ホンダが採用する中国製・韓国製バッテリーは燃える?【日産リーフと同じエンビジョンAESC】

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こんばんは、@kojisaitojpです。日本勢の動きは日本のメディアを見ていてもわかる話ですのであまり積極的には取り上げないことにしてますが、これは取り上げないわけには行かないサプライズです。

2040年までに全ての自動車をBEVかFCVにすると宣言しているホンダのバッテリー調達計画です。

米国市場は以前GMと業務提携した関係でGMの「Ultium battery」を製造するLGエナジーソリューション製のバッテリーになるのは以前の記事でも指摘しましたが予想通り、中国市場で中国メーカーのCATL製のバッテリーを使うのも中国市場の特殊性を考えると予想通りですが、問題は日本市場です。

「エンビジョンAESC製のバッテリーを使用」と聞いて何を感じるでしょうか?

「そう来るか」と感心する人はEVのことをある程度わかっている人、「何で中国製なんだ?」「中国製のバッテリーなんか使ったら発火するからもうホンダは買わない」と思った人は初心者です(笑)。

というわけで今日はホンダが発表したバッテリー調達計画が「実は現時点でベストの選択肢」だと私が感じた理由について解説します。

「エンビジョンAESCのバッテリー」=日産リーフと同じバッテリーを採用するホンダの戦略

ホンダとエンビジョンAESC
「ホンダが中国・韓国メーカーのバッテリーを採用」というだけで「中国・韓国のバッテリーなんてホンダも終わったな」「どうせバッテリーが炎上して火事になる」などと叫んでいる人が結構いますが、

そもそも記事の中の「日本では中国系のエンビジョンAESCから買い入れる。同社が24年に茨城県で稼働させる工場から調達するとみられる」という表現から「あれ?中国メーカーなのに日本で生産するの?」位の疑問は持って欲しいですよね。

EVのことをある程度知っている人の間では常識ですがエンビジョンAESCは元日産の子会社です。

エンビジョンAESCのバッテリー2

リーフ発売前の2007年に日産とNEC、NECトーキンにより、車載用リチウムイオンバッテリーの設計製造会社としてAESC (Automotive Energy Supply Corporation) が設立されたのが始まりです。

つまりこれまで日産「リーフ」に独占的にバッテリーを供給してきた会社です。

その後日産は経営難から2019年に中国資本のエンビジョングループに売却してしまいましたが、今もエンビジョンAESCは本社が神奈川県座間市で日産も相変わらず大株主として発言力がある関係ですし、社長も日本人のままです。

中国資本とはいえ中身は実質日本企業と変わりがありません。

なおこのエンビジョンAESCが日産と共同でイギリス・サンダーランドにバッテリー工場を設立したり、日産と同じアライアンスのルノーにもバッテリーを供給する話は以前触れた記事がありますのでこちらをご参照いただければと思います。

またホンダへ供給されるバッテリーはエンビジョンAESCが茨城県に設立する工場から提供される(日本市場向けなので当然と言えば当然)ので、「中国資本の会社だけど元日産の子会社でリーフにもバッテリーを提供するエンビジョンAESCが日本国内の工場で生産したバッテリーを供給する」というのが今回のニュースの正確な内容になります。

この事実を無視して「中国メーカーのバッテリーを採用するようじゃホンダもオワコン」などと叫ぶのがいかにトンチンカンなことであるかがお分かりかと思います。

  • 北米市場→提携するGMと同じ韓国LG製のバッテリーを採用
  • 中国市場→中国CATL製のバッテリーを採用
  • 日本市場→日産「リーフ」のバッテリーで実績のあるエンビジョンAESC製を採用

EV化に舵を切る方針が2021年になってからとスタートが大幅に遅れたホンダが巻き返すには自社で一からバッテリーを製造していては間に合わない、間に合わないならとりあえずは世界各地で実績のある自動車メーカーやバッテリーメーカーのものを採用して1日も早くEVを生産・販売しようという戦略はベストとは言い難いもののベターだと思います。

特に日本市場では「リーフ」で実績があるエンビジョンAESC製のバッテリーを採用というのは安全性という面でもベストだと思うのは私だけでしょうか?

