ボルボが「C40Recharge」で提起する「所有」へのチャレンジとは?【サブスク・カーシェアへ】
こんにちは、@kojisaitojpです。先日はボルボの全車電気自動車化とオンラインアップデートについて触れましたが、もう一つ重要なサービスの変革を行う予定です。
「3ヶ月で解約可能」なサブスクで今秋導入されるボルボのEV、C40リチャージ【動画あり】(河口まなぶ) – Yahoo!ニュース
ボルボ・カー・ジャパンは2021年3月3日、前日に本国でオンライン発表された「C40リチャージ」のデザインプロトタイプ、C40 Design Prototypeを、東京・青山で報道陣に披露した。
私の中では「C40Recharge」のスペックそのものよりも、「オンライン販売」「サブスク」という単語の方に反応したのが本音です。
旧来の「車はディーラーに行って買うもの」という常識もそうですし、「車は所有するもの」という常識にもチャレンジしてきた革新的な試みであると思います。
ですので今日はボルボ「C40Recharge」という電気自動車についての説明と「サブスク」制度について説明します。
目次
ボルボ「C40Recharge」の全容と「サブスクリプション」の導入
まずボルボ「C40Recharge」についての解説ですが、以前「C30」というコンパクトハッチバックを発売していたラインで来たことからもわかるようにコンパクトサイズのクロスオーバーSUVになり、主なスペックは「搭載バッテリー容量78kWh、EPA航続距離338キロ、最大充電出力150kW」です。
搭載バッテリー容量などから推測すると、先日も解説した「XC40Recharge」と同じプラットホームで生産している可能性が高いです。
EPA航続距離で338キロというのはテスラなどと比較すると物足りないのですが、先日も触れた「OTAアップデート」によって航続距離が今後伸びていく可能性があるので、搭載バッテリー容量の78kWhという容量から考えても400キロ以上走れるようになるかもしれません。
ボルボの「全車電気自動車化(BEV)」とOTAアップデートの衝撃とは?【対照的なガラパゴス日本】
今度はスウェーデンのボルボが2030年からの「全車電気自動車化(BEV)」を発表しました。オンライン販売に切り替えながらも「サブスク形式」という独自の販売方法で既存のディーラー網を残す方向で(雇用を維持する方向で)電気自動車化するという北欧らしい電気自動車への対応方法を発表したボルボの戦略について解説します。
まぁ電気自動車としてのスペックは前にも解説した「XC40Recharge」と大差がありませんので、それほど強調する部分はありません。
それよりも強調したのは「サブスク」形式での提供という点です。
スマホのアプリを始めとして近年様々なジャンルで「サブスクリプション(月額制)」のシステムですが、なぜか自動車業界への導入は遅れています。
「車は自分が所有するもの」という固定観念があるからなのでしょうが、「所有」となった途端に「維持費」がはねあがります。駐車場代に燃料代(ガソリン車の場合)、保険、税金、車検など事あるごとにカネをむしり取られているような気がして自動車は保有したくないという人が一定数、特に都会在住の場合は多いような印象があります。
これに対して一つの解決策を与えてくれるのが「サブスク」であり、
- リースは年単位の長期であるのに対し、サブスクは月単位(ボルボは最短3ヶ月)
- 保険や充電プラン・修理代も込みだと支出は実質駐車場代だけ
似たものとして「リース」や「レンタカー」もありますが、これだとリースは契約が数年単位の長期になること、レンタカーの場合はそもそも料金が高いことが特に個人にはネックです(経費として処理できる法人は除く)。
ボルボはこれまでもサブスク形式で車両の提供を行っていましたが、故障が少ないEVであればガソリン車以上にトラブルなくサブスクさせることができるはずです。
日本でもトヨタの「KINTO」などに見られるようにサブスク形式で車を提供する事業を行なっている業者はありますが、契約期間が最低2年などとリースと変わらない負担をユーザーに強いる面があり欠陥だらけです。
「最低契約期間3ヶ月」であれば「お試しで乗ってみる」ことも可能ですし、転勤などがあって使用が短期間だけ使いたいというユーザーも気軽に使うことができます。
私も似たようなアイディアを思いついたことがあって、「所得の少ない若者世代に電気自動車を普及させるためのカーシェア・サブスク」を事業計画書に書いたことがありますが、年寄りのコンサルに「若者なんか車に興味ないから年配の富裕層向けのビジネス考えろ!」と怒られたことがあります。
「興味がない」のではなく「所得が少なくて車に乗るという選択肢が浮かばないだけでは?」と思ったのですが、私のように考える人間は少数派のようです。
「こう見えても元予備校講師としてあんたらより若者に接してるから多少は若者のこともわかるんだけど」と思いましたが。
目先の金儲けだけ考えれば「年配の富裕層をターゲット」もありなのでしょうが、若者に普及させないと先細るだけだと思います。
日本のあらゆるビジネスが「高齢者(それも富裕層)」しか見ていないような気がするのは個人的に抱いている懸念材料です。
そういう意味では「所有」というこれまでの前提を放棄して「サブスク」という新しい形態を試すことは革新的です。
「C40Recharge」のプロトタイプは世界に3台しかなく、「ミラノ・ニューヨーク・東京」と世界の大都市の中で日本市場をターゲットに選んでくれた貴重なチャンスなのですが。
ボルボ側の視点で考えると「日本市場はEVもサブスクも弱いから一気に攻め込むチャンス」と読んでの戦略である可能性がありますが、上手いところを狙ってきたなというのが私の印象です。
「いつかはクラウン」は「所有」が前提
日本では相変わらず「カーシェア」や「サブスクリプション」のように自分が「所有」する以外の形態に偏見があるようですが(あくまで「自動車」という分野限定)。
