テスラが提供する「未来のライフスタイル」とは?【American way of lifeの次の世界】
こんにちは、@kojisaitojpです。数日日本メーカーの残念な有様に時間を使ってしまいましたが、また本題に戻ります。
「本題?昨日も一昨日も電気自動車の話してるだろ?」と思われるでしょうが、実は私が一番語りたいのはこういう話です。
オーストラリアで5万戸が参加するテスラパワーウォールを使ったVPPプロジェクトが進んでいますが、もう一つの事例。
80戸が参加し、全ての家に必要なエネルギーの120%を発電可能な太陽光、蓄電池、電気給湯器、EV充電器が付属、VPPの実証が進んでいます。https://t.co/Dv24W9WrUW
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) January 24, 2021
実はこのブログでは随所で繰り返し言っていることに「テスラはただの自動車メーカーじゃないよ」というのがあります。
電気自動車というのはあくまでも「基盤」というか「起点」に過ぎない、この起点から導かれるこれまでとは違ったライフスタイルを提供するというのが私がテスラという会社に興味を持った理由です。
テスラの電気自動車はもちろん魅力的ですが、私自身は別に自動車の専門家でもありませんし、自動車ジャーナリストのように車の中身についてあ〜だこ〜だと評論するつもりもありません。
今日はそんなテスラが提供する「未来のライフスタイル」について紹介してみます。
目次
テスラが提唱する「未来のライフスタイル」とは?
先ほどのオーストラリアのモデルがテスラの「ライフスタイル」を理解するのに非常に分かりやすい例なのでこれを使って説明します。
オーストラリアのブリズベン郊外のオックスレーという街に80世帯を集め、格安の料金でテスラが太陽光パネルとパワーウォール、電気自動車を提供し、このコミュニティの中の電力は全て太陽光発電で発電した電力で賄うという仕組みです。
結果として全世帯で必要な電力の120%を発電できたようで、当然太陽が出ない夜間はパワーウォールに蓄電した電力で賄う、電力が足りない世帯には他の世帯で余った電力を融通し合うことで電力を自給自足する生活が可能になっているようです。
各家庭で余った電力は売るのもOKですので臨時収入も発生します。
テスラ社ではこの80世帯のみならず、5万世帯までこのサービスを拡大しようとしています。
「スマートグリッド」と呼ばれる「既存の電力網を再構築し、IT技術でリアルタイムなエネルギー需要を把握して効率良く電気を送電する仕組み」を実現したという話なのですが、従来のように大型発電所だけに頼らず、地域で必要な電力を消費地で生産できるという仕組みも備えていることが特徴です。
その仕組みを支えるのがテスラの「パワーウォール(蓄電池)」とその蓄電池から充電された電気自動車ということです。
テスラ社の場合は電気自動車には蓄電池の仕組みがありませんが、これが日産リーフや三菱i-MiEVだと「V2H」という電気自動車を蓄電池として使うことで電力が余っている時間帯には電気自動車に電力を蓄えておいて、反対に電力が足りなくなる時間帯には電気自動車や蓄電池から電力を供給することで、電力供給量が限界を超えないように調整する。
先月のように「電力の供給不足」が懸念されるときにこのようなシステムが機能して、電力のピーク時には蓄電池や電気自動車に蓄えられた電力を家庭内に供給すれば電力不足とも停電とも無縁の生活が可能です。
既存の電力計の代わりに「スマートメーター」という機器をすべての家庭やオフィスなどに設置し、スマートメーターは電力線と併設されたネットワーク回線で消費電力などの情報を電力会社にリアルタイムに転送する。
これが可能になれば(というかネット社会では余裕で可能です)電力会社は供給先のエリアや個別の家庭に至る、詳細な電力消費量を把握することができてピーク時の発電量を調整できます。
「電力不足なのに電気自動車なんて言ってられない」と先月の供給懸念が発生した時に言っていた人は多かったですが、反対です。むしろ電気自動車を蓄電池として使うことが電力不足を解消し、電力の安定供給を可能にします。
などと言うと「日本では太陽光だと電気が安定しないのでぇ〜」と化石燃料と原子力が大好きな方々が茶々を入れてくるのですが、例えば太陽光だけで安定しないのであれば風力や地熱、最近ようやく開発が始まった洋上風力発電など他で補えばいいだけです。
