意外に効いた?テスラ・モデル3の予約が急増の日本の状況【ヨーロッパの最新状況も】
こんにちは、@kojisaitojpです。珍しく海外のメディアで日本の電気自動車を巡る状況が取り上げられたようです。
Tesla demand sees drastic rise in Japan after price adjustmenthttps://t.co/0RyNnXcTFE by @Writer_01001101
— TESLARATI (@Teslarati) March 4, 2021
ものすごく簡単に要約すると「値下げしても日本では売れないと思ってたら、モデル3に予約が殺到」という感じの内容です。
私も同じことを感じました。「何だ、値段下がったら案外売れるのか?」というのが正直な感想です。
テスラ社は正確な販売台数を公表しない会社なので状況証拠から推測することしかできませんが、注文が増えていることは間違いないようです。
というわけで今日は「日本におけるテスラ車の販売台数の変化」について触れて、比較する意味で月が変わって先月の最新の統計が上がってきた2021年2月のヨーロッパ各国の電気自動車の販売状況について紹介してみたいと思います。
目次
日本における「テスラ・モデル3」の予約状況の変化
まずテスラのホームページで見てみますが、値下げ前ですと「テスラ・モデル3」は納車までの待ち時間が6〜8週と出ていることが多かったです。
それが今や12週〜16週ですからそれだけ予約が入っていることが予想できます(今予約を入れて納車が夏です)。
環境省や地方自治体からの補助金を込みにすると300万円台か、東京都のように補助金の高い自治体であれば300万を切る位でテスラが買えるようになると需要が急増してくることがわかります。
ちなみに同時に気づいたのは「中古車店がこの値下げと補助金のことわかってないのでは?」という点です。
またまた業者オークションの取引価格と実際の中古車店の価格を並べてみますが、業者オークションの段階で325万とかで落札されているので既に新車価格より高いくらいですよね。
それが中古車店になると450万から500万以上と完璧なぼったくり価格です(笑)。
まぁこういうのを見ると「仕入れた価格に150〜200万以上も利益乗せて売ってるのかよ」という中古車店の実態もバレます。
ちなみにスタンダードレンジプラスを現在新車で買うと429万〜で、環境省の補助金が80万なので349万、東京都在住なら更に60万(葛飾区在住なら80万)増額されて289万(葛飾区なら269万)になります(面倒なので税金や登録手数料などは割愛)。
新車より高い中古車を誰が買うのでしょうか? 「自動運転機能搭載の有無」が書いてないのでもしかすると89万プラスされるかもしれませんが、それを加算しても新車より高いです。
テスラの値下げについていく気がないのか、「情弱が買ってくれるからいいや」と思っているのかもしれません。
え?車で生計を立てる商売やってるのにそんなにアホなのかって?
