ヒョンデ「IONIQ5」を導入したMKタクシーから感じるタクシーの未来とは?【ロボタクシー】

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こんにちは、@kojisaitojpです。少し前のニュースになりますが、私のところにヒョンデ「IONIQ5」が納車されたのとほぼ同時期にこんな大きなニュースがありました。

6月から納車が始まったばかりのヒョンデ「IONIQ5」をMKタクシーに50台、2022年夏から納入するという話です。

日本のタクシーにもようやく「EV化」の流れが来ています
(正確にはBYDをタクシー車両として導入したのは同じ京都の都タクシーなのでTwitterでの私の発言は間違ってます。。。)

ヒョンデの場合は韓国メーカーだというのもありよくわからない批判に晒されることもありますが、私が自分のところに納車された「IONIQ5」について日々語っているように日常生活でも長距離ドライブでも問題なく使えています。

そこで今日は実際にヒョンデ「IONIQ5」を運用する私の目線からMKタクシーがこのEVをタクシー車両として導入する意味について考えてみます。

MKがヒョンデ「IONIQ5」、都タクシーがBYD「e6」などを導入したタクシー業界のEV化とは?

ヒョンデCXC横浜のIONIQ5

まずは「IONIQ5」導入に至るまでのMKタクシーの流れを解説します。

MKタクシーは京都市が2022年4月に発表した「2050京(きょう)からCO2ゼロ条例」に沿ってCO2排出削減に取り組み、2025年に保有車両の30%をEV化、2030年までに全保有車両のEV化の達成を目標にしています。

実は既に2021年9月には自社運営のLPガススタンドを営業終了、さらにLPガスのタクシー専用車は2022年2月に使用を終了し、現在全車両の2%にあたる18台をEVに変更、10台のPHEVをタクシー専用車として使用しています(2022年3月末時点)。

また本年度からはMKタクシーの各営業所への急速充電器の設置も始まっており、会社の車両全体をEVに置き換える準備を着々と進めています。

シェラトン都ホテル大阪とIONIQ5

その一環としてヒョンデ「IONIQ5」の導入が発表されたわけで、ネット上で一部のネトウヨと思しき連中が言うような「社長が在日だから全然売れてないヒョンデに協力した」訳ではありません。

先日の記事でも言いましたが「IONIQ5」は7月末で約100台、これ以外に数百台のバックオーダーを抱えており、順調に売れています。

京都では同じような動きを「都タクシー」も見せており、こちらは中国BYDが現在は法人向けのみに販売する「e6」をタクシー車両として導入しています。

BYD「E6」

なおBYDについては一般の乗用車販売も始めることを発表していますが、これについてまた後日別の記事で取り上げます。

BYDについては私のブログの中でも「実はテスラの次に日本メーカーに脅威の存在」ということには度々触れており、その一例が以前の記事で述べた電気バスであり、2022年4月現在、24の事業者へ約60台が納入されています。

中国という単語を聞いただけで脊髄反射的に「燃える」と大騒ぎする勢力も一部にいますが、BYDのブレードバッテリーは釘を刺しても発火しない耐久性が最大の魅力のLFPバッテリーであることについても以前の記事で解説しました。

都タクシー向けに導入されたe6は、中国で2017年から販売している「宋MAX」を元にホイールベースを15mm延長させ、装備を簡素化させた商用モデルで全長4695mmx全幅1810mmx全高1670mm、ホイールベースは2800mmのクロスオーバーEVです。

BYDのタクシー

他にも都タクシーでは2021年に同じBYDの「M3e」を導入しており、こちらはEVでは非常に珍しい7人乗りです。

BYD「M3e」のタクシー
BYD「M3e」のタクシー

このように京都に本社を置く2つのタクシー会社が韓国ヒョンデ、中国BYDからEVをタクシー車両として導入を進めていますが、おそらく世界のEVシフトの現実を知らない方々は「韓国(中国)のEVなんて導入して大丈夫なのか?」と怒る人もいれば「そもそもタクシーのように走行距離の多い用途にEVは向かない」などと批判することでしょう。

ですので次の項ではEVを知らない多くの方が疑問を持つ「走行距離」と「バッテリー劣化」について疑問を解消しておきます。

EVの航続距離もバッテリー劣化も問題にならない?

フォルクスワーゲンのMEBプラットフォーム

EVをタクシーとして運用する話をすると必ず出てくる批判が「航続距離がガソリン車に比べて短いEVはタクシーに向いてない」というのと「数年でバッテリーが劣化して高額の交換費用がかかるからコスパが悪い」というのがあります。

ですがこれは「根拠のないデマ」です。

順番に誤解を解いておきましょう。

一般的には大体50万キロは走るとされていまして、それを5年ほどで走ってしまいます。
実に、一般車の10倍に相当します。日の換算で約200㎞。東京23区から静岡市まで毎日走るくらいの距離を走ります。
(「アスコンのタクシー広告」より)

