2022年4月ヨーロッパ・世界のEV化状況は?【ロシア・ウクライナで更にEV化は加速?】
こんにちは、@kojisaitojpです。毎月恒例ですが、2022年4月の世界各国のEVランキングなどの情報が出そろっています。
単月だけ、しかもテスラの納車もない月なんだけど(笑)。
— saito koji@バルセロナ行き中止ならオスロ行くか? (@kojisaitojp) May 6, 2022
これまでであれば「EV化率が右肩が上がりに増えていて」という内容に終始するのがヨーロッパの場合は通常営業でしたが、3月4月のデータを見ると必ずしもそうとは言えないようにも見えます。
意外にも「マイルドハイブリッドが伸びているイギリス」がTwitterから引用したものですが、他にも「ドイツでフォルクスワーゲンが全然売れてない」などというのもあります。
とはいえEV化率そのものは前年比で伸びてるのですが。。。
先に結論を言っておくとイレギュラーに出てきた数字だけを見て「ほら、やっぱりヨーロッパでもEVの限界に気づき始めた」などとはしゃぐのは早計かと思います。
今日は同じタイミングで2022年3月のものですが世界全体のEV販売ランキングも出てきているのでこれについて取り上げながら、「ロシア・ウクライナの戦争」がヨーロッパのEV化にどんな影響を及ぼしているのかについても考察してみたいと思います。
目次
テスラ以外は中国勢がほぼ独占の世界のEV販売ランキング
具体的なヨーロッパ諸国を見る前にまずは世界全体でのEVの売上について取り上げてみます。
世界全体の統計は1ヶ月遅れで2022年3月のものですがテスラ「モデルY」「モデル3」とあの「宏光MiniEV」の三強になっているのはこれまでと全く変わりません。
私のブログでも何度も取り上げていますが「宏光MiniEV」は中国一国のみの売上でテスラの世界全体の売上に迫ってくるのですから恐ろしいです。
日本円換算で50万円くらいから買える低価格、女性や若者をターゲットにしたCMなどが中国でウケていることは間違いないようです。
日本だと「EVは高すぎるんだ!」と必ず攻撃対象に「価格」が挙げられますが、逆に考えると「価格が下がればそれなりに普及するのでは?」といつも思うところです。
そういう意味では間も無く発売が開始される日産と三菱の軽EV(「サクラ」と「ekMiev」?)には期待が寄せられるところですが。
ただオプション込み・補助金適用前だと300万を超えるという噂もあり、「また思うように売れないのか?」と疑心暗鬼になってしまいますけど。
低価格のEVは中国以外でも待望されているので、例えば先日はこんなものをドイツで目撃しました。
なぜかCMにネイマール https://t.co/Setx41GfZf
— saito koji@バルセロナ行き中止ならオスロ行くか? (@kojisaitojp) May 6, 2022
私がパリサンジェルマンのサポーターであること、ネイマールをフォローしていることから流れてきましたが、ネイマールが「e.GO.Mobile」というドイツの新興EVメーカーのイメージキャラクターとして起用されるようです。
「ネイマールのくせにコンパクトカー?」と私の立場だと苦笑するところですが(笑)、20000ユーロから買えるEV、日本人にも分かり易いイメージでいうと「以前のSmartのようなコンパクトなEV」が発売されるようです。
これについては情報収集中なのでまた後日独立して取り上げますが「格安のEV」がどこの国でも待望されてるんだなと思う一例です。
話を戻しましょう。
世界のEVランキングを見ると特徴的なことは「テスラと宏光MiniEVが圧倒的」であることの他には「BYDがPHEVを含めて地道に強い」という点です。
特に私のブログでも過去に取り上げたことのあるBYD「Han」「Dolphin」「Yuan plus」がいずれもランクインしており、実はメーカー別のランキングだとテスラに迫る勢いです。
「Blade Battery(LFPバッテリー)」を持つBYDが最も怖い中国メーカー?【EVバスはとっくに日本上陸】
BYDが電気自動車(BEV)の輸出をジンバブエ・ケニアとアフリカ諸国に、年内にはオーストラリア・ニュージーランドへの輸出も予定しています。最大の魅力が「LFPバッテリー」と「Bladeバッテリー」という技術です。レアメタル不使用でコストを削減した安価なバッテリーが発展途上国を含む世界に受け入れられる可能性は高いです。
「BYD」など中国のバッテリーメーカーが電気自動車で仕掛ける戦略とは?【敵は強大です】
「BYD」という中国のバッテリー・電気自動車などのメーカーを知っているでしょうか?電気自動車化のトレンドの中で中国メーカーの発言力が増し、今や世界の覇権を取ろうとしていることは意外に知られていません。今日は「BYD」がリリースする電気自動車を紹介しながら、「BYD」や「CATL」などの中国メーカーの世界戦略に迫ります。
テスラや中国勢を除くとヒョンデ「IONIQ5」やフォルクスワーゲン「ID.4」が上位に顔を出しています。
とはいえ私が一推しのEVであるヒョンデ「IONIQ5」がフォルクスワーゲンの主力EVである「ID.4」と互角(しかもヒョンデは中国では全く売れてません)というのは衝撃です。
これはこの後ヨーロッパ各国の販売状況を解説する中でも出てきますが「ヒョンデ・起亜の大躍進」と「ロシア・ウクライナ戦争がフォルクスワーゲンに与える影響」の両方が影響してのものですので、素直に喜んでいいのかは何とも言えないところですが。
2022年4月イギリスのEV化率は?ハイブリッドが売れまくった?