例えば風力発電だと北海道が一番向いているのですが、北海道から本州へは「北本連係線」という約90万キロワットの巨大な送電線がありますが、日常は使われていません。
北海道で大量に風力発電所を作って電力を本州に90万キロワットのフル回転で送れば巨大な電力網として機能します。
反対に北海道で災害などがあって電力が足りない時はこの送電線を止めればいい話です。各地域で電力を融通し合えば原子力なんかに頼ることなく電力を安定供給できます。
日常は各地域で自給自足のように電力を供給し、非常時には協力し合うというシステムが先ほどのテスラがオーストラリアでやろうとしている仕組みです。
原子力発電も確かに二酸化炭素は出ませんので「再生可能エネルギー」の一種だとは言えますが、このようなシステムは作れません。
- 「原子力発電」は例えば東京電力のような大企業と国が管理する「中央集権型」のシステムです
- 反対に「再生可能エネルギー」はその地域その地域でエネルギーを自給自足するという「分散型」のモデルです。
「中央集権型」のメリットは「何でもお任せ」「裏側を見なくていい」という点です。
これは別な言い方だと「ディズニーランド型」とも言われます。ディズニーランドが夢を売る空間だということは誰でも知っていることですが、当然ですがその「夢の国」の中でも「ゴミ処理」や「汚水処理」などは必要です。
ですがディズニーに客として滞在している限りそういう裏の側面は見えません。もちろんそれはディズニーランドが意図的に見せていないということなのですが。
余談ですが以前中で働いてた人に聞いた話だと、ミッキーマウスは裏側の控室などでも絶対に着ぐるみを脱がない、つまり中に誰が入っているのかは絶対に見せない位徹底しているそうです。
ただこのような「中央集権型のシステム」は我々がシステムを見通せない、自然にシステムの中で踊らされている、誰かに操られている状態です。
地域によりますが私が住んでいる東京都であれば東京電力にライフラインを全て握られている状態です。
平常時であればその方が楽だからいいやとなるのですが、このことに疑問を持ったきっかけが「東日本大震災」とそれによる原発事故です。あの時我々は原発が一回事故っただけで自分たちの生命の危機を意識するほどのリスクや原発が止まることによる停電のリスクに気づいたわけです。
「何でもお任せ(例えば東京電力に、原子力に)」していたことにようやく気づきました。中央集権型で一箇所に全てお任せのシステムはその一箇所が機能しなくなるだけで一瞬でライフラインが失われてしまいます。
ですので「それでいいのか?」という流れで、東日本大震災の後に太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」へのシフトが意識されるようになりました。
ただこのようなテスラが提唱するライフスタイルはあらゆる面でこれまでのライフスタイルの前提とは違うものなので反発する人が多いと言うのはわかります。
高度経済成長期にも「American way of life」がありました
私が日々「加齢臭」と呼んで揶揄する方々の子供の頃の話ですが、日本にも「高度経済成長」という時代があり、その一旦のピークが大体前回の東京オリンピックだったと言われています。
だからこそ「あの頃は良かった」「またオリンピックがやりたい」という、加齢臭な方々の夢のような時代だったらしいです。
私を含めてその時代を全く知らない人間からすると「何でそんなにオリンピックにこだわるの?」と思ってしまうところですが。
1966年(昭和41年)東京。とある主婦の買い物風景@retoro_mode pic.twitter.com/opfLFqyIPE
— JUNK (@XMbHWFpbX) January 28, 2021
1964年が前回の東京オリンピックですから、「高度経済成長」も終盤に差し掛かっている状況です。
少し前の1950年代には「三種の神器」という流行語とともに「冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビ」が「欲しいもの」「あると生活が楽になるもの」として国民の憧れでした。
この映像の1960年代には「3C」という流行があり「Car Cooler Color Television」が国民の憧れだった時代です。商品の質がアップしてるのが分かりますよね?
