「EVのバッテリーが消耗するから交換が必要」って本当なの?【蓄電池として第二の人生もあり?】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨日も「アリアについて私が語る必要はない。専門家に任せる」と言いましたが、今日もアリアではなくリーフに注目してみるという違う視点でお送りします。
リーフが空冷でこのバッテリー消耗で済むのは驚異だと記事でも言われてる。
Here Are The Best And Worst Electric Cars In Terms Of Battery Degradation https://t.co/EmJ9CYT4xV @insideevs.comより— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 6, 2021
EVに対する大きな誤解の一つが「バッテリーが消耗して交換させられるから高額になる」というのがあります。
これに対しては先に結論を言っておきます。
まぁ実際にリーフやテスラに乗られている方に聞いてみればバッテリー交換の必要などほぼないということがわかるのですが、それをしない人々の間で今でも言われている「迷信」です。
「だってスマホのバッテリーだって毎日充電してると劣化するだろ!」と必ず攻撃されるところです。実際に購入から1年半経った私のiPhone11Proが毎日必ず充電していてこの状態です。
実はスマホのリチウムイオンバッテリーとは違いEVのバッテリーは消耗しにくい構造になっていること、ゆえにただの移動手段として使う以上の用途があるということについて解説します。
目次
初代初期型からバッテリーが格段に進化した「日産・リーフ」
こちらの記事で紹介されていますが、「日産・リーフ」のバッテリー性能が年々向上していることが表で示されています。
現行リーフじゃなくても初代の後期型から急激にバッテリーが消耗しなくなってる。https://t.co/NUQI8u47si
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 5, 2021
同じ表を私のブログにも貼り付けておきますが、確かに2013年〜2015年くらいまでのリーフは年々バッテリーが消耗(要は航続距離が短くなる)しています。
確かに世の中でも言われている通りに初代リーフの初期型と中期型(2010年〜2015年)はバッテリー消耗が激しかったことがわかります。
ですが2016年以降(初代後期型)のリーフと2017年以降の現行リーフになると5年使用してもバッテリーが10%も消耗してません。
初代後期型のリーフの航続距離は24kWhでEPA基準で135km、30kWhのもので172kmですが、ここから減ってもせいぜい10%ということです。ほとんど変化がないですよね。
ちなみに今日の本題ではありませんがこの「最も信頼に値する基準」と言われるEPAサイクルにしても「高速道路を時速100キロで走行し、クーラーをつけても達成可能」というそれなりに負荷のかかる基準での数字ですので、「一般道を時速60キロで走行し、クーラーを消して」走った場合には全然違う航続距離になる(航続距離伸びるのでは?」とツッコミを入れたくなるところですけど。
実際にネット上でリーフのオーナーの方々が言っているのを集めてみるとEPA基準だと5km/kWh(1kWh辺り5キロ走るという意味)くらいなのに対し「7-8km/kWh」くらいは普通、人によっては10km/kWhくらい走ってしまう方もいるようで、一般道を基準に考えるとかなり違う結果になるようです。
この辺りの「運転の仕方によって航続距離は全然変わる」というのも我々がEVに乗るにあたって学習すべきことかもしれません。
とはいえガソリン車の場合でもその人の運転の仕方と道路状況によって燃費が大きく変化しますので、別に今始まったことではないのですが。
話をバッテリーに戻しましょう。
よくリーフが批判される項目で「強制水冷」がないというのがあります。
テスラ車などの場合「強制水冷」と呼ばれるバッテリーを冷やす機能が内蔵されてますので25万キロ走ってもバッテリー消耗度が8%などという(要は新車の時から8%しか航続距離が減らないということ)驚異のパフォーマンスを発揮しますが、リーフには「強制水冷」がありません。
バッテリーの温度管理をするシステムのことを「BMS(バッテリーマネージメントシステム)」と言いますが、これがないつまり「自然に入ってくる空気だけで冷やす(空冷)」方式のリーフでバッテリーが消耗しないというの奇跡に近いと引用した記事の中でも述べられています。
この点に関しては日産の技術力をただ褒めるしかないのでは?と正直に思います。
リーフのバッテリーを「V2h」として利用すれば半永久的に使える?