私のブログでは過去にも取り上げたことがありますが、このような意識は「高度経済成長」から「バブル」の数十年の間に作られたものだと認識しています。
いつかはクラウン” これは1983年7代目のクラウンの. CMに使われたキャッチコピーです。 高度経済成長の中でクラウンに乗る事が1つのステータスだという証から出来たCMです。
「車を持つことがステータス(簡単に言うと「見せびらかす、自慢する対象」)」だったバブル以前の発想の典型です。
だからこの時代の流れを引きずっている人は今でも「この車リッター5キロしか走らねぇんだよ」的な言い方をどこか自慢げに、要は「こんなにガソリン代のかかる車を出費だとも感じないで乗ってる俺って金持ちだろ?」的な意識をひけらかしながら語る傾向があります。
こういう方々に「じゃあEVに乗ればガソリン代節約できるよ」などと言えば不機嫌になると言うのは想像しやすいですよね(笑)。
まぁ私も過去にシトロエンのオープンカーとかジャガーXJに乗っているのを自慢しながら予備校講師やってましたが、それはあくまでも「ネタ」という意識でやってましたよ。
ドバイ行って豪遊してる様子をアップするのもネタ、派手な衣装で授業やるのもネタ、全部「その辺の奴と俺は違うよ」というインパクトを与えて「こいつの授業だったら受けてみようかな」という意識を喚起するためにやってたのでやってる本人には何も偉くなったような意識はありませんでした(笑)。
ですが世の中を見ると本気で「俺は金持ちだぜ」アピールをしているように見えてしまって「時代遅れだなぁ」と思うことが多いです。
どうしても電気自動車を拒絶して「ガソリン車」にしがみつく日本人
現代で「いつかはテスラ」と言ったらこうなるのでしょうか。
そういえば…経営しているサッカースクールの退会届けの退会理由が、
「代表がテスラ乗ってるから」
っていうのふと思い出したわ…😐
それからサッカーコーチの用具車両、送迎車両を全部テスラにしてやろうって思うようになった😑#退会届#テスラ#tesla
— 渡邉啓吾(keigo watanabe) (@kei5_watanabe) March 6, 2021
冷静に考えればサッカー教室でEVというのは「排気ガスが出ない=子供の健康には間違いなくプラス」のはずなのですが、親が怒るということはトヨタ系の会社とかマツダ系の会社で働いているのでしょうか。
私も今現役バリバリで予備校講師やっててテスラ購入したら「テスラに乗ってるような講師の授業は受講させない」という親が現れるのでしょうかね(笑)。
子供の健康よりも自分の利害が優先というのも理解に苦しみますが。。。
以前「箱根駅伝でBMWの電動バイク」が導入された話をしましたが、駅伝やマラソンのような長距離のロードレースを先導する車両が排気ガスを撒き散らすというのはこれまでは何となく「当たり前」のことのように思われていましたが、EVが普及すれば選手の健康には間違いなくこちらの方が良いというのは誰もが納得できるはずです。
BMW が投入する「iX」「i4」が意外とハイスペック?【意外とやる気?】
正月の箱根駅伝で先導のバイクがBMW製の電動バイクであったことが一部で話題になっていましたが、これが2021年にBMWが電気自動車(BEV)で日本市場に攻勢をかけてくる布告だったと言えるかもしれません。今日は2021年にヨーロッパのみならず日本市場にも投入予定の「i4」「iX」「iX3」について紹介します。
それともこれまでのように化石燃料をバンバン燃やして排気ガスを撒き散らすのが日本の伝統だとでも言うのでしょうか?
先ほどの「いつかはクラウン」と一緒で、戦後わずか数十年の間に当たり前だったことを「日本の古き良き伝統」のように言う人が多いのは理解に苦しみます。
ご丁寧に「余ったガソリンと軽油はどうすればいいんだ?」と石油産業の心配までしてやがる(笑)
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 6, 2021
産油国でもないのに化石燃料大好きのような人が多くいるのは本当に謎です。念のために言っておきますが、ガソリンは原油から単独で抽出できるものではない(ナフサなど他の用途がある)ので、仮に使わなくなっても何も問題はありません。
気がつけば日本が産油国であるかのような心配をする人が増えているのも奇妙な話です。
これまでの「所有」という「常識」を破壊するから電気自動車に抵抗する日本人?
結局のところ電気自動車にしても、今日述べてきた「サブスク」にしてもこれまでの常識であった「ガソリン車」と「所有」という概念を根本からくつがえすものです。
「若者の車離れ」などという言葉がありますが、所得が年々減少している中でこれまでのように「車を所有する」ことが可能な若年世代の数は残念なことに年々減っています。
でも月額課金のサブスク形式であれば「不要になったら解約すればいいや」的に気軽に試してみることができる(しかも所有よりも月々の負担は少ない)ので、若者を再び車市場に呼び戻せるのでは?と私なら思います。
先ほども言いましたが今回のボルボ「C40」のプロトタイプをボルボ社が「ミラノ・ニューヨーク・東京」に持ってきたのか、なぜ上海とかシンガポールとか今勢いのある都市ではなく東京なのか?という点にボルボ社の戦略を感じるのは私だけでしょうか?
「日本市場みたいに有力なEVメーカーが日産以外になくて、自動車のサブスクが全然普及していない国なら勝負しやすい」的にボルボ側が狙って仕掛けてきたのであれば大したものだと思います。
結局のところ「ハイブリッドの方が優秀なのでぇ〜」「電気自動車はエコじゃないのでぇ〜」「原発が必要になるのでぇ〜」などと様々な理由をつけてEVの開発をしないメーカーだらけの国というのは外資系の自動車メーカーからは「攻略しやすい市場」に見えますよね。
昨日のトヨタの記事でも言いましたが「もうどうなっても知らないよ」というのが私の本心です。
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!