アホですよ(笑)。
私はこれまでルノー・シトロエン・ジャガー・フォルクスワーゲンと外車ばかりを乗り継いでくる中で、バカ高い整備費用を請求してくるディーラーが嫌なので、基本的には街中でこれらのメーカーを扱える車屋をたくさん探してきました。
中にはあります。ありえないような整備費用や中古車の見積もりを出してくる会社が。
整備費用を異様に高くするのを「外車なので」と理由にしてしまう中古車店、市場で同年式で同じくらいの走行距離で同グレードの車種がこのくらいの価格で出てますよと教えてあげても「いや、うちはこれ以下には値下げしない」と意地を張る中古車店とか色々見てきました。
ですのでモデル3のスタンダードレンジプラスも「今はテスラが値下げされたし、来月から補助金が増額されるから下げないと売れない」などと考えずに、「外車なんだからこのくらい利益乗せて売ってもいいだろ」くらいにナメた考えのお店は結構多いと思います。
以前電気自動車のビジネスを計画してコンサルに持って行ったときに「このような不当なぼったくりが横行している中古車業界をぶっ壊す」と言ってみたところ「そのくらいの利益乗せないとやっていけない位中古車屋はどこも苦戦している。業界経験もなくて事情も知らないくせに」と旧来の自動車業界の利害を代表するような反論をされてしまいました。
反対に下手に業界経験があるとこのようなぼったくりを「当たり前」と思うようになって有害だと私は思いますけど(笑)。
2021年2月のドイツの電気自動車販売
さて今度はヨーロッパ諸国の電気自動車の販売状況を見ていきましょう。
まずはヨーロッパトップの自動車大国ドイツのデータです。
2021年2月は完全電気自動車(BEV)が9.4%とPHEVが11.3%と合計で電気自動車の比率が20%を超えてきました。
2020年2月は6.9%だったので約3倍に増加です。コロナによるロックダウンの影響で全体の売り上げ台数が19%落ちている中で電気自動車の売り上げが3倍という驚異の結果です。
フォルクスワーゲンなどが「電気自動車は原則オンライン販売」に切り替えていることもコロナに伴うロックダウンの影響を軽減しているかもしれません。
具体的にどの車種がどのくらい売れたかという統計はまだはっきり出ていませんが、電気自動車(BEV)の39%がフォルクスワーゲングループ(要はアウディやポルシェも込み)が占めている状況で、それに続くのがルノーZOE、皆さんの大好きなヒュンダイKONAなどが続いているようです。
2021年2月のフランスの電気自動車販売
次はフランスをみてみましょう。フランスもドイツ同様にコロナによるロックダウンが続いており、厳しい外出制限が課せられている状況です。
その状況でもBEVが6.4%、PHEVが6.8%で合計13.2%と2020年2月の7.9%から大幅に増加しています。
ロックダウンの影響から全体の売り上げ台数が20%以上下がっている中で出ている数字ですから驚異であることはドイツと一緒です。
ドイツ同様に具体的な車種別の台数がまだ公開されていませんが、どうやら上位に入っているのが「プジョー・e-208」「テスラ・モデル3」「ルノー・ZOE」「ヒュンダイ・KONA」「起亜・NIRO」辺りが入っていると推測されています。
プジョーe-208がおそらくトップであろうという状況、以前から売り上げ上位の常連であるルノー・ZOEやヒュンダイ・KONA、起亜・NIRO(元々ヨーロッパの中でもヒュンダイ・起亜の売り上げ台数が多いのがフランスです)とフランス車と韓国車が上位に入ってくるフランスの従来の傾向が続いているようです。
いずれにせよ、このペースで電気自動車が増加していくと年末には電気自動車の比率が20%を超えてくるであろうと予想されています。
2021年2月のスウェーデンの電気自動車販売
昨日「ボルボの全車EV化」について触れましたが、次はスウェーデンです。
以前からの特徴ですが、昨日の記事でも触れたようにスウェーデンはボルボの母国で、これまでボルボがPHEVを中心に販売していた影響が残っており、BEVの6.1%に対しPHEVの比率が28.7%と非常に高いです(合計の電動化率が34.8%)。
合計で見ると2020年2月の25%から順調に増加しています。
なおスウェーデン政府はこのようにPHEVの比率が高い状況を懸念しているようで、4月からはPHEVの補助金を減らして、BEVの補助金を増額する方針が決まっているようです。
こちらは1月2月合計のデータですが、BEVのトップがなんと「起亜・NIRO」です。
もちろんボルボブランドの「XC40」や「ポールスター2」もランクインしていますが、モデル末期の日産リーフが4位というのも驚異です。
