シュコダ(Skoda)「エンヤック」から感じる「EVのコモディティ化」とは?【兄弟車VW「ID.4」のGTXも紹介】
おはようございます、@kojisaitojpです。先日ヨーロッパ諸国の比較的早めに前月の販売台数が出てくる国を取り上げましたが(ノルウェー・イギリス・ドイツ・フランスなど)、オランダの統計を見ていると面白いことに気づきました。
【速報値】オランダの4月のプラグイン車シェアは21%(BEVは10%)、前年同月比で2倍近くに。
2021年累計でも17%(BEVは6.6%)に達し、年末には30%前後まで増えると予想されています👀
EV Sales: Netherlands April 2021 https://t.co/Sil0fGzVyU pic.twitter.com/nc5CIIdAUl
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) May 18, 2021
PHEVと合わせた電動化率が20%超え、BEV単独でも10%超えという結果も驚異ではあるのですが、それよりも車種別ランキングの2位に「シュコダ(Skoda)・エンヤック(Enyaq)」が入っていて私は「あのシュコダオートか」と驚きました。
先日紹介した記事ではフランスでルーマニアの「Dacia Spring Electric EV」が入っていて「やっぱルノー傘下でAセグメントのEVだとフランスで強いな」と思ったのですが、今度はチェコの「シュコダオート」がランキングに入っています。
そこで今日は「Skoda Enyaq」について取り上げながら、それだけだと「どうせ日本に来ないでしょ」と言われるので兄弟車でもあるフォルクスワーゲンID.4に「GTXグレード」が登場していることも紹介します。
目次
「シュコダ(Skoda)」はフォルクスワーゲン傘下
さていきなり「シュコダオート」と言われてもピンと来ない人もいるでしょうから簡単に紹介します。
「シュコダ(Skoda)」はチェコの自動車メーカーで、現在はドイツのフォルクスワーゲングループ傘下にありますが、チェコ国内自動車生産のシェア1位を占めるメーカーです。
チェコは意外と(というと失礼かもしれませんが)自動車生産が盛んで、以前もプジョー・シトロエン・トヨタが合弁でAセグメントの小型車を生産(「プジョー・107」「シトロエン・C1」「トヨタ・Aygo」)しています(現在はプジョーだけ撤退)。
「トヨタ・Aygo」は先日「X-Prologue」というコンセプトカーが発表された際に「Aygoの後継か?」と言われたことで聞いたことがある方もいるかもしれません。
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「BMW MINI」が2025年でガソリン車の開発を終了し、2030年以降の全車電気自動車化(BEV)を発表しました。親会社のBMWも「i4」の市販車を公開し、EV化への準備を着々と整えているのに対し、「プロローグ」と題してガソリン車の発売を発表する某日本メーカーとの格差がどんどん開いていく一方です。
話をシュコダに戻しますが、創業が1895年と意外と古く、社会主義時代には「タトラ」と名乗っていた時期もあります。
社会主義体制が崩壊後、最初はルノー・トゥインゴの受注生産などを行って関係を深めていましたが、最終的には1991年にフォルクスワーゲン・グループの4番目のブランド、シュコダ・オートとして民営化されました。
私のブログなどを見ている方であればほとんど「常識」かもしれませんが、フォルクスワーゲングループには他にアウディやポルシェ、ランボルギーニなど大衆車から高級車・スーパーカーまでの幅広いブランドがあります。
東欧の自動車メーカーは日本ではあまり馴染みのないメーカーなのですが、並行輸入の業者などを通じて「オクタビア」「ファビア」などの車種がごく少数ではありますが国内を走っています。先日紹介したルノー傘下の「Dacia(ダチア)」などと同様です。
今回オランダでランクインした「Enyaq(エンヤック)」はこのシュコダオートで最初の電気自動車となります。
フォルクスワーゲン傘下なので先ほど「ID.4と兄弟車」という言い方をしたわけですが、フォルクスワーゲングループなので電気自動車専用のプラットフォームである「MEB(Modular Electric Toolkit)プラットフォーム」を使用しています。
車のサイズ的にミッドサイズのSUVですので「ID.4」とほぼ同サイズです。
シュコダ「Enyaq(エンヤック)」のスペックや価格は?
