トヨタ「e-palette」の接触事故の問題点とは?【自動運転レベル4ではない?】

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こんばんは、@kojisaitojpです。現在開催中のパラリンピックで、トヨタの自動運転車「e-palette」が選手と接触事故を起こしました。

記事の見出しにメーカーの名前も車種も出ないのは「スポンサーに対する忖度?」と嫌味の一つも言ってやりたくなるところですが、その後トヨタの社長が会見し謝罪もしたことから現在では「トヨタe-palette」ときちんと報道されていますが。

ただこの会見やその後の報道を見ていると「車内オペレーターと横断歩道の誘導員が安全を確認、再発進して右折したところ、横断歩道で被害者と接触」などと言われているようにオペレーターが手動で操作したことが事故につながったかのような記述があります。

疑問を感じませんか、自動運転の詳しい定義を知らなくても「自動運転なのに手動?」と思いますよね。

今日はトヨタ「e-palette」の事故によって明らかになった「自動運転」を巡る疑問について考えてみたいと思います。

トヨタ「e-palette」は自動運転レベル4ではなかった?

トヨタ「e-palette」に乗る障害者
東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルスポンサーなのもあり、オリンピックで使用される車両はトヨタが提供しています。今回事故が起きた「e-palette」は選手村の中を移動するバスであり、「自動運転レベル4」とトヨタも公式にアナウンスしています。

これ以外だとオリンピック・パラリンピックを観ていると気づいた方もいるかと思いますが、以下の記事で使われた車両がまとめられています。

この記事の中ではマラソンの先導車として使われたEVの「LQ」のことを「自動運転レベル4」と表記しています。マラソンは公道上ですのでおそらく人力で運転していたとは思いますが。

マラソンで伴走する「トヨタ・LQ」

「自動運転レベル4って何?」と思う方もいると思いますが、「自動運転レベル4」では「特定条件下」、今回であればオリンピック・パラリンピックの選手村の敷地内という特定の道路だけはシステムによる自動運転が全責任を持つ(緊急時の対応もシステムの責任)ことになります。

自動運転の定義

こちらは日本経済新聞から引用した「自動運転の定義」ですが、レベル4では人が運転に介在するとはなく、不測の事態が起きた時もコンピューターが自力で判断して運転を続けるのがレベル4自動運転です。

冒頭で引用した「車内オペレーターと横断歩道の誘導員が安全を確認、再発進して右折したところ、横断歩道で被害者と接触」というトヨタ側の発表がおかしいのがお分かりかと思います。

トヨタ「e-palette」の車内

レベル4の自動運転車両に対し「オペレーターの操作ミス」と言い出すと「あれ?システムが責任を持つのがレベル4でしょ?」とおかしな話になってしまいます。

つまり、

  • 自動運転レベル4→責任はシステム(車両を提供したトヨタ)
  • 「原因はオペレーターの操作ミス」→これが原因になると自動運転レベル4ではない

ということになってしまいます。

ネット上などで「今回はオペレーターのミスなんだからトヨタ悪くないだろ」的なことを言っている人が散見されますが、仮に今回の事故をオペレーターの人為的ミスが原因であると確定してしまえば「e-palette」は自動運転レベル4ではないことになります。

仮にトヨタが「e-paletteは自動運転レベル4である」と言い張るのであれば、保安要員として乗車していたスタッフの行動は関係なく車両を運転したトヨタの責任になります。

実際に中国などで既に実証実験に入っている「自動運転レベル4」でも万が一の時の保安要員が同乗していますが、何かあった時の責任は保安要員ではなく車(メーカー)です。

余談ですが自動運転タクシーとして使われてる車両に日産のエンブレムがついてることに驚きます。

動画を見ればお分かりでしょうが、保安要員は基本的に運転はしません。ハンドルすら握っていません。これが「レベル4」です。

ですので仮に「事故はオペレーターの操作」ということになれば「停車後の再始動が人力のe-paletteは自動運転レベル4ではない」ということになり、「自動運転レベル4の車両をオリンピックに提供」というトヨタの発言が嘘であったことになります。

トヨタ「e-palette」に乗り込む人々

責任の所在については現時点ではまだ何もアナウンスはありませんが、少なくとも「車両が停止した後の再始動はマニュアル操作」となっている「e-palette」は世界標準の基準で見ると「レベル4」ではありません。次の項目で説明しますがせいぜい「レベル2」です。

レベル4の自動運転ではなかった車両を「レベル4である」と言って大会に投入したとなれば世界から袋叩きにあう可能性があると思うのは私だけでしょうか?

