テスラの「FSD」とロボットが既存の自動車メーカーにはできない理由とは?【EVの次は自動運転】
こんにちは、@kojisaitojpです。約1ヶ月ブログを休んでいたのでネタが溜まってるわけでそれを順次記事にすることになるわけですが、当然ですが後出しなのでネタは取捨選択できるというメリットもあります。マスコミの飛ばし記事のようなネタは扱う必要はありませんが、このネタには皆さんはどういう反応をするでしょうか?
#FSDBeta 10 Nike HQ Campus
Nike recently took a road out & Google Maps data had it still there. @Tesla Navigation took the road as vision saw fit @elonmusk pic.twitter.com/n20LxxYBEz
— •K10•✨ (@Kristennetten) September 15, 2021
ドライバーはハンドルに軽く手を添えているだけで、操作はしてないのがわかりますよね。
これがテスラが既にアメリカで一部のユーザーに試験的に提供を始めた「FSD(Full Self Driving」です。
以前記事にしたことがありますが、現在のテスラ車で日本でも実行可能なものは「オートパイロット」であり、動画にあるFSD(Full Self Driving)とは別物です。
テスラの「オートパイロット」は「自動運転」ではない?【事故は100%ドライバーの責任?】
最近アメリカでの交通事故をきっかけにテスラの自動運転機能が叩かれているようですが、そもそもテスラの「オートパイロット」は自動運転レベル2という全責任がドライバーにあるものです。これでテスラが叩かれる意味がわかりませんが、新しい技術を叩きたい、何とかして足を引っ張りたいという意識は日本でもアメリカでも一定数いるようです。
どうも日本での議論を見ていると「FSD(FullSelfDriving)」と現在の日本でも利用可能な「オートパイロット」の区別がついてない人が多いように思われますので、今日はまず「FSD(FullSelfDriving)」と「オートパイロット」の違いについて触れた上で、競合となる旧来の自動車メーカーとの違いについて考えてみます。
当初はテスラの「ビジョン方式」と他社が進める「ジオメトリー方式」の違いも解説する予定でしたが、字数が多くなったのでこれについては次回以降に回します。
目次
テスラの「FSD(Full Self Driving」と「オートパイロット」は全く別物
まずは「FSD(Full Self Driving」と「オートパイロット」の違いを理解していない人が日本では多いので定義の確認から始めます。
以前の記事でも掲載しましたが、自動運転の定義にはレベル0〜レベル5までがあり、
- レベル0→レベル1の3つの条件が全てない車両
- レベル1→「自動ブレーキ」「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」「LKAS(レーンキープアシストシステム」のどれかを搭載
- レベル2→特定条件下での自動運転機能(レベル1の機能の組み合わせ)
- レベル3→条件付き自動運転(ここから責任がドライバーからシステムへ)
- レベル4→特定条件下における「完全」自動運転(ドライバーに責任なし)
- レベル5→完全自動運転(常にシステムが全ての運転タスクを実施)
となります。「自動ブレーキ」「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」「LKAS(レーンキープアシストシステム」を駆使して高速道路内ではドライバーが介入しなくても走ってくれるテスラの「オートパイロット」はレベル2です。もちろん高速道路を巡航するだけですので出口を出て料金所へ向かうような動作はまだできません。
この「オートパイロット」があるだけでも運転がいかに楽になるのかについては以前の記事でも解説しましたのでご参照いただければと思います。
「テスラ・モデル3(上海製)」をカーシェアして伊豆まで行った話【人間<オートパイロット】
以前「テスラ・モデル3」をカーシェアした際にはフリーモント製でしたが、上海製のモデル3も出てきたので早速カーシェアしてみました。様々な面での質的な向上が見られ、オートパイロットも進化してますし、中国の生産レベルも向上しているのがわかります。新しいものを拒絶する日本が徐々に先進国から滑り落ちようとしてることがわかります。
ただし忘れてはいけないのはテスラの「オートパイロット」は上記の自動運転の定義でいうとレベル2なので事故が起きた際の全責任はドライバーにあり、ドライバーは常にハンドルを握って前方を注視することが義務になります。
だから「オートパイロットで事故が起きたのはテスラの車が悪い」とは言えないということになります。危ないと思ったらドライバーが自ら操作して回避することが必須になります。