あくまで「平均」ですので当然日によって変動し、もっと多く走る日もあるでしょうが1日平均200キロです。

「走行距離が多い」というイメージは「廃車になるまでのトータルの走行距離」であって、1日辺りの走行距離は実はそれほどでもありません。

「バッテリー劣化」についても同様で、

日本でだけなぜかよく批判の対象にされる「バッテリー劣化で交換すると高額」というのも上記の実験結果を見ての通り、BMS(バッテリーマネージメントシステム)が適切に機能すればほとんど劣化しません。

リーフのバッテリー消耗率

何度も取り上げたことのある表ですが、BMSがない自然空冷式のリーフでも近年のモデル(ZE1)ではこの程度の劣化に抑えられる位性能が向上しています。

ケニアで充電中の日産リーフ

日産が初代の「リーフ」を販売し始めた直後にタクシー車両として導入した会社はいくつかありましたが、初代初期型リーフの航続距離はせいぜい150キロ(JC08モードで200キロ)。

これでは航続距離が足りなくてタクシー使用をあきらめる会社が多く出たのも仕方のないことです。

ところがヒョンデ「IONIQ5」の航続距離はバッテリー容量72.6kWhの「Lounge RWD」でEPA換算だと303マイル(488キロ)です。

このくらい走れるのであれば途中で充電の心配をすることなく1日の業務を終えて営業所に戻ってから翌日の運航に備えて充電器に接続すれば問題なく運用できます。

ヒョンデCXC横浜に駐車するIONIQ5
ヒョンデCXC横浜の急速充電器

これは先日の記事でも紹介した「ヒョンデ・カスタマーエクスペリエンスセンター横浜」の様子ですが、来客用の駐車スペースには普通充電器が設置されており、まだ未稼働ですが急速充電器が2基用意されています。

タクシーの営業所にも同じように200Vのコンセント(または普通充電器)を大量に設置して、緊急用に急速充電器を1基2基設けておけば大きな費用はかかりません。

少なくとも先ほどのMKタクシーの例にあったように会社でLPガスのスタンドを運営するよりは間違いなく安上がりです。

ですので実は「タクシーをEVに切り替える」ことによるネガティブな影響はほぼなく、むしろコスト圧縮が可能になるなどのポジティブな側面だらけです。

納車されたばかりのIONIQ5

一般にデメリットと思われがちな要素が実はデメリットにならないのであれば、EVが持つ最大の魅力である「センタートンネルがないことによる広い車内」がタクシーの乗客には大きなメリットになります。

納車されたばかりのIONIQ5その

ヒョンデ「IONIQ5」の車内空間の広さについては私も多くの記事で何度も紹介してきましたが、この広い車内が顧客満足度を高めることは間違いありません。

そしてタクシーをEVにシフトさせることに成功した会社には「ロボタクシー」と呼ばれる自動運転タクシーへのシフトが視野に入り、実は人件費の圧縮が可能になり「ドライバーの高齢化からくる人材不足」も解消できるという次のステージが見えてきます。

EVシフトに出遅れると次の「ロボタクシー」で致命傷を負う日本?

ヒョンデ「IONIQ7」の外観
ちなみに日本で「EVはエコじゃない」「バッテリー劣化ガー」とEVに対するネガティブキャンペーンが繰り広げられてるのを尻目に世界はもう次の次元に動いています。

これは中国のインターネット大手「百度(baidu)」が開発した自動運転タクシーで、昨年から運用されていました(ただし運転席に係員乗車)が、いよいよ係員が運転席にいない状態での自動運転タクシー、つまりロボタクシーとしての運用が始まりました。

現時点ではまだ助手席に係員がいますが、予定では年内には係員なしでの自動運転に切り替えられるようです。

    ロボタクシーを稼働させるには常に電源がONになっていて管理センターと通信(Connect)できる状態である必要

    ガソリン車でやろうとすると12Vバッテリーが上がってしまう(今の時代で24時間アイドリングしっぱなしはまずい)

    ロボタクシーとしての運用に適すのはBEVのみ

「ガソリン車でも自動運転は可能だ!何でもEVと結びつけるな!」と怒る方々はこれが見えていません。

「中国は事故が起きても隠蔽できるから可能なんだ!」と思う方はテスラの「FullSelfDriving」がこの水準まで来ていることを知った方が良いでしょう。

またロボタクシー絡みだと中国勢のみならずヒョンデも「IONIQ5」をベースにしたロボタクシー車両を開発しており、既にソウル市内の限定されたエリアではテスト運用が始まっています。

つまり世界では「既にEVシフトは当たり前、次のテーマは自動運転とロボタクシー」の段階に進んでいます。

昔であれば「先進国(当時だとヨーロッパ・アメリカ)にキャッチアップしないと日本が置いていかれる」と懸命に努力したところから日本の経済発展が始まりましたが、なぜか現在だと「できない理由」を並べてEVシフトにも自動運転にも懐疑的な空気が作られています。

今日はヒョンデとBYDの例を出しながら「タクシーのEV化」の話をしましたが、既にEVをタクシー車両として取り入れて早いうちから運用のノウハウを身につけたタクシー会社ほど次の「自動運転→ロボタクシー化」へのスタートが早くなることは間違いありません。

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