2022年8月ヨーロッパのEVシェアから感じる変化とは?【オセアニアの統計も掲載】
こんばんは、@kojisaitojpです。ここのところYouTubeの方に力を入れていたのでブログは久々の更新になります。
毎月恒例ですが、2022年8月のヨーロッパ主要国のEVランキングなどの情報が出そろっています。
ですがその前にこっちのネタから触れようと思います。
ガソリン車含めたランキングでもモデル3が4位で、メーカー別でも7位に。まだモデルYカウントされてないのに。
Tesla Is 7th Best Selling Auto Brand In Australia In August! – https://t.co/9bm1TWwGqA— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) September 5, 2022
ヨーロッパの話ばかりしてても「ヨーロッパが特殊なんだ!」「ノルウェーがおかしいんだ!」と叫ぶ人が必ず現れるので、今回は2022年8月のヨーロッパ主要国のEV比率や販売ランキングに触れるだけでなく、日本から比較的距離の近いオセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)の状況についても触れてみようと思います。
目次
珍しくオセアニア(オーストラリアとニュージーランド)のEV普及状況にも触れます
なおオセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)やノルウェーのEV化状況については既にYouTubeでも解説しましたので、こちらもご参照いただければと思います。
最初にオーストラリアの2022年8月の自動車販売ランキング(EVのみではなくガソリン車も含めたもの)を見てみましょう。
トヨタのハイラックスやRAV4のすぐ後ろ、ランキング4位にテスラ「モデル3」が入っていることに驚きます。EVだけのランキングではなく、ガソリン車も含めたランキング、しかもピックアップトラックなどが好まれてセダンは不利のオーストラリアでの話です。
日本とほぼ同時期に「モデルY」も納車が始まりますので、来月以降の統計ではどんな結果になるのか要注目です。
メーカー別のシェアを見ても実質「モデル3」のみしか販売していないテスラが7位に入っています。
今後は「モデルY」だけでなく日本市場同様にBYDもオーストラリア市場に参入するようですので、トヨタ・マツダが上位を占める日本車の牙城とも言えるオーストラリアがどのように変化するのか要注目です。
ニュージーランドに関しては統計資料ではなく記事ですが、既に新車販売に占めるEVシェアが23%に達しており、ノルウェー以外のヨーロッパ主要国並(イギリス・フランス・ドイツに近い)です。
Electric Cars = 23% of New Zealand Auto Market, Tesla = 12%
New Zealand has gotten the electric car fever, and August showed that more than ever before. Last month, 23% of new auto sales were sales of fully electric cars. (Adding in hybrids would bring the total share of “green(er)” vehicles to 44%.) Interestingly, the electric vehicle market was dominated by two brands. Tesla and BYD […]
しかもニュージーランドは中古の日産リーフを日本から最も多く輸入している国の一つです。
まぁ首位争いをロシアとしているのも驚きですが、ニュージーランドではバッテリーの劣化した古いリーフもバッテリー交換とアップグレード(例えば24kWhのものを40kWhにアップグレード)もやっていて、日本人以上にリーフを大切にしています。
日本だと日産がアップグレードを認めていないのでこういう試みが発展してませんが、アップグレードされた中古のリーフがガンガン販売されていることからも、新車販売の23%以上にEVが普及しているといえます。
EVs Enhanced – Home
We are here to develop and offer upgrades that enable existing electric vehicles (EV) to remain useable, relevant and desirable as they age.
ヨーロッパの話だと遠い世界の話に聞こえるかもしれませんが、少し距離が近いオセアニアでもこの状況です。
EV比率はもう限界?2022年8月ノルウェーに異変?
次はヨーロッパでEVの比率が最も高いことで知られるノルウェー市場を取り上げます。
BEVが74.8%、PHEVが11.3%で合計が86.1%と前月の83%から再度上昇していますが、前年同月の87.7%からは若干ダウンしています。
昨年8月の統計を取り上げた際にも触れましたが、この数字はテスラ「モデルY」が最初に納車された月なのもあり高めに出ていると思います。
2021年8月のヨーロッパのEV化率から感じる「指数関数的上昇」とは?【ネタでMX-30にも注目?】
2021年8月の最新の統計が出てきたのでヨーロッパの現在のEV化について分析します。既に指数関数的上昇を終えて「EVを買うのが当たり前」になったノルウェーだけではなく、ドイツやフランス、イギリスなどの主要国を見ても前年比2倍以上のペースでEVが増えており「指数関数的上昇」に入る雰囲気が漂うヨーロッパの現状を分析します。
またEVシェアとしては下がっていてもBEVは増加、PHEVが減少とここのところの傾向が続いています。
EVシェアが下がっていることを取り上げて「ほら、やっぱりノルウェーでもEVの限界に気づき始めてるんだ!」と言う人はいるでしょうが、落ち着きましょう。
次に車種別のランキングを見てみましょう。
先月くらいからヨーロッパ各国に見られる特徴である「フォルクスワーゲンが復活気配」な傾向は続いており、「ID.4」が首位です。
またこれまでであれば納車がほぼゼロであった8月にテスラ「モデル3」「モデルY」もランキングに入っていることから「もしかしてベルリン工場からの納車も出てきたのか?」という気もします。
他にはシュコダオートの「Enyaq」や日産「リーフ」も上位に入ってるところも見逃せません。
2022年8月のイギリスのEV化率は?
