テスラの「Megapack」を用いた「蓄電池発電所」が北海道に誕生?【再エネと蓄電池】

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こんばんは、@kojisaitojpです。直接EVが絡む話ではないのですが、意外なところで「テスラ」の名前が出てきました。

テスラが北海道千歳市で2022年から稼働する「蓄電池発電所」に「Megapack」という巨大な蓄電池(容量3MWh)を設置する、日本国内では初のプロジェクトです。

テスラは世界各地で多くの蓄電池発電所プロジェクトへ参画していることを知っている人は現時点では限られるかもしれませんが、「持続可能な社会」を実現するためにEVを作るのと同じくらい力を入れているのが「ソーラールーフ(太陽光発電)」と「パワーウォール(蓄電池)」です。

中国CATL製のバッテリーを使用するということはおそらく私も何度か取り上げたLFPバッテリーです。

中国製のバッテリーと聞いただけで「燃える」と興奮する方がいそうですが、発火リスクの最も低いLFPバッテリーですので大きな心配は要らないかと思います。

今日はこのテスラの「Megapack」を具体例に「再生可能エネルギー」の普及に不可欠な「蓄電池」について解説してみます。

再生可能エネルギーの需給調整にテスラの「Megapack」を活用する意味とは?

テスラの蓄電池発電所
「脱炭素」の流れによって日本でも注目されるようになった再生可能エネルギーですが、例えば太陽光発電の場合だと「太陽が出ている昼間は発電できるけど夜は発電できない」、風力発電だと「風の強さによって発電量が安定しない」など電力供給の不安定さを欠点として指摘されることが多いです。

この不安定さを改善するために用いられるのが冒頭でも引用した「蓄電池」です。

太陽光がわかりやすい例なので使いますが、昼間の大量に発電できる時間帯は自宅や工場などの電力供給に使っても電力が余ります。

これを蓄電池に貯めておけば、夜間や雨で太陽が出なくて発電量が少ない時の電力供給に使えるということです。

テスラ「Megapack」

テスラでは家庭用には「Poweerwall(13.5kWh)」、事業所向けに「Powerpack(232kWh)」、発電所などの大規模な施設向けに「Megapack(3MWh」と3パターンの蓄電池を用意しています。

家庭に太陽光パネルとPowerWallを設置することのメリットについては以前取り上げた記事があるのでこちらをご参照ください。

ちなみに最近では太陽光と蓄電池を供給するだけではなく住宅建設にも進出する動きをアメリカで見せています

今回の北海道千歳市でのプロジェクトでは、株式会社グローバルエンジニアリングが事業者として、太陽光発電などによる再生可能エネルギー電力、節電等により生み出されたネガワット電力、自家発電設備による電力、そしてMegapackにおける貯蔵電力を同一グループ下でバランシングし、電力系統の安定化を図ります。

また電力卸市場、需給調整市場、容量市場へも参加し、更なる系統安定化への貢献、収益化が見込まれています。

今日の本題ではありませんし、テスラ側からのアナウンスは一切ありませんが、ここで発電した電力を供給する「スーパーチャージャー千歳」が誕生する可能性もあるかもしれません。

既にこのテスラの「Megapack」は様々な地域や企業に既に導入されており、例えば同じTech系企業ではAppleが既に採用しています。

2020年4Qでは過去最高の752万ドルの売り上げを再エネ・蓄電池で叩き出しており(設備投資に787万ドルかかっておりまだ赤字ですが)、「脱炭素」の流れの中で再生可能エネルギーを貯める蓄電池として「Megapack」を導入する企業が世界中で増えています。

「太陽光じゃ日が沈んだら使えない」などというまるで原始時代の人々のような批判がいかにピントのずれたトンチンカンなものであるかが理解できるかと思います。

フォルクスワーゲンの「Bi-Directional Charging(双方向)」もEVを蓄電池として活用

フォルクスワーゲンのV2H計画2
実は再生可能エネルギーを有効活用するために蓄電池としてEVを活用するという方針をフォルクスワーゲンが2021年3月の「PowerDay」において公表しています。

