「社会実装力」がない、マインドブロックだらけの日本はオワコン?【EVや再エネが典型例】
こんばんは、@kojisaitojpです。私が日々ブログやTwitterで発信していることにぴったり重なる記事を見つけたので早速引用します。
「使う人々の意識がアップデートされないまま」って典型的な老害国家ってことだよな。
EVなど成長産業で日本に足りないのは、技術力より社会実装力(ニューズウィーク日本版)#Yahooニュースhttps://t.co/Tucbjh7BFP— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) September 15, 2021
試しにこういう記事にぶら下がっているヤフコメをご覧になればお分かりかと思いますが、少し見ただけで「使う人々の意識がアップデートされてないな」ということを実感できます。
私も機会がある度にブログやTwitterで「EVとガソリン車では根本から考え方が違う」というような指摘をしているのですが、「考え方が違う」ということが理解できない人々から猛反発を受けることがあります。
今日は新しい技術よりそのものよりも、新しい技術を受け入れる側の人間の受容の仕方がある種の「マインドブロック」になってしまうという観点からEVと充電について考えてみます。
目次
EVなどの新しい技術を社会で受け入れるのに必須な「実装力」というマインド
別にEVや再エネの話に限ったことではなく、私は日常から人を見る時に「言葉遣い」というものを重視します。
それは別に敬語だとかタメ口だとかの話ではなく(自分よりおっさんの世代にタメ口で来られるとイラっとしますが…笑)、使う「単語」や「定義」の問題です。
わかりやすい例を挙げましょう。
大体充電インフラのことを「充電スタンド」とか言ってる時点でガソリンスタンド感覚でしか充電を捉えられてないってこと。ちょっとした言葉遣いでこういうのバレるから。
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) September 15, 2021
私がこのツイートで何に怒ってるかわかります?
EVの充電について語る文脈で「充電スタンド」などという言葉遣いをしてる人が多いのにイライラしています。
「スタンド」などという言葉を使われると「別にガソリンスタンドに充電しに行くことなんて全くないんだけど」とEVに乗られてる方々なら思いますよね?
この瞬間に私なら「ガソリン車の給油と同じ感覚でEVの充電を捉えてるな」と思って、冒頭の「使う人々の意識がアップデートされていない」典型例だとみなすことにつながります。
この「ガソリン車の給油とEVの充電は全く別物」というテーマは過去にも解説したことがありますが、
ガソリン車の「給油」はガソリンスタンドという場所に行ってやるもの(移動中に発生)。
反対にEVの場合は夜に自宅に帰ってから翌朝出発するまでの「車に乗ってない時間帯」にするもの。
移動先のホテルや勤務先の駐車場などに充電器があって充電する場合も同様に「車に乗ってない時間帯」にするものです。
例外となるのは高速道路での長距離移動中の「経路充電」だけ。
ガソリン車の給油と違いEVの充電は「車に乗ってない時にするもの」だという意識がない人ほど「ガソリン車は2分で給油できるのに30分も充電待ってられねえんだよ!」と怒るのですが、そもそも高速道路での長距離移動以外に「充電待ち」という場面は発生しません。
CMに出演している木村拓哉さんが「起きたら充電100%」とCMの中で言ってますが、自宅で寝ている間、つまり車を使わない時間帯に充電するのがEVの本来のあり方です。
などというと必ず「うちは集合住宅だから充電できないんだよ!」と怒る人がわいてきますが、集合住宅でも頑張り次第では充電器設置できますし、もしできないのであればまだEVを買う環境じゃないと判断して買わなければ良いだけなのになぜかTwitterなどで喧嘩腰で絡んでくる人が多いのが謎です。
だからそもそも「ガソリン車は2分で給油できるんだよ!」とすごんできたところで、自宅充電が原則のEVユーザーからすれば「だからどうしたの?」で終わる話です(笑)。
「車を使わない(あるいは乗ってない)時間帯」に充電という意味がわからず、ガソリンスタンドと同じ感覚で「何分で」とか言われてもと思ってしまいます。
冒頭の記事では「社会的実装力」という言い方をしていますが、要は新しい技術を受け入れる側の「マインド」が従来のままだと新しい技術への抵抗ばかりが起きてしまい生かせないということです。
「アンチEV」という言葉もありますが、EVという単語に猛烈に反発する人々の思考パターンを分析していると「あぁ、結局ガソリン車と同じ感覚でしかEVを捉えられてないな」と思うことが多いです。
優先順位をつけたEVの充電インフラ整備を
過去の記事でも何度か解説してきていますが、充電インフラにも優先順位をつけて整備していく必要があり、
「自宅(可能なら集合住宅の駐車場まで含めて)への普通充電器の設置」→絶対に必須
「目的地(職場やホテルなどの駐車場)への普通充電器の設置」→絶対に必須
「高速道路のSAPAの急速充電器の設置」→これも絶対必須(SAPAごとに複数台欲しい)
「街中のディーラーに急速充電器」→どうでもいい
「ガソリンスタンドを充電スタンドに改装」→どうでもいい
コストがかかる急速充電器は極端言えば高速道路のSAPAにあれば他は普通充電器でも良いくらいです。
と言ってしまうとこれまで日産や三菱などが自社のディーラーに充電器を設置してた行為が無意味だったということになってしまいますが、EVを普及させるための初期の段階では販売店に充電器があるというのは一定の意味があったと思います。
ですが自宅での普通充電が基本であるEVが「街中で充電する」という行為自体が本来意味がないものです。
ガソリンスタンド同様に「ディーラーまで充電に行ってくる」ではガソリンスタンドと何も変わらない運用方法になってしまいます。
