中国の規制強化で詰んでしまう日本の自動車メーカーはどうすべきなの?【いい加減EVやれ】
こんにちは、@kojisaitojpです。おそらく電気自動車(BEV)が普及すると困る方々にとっては都合の悪いニュースとなるでしょう。
なるほどそうやって窓際に追い込むのか。中国はこういうの上手いわ。 https://t.co/w1h9h7Vnc4
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 7, 2021
先日取り上げたトヨタ「RAV4」の発火の話同様に日本のメディアではあまり取り上げられていませんが、中国がかなり厳しい燃費規制をかけてくるようです。
「4ℓ/100km」とヨーロッパ表記になっていますが、日本の言い方だとリッター25キロ、しかもゆるゆるのいい加減な燃費基準であるNADC(中国)でもJP08(日本)ではなくWLTC(ヨーロッパ)の基準での話です。
リッター25キロをクリアできない車は2025年以降中国での販売を禁止するというかなり厳しい基準です。
YouTubeの中でもこの基準をクリアできるのはトヨタのプリウスだけ(あまり自動車に詳しい方ではないようなので多少違いますが)と言われています。
私が様々な記事で言っている「中国が梯子を外してくるよ」というのが予想よりもかなり早く仕掛けてきました。
「世界最大の自動車販売台数を誇る中国の規制はハイブリッドもOKだからヨーロッパとかで売れなくなっても問題なし」と強気なことを言ってたいたEV嫌いの方々には寝耳に水でしょう。
今日はこの中国における規制強化について解説します。
目次
元々はEV以外のICE車・ハイブリッド車もOKだった中国の燃費規制
確かに元々は中国の規制は世界の中ではゆるめで、「ハイブリッド車・PHEV車も禁止」と強硬な姿勢の国が大半のヨーロッパとは違って「ハイブリッド車もOK」でした。
中国「2035年にエンジン車禁止」の本当の内容「中国はエンジンを使うハイブリッド車については“熱烈歓迎”なのだ」|Motor-Fan[モーターファン]|ページ 2/2
去る10月27日、中国政府が「2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する」と発表した。これを受けて日本では「フランスやイギリスに続いて中国もエンジン車禁止」と報道された。しかし、中国の発表は「検討する」であり、決定ではない。さらに中国は、内燃機関エンジンを使うハイブリッド車については「熱烈歓迎」なのである。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
これが昨年10月の話ですが、この時点では「2025年が4.6ℓ/100km」、リッター21.74キロとプリウス以外の車種でもクリアできる程度の規制でした。
これを「4ℓ/100km(リッター25キロ)」に変更すると多くの日本車が脱落します。
実際にトヨタであればヤリス、ホンダならフィット・シビック(全てガソリン車の方)辺りはほぼアウトです。
残るのはトヨタならプリウス、ヤリス、カローラ(全てハイブリッドの方)、ホンダならフィット(ハイブリッドの方)辺りでギリギリクリアできるかどうかくらいです。
昨年の時点での中国の目標は「2030年には4.8ℓ/100km(20.83km/ℓ)、2035年には4ℓ/100km(25km/ℓ)」となっていましたので大幅な規制強化です。10年早めてきました。
あー…危惧した通りになってきた?
