「フォルクスワーゲン・ID.6」の詳細と中国での充電インフラ整備とは?【7人乗りEV登場!】
こんばんは、@kojisaitojpです。現在上海モーターショーが開催中のため世界各国の自動車メーカーが連日新しい車種の発表を続けていますが、こちらも続いています。
メルセデスが7人乗りのコンパクトSUVのEQBを発表、中国から世界展開。
✅4,684 x ?? x ??
✅66.5kWhほか
✅最大出力200kW以上
✅478km(NEDC)/419km(欧州WLTP)
✅3列目は165cm程度まで
✅2021年中国/欧州、2022米国で発売
✅ICE車のGLBと共通プラットフォーム…🤔https://t.co/hluhqLLA1p— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) April 18, 2021
メルセデスが「EQS」に続いて「EQB」を発表し、まだ全体を見ても数の少ない7人乗りのEVなので取り上げようかと思いましたが、内燃機関車の「GLB」をベースに作られたと聞いて「じゃあやめとこう」というのが本音です。
まだ電気自動車専用プラットホームが開発できていないメーカーであれば過渡期の車種として仕方のない面もありますが、メルセデスは先日私も取り上げた「EQS」のようにEV専用プラットホームがありますので、従来の内燃機関車ベースのEVを取り上げると欠点が目立つだけで有益な記事にならないと思います。
ついに「メルセデス・EQS」の全貌が公開!【テスラ超えのスペック?】
電気自動車(BEV)では他のドイツ勢やテスラと比較して遅れていたメルセデスがついにフラッグシップ「EQS」において「これぞメルセデス」というスペックをワールドプレミアで公開してきました。航続距離だけではなく「ショーファーカー」であることを踏まえた後部座席を含む室内空間の充実度など間違いなくトップクラスのEVになります。
そこで本日はほぼ同時にフォルクスワーゲンがワールドプレミアを行った「ID.6」について紹介します。まだ中国市場のみの発売予定ですが、7人乗りで多くの国で需要があるEVになると予想します。
目次
貴重な7人乗りEVのフォルクスワーゲン「ID.6」
今回ワールドプレミアが行われた「ID.6」についてはとりあえずのところは(ただし発売時期未定)中国市場でのみの投入を発表していますが、車のスペック的に北米市場や日本市場への投入もあり得るタイプの車種ですので取り上げてみます。
こちらは先程のメルセデス「EQB」とは違いMEBプラットホームというフォルクスワーゲングループの電気自動車専用プラットホームを用いて開発されたものですから、私の定義でも「本物の電気自動車」になります。
なお「ID.6」には「CROZZ」というグレードと「X」というグレードが設定され、「CROZZ」は「中国第一汽車集団(FAW)」との合弁事業、「X」の方はSAIC(上海汽車集団)との合弁事業で、こちらは関連会社に先日の佐川急便のEVでも出てきた「上汽通用五菱汽車(SAIC-GM-Wuling Automobile)」があることでも有名です。
電気自動車としてのスペックは「搭載バッテリー容量が62kWhと82kWh、航続距離(NEDC)が436キロ〜588キロ、最大充電出力が100kW〜120kW」になります。
まぁ「NEDC」基準では日本のJC08以上にアテになりませんが、300キロ〜400キロの実走行が可能なスペックではあります。
先に発売された「ID.4」と同じバッテリー容量で、サイズが「全長4876mm、全幅1848mm、高さ1680mm」と大きくなったことを考慮するとまずまずの航続距離ではないかと思います。
充電時間も大体30-35分で10%〜80%の急速充電が可能になりますので特に不自由のないスペックです。
しかも「7人乗り」というのが電気自動車ではまだ非常に珍しい存在で、「テスラ・モデルX」や「テスラ・モデルY」、先程のメルセデス「EQB」などごくわずかです。
しかも「テスラ・モデルY」の3列目シートは狭くて子供しか乗れないという説もありますので実用的な7人乗りとなるとごくわずかです。
私も先日モデル3をカーシェアした際に(モデルYはモデル3がベース)「これが7人乗りって無理があるよな」という印象でした。
フォルクスワーゲンではこの「ID.6」に加えて、同じサイズのセダンである「ID.5」や以前「ワーゲンバス」の愛称で親しまれた「ID.BUZZ」の発売も控えており、矢継ぎ早に新しいEVの投入を発表しています。
ただし内装を見る限りだとインフォテイメントシステムなどが「ID.4」と共通な感じがして、その「ID.4」のタッチスクリーンがテスラと比べて非常に使いにくいと、かの有名なサンディー・ムンロ氏も酷評していますのでソフトウェアについてはまだまだというのが現実かもしれません。
