テスラ「ギガベルリン」が世界のEV化を加速?【ギガプレス・Structural Battery】

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こんばんは、@kojisaitojpです。先日はテスラの4680セルを中心に語りましたが、ギガファクトリー・ベルリンで公開された新技術はこれだけではありませんでした。

前回も引用したのと同じものを取り上げますが、実はここには前回テーマとして論じた「4680セル」以外にも「Structural Battery」や「ギガキャスティング」など革新的な4680セルのバッテリーと同等かそれ以上の技術革新が盛り込まれています。

そこで今回は前回の続きとしてテスラがまもなく稼働させるギガファクトリー・ベルリンで公開した4680セル以外の技術、特に「ギガキャスティング」と「Structural Battery」について解説します。

「ボディのチリ合わせが下手」→「じゃあチリ合わせを不要にすればいい」がテスラ流

チリの合ってないテスラ車
「ボディのチリ合わせができない」などの欠陥は以前からテスラ車には言われる問題で、最新のモデルSでもこのようなことが起きてはいるようです。

初心者向けに一応解説しておくと「チリ合わせ」というのは「ボンネットやドアフェンダーなど各種外装部品同士の段差をなくすこと」を言います。

確かにテスラはこの技術が劣っているようで今でもこういう例がよく上がってきます。

こういうのも取り上げて「ボディのチリも合わせられない車メーカーなんて」とバカにする人は今でも一定数います。

ですがそもそもEVとしての性能がボディのチリによって否定されるものなのでしょうか?

確かにこういう画像が上がってくるのを見ると「品質ガー」と言いたくなる気持ちはわかりますけど(笑)。

実際にボディのチリ合わせは複数のパーツを組み合わせる一種の職人芸のようなところがありますので、旧来の自動車メーカー、特に日本メーカーが得意な部分ではあります。

一体整形されたモデルY

そこでイーロンマスクは発想を変えたようで「じゃあチリ合わせを不要にすればいい」という発想で生み出したのが「ギガプレス」です。

イタリアの鋳造機械メーカーIDRA社製の「ギガプレス」を導入し、アルミニウムや亜鉛、マグネシウムなどの金属を高温で溶かし、金型に流し込んで一体成形します。

車全体の3分の2にあたるフロント部・リア部のアンダーボディが鋳型成型されることになりますが、例えば「ギガプレス」導入前だとリア部のアンダーボディだけで70回に渡るプレス加工、押出成形、鋳造を経て作られていましたが、これが一発でできてしまうわけです。

一体成形のギガプレス

当然「ボディのチリ合わせ」なんぞ不要になります。

テスラの一体成形

これによって今まで何百というパーツの組み合わせが求められていた自動車のボディが一つの部品になるわけで、「ボディのチリ合わせ」などという技術は不要になります。

このギガプレスを用いた一体成形は現在はモデルYの生産にのみ使用されています。リア部分の鋳造はすでにギガ上海とフリーモント工場で製造されていますが、これに加えて新しいギガベルリンとギガテキサスではフロント部分の鋳造も行われます。

工場が新しくなるとその車に使われる技術自体も進化するというのは我々日本人もフリーモント製のモデル3よりも上海製のモデル3の方が優秀というので体験しましたが、今後はその上海で生産されるモデルYより優秀なモデルYがベルリンで製造されるようです。

「馬車(エンジン)の雇用」のために自動車(EV)を渋るメリットなし

老害にいじめられる若手社員のイメージ
こういうことを言うと「職人の仕事を奪うのか!」と怒り出す人がいそうですが、技術革新とはそんなものです。

一時代前に職人芸としてもてはやされたものが次の時代には用無しになることはこれまでの歴史でも普通に起きています。

    EVの話をする文脈でよく出される例が「馬車」です。

    「馬車」から「自動車」に技術革新が起きた際にも当然ですが馬の世話をする人、馬に載せる鞍や馬車を作る職人などの仕事は不必要な仕事になりました。

    この時に「馬車業界の雇用を奪うから自動車は反対!」と馬車を使い続けた国があったでしょうか?