リーフの価値は日本人よりヨーロッパの方がよく分かってる
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 2, 2021
最近思うことが多いのですが、日産リーフの価値がヨーロッパでは日本以上に高く評価されています。
ヒュンダイのバッテリー問題について書いた記事でも言いましたが、これまでバッテリーの発火案件がゼロという日産の技術力はもっと評価されていいと思います。
2021年2月のノルウェーの電気自動車販売
最後の最後は電気自動車嫌いの方々がロクに知りもしないのに国自体すら嫌いになってそうなノルウェーです(笑)。
まぁこの国に関しては「電気自動車(BEV)を買うのが普通、PHEVを買う人が珍しい人、ハイブリッド車やガソリン車を買う人は絶滅危惧種」という状態にとっくに突入しているのは以前からと同様です。
既に電気自動車に乗るのが当たり前の国ですから、BEVとPHEVを合わせた比率が79.1%ともはやガソリン車の存在自体が風前の灯です。
売り上げ台数もなかなか興味深い数字が出ていて、トップのアウディe-Tronに続いているのが「日産リーフ」と「ヒュンダイ・KONA」と日本国内よりも評価されている日産とヒュンダイというのが面白いところです。
ちなみに「ノルウェーは電力事情が特殊な国だから電気自動車が普及してるだけだ」と思われる方は私が以前書いた以下の記事を読んでみることをお勧めします。
電気自動車(BEV)という「ルール変更」に適応する韓国勢と抵抗する日本勢【ウインタースポーツを見習え】
韓国の起亜自動車が「PHEVの賞味期限は2022年」と断言し、一気に11車種の電気自動車の開発・販売に踏み切ることを発表しました。2025年のノルウェーを皮切りにPHEVさえ販売できなくなる国が続出する中でハイブリッドに固執する日本勢が生き残る方法はあるのでしょうか?実はウインタースポーツの世界にヒントがあります。
記事の中で「ノルディック複合」という例をあげましたが、当時無敵だった日本勢に不利なルール改正が行われたという意味では「次世代の中核は電気自動車」というのも一つのルール設定のようなものです。
実際にノルウェーは2025年、その他のヨーロッパ諸国も2035年以降には「内燃機関車(エンジン搭載車)」の販売が禁止されて、いくら性能が優れていると力説しても販売自体が禁止されてしまえば打つ手はありません。
電気自動車の機能ではなく「ルール設定」が肝なことに気づかない日本人
多くの日本人の痛いところは「ノルウェー・ドイツなどのヨーロッパ勢に「電気自動車」が次の主力である」というルール設定をされた」ことを怒るのではなく「ハイブリッドの方が性能がいいのに」とか「電気自動車はまだ時期尚早」と車の機能面で文句を言ってしまうところです。
問題は「機能面」ではなく「電気自動車が次世代の中核であるとルール設定されてしまったこと」です。
日本に不利な土俵でルール設定されてしまった以上、機能面にいくらケチをつけても世界で誰も聞く耳を持たないという状況を理解するべきです。
HVでは全く勝てないから、中国や欧州はEVを環境問題ということにしてゲームのルールを変えてきたのだという分析が正しかったとしても、中国や欧州(今や米国も参加)を向こうに回して、ゲームのルール設定競争で日本が勝てる可能性は、残念ながら中国がHV技術で日本に追いつく可能性より遥かに低い。
— HIRO MIZUNO (@hiromichimizuno) March 5, 2021
この方を引用すると「テスラの取締役のくせに」とアンチの方々が興奮しそうですが、世界の流れを冷静に見ています。
こうなってしまった以上日本にできることとしては「テスラやヨーロッパ勢、中国勢に負けない電気自動車を作る」という「相手の土俵に上がっても勝てる方法」を生み出すことしかありません。
EVにしろ脱炭素にしろ世界でルール設定されてしまってから日本には向かないとか時期尚早だとか文句を言っても誰も聞いてくれないってのわからないかね?
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 4, 2021
日本国内でしかも日本語で電気自動車や再生可能エネルギーの悪口を言っても世界が聞く耳を持ってくれることはないでしょう。英語や中国語で情報発信するならまだわかりますが、日本語で自分の話を理解してくれそうな内輪だけで盛り上がっていても世界の流れには何の影響も与えません。
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