発火案件ゼロの日産「リーフ」を支えるエンビジョンAESCのバッテリー

日産グローバル本社のリーフ

私のブログでは日産に対して厳しい意見を言うこともありますが(特に先日の記事のように「アリア」を巡っては苦言を呈することが多いです)、日産には世界の自動車メーカーに先駆けてBEVの「リーフ」を商品化した功績は評価できるものです。

2010年の市場投入以来50万台以上のリーフを販売してますが、これまでバッテリーの発火事故を一件も起こしてないという事実は誇るべき事実です。

中国CATLや韓国LGエナジーソリューション、そして残念なことに日本のパナソニックもテスラ車などで何度も発火事故が起きています。

リーフのバッテリー消耗率

と日産リーフを持ち出すと必ずと言っていいほど「バッテリーがすぐ劣化して使いものにならなくなる」とか「バッテリーの交換に何十万もかかる」と批判がわいてきますが、いわゆる「セグ欠け」は初代初期型リーフ(ZEO)でのみ起きた問題です。

リーフでV2H

表を見ての通り2016年以降は全然バッテリーが劣化しないくらいに進化しています。

そして日産リーフにこの進化したバッテリーを供給してるのが今回ホンダも採用が決まったと報じられているエンビジョンAESCです。50万台以上販売してゼロというエンビジョンAESCのバッテリーと日産の技術は誉められるべきものですし、「リーフと同じバッテリーを採用するならホンダのEVも信用できそう」と解釈するのが当然ではないかと思います。

ホンダ・日産と同じエンビジョンAESCのバッテリーを三菱の軽EVも採用

三菱の軽自動車EV
何の提携もしてないホンダが日産リーフと同じバッテリーを使用するわけですから、「ルノー・日産・三菱」でアライアンスを組む三菱も同じエンビジョンAESC製のバッテリーを採用するのは当然と言えば当然です。

実は三菱も次のEVへの第一歩を踏み出していますし、この車両に使われるバッテリーがエンビジョンAESC製であることは既に発表されています。

まぁ「初の軽EV」という表記は「i-MiEVは無視?」と言ってやりたくなるところですけど(笑)。

とはいえこれまでの「ekクロス」のデザインを踏襲したような軽自動車EVをi-MiEVから10年以上経ってしまったもののようやく発売するようです。

三菱の軽自動車EV

搭載バッテリー容量が20kWhで航続距離も200キロ前後と街乗り用の割り切った仕様になることを批判する人もいますが、軽自動車の主な用途である「毎日の通勤や買い物」には問題なく使用できる航続距離です。

しかも自宅が一軒家であれば自宅のコンセントで充電もできます。

毎日満充電で出発できてしかも200キロ近く走れるとなれば不自由だと思うユーザーはほとんどいないと思います。

「EVが特別なものではなく普通のものになったことを実感して欲しい」と三菱側が言っているように、あえて既に発売されている軽自動車と変わらないデザインで販売するというのも「これからはEVが当たり前になる」という三菱からのメッセージ、三菱のEVに対する積極的な姿勢を感じるもので好感が持てます。

日産やホンダに批判的なのは「EVで成功して欲しい」という期待の裏返しです

三菱アイミーブ
私は日産にも三菱にもルノーにも厳しい発言をすることが多いというのはこれが理由です。

少なくとも2010年頃、つまり日産がリーフ、ルノーがZoe、三菱がi-MiEVと世界でトップクラスの早さで市場にEVを投入しています。

パリで路駐してるルノーZOE

ちなみにこの時テスラはまだロータスの車体を使った初代ロードスターを発売しただけ、モデルSの発売は2012年です。

つまり10年ほど前の時点では日産・ルノー・三菱がテスラより先を走っていたと言えます。

ノルウェーで路駐する日産リーフ

「ディーラーに急速充電器」という考えは今となっては「そこ優先する場所なの?」と苦言を呈するようになりましたが、まだ世の中に全くEVの充電器がなかった時代には有効なものだったでしょうし(モデルS同様にテスラのスーパーチャージャーもこの時点ではゼロ)。

テスラより早いスタートが切れてたのにその後続となるEVすら出せていない(日産「アリア」は発売目前ですが)、EVの車両のみならず充電器もアリアのスペックに見合った急速充電器を一基も用意できてないという体たらくぶりに「せっかく先行したのに何やってるの?」と感じてしまうのが私が「ルノー・日産・三菱連合」のそれぞれの会社に感じることです。

ホンダも同様です。以前カーシェアで借りた「ホンダe」が希少価値のあるコンパクトカーサイズのEVなのもあり高評価をしましたが、「ホンダe」に続くEVの日本での発売が2024年と遅いのも懸念材料です。

幸い最大の強敵になるであろうテスラの「25000ドルのコンパクトEV(通称「モデル2」)」の開発をストップしているとテスラから発表があったからまだいいものの、2024年頃にはテスラのみならずフォルクスワーゲンやフィアットなどのコンパクトEVが先に上陸してることでしょう(フィアット「500e」に関しては今年2022年にも上陸)。

とはいえようやく「ルノー・日産・三菱」のアライアンスとしてのEV化方針は示されましたので、世界で最も早くEVを商品化した「古豪」としての意地を見せて欲しいと思うところです。

個人的にはコネクティド技術にGoogeleの「Android」を採用するところが注目に値すると感じたのですが、これについて語り出すと更に1記事必要な分量になるのでまたの機会にします。

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