないようです(笑)。
当然ですが「排ガス規制に対応した燃費の良いハイブリッド車」などを開発するとガソリンの消費量が減りますので、ガソリンスタンドの数は半分で十分(というか今の数だと供給過多)です。
「550万人」の一部がドロップアウトしますよね。
「原発10基」発言も同じように何の根拠もないテキトー発言でしたが、残念ながらこのように私のような素人でも気づくことに気づかないレベルの経営者のようです。
私が電気自動車で起業したら勝手にこの一人にカウントされるのかと思うと非常に不快ですが(笑)。
まぁ「トヨタ」という単語に思い入れのある方々はこの経営者の無茶苦茶な発言を何とかして都合の良いように解釈しようとしますが、私のようにこの会社と何の関係もない人間から見れば「寒いな」の一言で終わりです。
「電気自動車vsガソリン車」に関係なく結局は理由つけて「変化したくない」だけ?
最後にちょっと呆れた例を紹介しましょう。
ヤフコメってこういうのもケチつけるんだな。
こういうのでいいんだよ! ルノー傘下のダチア新型車、自分のスマホをメディア・コントロールにする(ギズモード・ジャパン)#Yahooニュースhttps://t.co/IDiDXu5OTI— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 28, 2021
私の中で「ヤフコメ」というのは「ここのコメントと自分の見解が逆になればOK」という逆張りの指標として活用させてもらう存在ですが(笑)、このニュースは別に私が以前紹介した「ダチア・Spring Electric」の電気自動車としての話ではなく、ただ単に「コスト削減でスマホをナビ代わりにした」だけの話です。
これに対しても「いや、スマホじゃ小さくて見づらい」などと不満の嵐です。
確かに小さいは小さいですが、自動車の車両価格における「カーナビ」の割合は結構大きいです。
オートバックスや家電量販店などに行けばわかるように良いものだと20-30万は平気でします。これがなくなるということはそれだけで車両価格は30-40万下がります。
普段から電気自動車のことを「高い。こんなもの買えない」と文句を言っている懐事情であれば30-40万下がるというのは大きなメリットのはずですが、そうなったらなったで「スマホじゃ使いにくい」と不満を言うわけです。
ちなみにカーナビをスマホにして車両価格を下げるという試みは上記の「Dacia」だけではなくフィアットも2021年中に日本市場に投入が予定されている「フィアット500EV」でも導入されています。以前書いた記事がありますのでご興味があればご参照ください。
「フィアット500EV」が2021年に日本に上陸?【何とヨーロッパの次が日本】
昨年2020年にヨーロッパ市場に投入された「フィアット500EV」が2021年中に日本市場に投入されるとの発表がリリースされました。本国イタリアのあるヨーロッパの次に投入する市場が日本だということも驚きですが、価格も電気自動車の中では最もリーズナブルで、ファッション性も高く、人気の出るEVになる可能性を秘めています。
このように「変化には何でも抵抗」の姿勢の人々に仮にテスラ・モデルSのような18インチの巨大タッチスクリーンを提供してもおそらく「大きくて使いにくい」と文句を言うだろうなと想像ができます。
要は「画面が大きい小さいではなく、今あるカーナビから変化するのが嫌だ」というだけです。
カーナビなんてせいぜいこの10年20年で普及したもので、ちょっと前までは紙の地図などを使って移動していたと思うのですがいつの間にか不変のものと錯覚しているようです。
「ガソリンスタンド」もこれに近い存在なのかなとふと思いました。
要は「ガソリンスタンドに給油に行く」ことと「自宅でEVに充電する」ことだと間違いなく前者の方が手間暇がかかることなのに、なぜか昔からの習慣が変わることを嫌がってしまうとでも言えばいいのでしょうか。
自宅のコンセントで充電すれば毎日満充電で出発できます。余程長距離移動でもしない限り充電の心配もなく家に帰って来れるわけですからガソリンスタンドに行く生活より間違いなく快適です。
地方に行けば行くほど持家比率は上がるわけで、自宅充電を設置することは都会より簡単なはずです。
もしかしたら問題は「ガソリン車→電気自動車」という単なる「車」という道具の問題ではなく「とにかく現状維持」「未来永劫今の状況が続いて欲しい」と言うマインドの問題のような気がしてきました。
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