フォードが「F-150 」をEV化したことから感じる本気度とは?【バイデン大統領も全面支持】
こんばんは、@kojisaitojpです。アメリカのバイデン大統領がEVに対して猛烈な危機感を表明しました。
冷静に中国に負けてることを素直に認めた上でナンバーワンに返り咲いてやると。
EV関連予算の重要性訴え 「中国に出遅れ」 https://t.co/d5ax7yZsoy @YouTubeより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 20, 2021
アメリカの大統領が「EVにおいてアメリカは中国に負けている」と認めること自体が異例です。
もちろんそれで終わるのではなく「アメリカがナンバーワンに返り咲いてやる」「アメリカが再浮上するためには政府も援助を惜しまない」という決意表明になるところがアメリカらしいところですが。
総額で19兆円にも達するEV関連への投資、現在10万箇所にとどまる充電インフラを50万箇所へ拡大、それにより雇用を創出するという「EV化したら雇用が失われる」言っているどっかの国とはやる気の次元が違います。
ちなみに日本政府が表明している「脱炭素」への投資は2兆円ですので規模が違います。
しかもその演説を自らフォードの工場へ赴き、「F-150Lightening」に試乗した後に行ったということに更に意味があります。
今日はアメリカの大統領が自ら試乗もしたフォード「F-150Lightening」を中心としたフォードのEV化計画について解説します。
目次
世界で最も売れたピックアップトラック「F-150」がEV化
フォードのFシリーズ(F-Series)は、1948年から製造・販売するフルサイズピックアップトラックで、2010年5月に1948年の生産開始以来累計生産台数は3390万台に到達し、年間販売台数世界一位になることもあり、全自動車部門で28年間、トラック部門で31年間、販売台数全米一位を誇ります。
まさにアメリカを代表する車であり、ピックアップトラックの代名詞的な車であるといえます。
そのようにフォードの看板のような車種だった「F-150」が「F-150 Ligthening」としてEV化し2022年から発売を開始するのですから衝撃です。
2020年に登場した14世代目の現行FシリーズがベースのEVですのでサイズはほぼ同等の「全長5891mm、全幅2200mm、全高1951mm」とアメリカンサイズです(サイバートラックなども同等)。
詳細なスペックは明らかになっていませんが、搭載バッテリー容量が115kWh〜125kWhがスタンダードレンジ、155kWh〜170kWhがエクステンディッドレンジではないかと噂されています。
航続距離はアメリカですので「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能な、実用使いにおいて最も信頼に値するEPAサイクル」でスタンダードレンジが370キロ、エクステンディッドレンジで483キロになります。
バッテリーのサイズの割に航続距離がと思ってしまいますが、この巨体ですので仕方ないかと思います。
ピックアップトラックに必須の馬力はスタンダードレンジで426hp(318kW)、エクステンディッドレンジで563hp(420kW)ですので、昨年発売したガソリンエンジンの400hpを軽く超えるパワーを発揮します。
牽引能力は1万ポンド(4535kg)と驚異の性能です。
仕事でもアウトドアでも力を発揮できるような外部への出力も当然可能です。
またテスラ車などと同様のOTAアップデートも搭載されているのでオンラインでアップデートができるようになっているのも最新のEVであることを感じさせます。
しかも価格が「39974ドル(約440万円)から」というのもリーズナブルな価格でこれも衝撃でした。テスラ「サイバートラック」がグレードに応じて400万〜800万と幅広くカバー、GMのハマーEVが1000万以上の高級車と価格帯が分かれているのも特徴です。
リーズナブルな価格だったのも影響したのか、予約受付からたったの12時間で既に20000件以上の予約が入ったようです。
ちなみに陰謀論に脳が侵されているとこの写真すら「実は助手席で運転を操作している」と言ってたりするから呆れますが。
実際日本の陰謀論者ってなかなか寒くてアメリカとの時差無視して意味不明なこと言う時もあるから右ハンドルと勘違いしても不思議はない(笑)
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) May 20, 2021
「アメリカは左ハンドルの国なのですが…」で終わりです(笑)。助手席の人(多分SP)が手をかけているのはおそらく大統領用のセキュリティシステムです。
陰謀論者的には「バイデンは認知症だ」ということにしたいのでしょうが、もうコメントもありません。
最近はこの手の陰謀論者と元からのアンチEVが手を組んでEVを攻撃しているような印象を受けるのが日本の残念な状況です。
フォードはSKイノベーションと合弁でバッテリー生産へ
また「F-150 EV」の発表とほぼ同時にフォードのバッテリー生産計画も明らかになってきました。
「電気自動車専用のプラットフォーム」と「バッテリーの自社生産」がEV化の本気度を図る指標として私は活用していますが、フォードも本気であることがわかります。
Ford And SK Innovation Sign MOU To Form Battery JV: BlueOvalSK
Ford and SK Innovation officially announced they have signed a MoU to form a joint venture to manufacture battery cells and array modules in the U.S.