    鉄道好きの方であれば「蒸気機関車」から「電車」への切り替えなどでもイメージしやすいかと思います。

    基本的に新しい技術が登場すると一時代前の技術は用無しになります。

私のブログでは何度も例をあげて批判していますが「EV化は自動車業界550万人の雇用を脅かすから反対!」と叫んだどころで止められるものではありません。

むしろ1日も早くEV化に合わせた構造転換をすることが雇用の減少を最小限に食い止めるはずなのに相変わらず「EVなんか絶対に普及しない!」と色々難癖をつけてEV化に抵抗しているのが今の日本の自動車業界の残念な有様です。

テスラの場合おそらく技術革新は今披露している程度では終わらないことは間違いないところが更に恐ろしいですが。

以前「テスラがロボットを販売」というニュースを私も取り上げたことがありますが、「人間が作業するより正確」ということになれば「TeslaBot」が作業するギガファクトリーという光景が見られる日も近いでしょう。

などというと「自動車業界の雇用を奪う気か!」とすぐ発狂したがるのが最近の傾向ですけど(笑)。

バッテリーを埋め込む「Structural Battery」もテスラの革新的技術

4680セルとStructuralバッテリー
そんな日本の自動車業界の惨状は無視して次へ行きましょう。

何度も引用している上記の画像ですが、先日取り上げた「4680セル」が用いられているだけではありません。

テスラのstructuralバッテリー

イーロンマスクが以前から提唱している「Structural Battery」で、バッテリーを車体の一部として直接埋め込んでしまおうというアイディアです。
 
発想のきっかけが「航空機は翼に燃料を収納してる」というところから来てますので、やはり旧来の自動車業界からはぶっ飛んだ発想です。

以前書いた下記の記事は「バッテリー交換式は普及しない」ということを主張するために書いた記事ですが、この中でテスラの「Structural Battery」やフォルクスワーゲンの「Cell to Chasis」、BYDの「Blade Battery」などシャシーとバッテリーが一体となることで搭載容量も増えて、航続距離のアップにつながるというのが今後のトレンドになることについても解説してます。

「車体と一体」ということを強調すると今度は「事故が起きたら爆発するんじゃねぇのか!」と興奮する人が現れるのですが、この画像を見て何を感じるでしょうか?

クラッシュしてもドライバーは無事なモデル3

こちらはトラックの無茶苦茶な運転でクラッシュしたモデル3です。車体が大破していますが、ドライバーは無傷だったそうです。

普通の車がトラックとまともにクラッシュしたら無傷で済むとは思えませんが。

「テスラは安全性を軽視してる」とか「テスラは法令を遵守しない」などと事実無根の言いがかりのようなことを言われることもありますが、テスラの安全性をバカにすることはできません。

そもそもEVの構造上、床下にバッテリーを収納する関係で低重心になり車体が安定するわけですし。テスラ車の堅固な構造が更に安全性を高めていると言えます。

テスラの株価が示す未来の自動車業界の姿

テスラの株価
このようなテスラの革新的な技術を市場も評価しており、それが株価とテスラの時価総額に反映されています。

テスラという会社自体の株式の時価総額でこのレベルまで暴騰していますが、実はイーロンマスクの個人資産だけで見ても既にトヨタ辺りを軽く買収できるレベルです。

まぁ資産の大半が株式ですのでその時の時価総額に応じて上下はします。ですがテスラ株の勢いはこの1ヶ月くらいの間に更に急加速しています。

上記のチャートを見ての通りこの1ヶ月で50%上昇しています。

そのきっかけになるのがこの報道でした。

世界中でレンタカー事業を展開するHerz社がテスラ車を10万台レンタカー用に購入するという衝撃のニュースで、これについてはイーロンマスクが後から「まだ正式契約はしてない」との発言も出ましたが、それでもテスラ株が暴落してません。

まぁこの動きに対して「嘘の情報流して株価を釣り上げてるインチキ企業」などと張り切ってネット上で悪口を言っている層はいますけど。

ですがテスラ一社の時価総額で世界の主要自動車メーカーの時価総額を超える規模になっているのが市場の評価です。

自動車は実用という部分だけではなく個々人の趣味・嗜好も反映されるものですから「テスラ一社あれば他は不要」とはなりませんが、テスラの革新的な技術を市場がこれだけ評価しているという事実は否定できません。

「ボディのチリ合わせもできないくせにこんな株価はインチキだ」と自動車業界に関わる人間ほど思ってしまいがちかもしれませんが、もうそんな批判が当てはめる次元にテスラはいないというのが現実です。

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