私が「運転が楽」と言ったのはオートパイロットのない車両のように常にアクセルを踏んでいる必要がない(長距離のドライブだとアクセル踏みっぱなしなだけでも結構疲れます)という意味です。
アメリカでベータ版の提供が始まった「FSD(Full Self Driving」は全く別物で、冒頭に引用した動画に見られるようにAIが自分の判断で全ての動作を完結します。これはレベル4以上の自動運転に該当し、いよいよ人間の手を借りないでAIの手による自動車の自律運転の領域に入ってきます。
その兆しは実は日本で発売されているテスラ車にも搭載されており、これは先日テスラ・モデル3をカーシェアした際の信号待ちで撮影したものですが、既にテスラ車に搭載されているカメラとAI(人工知能)は信号の色や周りにいる車や人などを識別できるレベルまで達しています。
この辺りを詳細に解説すると冒頭で言ったテスラの「ビジョン方式」と他社の「ジオメトリー方式」の違いを説明することになるのですが、それは次回以降に回します。
ちなみに自動運転については中国でも盛んに行われており、この自動運転のソフトウェアの開発をしているのは何とあのファーウェイです。
「AIによる自動運転」という部分がわからないと「何でスマホメーカーがEVやるんだよ?」となってしまうところですが、それは自動車という「箱」しか見えていない人間の発想です。
実はEV化と更にその先にある「自動運転」を実現するためには「AI(人工知能)」の開発が必須になるわけで、この部分で今挙げたテスラやファーウェイのようなTech系企業が優位に立つ場面です。
テスラの「ロボット」も実は自動運転の延長上にある?
テスラが驚異なのは別にAIによる自動運転にとどまらないところです。私のブログ中断中に衝撃の発表がされています。
米テスラ、ヒト型ロボット開発へ 技術説明会でCEO表明: 日本経済新聞
「車の修理や食料品の買い出しなど、危険であったり退屈であったりする繰り返し作業を人に代わってこなす」https://t.co/r9W66ayvJE #テスラ— がす | テスラを楽しむ (@Gusfrin92486024) August 20, 2021
テスラが開催したイベント「AIデー」において、テスラが人型のロボットを開発中であり「車の修理や食料品の買い出しなど、危険であったり退屈であったりする繰り返し作業を人に代わってこなすロボット」を発売するという衝撃の発表です。
これができるところにテスラが他の自動車のみを製造しているメーカーと違うところで、さすがはシリコンバレーのTech企業だなと思わされる部分です。
おそらくテスラからすれば「車の運転だろうが、部屋の掃除や食料品の買い出しだろうが、人工知能(AI)を持ったロボットがやる作業としては一緒だよ」ということでしょう。
同じシリコンバレーのTech企業のAppleがAppleCarと言われる自動運転機能搭載のEVを開発中だと言われていますが、これもAI(人工知能)というソフトウェアの開発が得意なTech系企業(自動運転にはGoogle系のWaymoも参入してます)の本領発揮という場面です。
ちなみにApple本体からの発表はないものの中国でApple製品の委託製造(ファブレス)を行うフォックスコン(ホンハイ)が「これがAppleCarになるのか?」と匂わせる発表をしています。
Apple製品の生産で知られるFoxconnが電気自動車3モデルのプロトタイプを発表https://t.co/JymV9XQ8PU
— GIGAZINE(ギガジン) (@gigazine) October 19, 2021
Appleの場合はテスラのように全部自社でやる(垂直統合)方式は取らないのでどこかの会社が委託製造することになるのは間違い無いのですが、「委託製造」という考え方が自動車業界では受け入れられないのかこれまで名前が出ただけでもヒュンダイ、トヨタ、日産、三菱などとの交渉して上手く行ってないようです。
となると「iPhone同様にフォックスコンがやるのか?」と思ってた矢先にこのニュースですから「あぁやっぱりね」と納得するところです。
まぁ日本のように自動車メーカーが幅を利かせている国だと「スマホと車を一緒にするな!車は人の命がかかってるんだ!そんな簡単にできると思うな!」とヤフコメや5ちゃんねるなどで猛烈な批判に晒されますが、これこそまさに自動車というハードウェアしか見ていない、AIによる自動運転というソフトウェアの部分を何も考えていない発想の典型です。
トヨタ社長、Appleの自動車参入に「40年後にも責任を果たす覚悟」求める
トヨタ自動車社長で日本自動車工業会会長をつとめる豊田章男社長が、Appleの自動車業界参入を歓迎しつつ、自動車は販売後も長期間にわたって使われることを踏まえて、30年〜40年後のユーザーにも対応する覚悟を持 […]
新しくEVに参入する企業に対して「40年後も対応する気があるのか?」とかなり説教臭いことを言ってますが、そんな会社が開発した自動運転車両に何が起きたのか既にご存知ですよね?