さてこのようなチェコのシュコダオートが最初に発売するEVが「Enyaq(エンヤック)」なのですが、車両のサイズ的に「4649mm、1879mm、1616mm」なので兄弟車のフォルクスワーゲン「ID.4」とほぼ同じです。
グレードが複数ありますが「搭載バッテリー容量が62kWhと82kWh、航続距離(欧州WLTC)が390キロ〜510キロ、最大充電出力が100kW〜125kW(10-80%の充電時間が30分〜38分)」です。
なお82kWhのモデルには後輪駆動(RWD)と全輪駆動(AWD)の両方の設定があります。
各々のスペックはフォルクスワーゲン「ID.4」とほぼ同等です。現在は「ID.4」は82kWhの上位グレードしか発売していませんので、「ID.4」のベースグレードに相当するEVを傘下のシュコダが先行して製造したと言えるかもしれません。
個性が出ているのはラゲッジスペースで「ID.4」や「アリア」と比較して大きめの585Lあります。
このセグメントは以前から言っている超激戦区ですので兄弟車「フォルクスワーゲン・ID.4」の他にも「テスラ・モデルY」「日産・アリア」「ヒュンダイ・IONIQ5」など競合がひしめきあう状態です。
その中では東欧のチェコで生産という人件費の安さからくるリーズナブルな価格が強調せ材料で、イギリス価格で「31085ポンド(約478万円)〜」となっており、アリアやIONIQ5と比べてアドバンテージがあります。
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アウディが「Q4 e-Tron」という「ID.4」「モデルY」「アリア」「Ioniq5」など各社がEVを投入する激戦区セグメントにEVを投入してきました。フォルクスワーゲンと共通の電気自動車専用プラットホーム(MEB)を用いた性能面も居住性も魅力的なEVです。エンジンの新規開発をストップしたアウディの本気を感じます。
外装の特徴としては電気自動車に「フロントグリル(もちろんフェイク)」があるのは賛否が分かれますが、「Enyaq」の場合はこれがあることで車に威厳が出ているように思えます。
13インチのタッチスクリーンのみで操作を行うインフォテイメントシステムは兄弟車の「ID.4」と全く同じです。
ちなみに既に「イギリスでの予約も開始している=右ハンドル車が生産されている」ので日本市場への投入も可能な状態ではあります。
これについてはフォルクスワーゲンが2022年以降と言っている「ID.3」「ID.4」との絡みがあるので入ってくる可能性は非常に低いかと思いますが。
ただし仮に投入されなくて並行輸入で購入した場合でも「ID.4」とほぼ中身は同じなのでフォルクスワーゲンで整備は可能かと思われます。
ガソリン車・ディーゼル車の時と同様に「シュコダ」や「ダチア」を並行輸入するマニアの方がごく少数でも出て欲しいところです。
兄弟車フォルクスワーゲン「ID.4」のGTXバージョンもあります
というだけでは「日本に来ない車紹介されても」などと言われる可能性もありますので同じサイズの「ID.4」に「GTX」というパフォーマンスグレードを投入してきたフォルクスワーゲンについても解説します。
伝統的にフォルクスワーゲンの車種ではパフォーマンスグレードの車種に「GTI」とか「GTX」という名称を付けます。
私がまだ乗っている「ゴルフ5」もGTXですので2000ccのターボなので同じ位のサイズの国産車には簡単には負けません。
たまに挑んでくるプリウスやアクア(不思議と公道でガラの悪い運転をするのはこの2つが多い)なども踏めば簡単に突き離せます。私の気分次第でやる時とやらない時がありますが(笑)。
スペック的には「搭載バッテリー容量82kWh、航続距離(欧州WLTC)480キロ、最大充電出力125kW(10-80%の充電が40分くらい)」で、0-100km/hの加速が6.2秒とミッドサイズのSUVの中では走りに特化したスペックです。
