再生可能エネルギーも加速するアメリカと逆走する日本【電気自動車と同じ展開】
こんばんは、@kojisaitojpです。いくつか新しい電気自動車の話題が入ったので後回しになりましたが、アメリカにもこのような困った人がいるようです。
大規模停電に見舞われたテキサス州知事が「再エネのせい」と嘘を吐いているという主張。
日本でも電力不足の理由を当初「太陽光発電のせい」としていましたが、実際にはむしろ増えていて、どこの国でも再エネが責任転嫁に利用されているようです…😢
Lies, Damned Lies, https://t.co/Gd1PfcHo0X
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) February 19, 2021
困った人であることは確かなのですが、それでもアメリカ、特にテキサス州の場合は「シェールオイル」の産地ですし、元々歴史的にテキサス州と周辺のオクラホマ州、カリフォルニア州などは油田があった地域です。
政治家が石油産業の利害を代表する人であれば(共和党系は結構多いです)再生可能エネルギーを敵視するのは適切かどうかは置いておいても一応理解できる行動です。
環境問題に無関心と言われていたトランプ前大統領も共和党ですし、シェールガスが産出されるペンシルバニア州やウエストバージニア州(しかもこの辺が大統領選挙の勝敗を分ける州)などで石油産業を味方につけて勝つ計算だったのは昨年の大統領選挙時の演説などを見ているとわかります。負けましたが。
このように現在のアメリカは、「シェールガス」「シェールオイル」の産出量が中東のサウジアラビアやUAEなどより大きいです。
しかし日本のように石油がほぼ出ないような国で先月のように「電力不足」が叫ばれた時に「太陽光なんかやってるから電気が足りなくなったんだ」「これだけ電気が足りないのに電気自動車なんてあり得ない」のように再エネや電気自動車が叩かれるというのは意味不明です。
今日はこのように1月2月で偶然アメリカと日本の両方で起きた「電力供給」の問題を巡る対応から、今後のエネルギーの在り方について考えてみます。
目次
「大規模停電発生→再エネを更に増設」と考えるのがアメリカ流
そもそも「寒波」と「停電」の原因を「再生可能エネルギー」に押しつけるのが筋違いというもので、今回のテキサス州の場合にも原因は「火力発電」でした。
具体的に説明します。
異常寒気により予定されていた供給力の2分の1に相当する45GWもの電源が停止(オフライン)となったことが今回の停電の原因です。
寒さにより発電能力(そもそも燃料がないわけですから)を失ったことで火力28GW(含む一基の原発)、風力18GW(含む太陽光)が停止に追い込まれました。停止した火力の殆どはガス火力であり、今回の停電の最大の要因はガス火力の停止になります。
このように寒波の襲来によりテキサス州での天然ガス(シェールガス)の生産量が半分に落ちています。
風力も止まっているので先程のテキサス州知事のような勘違いも生まれるのですが、そもそもテキサス州では悪天候により再エネが機能しない最悪のケースでも「火力100%」で賄えるとの計算をしていました。
「シェールオイル」などによりテキサス州中に張り巡らされていた「シェールオイル」と「シェールガス」のパイプラインが凍結して天然ガスの生産量が通常時の半分になるというのは誰も想定していなかったようです。
そして「想定されている量の天然ガスが供給されない→火力発電が不十分→大停電」という流れです。
まぁそもそもアメリカで最も温暖な地域の一つであるテキサス州でこのような気温になるというの自体が百年に一度あるかどうかの異常気象なのですが、比較対象として考えると「原発事故に直結するような大地震が起きた日本」と同じくらいのレアケースですので、対処法も学ぶところがあるのでは?というのが私の見解です。
実際にテキサス州でこの状況というのは明らかに異常です。
先月日本でも騒がれた「電力供給危機」の原因も同じように火力発電、正確には「LNG」の供給不足でした。
電力逼迫はLNG不足が原因か 「売り惜しみ」疑う声も:朝日新聞デジタル
■■経済インサイド 昨年末から今年初めにかけ、国内で起きた電気の需給逼迫(ひっぱく)は、日本の電力供給体制の危うさを浮き彫りにした。なぜ、こんなことが起きたのか。その原因や対処方法をめぐっては、いまも…
今回の日本における「電力不足」も元々は火力発電用のLNG燃料の調達量を間違えたのが原因であり、ここには再生可能エネルギーも電気自動車も全く関係ないのになぜか攻撃され、「電気自動車を普及させるのには原発再稼働が必須」などとあらぬ方向に行ってしまうのが謎の「日本クオリティ」です(笑)。
「大規模停電発生→再エネを更に増設」と考えるのがアメリカ流
なぜか「再エネなんかに頼るからダメなんだ」とか「やっぱり日本では原発が必要なんだ」と話の方向が訳のわからない方向に行ってしまうのが大問題なのです。
ちなみに原発が大好きな方々、原発を再稼働すれば問題が全て解決すると妄想されている方々には都合の悪いことも起きていますよね。
福島第1原発、地震計故障を放置 - 3号機建屋、データ記録できずhttps://t.co/sXFNFyC0R1
— 共同通信公式 (@kyodo_official) February 22, 2021
先日の福島県を震源地とする比較的大きな地震の後に明らかになった事実ですが、原発事故から10年経ってもこのような杜撰な管理をしている東京電力に原発の管理を任せておけと主張する人々の脳内が私には理解できません。
原発については以前も指摘したように「原発=東京電力のような会社に全てを握られる中央集権型=その「中央」が信頼できないものだと終了」です。
これに対しテスラが提唱する「再生可能エネルギー」を地域で共有して電力が足りないところに融通し合う(スマートグリッド)、東京電力のような大企業は地域での電力供給がピンチの時だけ助ける役割にするという「テスラ流のライフスタイル」の方がリスクマネージメントしやすいというのは以前お話しした通りです。
テスラが提供する「未来のライフスタイル」とは?【American way of lifeの次の世界】
今日はテスラの電気自動車以外の主力事業である「電力供給」について説明します。日本でも既にパワーウォールが発売されていますが、「電気自動車と蓄電池(パワーウォール)」を用いて電力は再生可能エネルギーで自給自足できるコミュニティを事件をオーストラリアでやっていますが、これを日本に導入することはできないでしょうか?
