「カーシェアリング」と「自動運転」がリンクするのが「CASE」?【シェアによる未来の車社会】
こんにちは、@kojisaitojpです。日本だとまだまだマイナーな存在の「カーシェア」ですが、電気自動車同様に海外ではもっと普及しています。
2022年以降はアメリカでリース販売された大量のモデル3がテスラに返却される。返却された車両はロボタクシーやカーシェア車両に化けて全米に配備されんだ。
Fun to driveにもCASEにも完璧に対応したメーカーはテスラしかねぇぞ。https://t.co/0mlQ4adBud.— やけにテスラに詳しい悟空 (@saiyajinmars) December 4, 2020
ロボタクシーは自動運転の技術が使われていますし、それだけではなくカーシェアにもテスラが手を出しているということです。昨日の記事でも「CASE」について少し説明しましたが、これが世界の流れです。
実際にテスラを買える層というのは限られています。一番安いモデル3でも500万くらい、モデルSだと1000万を超える価格ですので買える人数は限られています(バッテリーの価格が下がって来ればもう少し安くなる可能性も)。
昨日の記事で「Gotoを生かして運転免許を取得する若者」の話もしましたが、現実問題として若者が車を購入して、駐車場を借りて保有するというのが年々難しくなってきているので、「必要な時だけ車を借りる」というカーシェアの需要が今後盛り上がってくる可能性があります。
今日は「カーシェア」と「自動運転」や「電気自動車」と結び付けて「CASE」について考えてみます。
目次
加速度的な上昇目前の「カーシェアリング」
まず話の前提として「プロダクトライフサイクル」というのをご存知でしょうか?
製品が市場に投入されてから、寿命を終え衰退するまでのサイクルを体系づけたものです。
製品の売上と利益の変遷を、導入期(ここを、成長期、成熟期、衰退期の4つに分類し、それぞれの段階においてどのような戦略を企業が立てるべきなのかを教えてくれます。
- ニッチ期:新しい製品を販売した直後は認知度が高くないため、需要量は低い。先端顧客を対象としたスキミング戦略が採られることが多い。
- ブレイクスルー〜常態化期:一度認知され成長期に入ると需要量は急激に増加するため、市場に参入する業者が増加する。
- 成熟期:需要量は頭打ちとなるものの、市場参入業者はさらに増加するため競争が激化する。
- 衰退期:技術革新などのために衰退期に入ると需要量は減少し、市場から業者が撤退していく。
こちらの資料は「三井住友銀行」のものですが、具体例としてそれぞれの段階にある商品例が書いてあります。
日本の場合「カーシェア」はまだまだブレークスルー前、電気自動車は日本だとブレークスルー前(ヨーロッパでは常態化に入ってる)、スマホは成熟期に入っています。
「レンタルビデオ」が衰退期と言われると「あぁ確かに」と思いますよね。動画配信が当たり前になった今となっては終わった業種かもしれません。
自分の過去の消費行動を振り返ると、パッと思いつくものだけでも「iPhone」は散々ネタにしてきたようにiPhone3Gを買った当時なんて周りにiPhone持ちなんて誰もいませんでした。
他にも液晶テレビもまだ20型くらいのサイズのシャープの液晶テレビが20万以上で売られている時代に買っています。世の中はほぼみんなブラウン管の時代に。
家電メーカーで働く知り合い曰く、私のような消費者は「先端顧客」「革新者」と呼ばれ、さっきの区分でいう導入期から買ってくれるとても珍しい客のようです。
だから最近も「俺が電気自動車を推し始めると、最初は相手にされないけど3〜4年くらたらみんな買うようになるよ」と結構自信を持って言ってます。周りからは「何言ってるの、この人」扱いですが(笑)。
いいんです、iPhoneの時も液晶テレビの時も毎回そうでしたから。慣れてます。
話をカーシェアや電気自動車に戻しますが、日本では最大手の「タイムズカーシェア」で約70万人、「プロダクトライフサイクル」の段階としては導入期か成長期の入口くらいです。
ところがヨーロッパではカーシェア最大手のEuropcarの会員は220万人、ヨーロッパ全体の利用者数では1000万人と、日常生活で普通に使われ、成熟期に入っています。
特にアメリカではカーシェアを利用したことのある人が3000万人を超える規模です。
「プロダクトライフサイクル」的には、世の中に一旦認知されると、先日も述べたヨーロッパにおける電気自動車のシェアのように「加速度的に上昇」していきます。
するとこれまで「所有」するのが普通だった自動車が「シェア」するもの、共有財のようなものになります。
こうなると「維持費にお金がかかるから買えない」と諦めていた層も、気が向いた時にカーシェアを使って気軽に車に乗れるようになります。
そしてこの利用者間の「シェア」をつないでいるのがスマホ(インターネット)です。
というのがこれまでの流れでしたが、もうお分かりでしょうがテスラの車は常時インターネットに接続されています。
この前試乗した時も乗り込んでまず巨大なiPadのようなディスプレイに度肝を抜かれましたが、Google mapがナビ代わりになり、道路交通情報などもリアルタイムで見れます。
現在はこの程度ですが、5Gか遅くても6Gには自動運転が可能になるほどの情報量のやり取りが可能になるようです。
となると今度は自動車自体がスマホのような役割を果たすようになります。
「CASE」の一つである「connect」によってAIによる「Autonomous(自動運転)」が可能になります。
車を中心に全てがconnectすると?
