「トランプvsバイデン」から学ぶ「メディアリテラシー」と「ファクトチェック」
こんにちは、@kojisaitojpです。政治に関するコメントはしない方向でいたのですが、政治の問題以上に疑問を感じることがあったのであえて記事にします。
アメリカ大統領選挙の話です。
政治家がデマまくんだ
— むらさき (@iromurasaki) November 6, 2020
おかしな報道の典型例ですが、この197歳というネタが出たのが2019年12月、つまり今回の大統領選挙の前に選挙人登録(日本とルールが違って、選挙前に選挙人登録をしないと投票できない)を行った際に発覚した話であって、当然今回の選挙では投票の対象にはなっていない話です。
なのにそれを昨日今日あった出来事であるかのようにねじ曲げてツイートしたり、ブログに掲載したり、YouTubeで発信したりという人が次から次へと出てきています。
トランプ支持の方々はトランプに都合の良い情報、バイデンに不利な情報をこれでもかこれでもかと叫び続け、バイデン支持の方々はひたすらトランプ氏とその支持者の悪口を言い続ける。
先に言っておきますが、私はトランプ氏は経済政策などは良かったと思うけどコロナへの対応を大きく間違えた点でダメ、バイデン氏は経済政策がショボいという点でどちらにも肩入れしてません。
あえて言えばトランプ氏が大統領になってから「戦争を仕掛けてない」「むしろ戦争を終わらせた」という点は評価できますし(見た目のイメージと違い案外平和主義です)、株価などを見ての通り経済面での貢献も大きい。
一方で平和主義に見える民主党政権が過去の戦争の大半を引き起こしてきたという歴史的事実から、どちらかと言えばトランプ氏が勝てばいいかな位の消極的な支持でした。
そんな中立に近い立場の私が大統領選挙を見ていて感じた疑問と、今我々に求められることについて考えてみます。
目次
「自分に都合の良い情報」しか耳を貸さないネット社会
米大統領選挙の不正選挙説、実際に検証した結果は? 死人が投票⇒デマ 投票率200%⇒デマ 13万票が急増⇒デマ
*トランプSNS アメリカ大統領選挙では数々の不正選挙説が飛び交いましたが、それについて調査・検証し […]
この記事(というよりイギリスBBC)が報じられた「不正」の報道について「ファクトチェック」を行っています。
例えば開票当時に話題になった「いきなりバイデンの票が13万票増えた」というのも、開票時の数字の入力ミス(ゼロを余計に一個入力してしまった)だと言うことが直後に明らかになっていて、票数も訂正されています。
なのに今も「不正」だと煽るツイートがツイッター上に沸いてくるのが驚きですが。
今回はトランプ支持者の方にでたらめ情報を煽るYouTuberが多かった(それもなぜかアメリカ人より日本人が多いという謎)ので、嘘の情報に振り回された人も多かったのではないでしょうか。
なんてことを言うだけでアンチトランプ呼ばわりされるのですが、私も消極的な理由ではあリますがトランプ大統領の再選を期待していました。
自分が応援する人に都合の良さそうな情報は全面肯定して、都合の悪い情報は全て無視では人と議論することすらできません。
なので嘘の情報ってすぐ分かった情報でいちいち興奮したりはしませんでした。
もちろん「不正」が否定されているのは、今の時点で出てきたネタが間違いだというだけですので、今後バイデン陣営が不正をしたという証拠が出てきて裁判所がそれを認めれば話は別です。
表の再集計にしろ選挙の有効性を裁判で争うことにしろ、それはトランプ側に認められている権利ですので、行使したいのであれば徹底的に戦えば良いと思います。それについて周りがとやかく言うことではありません。
トランプ嫌いの方々はこの辺の個人の自由の部分にまでケチをつけて「さっさと負けを認めろ」的に叩いていますが、これも的外れです。
教育者としては選挙結果より「メディアリテラシー」と「ファクトチェック」
そもそも「客観的な報道」とか「公正中立な報道」などと言うものがあると信じてる方がむしろバカです。
情報である以上必ずどこかで誰かが意図を持って発信しているので(「トランプを叩きたい」とか「バイデンを叩きたい」のような意図)、客観的に誰が見ても正しいという情報はありません。
【悪徳インフルエンサー?】「〜はオワコン」的な煽りはポジショントーク
「〜はオワコン」的に煽るインフルエンサーは多いですが、これを真に受けて右往左往すると彼らの利益のために操られる奴隷のようになってしまうリスクがあります。有名ブロガーだろうがyoutuberだろうが、自分の価値観から何か目的があって情報発信しているということをきちんと自覚した上で、情報に接する必要があります。
上記の記事で昔やっていた小論文の授業をネタにして「メディアリテラシー」について語った際にも言いましたが、