もちろんこの「バッテリー消耗」は急速充電を多用する人であれば消耗(リーフだと「セグ欠け」と言います)が激しいのは昔と同様ですが、「自宅等で普通充電」がベースのライフスタイルを送ればかなり優秀ということがわかります。
またEVを買い替えたとしても「古くなったリーフを蓄電池として使用する」という利用法もあります。
忘れてはいけないのはテスラの「パワーウォール」の容量が13.5kWhです。これでかなり巨大な方で、日本メーカーの発売する蓄電池は大半が一桁のkWhです。
リーフの24kWhという容量がこれらの蓄電池と比較するととてつもなく巨大な蓄電池に化けるということに気づくべきです。
仮に自宅にテスラのパワーウォールと24kWhのリーフを使える状態でスタンバイさせておけば合計で37.5kWhの巨大蓄電池になります。
4人家族の一軒家の1日辺りの平均電力消費量が4kWhと言われていますので、何日分の電力を賄えるのか考えると驚異的な電力量です。
このような「蓄電池としてのEV」という活用法はもちろん現在も使用しているEVを兼用で使うこともありですし、EVを買い替えて不要になったけど走行距離が多くてリセールバリューが残ってないような使用済みになったEVを蓄電池専門として残すという活用法も可能です。
自宅の駐車場に置きっぱなしで公道を走ることがなければ車検が切れた後は税金が全くかからない状態でEVを蓄電池として使用し続けることも可能です。
なぜかEVと再エネの話になると「机上の空論」呼ばわりしたがる日本人のマインド
今述べてきたような「リーフを蓄電池として再活用する」というのは最近言われ出した「バッテリーのリサイクル」という面でも有益ですし、これからの「脱炭素」の時代には必須のアイテムとなる可能性もあります。
先日フォルクスワーゲンが「Power Day」において「V2G(vehicle to grid)」というEVの活用法を提唱してきましたが、太陽光など再生可能エネルギーの泣きどころとして「供給が安定しない」という問題があります。
フォルクスワーゲンの「V2G」の計画については以前書いた記事がありますので、こちらをご参照ください。
「脱炭素」を追い風に再エネも活用するフォルクスワーゲンのEV以外の戦略とは?【トヨタは逆走】
先日の「Power Day」でフォルクスワーゲングループが提案したのはバッテリーの生産や充電インフラの整備という「電気自動車(BEV)」の側面だけではありません。「V2H」のシステムを利用してグリッドと双方向のやり取りを可能にする「電力供給の調整弁」として活用するという再生可能エネルギーの欠点を解消する壮大な計画です。
イメージしやすいのが太陽光発電で、当たり前ですが「夜は発電できない」「雨の日などは発電量が減る」ものです。反対に「晴れの日は発電量が多すぎて余ってしまう」ということもあります。
この「供給調整」を行うのがEV、つまり「蓄電池」です。
つまり「発電量が多い晴れた昼間にEVに充電する」「反対に発電できない夜や発電量の少ない曇りや雨の日はEVから電力供給を行う」という風に電力供給が安定するように調整する役割をEVに担わせるということです。
この話をすると必ず「そんなのは机上の空論だ」「家に車がない時間帯はどうするんだ?」と批判が殺到するのですが、統計資料から「自動車は90%の時間帯家の駐車場に置いたまま」というのが平均値です。
平均値なのでもちろん「1日の大半は車で外に出ている人」がいることは想定済みです。
なぜかEVや再生可能エネルギーの話になると僅かな例外のような事象を持ち出して「こんなのは不可能だ」とドヤ顔をしてくる人が現れるのが本当に謎です。
一番笑える例だと何度か触れた「1000キロ休憩なしで走れないと困る」という話で、人間離れした強靭な膀胱でも持たない限り(あるいは尿瓶でも用意しない限り)そんな距離を休憩なしに走ることは不可能だよというのがありましたけど(笑)。
こういう無茶苦茶な例を出してEVや再生可能エネルギーを批判する人々は「EVや再エネが普及すると困る業界の利害関係者」ではないかというのは先日お話しした通りです。
現在の日本で買えるEVですと「日産・リーフ」「三菱・アイミーブ」「ホンダe」くらいしかV2Hに対応している車種がありませんが、今後発売されるEVの中だと「フィアット500e」はヨーロッパではV2Hに対応してますし、フォルクスワーゲンも「ID.3」「ID.4」を日本市場に投入する際には当然装備させてくることでしょう。
「フィアット500e」については以前書いた記事がありますので、こちらをご参照ください。
「フィアット500EV」が2021年に日本に上陸?【何とヨーロッパの次が日本】
昨年2020年にヨーロッパ市場に投入された「フィアット500EV」が2021年中に日本市場に投入されるとの発表がリリースされました。本国イタリアのあるヨーロッパの次に投入する市場が日本だということも驚きですが、価格も電気自動車の中では最もリーズナブルで、ファッション性も高く、人気の出るEVになる可能性を秘めています。
他にもメルセデスが2021年発売予定の「EQS」にもV2Hが搭載して日本市場に投入することが表明されています。
現在日本で購入できるメルセデスのEV「EQC」には搭載されていないところが残念ですが、フラッグシップセダンである「EQS」以降は変化が見られそうです。
メルセデス「EQS」についても以前書いた記事がありますので、こちらをご参照ください。
メルセデス「EQS」から感じる日本市場へのやる気とは?【BMWもポルシェも本気】
メルセデスが2021年4月15日にワールドプレミアを行う予定であるフラッグシップセダンの「EQS」が驚異のスペックで来るという情報がありますので記事にします。またポルシェやBMWについても同様でしたが、日本市場には「V2H」「V2G」を搭載したモデルを投入するという点に日本市場を本気で攻略しようという意欲を感じます。
このような話をすると「EVと再エネ」が密接に関連し、現在だと「EVだってバッテリー作るのに二酸化炭素出してるんだからエコじゃない」という批判を浴びせてくる人々が言っていることが徐々に徐々に破壊されつつあるということがわかるかと思います。
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