日本メーカー不在のEVミニバンにVW「ID.Buzz」が登場【フィアットの次はVW】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨日(日本時間では本日)いよいよこのEVがワールドプレミアを行い、世界に発表されました。
始まった。
VW ID. Buzz – World Premiere Livestream https://t.co/SMp3mmx2cu @YouTubeより— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) March 9, 2022
以前からテスト走行などをおこなっている様子が様々なメディアにアップされていて既に知名度のあったフォルクスワーゲン「ID.BUZZ」ですが、ようやくワールドプレミアが開催され、ヨーロッパでは4月から生産が始まり、6月までには納車もスタートするという計画も発表されました。
EVミニバンについては先日もフィアット「E-Ulysse」が日本メーカーより先に発表したことを記事にしましたが、今度はフォルクスワーゲンがそれに続きます。
日本向きのミニバンもコンパクトカーもEVはフィアットから?【500eとE-Ulysse】
フィアットが日本市場にコンパクトカーEVの「500e」の2022年中の投入を発表してきました。日本で需要がありそうなコンパクトなEVは日産・三菱の軽自動車EV同様に期待できます。他にもヨーロッパで「E-Ulysse」というミニバンEVも発表され、日本メーカーよりフィアットの方が日本人の需要をわかってそうな気さえします。
ですがヨーロッパ以上にミニバンの需要がある「ミニバン大国」のような日本メーカーからEVミニバンを発売するという情報が全く出てこないのも同時に気になるところです。
Twitterでフォローされている方であれば私個人としてはミニバンのようなジャンルに興味がないのはお分かりでしょうけど、日本におけるEV化を語るにあたってミニバンは絶対に避けて通れないので、先日のフィアット「E-Ulysse」に続いて今日はオルクスワーゲン「ID.BUZZ」について解説したいと思います。
目次
スペックは平凡でもミニバンであることに意味があるVW「ID.BUZZ」
さてようやく全貌が明らかになった「ID.BUZZ」ですが、今回発表になったバージョンは普通の乗用車タイプと「Cargo」と呼ばれる商用バンタイプの二種類があります。
最も大きな違いは乗用車タイプが2列シートで5人乗りなのに対し、「Cargo」の方はシートが運転席と助手席のみで後部が全て荷物を積むスペースである点が大きな違いです。
EVとしての基本的なスペックは共通で、
- 搭載バッテリー容量が82kWh(ネット値が77kWh)で後輪駆動
- 航続距離は約500キロ(WLTPモード)・EPA換算だと400キロ前後?
- 急速充電の出力は170kWまで対応、普通充電も11kWまで対応
バッテリー容量の割に航続距離が伸びないのは「4712mm×1985mm×1937mm(Cargoは1938mm)」という巨体であることと、空力的にEVに向かない形状であることを考えると仕方ないかと思います。
ですがその分充電性能が既に発売した「ID.3」「ID.4」より向上しており、170kWまでの急速充電と11kWの普通充電に対応してます。
大雑把な目安としては170kW以上の急速充電器を使用した場合、バッテリ残量5%を約30分で80%まで充電できるとのことです。
また普通充電器も11kWまで対応してますので、夜に家に帰ってから(商用バンであれば営業所から帰る際に)朝までプラグインしておけば翌朝満充電で出発できるので日常使いには全く支障がありません。
他には最近フォルクスワーゲンが力を入れている「V2X」との絡みでも進展があり、「ID.Buzz」は双方向充電に対応していて、専用のDC双方向ウォールボックスを利用すれば、車両のバッテリから自宅に電力を供給するV2H(Vehicle-to-Home)も可能になるとのことです(プラグアンドチャージについては将来的に対応予定)。
以前私がフォルクスワーゲンの「アウトシュタット」に行った際に動画を撮影してきましたが、「緊急ブレーキ」や「レーンアシスト」「自動駐車」など、フォルクスワーゲンの最新の運転支援機能にも当然対応しています。
5人が移動するための十分なスペースと荷物スペース(容量1121L)が確保されており、2列目シートを倒せば、最大で2205Lの積載も可能と当然ですが、荷物を積むスペースは最大限確保されています。
現行のガソリン車・ディーゼル車の「トランスポーター T6.1」の後継となるEVなのですから、送迎用のバンとして使うことも配送用のバンとして使うことも可能な、日本でいうハイエースなどと同等の役割を果たすEVがいよいよドイツ(と他のEU諸国)でデビューします。
現状では北米市場への2023年からの発売が表明されていますが、日本市場への投入は未定です。
まずはヨーロッパ市場・北米市場が最優先でしょうが、後々はワーゲンバス同様に日本市場にも上陸する可能性は十分あると思います。
コンセプトカーの頃よりは大人しくなった印象ですが、カラーリング次第では普通の商用バンとしての使用も問題なく可能だと思われます。
ミニバン・コンパクトカーと実用的なEVを投入するヨーロッパ勢
先日の記事では「フィアットがEVでミニバンもコンパクトカーも日本勢より先行」ということに触れましたが、実はフォルクスワーゲンも「ID.Life」というコンパクトサイズのEVを既に発表しており、今後数年以内に市場に投入する予定です。