トヨタ「e-palette」の事故が日本の自動運転を10年遅らせる?
日本国内に目を移した際に常に見かけることになる「テスラは安全性を軽視してる」のような批判、特にオートパイロットとFSD(Full Self Driving)を混同させて「自動運転なんて安全性を考えてないからできるんだ」と、実際はオートパイロットの事故はドライバーの責任であることを無視して批判する方々が結構多いのは唖然とするところです。
日本国内で自動運転に対しネガティブなイメージができたのはこの事故が原因でしょうか?
トヨタ「e-palette」の接触事故の問題点とは?【自動運転レベル4ではない?】
トヨタが東京オリンピック・パラリンピック向けに投入した自動運転レベル4の車両「e-palette」がパラリンピックに参加する選手をはねるという事故が起きました。レベル4を名乗っているにも関わらずオペレーターが手動で操作するなど謎が多い事故ですので、自動運転の定義を確認しながらトヨタの何が問題なのかを考えてみます。
とはいえ以前取り上げた記事でも説明したようにパラリンピックにおける事故は「保安員が手動で操作」したことによる事故であり、運転に人間が介入する時点でレベル3以上の自動運転には該当しない可能性が高いです。トヨタ側は「自動運転レベル4」を自称していますが、それであれば一旦停止した後に動き出す動作も機械がやるべきであり、そこに人の手を介入させないといけないのでは自動運転と言えるものではありません(せいぜいテスラの「オートパイロット」と同等の「自動運転レベル2」くらい?)
ですのでこの事故をもって「やっぱり自動運転なんて危険だ」とか「自動運転が普及するのはまだまだ先の話だ」という方向に行くのは大間違いです。
例えばテスラであればこのくらいのことができます。
« The van sees the kid who wants to cross, but I do NOT…my #Tesla model 3 brakes energetically and stops immediately and thus avoids me a drama »
pic.twitter.com/kmey14FlOu— TESLA_saves_lives (@SavedTesla) September 2, 2021
仮に人間が運転していても止まり切れずはねてしまっている可能性があるのでは?と思うくらい急な飛び出しです。
既にテスラのFSD(Full Self Driving)はこのくらいのレベルまで向上しています。
カメラ(人間の目の役割)で認識したものをAI(人間の脳の役割)が判断して止まるように指示を出すというのが既に人間の能力と同等かそれ以上のものになっている証拠です。
パラリンピックの選手村で使われた車両がテスラの自動運転車両だったら上記の動画のように事故を防げたのでは?と思ってしまいます。
などと今世界で起きている事実をありのままに指摘するとなぜか日本では「あいつはテスラ信者だ」とSNS上で叩かれたりするのが謎ですが。
EV化同様に今の世界で起きている現実をなるべく見ないようにしている間に世界はどんどん先に進んでいて、日本が取り残されていくと感じるのは私だけでしょうか?
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