「bi-directional wallbox charger」と書かれていることからもわかるように「双方向充電」、つまりグリッドからEVへの電力供給(これを我々は充電と呼んでます)だけではなくEVからグリッドへの電気の供給も行うということです。

最近だと日本でも真夏や真冬に「電力供給が危ない」などと言われることが多いですが、そういう時にグリッドから電力をもらうのではなくEVから電力供給ができれば需給不安を緩和することができます。

フォルクスワーゲンのV2H計画

日本でも「V2H(Vehicle to Home)」というEVから家庭へ電力を供給する仕組みがありますが、フォルクスワーゲンの計画ではグリッドにも接続してしまおうという規模の大きなものです。

などというと必ず「動いてる車は使えねぇだろ!」と怒る人が出てきそうですが、車は一生の中で90%駐車場にいる存在です。

実際に「車乗るのは土日だけ」という人も多いでしょうし、反対に平日仕事で車で出ていれば土日は家の駐車場に置きっぱなしという人もいるでしょう。

あくまで「その時駐車場に停まっているEVを活用しよう」というだけの話です。

  • local hot spots (stores, coffee shops, restaurants)でのEV充電が無料になる
  • EVに充電した電力は走行に使っても自宅の電源してもOK
  • 災害の際にはEVが蓄電池となり電力供給(航続距離200キロのEVで5日分の電力)

以前日産が「Zesp2」という充電し放題の充電プランを出していた時には「ディーラーでリーフに充電→家に帰ったらV2Hで家庭の電力として使う」という日産側が想定していない充電器の使い方をする人が数多く見られ問題になった(定額のZesp2からZesp3へ変更になった一因)ようですが、フォルクスワーゲンのプランでは「むしろ家庭の電力として使っていいよ。それが電力供給の逼迫するピーク時間帯ならなお良し」という方針です。

「日常の電力の需給調整に協力してくれるお礼として好きなだけ充電してその電力を何に使っても良いよ」ということです。

フォルクスワーゲンとしては再エネで発電された電力の多くが使われないで捨てられている(太陽光なら先ほどのように昼間は電力が余る)ことを重視しており、可能な限り使ってもらおうという計画のようです。

「電力が足りないのにEVなんて」と批判する人がなぜか日本にはいますが、むしろ「電力供給が足りない時に有効活用できるのがEVだ」というのが本当の姿です。

日産もテスラやVWのように「発電所」を作ればよかった?

V2Hのイメージ画像
後悔するのは後の祭りですが、日産がZesp2をやっていた時期も仮に「ディーラーに設置された太陽光パネルで充電した電力」で充電する仕組みを作っていればフォルクスワーゲンと似たようなことも可能だったかもしれません。

そして日産ディーラーがグリッドからの電力と再エネを発電して蓄電池に貯められた電力の両方を併用する充電器を用意していれば、テスラのスーパーチャージャー並(テスラはグリッドと蓄電池の併用です)の速度も出せてユーザーの役に立ったことでしょう。

当然ですが快適に急速充電できる環境を日産が自社で整えることができれば、日本国内におけるEVの普及率アップにに貢献できたのでは?と思うと残念なところです。

御殿場スーパーチャージャーとモデルS

「うちは電気車じゃない、車屋だ」と思うかもしれませんが、実際にテスラは自社で「スーパーチャージャー」を全世界に設置してるわけですし。

長野スーパーチャージャー

まぁ日産の場合は今になっても「うちは車屋なので発電はしない」という残念なコメントが出てしまってるようですが。

自社で蓄電池(PowerwallやMegapack)や太陽光パネルも用意し、「持続可能な社会」の実現のために電力供給にも手を広げていますので見ている視野の広さが違います。

上記の記事ではAmazonが自社で再生可能エネルギーの発電所を作って、自社の電力を再エネ100%に近づけるという計画が書かれていますが、今や車メーカーだろうが物流だろうが何だろうが関係なく自社で再生可能エネルギーを発電して二酸化炭素ゼロを目指すというのが世界の流れです。

「うちは車屋だから」というのが理由になる時代はとっくに終わっているのではないでしょうか?

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