フォルクスワーゲン「ID.Life」から感じる格安EVの可能性とは?【自動運転も視野に?】
フォルクスワーゲンが小型EV「ID.Life」というコンセプトカーを発表しましたが。既に具体的なバッテリー容量や航続距離などのスペックも公表されており、市販化できそうな仕上がりです。将来の自動運転を示唆する構成になっており、発売予定と同じ2025年に「ID.Buzz」も自動運転車両の投入を控えており、関連性を感じます。
日本との規格の違いにより軽自動車というカテゴリーには該当しませんが、それに近いサイズのAセグメント・BセグメントのEVが既に複数のヨーロッパメーカーから発売されています。
何度か取り上げたルノー傘下のルーマニアメーカーDaciaが昨年販売した「SpringElectric」もAセグメントの非常にコンパクトなEVとして、コンパクトカーが人気のフランス市場やイタリア市場で好調に売れています。
ですがそもそも「売れ筋の車種は軽自動車とミニバン」って日本市場こそが該当しますよね。。。最も売れそうな軽自動車とミニバンになかなかEVを投入しない日本メーカーは何をやってるの?という疑問も当然出てきます。
軽自動車EVこそは日産と三菱が年内に何とか発売しそうな感じですが、ミニバンについては日産の「e-NV200」の販売が終了して以降、日本メーカーから「ミニバンタイプのEVを出す」という情報は全く出てきません。
今からでも復活させるか、それともバッテリー容量も少しでも大きくして販売すればそれなりに需要があるのに…と思うのは私だけではないと思います。
EVミニバンの投入がフィアット→フォルクスワーゲンの順番でいいのか?
とこのようにヨーロッパではフォルクスワーゲンやフィアットが次から次へとミニバンやコンパクトカーに相当する実用的なEVを発表してきていますが、残念ながら日本勢からはこの辺への応答が全くありません。
それどころかこのようなニュースが出ていて私は正直呆れました。
ユーザーが二酸化炭素排出量でEVかハイブリッドか選ぶと勘違いしてる恥ずかしい記事は保存しておこう(笑)。
日本の軽、中国格安EVにどう対抗? ダイハツ奥平社長: 日本経済新聞 https://t.co/mJVjiCY5lX— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) March 10, 2022
このニュースはダイハツに対する今後の電動化戦略に関するインタビュー記事ですが、この記事の中でダイハツの社長が「EVよりもハイブリッドの方が二酸化炭素排出量が少ない」という主張のもとに今後もハイブリッド車の生産を続けていく意向を明らかにしています。
日本市場よりもダイハツが強みを発揮する東南アジア市場を意識しての発言のようですが、既に東南アジアにも中国メーカーを筆頭にEVがガンガン上陸しています。
例えば東南アジアではタイが「2035年以降のEV化を視野に」という話は以前の記事で紹介しました。
「タイが2035年から全車EV化」が与える衝撃とは?【新興国・発展途上国こそEV化したがる?】
タイが「2035年から新車販売はEVのみ(ハイブリッド・PHEVも不可)」という全面的に電気自動車化する計画を新興国・発展途上国で初めて出してきました。「できるわけないだろ?」と先進国目線では思いがちですが、燃料代が国家財政を圧迫する国が多い新興国・発展途上国では再エネとEVの普及を先進国以上に待ち望んでいます。
そして最近調べてわかったのは以前は日本車の独壇場だったタイ市場に中国メーカーがこれだけ進出しています。
さすがはグレートウォールモーターズ、既にバンコクにこれだけディーラーあるんだな。恐ろしい。 pic.twitter.com/wY2sJVXt8M
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) February 16, 2022
この「GoodCat」を世界各国に販売しようと販売網を広げる「長城汽車(GreatWallMotors)」については以前取り上げてますので、こちらの記事もご参照ください。
中国産EVの「Ora Cat(猫)」が世界のEV市場に殴り込み?【長城汽車の格安EV】
日本メーカーが不参加のミュンヘンモーターショーに中国の長城汽車(Greatwall)が「Cat(中国では「Goodcat」)という格安のEVを2022年からヨーロッパで発売することを発表しました。EUの安全基準に適合すれば日本市場への投入も容易で、軽自動車に近いサイズの中国製EVが近い将来脅威となる可能性があります。
冷静に考えればわかることかと思いますが、人が車を買う際に「二酸化炭素の排出量が少ないからEVよりハイブリッドにする」と言って買う人は(ゼロではないにしても)非常に少数派だと思います。
それよりは例えば「維持費がかからない」「かっこいい」などの理由、特にガソリン価格が止まることなく上昇してる今の市場だと「バカ高いガソリン代払うくらいならEVの電気代の方が安い」と思って乗り換える方が圧倒的に多いと思うのは私だけでしょうか?
日本より所得が少ない東南アジアなどの新興国・発展途上国であれば余計に「維持コスト」「燃料代」の方が「二酸化炭素排出量」より重要と認識する人数が多くなると思うが普通だと思うのですが。
相変わらず「ユーザーが何を望んでいるのか?」を理解できない残念な日本メーカーの姿がここに見えてしまいます。
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