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とはいえなぜか日本市場では「7人乗りのミニバンしか買う気がない」という層がかなりの数いますので(個人的には「そんなに人乗せることあるの?」と疑問ですが)もし日本市場に投入されることになれば注目を集めるEVになると思います。
充電インフラも整備するフォルクスワーゲン(中国の話)
さてこのように矢継ぎ早にEVを市場に投入するだけではなくフォルクスワーゲンではバッテリーの自社生産や充電インフラの整備にも力を入れているというのは以前の記事でも説明しました。
フォルクスワーゲン(VW)の驚異の電動化プランを検証【日本もトヨタもオワコン?】
フォルクスワーゲングループが「Power Day」において、大規模なバッテリー生産工場の設立とそこで生産される「Unified Cell」と呼ばれる新しいバッテリー技術、充電スポットの設置、V2Xを含めた再生可能エネルギーを有効に活用するための蓄電池として電気自動車(BEV)の活用など日本メーカーとは別次元の計画です。
ヨーロッパではメルセデスやBMW、ヒュンダイなどと共同で設立した「Ionity」、アメリカでは例のディーゼル不正の罪滅ぼしで設立させられた「エレクトリファイ・アメリカ」での充電インフラの設置を行なっていますが、中国でも「CAMS」という中国メーカーと共同のプロジェクトで充電ネットワークを整備することを表明しています。
先日の「PowerDay」で中国の充電インフラ状況について説明がありましたが、「81%の充電器が遅いと不満、30%の充電スポットにガソリン車が駐車してて使えない、30%の充電器が整備不良で使えない」など悲惨な状況が公開されていました。
そこでフォルクスワーゲンでは2021年中に中国国内でも500箇所・6000基の充電器を設置し、2025年までには17000基の充電器(それも120kW〜300kWの急速充電器)を設置することを表明しています。
「充電インフラが足りないのでEV化できません」のようにEV化して欲しかったら政府や自治体からの補助を期待するような受け身の姿勢ではなく自社が率先して設置するという姿勢を私は高く評価したいです。
充電インフラも整備するテスラ・フォルクスワーゲン
これも「PowerDay」での資料ですが「450キロ」を走るための充電時間というのも現在25分のところを充電器の高速化とEVのソフトウェアのアップデートによって2025年には17分、2025年以降は12分で可能になるように整備すると宣言しています。
この水準まで行くとガソリンスタンドと大差がないレベルまであと数年で進化します。
充電インフラの整備まで自社が責任を持って行うことで、電気自動車を現実的に使えるレベルに持っていくという試みを実行しているのはテスラとフォルクスワーゲンくらい(日本国内なら日産も)です。
最近の日本では以前からEVに対して攻撃的なアンチテスラの方々に加えてアンチフォルクスワーゲンの方々も増えているようですが、必ず言うのが「計画が非現実的・空想的」という批判です。
「バッテリーを自社で生産する」「ヨーロッパ・アメリカ・中国で充電ネットワークを設置」などEVを実用的に使える計画を見てから言ってくれと思うのは私だけでしょうか?
自社のディーラー網に充電器を積極的に設置している日産や三菱以外のメーカーもEVに力を入れることを表明していても充電インフラの整備までやろうとしていない状況の方が無責任だと思うのですが。
「自分たちは車の専門家だから車さえ作ればいい」「充電インフラや電力供給は専門じゃないから国が税金でやってくれ」くらいに思っているのだとすると甘いと言わざるを得ないです。
「ガソリンスタンドだって自社でやってないんだから充電インフラも自社でやる必要ない」とこれまでのスキームでしか考えられないのでしょうか。
トヨタ、渉外活動と温暖化対策との整合性を精査 年内に情報開示
トヨタ自動車は19日、渉外活動が地球温暖化防止の国際的枠組みであるパリ協定の長期目標に整合しているかどうかを精査し、年内に情報開示すると発表した。温暖化対策に対する姿勢が積極的ではないとして、投資家や活動家が同社への圧力を強めていた。
EVの発売を発表する場で「でもPHEVの方が性能もいいから」と余計な一言をホームページに書いてしまったり、アメリカ政府に対して「ハイブリッドやPHEVも税控除の対象にしてくれ」と圧力をかけているような行動が「環境対策に対して後ろ向きの企業」と判断され(これが以前から取り上げているESG投資です)会社が「投資対象として不適格」と判断されれば世界の投資マネーが逃げていくのが現実です。
それによって株価の時価総額が下がれば昨年抜かれたテスラのとの差がどんどん開いていくだけです。
「EV化に後ろ向きな企業」と判断されてプラスになることはひとつもないというのが世界の現実です。
現在世界最大の自動車販売台数を誇る中国で行われている「上海モーターショー」では連日各社が新しいEVの発表をしているという現実を直視できない企業は生き残れないでしょう。
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