アメリカ「BIG3」のライバルGMがLGエネジーソリューションズと合弁でバッテリー生産に取り組むことは以前も解説しましたが、フォードは同じ韓国でもSKイノベーションと組むことにしたようです。
以前の記事でも説明したことがありますが、LGもSKも車載用バッテリーのシェアでトップ5に入る有力企業です。
中国のCATLやBYDが出てこなかったのは今の米中関係の悪化が影響しているのかもしれません。
以前であればこの分野は日本のパナソニックが独走していましたが、いつの間にか韓国や中国メーカーが世界シェアを食うようになったのは他の家電と一緒です。
とはいえパナソニックはテスラとの強固なパートナーシップを維持できている限りは大丈夫でしょうが。
Elon Musk Confirms Made-In-Texas Model Y Will Be 4680-Powered
Tesla’s Elon Musk was recently asked about the battery cell type in the Tesla Model Y that will be produced at the Tesla Giga Austin plant in Texas.
これは独立して取り上げるべきテーマなので詳細は後日にしますが、テスラが今後「モデルY」や「サイバートラック」「Semi」などに搭載すると噂されている「4680セル」のバッテリー開発はパナソニックが関与しているとのことです。
日本メーカーだからトヨタを最優先でというわけでもないことに留意すべきです。
ちなみに今回のフォードとSKイノベーションの合弁会社のバッテリー生産量は年間60GWhですが、トヨタとパナソニックの共同事業「プライムプラネット」の増産計画はたったの12GWhです。
「F-150 Lightening」「サイバートラック」「ハマーEV」など大激戦のアメリカのEVピックアップ市場
これまで私のブログでもテスラの「サイバートラック」やGMの「ハマーEV」について取り上げてきましたが、世界で最も売れたピックアップトラックである「F-150」もEV化したことでアメリカのピックアップトラック市場もEV化し、大激戦になります。
サイバートラック(Cybertruck)はいつ日本で発売される?【実はコスパ抜群の価格】
発表から一年以上経ちますが、独立した記事で取り上げたことはありませんでしたテスラ「サイバートラック」について紹介します。奇抜なデザインや頑丈さ、意外にコスパの良い価格が注目ですが、ピックアップトラックが売れない日本市場に本当に投入されるか疑問を感じたりもします。今日はその辺の事情も含めてサイバートラックを解説します。
ハマーでさえ電気自動車化して復活?【アメリカもEV化】
2021年から電気自動車として復活が発表されている「ハマー」について説明します。ピックアップトラックというアメリカのカーライフの象徴のような自動車がいよいよ電気自動車化するだけでもGMの本気を感じますが、加速性能や航続可能距離などスペック面で異次元の仕様となり、テスラのサイバートラックとガチンコの競争になりそうです。
他にも「Rivian」や「Lordstown」「Canoo」など新興のEVメーカーもピックアップトラックのEVを開発しており、群雄割拠状態です。
アメリカの新興EVメーカーをまとめて紹介【Rivian・Lordstown・Lucid】
アメリカの新興EVメーカーの中でこれまで取り上げたテスラとCanoo以外のメーカーとして「Rivian」「Lordstown」「Lucid」を紹介します。現在多数の新興EVメーカーと既存の自動車メーカーが電気自動車という新しい市場で競争していますが、ピックアップに特化、商用車に特化、高級車に特化とそれぞれ個性的です。
「Canoo」のPickupTruckや「サイバートラック」が提供するEVのワクワク感とは?【日本メーカーが失ったもの?】
斬新なデザインと多目的にアレンジ可能なワゴンやバン(BEV)を発表していたアメリカの新興企業「Canoo」が今度はピックアップトラックを発表しました。5メートルを切る小型のピックアップでありながら、BEDと呼ばれる拡張機能、キャンピングカーのようにアレンジも可能な魅力的なピックアップが2023年から発売予定です。
日本などと違いアメリカでは「ピックアップトラック」が最も売れる車種(日本でのミニバンのような扱い)です。
しかも冒頭に引用したようにGMやフォードのEV化路線をバイデン政権が全力で支援するとなるわけですから、アメリカも本気でEV化してきたということになります。
実際バイデン大統領の演説では「自動車の未来は電気自動車だ」とはっきり明言しましたし。
このようにアメリカがEV化へ向けて一致団結しているところに「ハイブリッド車も認めてくれ」とお寒いロビー活動をしていた会社があったようですが、相手にされないのは当然です。
テスラ・フォルクスワーゲンと比べたトヨタのオワコン具合とは?【終わりの始まり・Prologue】
先日発表された「AYGO」がガソリン車であったことも衝撃でしたが、他にもトヨタはアメリカでEV化の流れを妨害するようなロビー活動や政府の補助金にハイブリッドも加えてもらうように圧力をかけているという情報が出てきました。EV化の流れに上手く乗ったテスラやフォルクスワーゲンとトヨタの間にはどのような差があるのか考察します。
自国のメーカーがEV化へ突き進んでいる国の政府に対し、「性急なEV化は…」と圧力をかけて報われるわけないのですが。
最近はアメリカが無理だと思ったのか「中国はハイブリッド車やPHEVも含めて新エネルギー車にしている」と中国をアテにするという残念な行動が一部のアンチEVの方々に見られます。
NIOやBYD、Xpengなど中国こそ自国のメーカーのほとんどがEV専門です。あの中国が自国のメーカーより日本のメーカーを優遇するという風景を想像できますか?
絶対にないと断言できますよね。おそらく中国メーカーのEVが更に進化し、充電インフラなども問題なく使える状況になったらある日突然ハイブリッドとPHEVを切り捨てることでしょう。
バイデン大統領が演説において表明したような危機感が日本でも共有されるべき時なのですが、「もう言っても無駄かな」と思うことも多いです。
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