アメリカでは徐々にこのような考え方が浸透しているようで、今回のテキサス州における寒波と停電に対する対応策として「今まで以上に再生可能エネルギーを増やす」という方向で、2023年までに再エネ(風力・太陽光)を35GWh追加し、現在の2倍以上に増やす計画を発表しています。
9 GW Of Texas Solar Power Could Be Added In 2021 — Interview
Though Texas may broadly be associated with fossil fuels, the Lone Star State is doing quite well with renewable energy. Dr. Joshua Rhodes, an energy researcher who lives in Austin, Texas, has answered some questions for CleanTechnica about recent renewable energy growth in Texas. Before rolling into the interview, let’s run through a few facts […]
知事が問題発言をしようともこのようにテキサス州では、「再生可能エネルギーを増やすことでリスクを分散する」という解決法を選んでいるわけで、日本で一部の勢力が「原発再稼働だ!」と興奮しているような特定の電力会社にリスクを一極集中させる方向には行っていません。
「寒波が来て雪が積もったら太陽光なんか機能しない」と思います? こういう勢力が現れることを予見しているのか、イーロンマスクが面白いことを言っています。
Snow caught in action… sliding right off a Tesla Solar roof in Austin, Texas @elonmusk pic.twitter.com/GISPuLluSI
— Tesla Owners Austin (@AustinTeslaClub) February 22, 2021
要は「テスラのソーラールーフには雪が積もらない」ということです。こういうのを見ると現在は「パワーウォール」という蓄電池のみしか導入されていない日本市場にもテスラ社のソーラールーフが欲しいなと私は思いました。
既に「困ったら原発」的な考え方は時代遅れということなのですが、日本では10年前の原発事故のような悲惨なことが起きているにもかかわらずまだ意識が変わらないのは非常に残念なところです。
電気自動車(BEV)が世界標準になりつつあるのに「電気自動車はエコじゃない」と噛み合わない理屈を振りかざしているのと同じことが再生可能エネルギーの分野でも起きています。
そもそも「電気自動車」の存在というのは「電力を食う存在」ではなく「電力を効率的に活用する存在」であることに気づいてますでしょうか?
「電力供給危機」を解消する存在が「電気自動車」
日本では「電力供給がピンチなのに電気自動車なんてけしからん」のような電気自動車の本質を理解しない荒唐無稽な理屈を振りかざす人が結構多いです。
どこかの某有名企業の社長が「電気自動車が普及すると原発が10基必要になる」ような根拠のない暴言を吐いたのも影響しているのでしょうか(笑)。
TOYOTA NEWS #111|日本のカーボンニュートラルを考える 自工会・豊田会長が語った事実|トヨタイムズ
Twitterでも話題になった自工会・豊田会長の発言。自動車業界トップは日本の「脱炭素」をどう見たのか――。 #トヨタイムズ
私の主観ではもうこの社長の顔がメディアに出るだけでイライラする対象になっていますけど(笑)。
まさか日本を代表する大企業の社長ともあろう方が自動車とも密接に関連する「V2H」を知らないということはないと思いますが。
おそらく意図的に無視してるのでしょう。
私のブログでは過去に何度か取り上げていますが、「V2H」を導入して電気自動車を蓄電池として使用する(日産リーフや三菱アイミーブでは既に可能です)ことで、車載バッテリーから電力系統へ電力を供給して、電力系統の周波数調整や需要調整などを行い、電力系統の安定化を図ることができます。
例えば真夏や真冬の電力ピーク時に、電気自動車のバッテリーに蓄電された電力を電力系統に給電するといった使い方ができます。
「再生可能エネルギー」が嫌いな方々がよく力説しますが、太陽光発電や風力発電では発電制御に限界があるため、電力系統が不安定になる場合があるのは事実です。
そこでEVを蓄電池として活用し、バッテリーへの充電を制御して、需給バランスをとって系統の不安定化を抑制します。
例えば晴れた昼間のように電力が余っている時間帯に蓄電池となるEVのバッテリーに充電し、反対に電力供給が危なそうな時間帯には「V2H」によって電気自動車から自宅に電力を供給するようにする。
これによって電力供給を安定させるという仕組みが「V2H」です。別に災害などで停電になった際の電力として使うだけが「V2H」ではありません。
「V2H」の開発にはトヨタ・ホンダ・日産・三菱が参加してますのでまさか社長が知らないはずはないと思うのですがねぇ(完全電気自動車のないトヨタでもPHEVを「V2H」に使うことは可能です)。
未だに電気自動車を車だと思っている人が多い。残念だけど電気自動車はインフラです。例えば電気自動車は蓄電池としても利用が可能、ピークシフト等にも使えます。さらに、発電所で出す排気ガスと玄関の前で出る排気ガスを同じ空気と思ったらダメでしょ。
あなたが吸う空気はどこあたりの空気か考えて https://t.co/Ng41Dpj0Ud— 荻野 隆一 (@justy00) February 25, 2021
むしろ自動車メーカーとしてはこのことを広めながら「脱炭素化社会」を推進していくのが企業の社会的責任だと思うのですが「ハイブリッドの方がエコだ」「電気自動車化が進むと自動車業界550万人の雇用が失われる」と日本国内でしかウケない論理を振りかざしているようでは先が思いやられます。
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