25km/Lならまだパスできるかも知れないけど、中国の胸先三寸でいつでもEV全振りになり得る市場ですよね…。 https://t.co/HLGl5ALDKY— Keiichiro SAKURAI (@kei_sakurai) March 7, 2021
以前から言っているように中国の自動車メーカーはほとんどが電気自動車専業です。電気自動車がメインである自国産業ととハイブリッド車がメインの日本の自動車メーカーのどっちを優遇したいかなんて語るまでもなく明らかです。
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中国の新興EVメーカーである「Xpeng」について紹介します。2014年に創設されたNIOなどと並ぶ新興企業ですが、既にニューヨーク証券取引所に上場していたり、ヨーロッパへの輸出も開始していたりと実はBYDと並ぶくらい成長している企業です。今日はそんなXpengの販売車種であるG3やP7について紹介します。
電気自動車(BEV)のレイヤーマスターは「バッテリー」?【中国企業を育てたのは日本企業】
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「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大中?【バスも日本オワコン?】
乗用車のみならずバスの分野でも電気自動車化は進んでおり、実は中国の「BYD」の電動バスが世界中でシェア拡大しており、日本のバス会社にも導入されています。路線バスだと運行する区間も決まっており、バスを電動化することは乗用車よりも簡単ですし、整備や燃料代がかからなくなることから今後どんどん普及する可能性が高いです。
今回はギリギリでプリウスなどがクリアできるレベルで抑えてきましたが、これをちょっと強化すればプリウスもアウトです。
いつやるか?が中国政府、中国共産党の気分次第でいつでもできるという恐ろしい状況です。
だから私は以前から「中国がハイブリッドOKと言っててもアテにしちゃダメ」と言ってきたわけです。
記事の中では「トヨタが昨年4月にTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)の特許2万3740件を2030年末までの期限で無償開放した」というのをあたかも日本勢にプラスのことのように語っていますが、私から見れば「じゃあ中国がトヨタの技術を盗んだらポイ捨てされるな」と思うので、その時がデッドラインでしょうか。
日本勢が劣勢になると出てくる「陰謀論者」
引用するのも嫌な記事を見つけました(ブログをやっている人間としては気に入らないブログのアクセスが増えるのは不快です)が、引用しないことには話には入れないので渋々引用します。
真剣にヤバい日本経済の行方|池田直渡|note
ガソリン車廃止問題は相当深刻な状況だ。日本のメーカーの製品が100%EVだけになったとしても、その時代の環境負荷尺度がLCAだったとしたら、もう日本でモノ作りをやっていては絶対に勝てない。 その理由は、電源の化石燃料率にある。日本は現状非化石燃料は30%程度しかない。グローバルなカーボンプライシング規制が始まれば、製造時のCO2負荷で莫大な罰則税を受けるだろうから、非化石燃料比率を90%とかに上げない限り、競争に参加すらできない。そう言うルールになったら、全ての電気を使う、かつ国際的商品を作る製造業は日本を出て、電源のキレイな国へ移転するしか方法がない。 ではその時までに電源改革
「モータージャーナリスト」を名乗っていますが、ただの陰謀論者にしか見えません。
まぁ私の中では「モータージャーナリスト」という肩書きを聞かされた時点で「おそらくEV嫌い、ハイブリッド信者だろうな」と思うようになりましたから驚きもしませんが(笑)。
日本の自動車業界から様々な便宜を図ってもらえる立場からか、モータージャーナリストを名乗る人々は基本的には「日本メーカーが絶対正しい、海外メーカーはみんなクソ」という視点で語る傾向があることは忘れていけません。
簡単に言えば「世界のEV化はヨーロッパと中国による日本潰しだ」と言いたいようです。それ自体は間違いではないでしょうが、「自分たちが製品化している48VマイルドハイブリッドをICEの仲間に分類しているメーカーなど1社もない」などとハイブリッドを電気自動車の中に含めようとしていることがもうめちゃくちゃです。
じゃあノルウェーで2025年、イギリスで2030年、フランスやドイツ、スウェーデンなど他のヨーロッパ諸国でも2030〜2040年に実施される予定の規制の中にはハイブリッド(HV)どころかプラグインハイブリッド(PHEV)すら禁止という国がほとんどです。
通常であれば電気自動車の定義に入るはずのPHEVでさえ排除なのですから、ハイブリッド(HV)は論外です。
自動車メーカーの定義にケチをつけて「ハイブリッドも電気自動車だ」とドヤ顔をしても、各国政府の規制でアウトになればその国では売れなくなるという当たり前の事実がわからないのですから呆れてしまいます。
電気自動車(BEV)の覇権争いで日本勢が巻き返す方法とは?