テスラ「オートパイロット」や日産「プロパイロット」は自動運転レベル2

駐車中のモデル3
さていきなり「レベル4」とか「レベル2」という単語を使ったので「???」となった方もいるでしょうが、実は自動運転にはレベル1〜5の段階があります。

レベルに応じてどこまでやっていいのかが決められており、責任がドライバーなのか車両(メーカー)なのかもレベルによって違います。

こちらの記事で自動運転の定義については細かく解説しましたが、例えばテスラの「オートパイロット」や日産の「プロパイロット」は自動運転レベル2です。

レベル2の場合は高速道路という限定された条件で「車線を維持しながら前の車に付いて行く」のが基本で車種によっては「遅い車がいれば自動で追い越す(テスラであればウインカーを出すと自動で車線変更する)」ところまでやります。

タイムズカーの日産・リーフ

私は運転したことがありませんがスバルの「アイサイトX」であればETCの料金所も自動で通過してくれるようです。

「高速道路」という限定された条件のみで(現時点では一般道でやったら違法です)流れに乗って走る、追い越しをするくらいまでを自動で行ってくれるのが「レベル2」です。

自動運転レベル2では「事故が起きた場合の責任は100%ドライバー」になりますので、運転席でハンドルを握った状態で「何か起きた時は自力で対応」することが必須になります。

よくYouTubeの動画などでテスラのオートパイロットを勘違いしてハンドルから手を離した動画、ひどいものになるとリクライニングを倒してすぐに運転できないような姿勢のサムネイル画像を見かけることがありますが、これらは全て違法です。

春先に話題になったアメリカでのオートパイロットの事故も「運転席に人がいない」という状態で起きたようで、これはオートパイロットの問題ではなく100%ドライバーの責任の事故になります。

この辺りの自動運転の定義をよく確認しないまま「テスラのオートパイロットは危ない」だの「トヨタのe-paletteはオペレーターのミスだ」のようにテキトーなことを言っているマスコミだらけなのは正直呆れるところですが。

上記の日本経済新聞の社説でもテスラの「オートパイロット」とトヨタの「e-palette」をごちゃ混ぜにして「自動運転は危ない」というようなことを言ってしまっています。

SNSなどを見ていても「オペレーターのミスならトヨタ悪くないだろ」的なことをある程度自動車のことを知っている人でも言っていたりするのが散見されます。

本来の定義に従えば「テスラのオートパイロットなら自動運転レベル2なのでドライバーの責任」「トヨタのe-paletteは自動運転レベル4を自称するなら責任はシステム(要はトヨタ)」です。

これ以外のことを言っている人がいたら自動運転の定義をわかってない人が勝手なこと言ってるなと思って問題ありません。

「全固体電池」も「自動運転」もオワコンのトヨタ?

完全自動運転のイメージ画像
ちなみに「東京オリンピック」のオフィシャルスポンサーでもあったトヨタは、今回問題になった「e-palette」以外にも事前の公約とは違ったことになっています。

以前の記事でも紹介しましたが、2019年段階ではトヨタは「東京オリンピックで全個体電池搭載の車両を披露する」と宣言していました。

私からすれば「2020年の予定が2021年に延期になったんだから開発できませんでしたという言い訳は通用しない」と思うところです。

これでは日本が「本当に技術立国なの?」と世界から疑いの目で見られるだけだと思います。

自動運転のソフトウェア開発で競合となる「Waymo(Google傘下)」や「テスラ」も当然今回の「e-palette」の事故については見ているでしょうが、「トヨタの自動運転は人が介在(操作)するの?」と驚いていることでしょう。

万が一の緊急事態に備えて保安要員を乗せるのは現時点の「自動運転レベル4」では必須ではありますが、今回のように車両が停まる度に再始動が人力だったら世界から笑われるぞと思うのは私だけでしょうか?

オリンピックに全個体電池が間に合わなかったことも合わせて考えると「実は日本の技術レベルって大して高くないのでは?」と思ってしまうところです。

トヨタのことだけをあれこれ言うのはフェアではありませんので、「Waymo」や「テスラ」が開発中の自動運転技術については後日解説します。

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