このスペックは実は先程の「シュコダ・エンヤック」の上位グレード「RS4」とほぼ一緒です(パフォーマンスモデルで重要な最高出力も225kW(460Nm)で220kWの「ID.4」とほぼ同等)。
共通のプラットフォームで比較的似たスペックのEVを大量に、かつバリエーション豊富に出せるのはフォルクスワーゲングループの強みでもあります。
なおこの「GTX」は2021年秋以降の発売を予定しています。
日本市場への投入は何のアナウンスもありませんが、ノーマルの「ID.4」が投入されればこれまで「GTI」や「GTX」のようなパフォーマンスモデルも日本市場に投入していたフォルクスワーゲンですから入ってくる可能性は高いです。
シュコダ(Skoda)のみならずEVが「コモディティ化」しつつある世界
「コモディティ」という表現をいきなり使ってしまいましたが、EVはこれまでの自動車のように複雑な仕組みのエンジンの開発競争で競うのではなくバッテリーとモーター・コンバーターなど比較的単純な仕組みで走れるゆえ、これまで内燃機関車を作ったことのないメーカーでも参入しやすいのが特徴です。
テスラや多くの中国メーカーなど多くのEV専門メーカーが誕生しているのはこのためです。
今回取り上げたシュコダオートも私のような元からの輸入車マニアならいざ知らず、普通に日常の足として自動車に乗っている人には馴染みのないメーカーだったかもしれませんが、もう既にEVをフォルクスワーゲンのプラットフォームを活用して生産しています。
これは見方を変えれば「どこのメーカーでも開発可能」という意味で、かつて液晶テレビなどの家電製品がたどってきたのと同じ道です。
となると早くシェアを奪った方が勝ちとなるので、今回の「シュコダ・エンヤック」のように同じフォルクスワーゲングループで比較的似たスペックのEVをデザインや多少の機能の違いで多くのユーザーを奪う戦略は正しいと言えます。
ところがこれが日本の文脈だと例えばトヨタは一応EVの発売を発表していますが、トヨタと提携関係にあるダイハツ・スズキ・いすゞなどはまだEVを出していません。
スバルはトヨタとの共同開発のEVを発売するとようやく発表してきましたが。
【今週の人気記事】スバル、新型EV「ソルテラ」を2022年発売 トヨタと共同開発した「e-SUBARU GLOBAL PLATFORM」採用 https://t.co/nmcpGA4F8N #subaru pic.twitter.com/rfEqLaUf4W
— Car Watch (@car_watch) May 15, 2021
スバル初のEVである「ソルテラ」についてはまた後日独立した記事で詳しく取り上げます。
しかし依然としてダイハツ・スズキ・いすゞ辺りは何も発表がありません。
特にスズキなどは同社の売上のかなりの割合を占めるインド市場にテスラが上陸し、今後EV普及率を2030年までに30%を超えさせることをインド政府が表明していますので、未だにEVを開発していないスズキは既に尻に火がついている状態です。
インドの場合4輪だけではなく私も以前取り上げた三輪バイクの「トゥクトゥク」などもかなりの台数が普及していますのでこちらの電動化も巨大市場となりそうですが、日本メーカーは参入する予定があるのでしょうか?
「誰もやらないなら俺が売りに行こうか?」と言ってやりたい状態です(笑)。
「軽自動車」という日本独自のガラパゴス規格が中心のスズキやダイハツなどはこれまではそのガラパゴス規格ゆえに日本国内では守られていたと言えますが、今後スズキがインド市場のシェアを食われたり、中国から何度も取り上げている「Wuling HongGuang Mini EV」や「Ora R1 Blackcat(黒猫)」など軽自動車に近い規格のEVが日本市場に入ってきた時に太刀打ちできるのか今から心配になります。
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