次にイギリスを見てみましょう。
2022年8月はBEVが14.5%%、PHEVが5.6%で合計が20.2%、前年同月はBEVが10.9%でPHEVが7.4%のトータル18.3%でしたからPHEVが減少しながらもトータルのEVシェアが増えています。
トヨタがイギリス政府の定めた「2030年以降はZEV以外の販売禁止(要はハイブリッドは不可)」に反発し、「ハイブリッドが売れなくなる法律を撤回しないとイギリスに設置してる工場から撤退するぞ」と脅迫していることに以前触れましたが、ハイブリッドは伸びてません。
イギリスは車種別のランキングが遅れて出るため現時点ではメーカー別のランキングになりますが、BMWやフォルクスワーゲンのドイツ勢が息を吹き返したことや、先ほどのノルウェー同様に8月なのにテスラが2位というのもこれまでとの違いです。
やはりテスラはベルリン工場からの納車、BMWやフォルクスワーゲンのドイツ勢もようやくロシアとウクライナの戦争の影響で滞っていた部品の供給が戻ってきたところでしょうか。
とはいえ先月まで首位を争っていたヒョンデ・起亜も上位に入っており、8月までのトータルのシェアでは「テスラ・ヒョンデ・起亜・フォルクスワーゲン」の並びになっています。
個人的には将来BEVが当たり前になった時にはこの4社に中国のBYDを加えた「5強」になるのではと予想してます。
2022年8月フランスのEV比率は?
次はフランスですが、2022年8月のフランスではBEVが13.5%、PHEVが7.5%の合計21.0%で前年同月の19.8%から微増です。
前年同月はBEVが11.3%、PHEVが8.5%であることから考えるとBEVが伸びて、PHEVは減少とこれまで通りの傾向です。
しかも自動車そのものの売り上げ台数が2019年のピーク時から30%減っている中でBEVの売り上げ台数だけが増えているというのを見て「EVはもう限界だ!」とヤフコメなどで叫ぶ人々が私には理解不能です。
ランキングは首位が先月同様にルノー「メガーヌe-tech」、それに続くのがフィアット「500e」やダチア「Spring Electric」とコンパクトカーを好むフランスらしいランキングです。
ですがこれまで触れたきたノルウェー・イギリス同様にテスラ「モデルY」もランクインしており、「ようやく上海工場からの輸出だけじゃなくベルリン市場からの供給も可能になったのかな?」と感じさせる流れです。
なおルノー「メガーヌe-tech」については以前の記事でも取り上げてますので合わせて参照してただければと思います。
ルノー「メガーヌEV」については以前取り上げたように日産「アリア」と共通のプラットフォームであることからかなり質の高いEVであることは簡単に想像できるかと思います。
ルノー「メガーヌ・e-tech」は以前も取り上げたこともありますが、同じアライアンスの日産「アリア」と同じプラットフォームを使用したEVで、価格が30000-35000ユーロ(約400〜460万)とアリアより安いことから売れるのは当然かもしれません。
日産「アリア」と共通のプラットフォームでありながらアリアより低価格なのが非常に魅力的ですが、日本市場へは日産への配慮から輸入されないのかな?と思うとちょっと残念ですが。。。
2022年8月のドイツのEV比率は?テスラ・フォルクスワーゲンの復活?
最後に取り上げるのがドイツ市場です。
前提は変わらずで、この数十年で最悪の売り上げ台数、2019年のピーク期から37%も新車販売が減っていることは先に言っておきます。
そんな逆風の中で8月はBEVが16.1%、PHEVが12.4%で合計28.5%と、ここに来て2022年最高のEVシェアが出ています。
前年同月のBEVが14.9%でPHEVが12.7%ですのでBEVが増加してPHEVは減少という傾向は変わりません。
またハイブリッド・ガソリン車・ディーゼル車も減少しています。
車種別ランキングは8月の統計としては異例で、テスラ「モデルY」がぶっちぎりの首位、それに続くのが復活気配のフォルクスワーゲン「ID.4」と「ID.5」が合算で2位に入っています。
他にもフォルクスワーゲンは「ID.3」や「eUP」もランクインしており、生産を再開した影響はドイツ本国が最もわかりやすい数字で出ています。
この数ヶ月EVシェアが伸び悩んでいたのは「モデルYを待ってただけ?」と思う結果。
で、IONIQ5も1000台位売り上げてて順調なのも付け加えておく(笑)。 pic.twitter.com/4eIeI2mCDQ— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) September 8, 2022
やはりギガベルリンでの生産が本格的になってきた証拠でしょうか。
Twitterではヒョンデ「IONIQ5」もランクインしていることを強調しましたが(私もオーナーですから…笑)、そもそもドイツ市場でヒョンデのEVが「IONIQ5」「KONA」と2車種もランクインしてることはこれまでの歴史ではなかったことです。
比較するようで悪いですが日本メーカーのEVは一台もランクインしてません。
「ロシアから天然ガスが輸入できなくなったからドイツの脱炭素もEV化も終わり」とSNS上で叫んでいる方々はこのような数字を見て何を感じるのでしょうか?
以前から私が主張しているようにロシア・ウクライナの紛争は「化石燃料への依存を止めよう」という方向、「だから再エネとEVにシフトしよう」という方向にに加速度をつける出来事になっています。
テスラやフォルクスワーゲンの生産能力が復活してきた状況で残り4ヶ月どのくらいEVが伸びるのかに注目です。
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