最初に取り上げたいのはイギリスです(表に「March」とありますが「April」の間違いです)。
BEVが10.8%、PHEVが5.4%で合計が16.2%。、前月はBEVが16.1%、PHEVが6.6%で合計が22.7%でしたから下がってます。
またそれとは反対にマイルドハイブリッドが32.3%と前月の18.9%から大幅に増えてます。
この数字を見て「ほら、イギリスでもようやくEVの限界に気づき始めてハイブリッドを選ぶようになった!」「脱炭素もEV化もこれで終わりだ!」とはしゃぎたくなりますか?
そう思ってしまう方はこの2点を忘れています。
- 3月に大量納車したテスラが4月は納車しない月
- フォルクスワーゲンの納期が遅れまくってる
元々テスラの納車がない月はEVの販売台数が下がるのはどこの国でも一緒です。特に先月3月はテスラが大量納車する月で、その翌月は反動でほぼゼロになるのですから影響力が非常に大きいです。
2022年全体でぶっちぎりの首位のテスラがいないだけでも計り知れない影響が出ます。
そしてもう一つ問題が生じています。
以前テスラの納車がない1月の統計を取り上げて「なんと韓国・起亜が初の首位に」と言ったことがありますが、「テスラの納車がない月はヒョンデと起亜」というのが今回も見られます。
数字が落ちたのはそれだけでありません。これが深刻な影響をもたらしているようです。
深刻な影響が出てきてるな… https://t.co/RPwWVU3kXK
— saito koji@バルセロナ行き中止ならオスロ行くか? (@kojisaitojp) May 6, 2022
以前のテスラのような「生産地獄」ではないようですが、ロシア・ウクライナ戦争の影響でウクライナの部品メーカーからの調達が止まってるようです。
これによりEV(だけじゃなくガソリン車にも影響)が全く生産できない状態が続いているようで、ヨーロッパ各国の統計で通常なら「テスラの次はフォルクスワーゲン」だったのが消えている国がいくつも見られます。
「EVが納車されるのに何年も待たされるなら少しでもガソリン代を節約できるマイルドハイブリッドで我慢しようか」とか「禁止されるのは2030年(イギリスの場合)だからもう一回くらいハイブリッド乗っても問題ないよな」という意識が働くのも不自然ではありません。
ハイブリッド車が売れてる状態が「やっぱり世界がEVの限界に気づいたんだ!」とはしゃいで良いものだとは私は全く思いませんけど。
2022年4月のノルウェーのEV化率は?
気持ちを落ち着かせるために次は世界最高のEV化率を誇るノルウェーを見ましょう。
ここのEV化率が高いのはもう常識ですが、2022年4月もBEVが74.1%、PHEVが10.1%の合計84.2%、前月の91.9%という過去最高の数字には及ばないものの依然として非常に高い、というかハイブリッドもガソリン車もディーゼル車も絶滅寸前なことは変わってません。
少し下がった原因は?と考えると真っ先に思いつくのが「テスラの納車がない月か?」なのですが、車種別の売上はこんな感じです。
ノルウェーで売上1位2位に入るテスラ「モデルY」「モデル3」の納車がない月なのもあり、首位に立ったのは何とボルボ「XC40」で、私も以前取り上げたことのあるSkoda「Enyaq」やフォルクスワーゲン「ID.4」もノルウェーではランクインしてます(市場が先ほどのイギリスと比較して小さいのもあるでしょう)。
まぁそもそもチェコのSkodaはフォルクスワーゲングループですし、「ID.4」と共通のプラットフォームを使用してるわけですが。
それ以外にも多彩なEVがランクインするのがノルウェー市場の特徴で、以前も触れた紅旗の「E-HS9」という中国政府の審査(?)があると言われるあのEVも相変わらずランクインしてます(笑)。
まぁ「ノルウェー在住の中国人経営者」などにのみ販売してる可能性もありますが、他にもXpengの「G3」などもランクインしており、中国勢のEVが見られるのもノルウェーの特徴です。
今回はランクインしてませんがNIOやBYDなどもノルウェーで販売してます。
「だからどうしたの?」と言われそうですが、「ノルウェーの安全基準をクリア=EUの安全基準をクリア=日本でも販売する気になればいつでも販売できる」となることを忘れない方が良いと思います。
2022年4月フランスのEV化率は?