本来は「自宅で充電できるからわざわざエネルギー補給のために出かける必要がない」のがEVですから。
「自宅充電」と「目的地充電」の重要性を解説した過去の記事はこちらになりますのでご参照いただければと思います。
EVで「自宅充電」「目的地充電」があれば「急速充電」がしょぼくてもOK?【もう一つの充電インフラ】
EVの充電というと「自宅充電(普通充電)」と高速道路のSAPAなどでの「経路充電(急速充電)」に注目が集まりやすいですが、「目的地充電(デスティネーションチャージ)」の存在を忘れてはいけません。実は滞在先のホテルなど長時間いる場所に普通充電器が設置されていれば高速道路上の急速充電をアテにしなくても長距離移動が可能です。
同様に「ガソリンスタンド感覚でEVの充電を捉えることの弊害」についてもこちらで詳しく解説しています。
ガソリンスタンド感覚でEV充電を語るのは「加齢臭」?【それとも既得権益の温存?】
EVの充電とガソリン車の給油とは本来全く別物なのですが、日本にはガソリンスタンドに給油に行く感覚でEVの充電インフラを批判する人が多いのが問題です。基本は自宅で普通充電、長距離移動などの際の「経路充電」だけが急速充電の使い方なのですが、これが理解できずに「できない理由」にしてEVを批判する人が多いのは残念な状況です。
そしてアンチEVの方々が必ず主張する「でも化石燃料で発電した電力ガー」「電力不足が言われる中でEVの充電なんてけしからん」というのも「自宅に太陽光パネルを設置すればグリッドから電力もらわなくても充電できるよ」→「100%再生可能エネルギーで充電」「グリッドを使わないので電力不足とも無縁」となります。
この辺の電力問題を攻撃してくる方々も「電力=送電網から供給されるもの」という前提でしか語っていない、これまで当たり前だった図式でしかEVの充電を考えていないことになります。
EVのように新しく生まれた技術に対して、それを受け入れる側の人間が従来のガソリン車と全く同じマインドで運用しようとすることから生まれるトンチンカンな偏見だと言えます。
「バッテリーが消耗する」という思い込みもアップデートが必要
EVに関して同じように「脳みそがアップデートされていない」、つまり「社会的実装力」がない例として「バッテリー」に関する批判にも見られます。
「EVはバッテリーが消耗して距離が走れなくなる」などの批判がよくされますが、私のブログでは何度も引用しているものですが、日産「リーフ」の製造年度別のバッテリー劣化率を表した表です。
確かに2013年頃のリーフであれば20%と消耗していますが、2016年以降(初代後期型にマイナーチェンジしてます)のものであれば5年で10%も消耗していません。
新車時と比較して10%の消耗、航続距離が10%減ったくらいであれば日常使いには全く問題がないのが現実です。
バッテリーマネージメントシステムが搭載されていない「空冷式」のリーフでもこの程度ですので、バッテリーの温度管理がしっかりできる(バッテリーが高温になるのが消耗の原因)テスラであればこんな事実が明らかになってます。
8年間で35万km走行した、モデルS P85 (2013) のバッテリー劣化はたったの11%との事。https://t.co/e8oW1RY8f5
— Brownie (@browniejp) September 1, 2021
8年間で35万キロ走行しても消耗率11%と、スマホなどと比較すると劣化率はかなり低く抑えられています。
にもかかわらず「EVはバッテリーが劣化して交換が必要になるから割高になる」などと今でも言っている人がヤフコメやTwitterなどで多く見られるのも呆れるところです。
おそらく「毎日充電するスマホだって1-2年でバッテリーが劣化するんだからEVも劣化しないはずがない」という偏見を、実際のEVを見ても変えないまま「きっとバッテリーが消耗してダメになるはずだ」と決めつけていることになります。
脳みそがアップデートされていない典型例です。
「マインドブロック」がEVや再エネの普及を妨げる?
まぁ「社会実装力」とか「マインドブロック」という言葉を使って論じてきましたが、ものすごく乱暴に要約すると「新しい技術を受け入れる心構えがない」という一言で終わりなのですが。
EVや再エネはあくまで一例で、新しい技術が出てくると次から次へと欠点を指摘し、「できない理由」を並べて批判する。
このようなパターンは非常に多いのですが、今日テーマにした「充電」と「バッテリー」・「再エネ」で見ても素朴な疑問が生じます。
そもそもこれまで乗ってきたガソリン車は万能で何の欠点もない存在なのでしょうか?
災害時にメガソーラーなどが崩れていると張り切って再生可能エネルギーの悪口を言う人々が絶賛する原発は安全ですか?
これが単純に「新しいものを受け入れたくないからあらゆる理由を絞り出して変化に抵抗する」マインドであれば、日本の見通しは暗いと言わざるを得ないでしょう。
実際私のところなどにも「お前がいくら熱く主張しても日本でEVや再エネなんて普及しねぇんだよ」「新しいものなんて年寄りが絶対認めないから無理無理」のような野次、というか誹謗中傷は時々飛んできますけど。
2050年代に「手動運転」禁止に 英調査会社が予測、自動運転技術の向上で https://t.co/4uwCc6kwsA @jidountenlab #手動運転 #自動運転 #禁止
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 16, 2021
こんなことをして「日本ではEVは普及する(しない)」などとごちゃごちゃやっている間に世界の流れは「EVが普及するのはもう当たり前」「次はEV化を前提として自動運転技術がどこまで進化するか?」に進んでます。
自動運転については重要なテーマですのでまた機会を改めて解説しますが、とにかく「社会実装力」「受け入れるためにマインドブロックを解除」が求められています。
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