テレビ番組や新聞記事などメディアからのメッセージを主体的・批判的に読み解く能力。リテラシーというのは「読み書き能力」のことで、読む力と同時に書く力も含む。情報をうのみにせず、どんな意図で作られ、送りだされているかを自分の頭で判断する。そしてそれを通じて自ら情報発信する力を身につける。(略)背景には放送と青少年に関する委員会の設置に至るような、子供や若者への放送メディアの影響に対する関心の高まりがある。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
つまり「情報を発信する側がどのような意図で情報を加工し、どのような手法で発信しているか」を把握した上で、情報を受け取る能力が「メディアリテラシー」です。
誤解のないように強調したいのは、「客観的に正しい情報をつかもう」ではないという点です。「どんな情報にも語り手、それがマスコミだろうがインフルエンサーだろうがある価値観のもとに加工して発信する情報であることを理解して情報に接しよう」ということです。
以前であれば新聞やテレビなどのマスメディアが情報の発信者でしたが、ネット社会になって誰でもSNSやブログ、YouTubeなどを通して情報発信できるようになっています。
昔と比べて「発信されている情報は誰がどのような視点で発信しているのか?」というのを把握しないと、情報に振り回されてしまうといことです。
だからこそ「ファクトチェック」が必要なのです。様々な情報が溢れているネット社会ではこの能力が最も重要になります。
今回のアメリカ大統領選挙の場合、情報源となるネタは大抵英語で発信されているので、多少は英語ができないと日本語で発信(言語が変わるだけで情報は既に加工されています)された情報の真偽も検討できないということが起きます。
先ほどのミシガン州での開票の件などはちょっと英語で情報を探れば、「あぁただの入力ミスね」とわかった話なのですが、その努力を怠ると「バイデン陣営が不正に票を水増しした」という加工された情報を鵜呑みにしてしまいます。
海外のネタですから「自分は英語ができないので…」という言い訳は通じません。最悪でも情報源となっているTweetなどをコピペしてGoogle翻訳に入力すれば、ある程度は言いたいことはつかめます。アテにならないGoogle翻訳ですが、最低限のニュアンスくらいはどうにかつかめます。
少なくてとも「ファクトチェック」すらしないでトランプ支持だったらトランプに都合の良い事実を全て信じる、バイデン支持だったらバイデンに都合の良い情報は全て信じるようでは情報の波に振り回されるだけです。
話を聞かない(聞けない?)人が増えています
この前の記事では「客の話を聞かないで自説を一方的に押し付けるコンサル」がいかにお寒いのかについて書きましたが、もしかするとこのような「他人の話を聞かない(聞く気がない)」「他人の話を聞くことができない(cannot、不可能)」人がものすごい勢いで増えているようにも感じます。
客の話を聞けない「自称コンサル」多すぎ問題【胡散臭い・怪しい】
ビジネスをやろうと思った時に専門分野のアドバイスに利用する存在が「コンサルタント」ですが、専門知識を持っていたとしても顧客の役に立つアドバイスができるとは限りません。知識はある先生が素人である生徒に教えても役にも立たないのと同じことをやってしまうダメコンサルが案外多いです。コンサル業界の胡散臭さについて考えてみます。
この前のコンサルもいい例ですが、話を聞こうとしない人に遭遇すると「自ら進んで(能動的に)俺の言うことを聞こうとしない」というよりも、むしろ「そもそも他人が話していることを自分の中に取り入れて話をする能力がないのかな?」と思うようになりました。
能動的に無視しているのではなく、そもそも聞く能力がないという更に残念な話ですが。。。
相手の話をはぐらかすことに慣れきってしまうと、「対話」ができなくなるんだなあ。異なる文脈を探り当て、互いの言葉が通い合うルートを辿りつつ共感や理解に至る「対話」をする力は、日常的にそう振る舞う中で徐々に身につくことを、まざまざと実感している寒い朝。さーて。
— 平尾 剛 / 『脱・筋トレ思考』(ミシマ社)絶賛発売中! (@rao_rug) November 10, 2020
表現するのが難しいですが「話を聞いてない」というが「音として認識はしていても、言語として認識しようとしない」とでも言えばいいでしょうか。だから「私の話聞いてます?」と言ってやったところで「聞いてるよ」と返されて終わってしまう。
ところが「聞いている」と言う割にこちらの話したことを全く踏まえないで自分の中で最初から決まっている主張がオウム返しのように出てくるだけ。
こんな感じでコミュニケーション不能な人が増えている気がするのは気のせいでしょうか? 今回のアメリカ大統領選挙を巡って流れてきた様々なツイートを見ていて一番恐ろしかったのはこの点でした。
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