本日の話の中でボロクソに批判した記事ではありますが、ごくわずかにいいことも言っています。
それが「日本が自動車の主導権を取り戻すために必要なこと」の提言として述べられていることで、
- バッテリーの国産化(資源調達を含む)
- エネルギーの脱化石燃料化(CO2回収装置含む)
- 半導体生産の国内回帰
この指摘そのものは全く正しいかと思います。
例えば日本最東端の「南鳥島」の周辺でバッテリーの原料にもなるレアメタルが海底奥深くにあることは判明しており、現在採掘と商業化へ向けての開発が進んでいます。
【独自】南鳥島EEZでのレアメタル採掘、商業化へ…28年末までに技術確立 : 政治 : ニュース
政府は日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)周辺の海底に埋蔵されるコバルトなどのレアメタル(希少金属)について、採掘の商業化を進める方針を固めた。2028年末までに採掘技術を確立させ、排他的経済水域(EEZ)内での採掘場
まぁそれはそれで「南鳥島の海底を深く掘っても採算が取れない」だとか日本人の中にも「やっても無駄」的なネガティブな感情を持っている人が案外多くて呆れます。
別に「掘っても採算が取れない」でもいいと思うのですよ。いつでも掘れる状態にさえしておけば。
いつでも掘れる状態であれば中国が不当な値上げをして圧力をかけてきたら「じゃあ自分の国で掘るわ」と交渉のカードに使えます。
実際に現在は世界最大の原油産出国となったアメリカも、以前から「シェールオイル」の存在は明らかになっていましたが、採掘コストがかかるというのが大きな理由ですぐには掘っていませんでした。
原油価格が高騰してきて「この原油価格なら高い採掘コストを払ってでも対抗できる」となってから本格的に商業化に入って、今や世界最大の原油産出国です。
レアメタルでは日本がこの役割を果たせば一発逆転でバッテリーの覇権を握り返すことも夢ではないと思います。
怖いのはその前に中国の圧力にビビった日本の政治家などが開発にストップをかける、排他的経済水域内なのに中国などの採掘(盗掘?)を黙認することですが。
世界の覇権を握り返すポテンシャルを秘めているものを安易に諦めてはいけません。
次の「エネルギーの脱化石燃料化」も同じです。この筆者も含めてなぜか日本人の多くは「日本は再生可能エネルギーには向かないのでぇ〜」「太陽光はぁ〜」「風力はぁ〜」「地熱はぁ〜」と問題点ばかり指摘して全く前に進もうとしない人が多いのが現実です。
そして困ったことに「だから原発再稼働しかない」というおかしな方向に行ってしまう痛い人が多いのも困った事実です。
あと数日で東日本大震災から10年経ちますが、もうあの地震を忘れてしまったのでしょうか?
主力電源へ果てしない道のり 4500基の洋上風力 30年後へ大風呂敷
2050年に国内の発電電力量の50~60%を担う再生可能エネルギー。けん引役となるのが「4500基」の設置を目指す洋上風力だ。海外の関連メーカーから歓迎の声も上がるが、実現への道筋は見えない。
世界でもトップクラスの面接を持つ「海洋国家」であるメリットを最大限生かせる洋上風力発電にも「漁業がぁ〜」と抵抗する人が多いです。
「風力は鳥が衝突するのでぇ〜」「地熱は温泉に迷惑がかかるのでぇ〜」などと同様に常に欠点を見つけて全否定しようとする態度が露骨です。
で、お決まりパターンの「原発再稼働が必要なのでぇ〜」と再エネの話になると原発大好き人間に変身する人がなぜか多いですが、何を犠牲にして何を優先するかの優先順位を立てない間に世界の流れから取り残されてESG投資などが離れていったら日本経済自体がドボンです。
「新しいものはとりあえず否定」して現状の環境が未来永劫続くかのように語って「だから電気自動車は日本では普及しないのでぇ〜」と熱くなる人は多いようですが、ヨーロッパに続いて中国でもハイブリッド車を売れなくなることがほぼ確定です。
大国で残された市場はアメリカ市場だけですが、大統領はトランプ氏ではなく民主党のバイデン氏です。元々環境問題に厳しい姿勢の民主党、「グリーンニューディール」を掲げて連邦政府の公用車を全て電気自動車化したり、全米50万箇所に充電スポットを建設することを公約に大統領に当選したバイデン氏がどういう方向で政策を実現してくるかは語らなくてもわかるかと思います。
先ほどのジャーナリストであれば私のような人間を「国賊、売国奴、テスラ信者」と罵ってくるのでしょうが、ハイブリッド車と一緒に沈んで行く方向に進もうとしているモータージャーナリストこそが「国賊、売国奴」です。
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