第二次世界大戦で負けて焼け野原となった日本がこういうプロセスで経済復興したというのが分かりますが、この憧れの対象が「American way of life」、つまりアメリカ風の生活様式です。
例えばこの時代に日本でもオンエアされていた「奥様は魔女」というアメリカのドラマをご存知でしょうか?
アメリカのコメディドラマなのですが、例えばこのドラマの中に出てくるアメリカの家の中には冷蔵庫があり、洗濯機があり、カラーテレビがあり、外には車があり」というアメリカ人のライフスタイルを伝えます。
現代であれば「スタバでキャラメルマッキアートを注文し、スマホをいじる」「ドミノピザを注文し、ソファに寝転びながらお気に入りの映画を観る」という感じでしょうか。
このような「アメリカ風の生活様式」というのが日本人の生活のモデルとなり、「自分もこういう風になりたい」という意識が日本人の共通前提のようなものとして流れていた時代です。
正確には日本がソ連などの社会主義陣営に付かないように意図的に「アメリカの方が素晴らしい」と洗脳したとも言えるのですが。
当時はスマホもインターネットもなく、主な情報源といえばテレビか新聞、雑誌という時代ですからテレビでこのようなドラマが放映されるとみんなが観ていて共通のイメージを持ちやすかった時代だとも言えます。
そしてそんな夢を叶えるように日本が経済発展し、ついにはオリンピックを開催し、世界2位(当時)の経済大国に成長したというのが、私が「加齢臭」と揶揄する方々にはバラ色の時代だったようです。
今思えば「ガソリン車」というのもこの中に入っていたんだな、だから年代が上の人ほどガソリン車への思い入れが強いのかなと思うところです。
しつこいですが「人馬一体」とか言ってる会社を見るとそんな気がしてしまいます(笑)。
ちなみにこの経済成長は1970年代に入って発生した「オイルショック」で終わります。
ここで化石燃料に頼ることの限界を実感していれば未来は変わっていたのになと思いますが。
正確に言うと化石燃料に代わるエネルギーを「原子力」に見出したことで数十年無駄にしたと言えますが。残念ながらこの時代から東日本大震災まで何となく時間を過ごしてしまいました。
私の目線だとそれから時間が経ちましたが、現在テスラが提供している「太陽光発電とパワーウォール、電気自動車で化石燃料に頼らない自給自足の生活を送る」というのは新しくアメリカからもたらされた生活のモデルような気がします。
テスラ社の株価は青天井?
今日の記事を読んだ方の中には「あれ?テスラの話全然してねぇよ」と思う人もいたかもしれません。まぁ確かに電気自動車の話はほとんどせず、テスラのもう一つの主力事業である「エネルギー事業」を中心に話しましたが。
テスラをただの自動車メーカーだと思っていると、今のテスラの株価の上昇は理解不能かもしれません。
再生可能エネルギーを使った自給自足の生活を可能にすることで、電力会社や原子力などに依存しない、今までより安定した電力供給が可能になる社会のモデルを提唱していますし、実際に実行にも移しています。
だからTwitter上などでは「バブルだ」「インチキだ」と怒っている投資クラスタからのツイートをよく見かけます。流れに乗れた人であれば資産がどんどん増えたでしょうが、「こんな上昇はインチキだ」と途中で降りて今は指をくわえて見ている人や、空売りを仕掛けて損しまくっている人からするとテスラは恨みの対象かもしれません(笑)。
しかし「電気自動車と再生可能エネルギーを基軸とした新しいライフスタイルを提供する会社」と考えれば話は別です。
ただの自動車販売メーカーではなく、「再生可能エネルギーで電力をその地域その地域で自給自足する中で電気自動車がある社会」をプロデュースする企業、ある種のインフラを提供する企業だと考えれば青天井に株価が上昇していくのも納得できます。スケールが違いますので。
まぁイーロンマスクの野望は地球上では終わらず、ロケットを飛ばして火星に行く、将来は火星に移住するという「スペースX」という更に先のプロジェクトまでありますが。
どこまで共鳴するのかはその人次第ですが、少なくとも現在の地球で暮らす我々にも一つの新しいモデルを提供してくれているということは忘れてはいけません。
とはいえテスラ株を買えと推奨しているわけではありませんので、投資は自己責任でお願いいたします(笑)。
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