「CASE」は「connect(ネットに接続)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアとサービス)」「Electric(電気)」を指すわけですが、これがバラバラに動くわけではなく、相互に密接な繋がりを持って連動します。
例えば「CASE」に少しでも近いものとして、以前こちらでもとりあげた「Uber」の「ライドシェア(相乗り)」が挙げられます。
これはパリとロンドンの「Uber(配車アプリの方)」の配車状況をテキトーに検索したものですが、車がこのように待機していて、スマホで行き先と現在地を入力すると、同じ方向に向かう他の人との「シェア」をアプリ上でAIが考えて配車してくれます。
現在は自動運転が実用化されているわけではないので、車にはもちろんドライバーがいますが、これが自動運転になったらまさに「CASE」の世界です。
実は配車アプリとしてのUberは「CASE」のうち「C」と「S」を既に満たしていました。
現在はスマホを基軸に駐車場探しや配車、交通情報を教えてくれるところまでですが、自動運転が可能になれば、自分の近所で待機している車がスマホで呼んだら来てくれて、いきたい場所に移動してくれる。
自動運転の車は電気自動車の方が効率が良い(ガソリン車は仕様的に自動運転には不向き)ので、使われる自動車は電気自動車です。
現在の自動運転(レベル3くらい)では不可能ですが、完全自動運転のレベル5の水準まで自動運転が発達するととUberのようなアプリを用いて、自分が呼びたい時にその辺で待機している車を呼んで自動運転で移動することができるようになります。
この段階に来ると、自分で移動用の車を保有する必要がなくなります(趣味で乗りたい場合は別)。
自動運転の技術が搭載された無人の電気自動車に、自分のスマホからネットに接続して配車用のアプリから車を呼び出す。
移動後は自動運転の車のAIが近隣の空いている駐車場を探して、再び配車依頼が来るまで待機する。
毎日車に乗る必要のある人はいざ知らず、たまに買い物などで外出する人であればこれで十分生活できます。
「交通弱者」の救済にも役立つ自動運転
このような最先端のサービスは、「とうせ東京だからできるんでしょ?」と言われてしまうところですが、むしろカーシェアや自動運転が必要になるのは電車などの公共交通機関が十分に発達していない地方都市、いわゆる「田舎」でこそ生きてきます。
新たな配送サービス、パナソニックがロボットによる住宅街での配送実験を実施 (2020年12月14日) – エキサイトニュース
人手不足というこれからの日本の状況と、新たな生活様式への対応を鑑みて、新しい配送サービスの実証実験が開始された。ロボットによる住宅街向け配送サービスだ。パナソニックは、神奈川県藤沢市のFujisawa…
まだ実験の段階ですが、今後更に人口が減ることが予想されるタクシーやトラックの人手不足を補うために、活用されるのは何だかんだ言ってもタクシーやトラックの台数が多い都会ではなく田舎の方かもしれません。
車がないと買い物に行くのも不便な地方では、超高齢になって車の運転を止めたくても日常生活上運転せざるを得ないお年寄りなども自動運転で買い物などに連れて行ってもらえるようになれば事故の危険からも解放されます。
実際にスピードの出る地方のバイパスなどを車で走っていると「この人大丈夫かな?」と思わずにいられないような低速でフラフラ走っている車を見かけることがありますが、多くはドライバーが高齢者です。
自動運転によって危ない運転をする必要がなくなる社会がすぐそこまできています。
カーシェアリング・自動運転の時代でも「自家用車」にこだわることも可能?
もちろんカーシェアが一般的になり、自動車を保有するのではなく「シェア」するという使い方が一般になっても「車を所有したい」という欲求はコストさえ払えば可能ですので、自分の好きな車を買うことも可能です。
同様に自動運転が普及しても「俺は車が運転したいんだ」と主張して運転することも、「ガソリンエンジンのこのフィーリングが忘れられない」とガソリンエンジンの車に乗り続けることも可能です。
ただしそれはもはや「趣味」の領域になりますので、おそらく高い税金が課されるでしょうし、整備工場やガソリンスタンドは激減しますが、2035年以降のガソリン車・ディーゼル車の新車販売が禁止になった後もコストを払えば乗り続けることは可能です。
それ以外の人、「車は移動の手段」以上のものを求めていない人は自動運転の「カーシェア」を利用し、自分が車を保有していた時代に比べて低コストで自動車を利用できるようになるのが未来の姿かもしれません。
既存のディーラーや整備工場、部品メーカーなどは不満でしょうから、今後ディーラーの営業が積極的に電気自動車を売らないなどの事態も想定できますが、世界の流れには逆らえないので衰退していくことは確実です。
「カーシェア」の普及、電気自動車の普及が人間のカーライフそのものを変える可能性のある試みであること、そもそも日本では「CASE」の存在すらロクに認知されていないという後進国のような状況が、世界でもトップクラスの自動車大国であるにもかかわらず続くという謎の状態です。
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