次はフランスです。
2022年4月のフランスではBEVが11.7%、PHEVが9.4%の合計21.1%で、前月の21.7%とほぼ横ばいです。
前月との比較だと横ばいですが、前年同月比だとこれでも大幅に増えてるわけですが。
フランスではテスラ「モデル3」が4月も納車されていたというのがEV化率の落ちない原因だったような気もしますが。
本日取り上げている国だとフランス以外はテスラの納車がない月だったということを忘れてはいけません。
しかもこのテスラの納車の有無で発生するEV化率のばらつきは既にヨーロッパ向けの生産を担う「ギガファクトリーベルリン」が稼働してることからいずれ月による変動は少なくなるはずです。
テスラ以外だとDacia「Spring」やフィアット「500e」、プジョー「e-208」とコンパクトカーが上位を独占してるのはいつも通りのフランスの傾向です。
ですが他のヨーロッパ諸国より売れてないはずのフランスでもヒョンデ「KONA」や起亜「NiroEV」が顔を出しているところにもヒョンデ・起亜グループの脅威を感じるところです。
ロシア依存脱却を狙う2022年4月のドイツのEV化率は?
そして最後はヨーロッパトップの販売台数を誇る自動車大国であり、私も昨年フォルクスワーゲンの「アウトシュタット」を訪れた際にも触れたドイツです。
4月はBEVが12.3%、PHEVが12%で合計24.3%と2月の24.9%、3月の25.6%と比較しても変動なく(要は前年同月比で見ると大幅増加)順調にEVが伸びていることがわかります。
「ロシアから天然ガスが輸入できなくなったからドイツの脱炭素もEV化も終わり」とSNS上で叫んでいる方々はどんな統計を見て言っているのでしょうか?
ただし先ほども述べたフォルクスワーゲンの影響が車種別ランキングに色濃く出ています。
ドイツでフィアット「500e」が首位というのは見たことがありません。というかEVのランキングでもフォルクスワーゲンとテスラ以外が首位なのを見たのは初めてです。
VW、今年生産予定の米国および欧州向けEVは全て売り切れ。欧州だけで30万台のバックログ。https://t.co/ip6ZEqFymH
— Keiichiro SAKURAI (@kei_sakurai) May 6, 2022
生産できないから終わるというわけではなく、想像を絶するEVのバックオーダーがフォルクスワーゲンに積み上がっているようです。
以前から私もロシア・ウクライナの紛争は「化石燃料への依存を止めよう」という方向、「だから再エネとEVにシフトしよう」という方向にに加速度をつける出来事になるのでは?と予想してます。
ドイツを筆頭にヨーロッパの多くの国はこれまでロシアからの天然ガスや原油に依存するエネルギー政策でしたが、ロシアに依存することのリスクを認識したのが今回の紛争なのではないでしょうか?
となると普通に考えると「これからはロシアに依存しないエネルギー政策を推進しよう」という方向に行くことが当然なわけで、必然的にこれまで以上に再エネシフトが進むはずです。
「脱ロシア依存」が進めば進むほど再エネとEVへのシフトが進むのは必然です。
フォルクスワーゲン「私たちの最初のエントリーレベルのEVは2025年から利用可能になります。次世代のこの車を製造するために、私たちは現在、新しいバッテリー工場とスペインの2つの工場の改造に多額の投資をしています。」#フォルクスワーゲン #EV pic.twitter.com/HcqK5h3thu
— がす | テスラおじさん@Vyond (@Gusfrin92486024) May 6, 2022
先ほどネイマールがドイツの新興EVメーカーのCMに出演というのを取り上げましたが、コンパクトサイズのEVへの需要が高まっていることからフォルクスワーゲンでも2025年をめどにエントリーレベルのEVの車種を増やしていくことを表明しています。
この中には私が以前取り上げた「ID.Life」に該当するEVも含まれているようです。
フォルクスワーゲン「ID.Life」から感じる格安EVの可能性とは?【自動運転も視野に?】
フォルクスワーゲンが小型EV「ID.Life」というコンセプトカーを発表しましたが。既に具体的なバッテリー容量や航続距離などのスペックも公表されており、市販化できそうな仕上がりです。将来の自動運転を示唆する構成になっており、発売予定と同じ2025年に「ID.Buzz」も自動運転車両の投入を控えており、関連性を感じます。
今すぐの状況、目先の数字だけを見ていると確かにハイブリッド車が伸びている国もあり、ウクライナなどからの部品の調達の遅れなども影響してEV化にストップがかかっているようにも見えますが、将来のプランは全く変わっていないことを見ておかないとと思うのは私だけではないはずです。
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!