韓国の次は中国?Ora「Fanky Cat」がイギリスに上陸した衝撃とは?
こんばんは、@kojisaitojpです。日本で「EVは普及するしない」という次元の低い議論をやっている間に世界に進出している企業があります。
イギリスで販売=右ハンドル対応もEU基準の安全水準もクリアしたということ。つまり売る気になればいつでも日本でも販売可能な状態。
— saito koji@クラファンへのご支援ありがとうございました (@kojisaitojp) May 29, 2022
「Cat」と言われるとEVのことをある程度知っている方々ならお気づきでしょうがGreatWallMotors(長城汽車)のEV専門ブランド「Ora」が「Funky Cat」という名前でイギリスでも販売を始めるというニュースです。
GreatWallMotors(長城汽車)が既に東南アジアやアフリカでEVを展開しているのは以前の記事でも書いているのでこちらをご参照いただければと思います。
アフリカでも電気自動車(BEV)に市場を奪われる日本勢?【「ORA BLACKCAT」の脅威】
電気自動車化に向けて舵を切っているのは先進国だけではない、実は再生可能エネルギーの発電に適した自然があるアフリカも同様だということは前に話しましたが、ついにアフリカで「BlackCat」と呼ばれる中国の格安EVが販売され始めました。電気自動車で普及しないゆえに輸出する中古車もロクにない日本勢はいよいよピンチです。
中国産EVの「Ora Cat(猫)」が世界のEV市場に殴り込み?【長城汽車の格安EV】
日本メーカーが不参加のミュンヘンモーターショーに中国の長城汽車(Greatwall)が「Cat(中国では「Goodcat」)という格安のEVを2022年からヨーロッパで発売することを発表しました。EUの安全基準に適合すれば日本市場への投入も容易で、軽自動車に近いサイズの中国製EVが近い将来脅威となる可能性があります。
「イギリス?大して大きな市場でもないし騒ぐ必要あるの?」と思う方にははっきり言いますがその考えは浅はかです。
その点も含めて今日はGreatWallMotors(長城汽車)がイギリスに投入することを表明した「FunkyCat」を例に中国メーカーのEVが徐々に世界を席巻しつつあることについて解説します。
目次
ヒョンデ・起亜が伸びるイギリス市場に上陸するOra「FunkyCat」
以前の記事でもイギリス市場では異変が起きており、韓国の起亜が売り上げ1位になったことも取り上げていますが、ヨーロッパの中ではノルウェーの2025年に次ぐ速度で「2030年から内燃機関車の新車販売禁止」を掲げている国です。
1月のデータはテスラが全く納車しない月だったという偶然もありますが、昨年私がロンドンに行った際にも起亜「NiroEV」には何度も遭遇してますし、「日本車より全然多いなという印象はありました。
それも日本勢だと日産「リーフ」位しかマトモに販売できるEVがないという事情がありますが、このイギリス市場に殴り込み(?)をかけてきたのが冒頭で紹介したGreatWallMotors(長城汽車)の「FunkyCat」です。
London Fashion Week is a go!
We took the ORA Cat to some iconic locations to celebrate, can you guess them? #GwmORA #ORACat #Electric #EV #London #FashionWeek pic.twitter.com/0P9JThw1DF
— GWM ORA (@GWMORA_UK) February 18, 2022
中国っぽさを全く感じさせない演出がなされているのはさすがです。
このEVが魅力的なのは「4235mmx1825mmx1603mm」というEVでは珍しいコンパクトカーである点です。
それ以外のスペックを挙げると、
- 搭載バッテリー容量が48kWh
- 航続距離がWLTCモードで192マイル(約307キロ)→EPAだと270キロ位?
- 価格は30495ポンド(約493万円)
「500万もするのかよ、売れるわけねぇ」と思います? 後で比較に出しますがイギリスの物価だと日産「リーフ」が26995ポンド(約436万円)、フォルクスワーゲン「ID.3」が35835ポンド(約579万円)なので特に高いわけでもありません。
こちらは去年ロンドンへ行った際のガソリン価格ですが、ガソリンが1.5ポンド(約240円)の国ですから。ロシアとウクライナの戦争が始まって以降はおそらくこれ以上のガソリン価格になっていることでしょう。
確かに中国本国や既に販売がスタートしてるタイなどのように100-200万円の格安EVにはなってませんが、ヨーロッパへの輸送費やヨーロッパの安全基準への適合、フェイクレザーですが高級感のある内装に仕上げている以上この価格は仕方ないかもしれません。
それ以外だと充電に関しては普通充電だと6.6-11kWに対応、急速充電は80kWまで対応します。
ちなみにOTAアップデートにも対応してるようで、テスラなどと比較してどの程度までのアップデートが可能なのかは不明ですが、先進的な一台として注目されているようです。
中国メーカーのヨーロッパへの進出は以前NIOやXpeng、BYDなどがEVの普及率が最も高いノルウェー市場に参入してることについては触れたことがありますが、今回はノルウェーのような人口の少ない国ではなくイギリスです。
ノルウェーにNIOが上陸することが衝撃な理由とは?【2021年4月のEV販売台数も掲載】
中国の新興EVメーカーNIOがついにノルウェー市場、つまりヨーロッパに上陸します。バッテリー交換ステーションも設置しながらの本気の進出です。中国メーカーが徐々にヨーロッパ市場に上陸し、世界進出を伺う位電気自動車が本格的に普及しているのが世界の流れです。2021年4月最新のヨーロッパの新車売り上げ状況も掲載します。
- イギリスは右ハンドルの国
- イギリスで販売できる=ヨーロッパの安全基準クリア
- 日本でもいつでも販売可能な状態
コンパクトカーのEVとしてはようやく日産「サクラ」と三菱「ekクロスEV」の軽自動車EVが発表されましたが、これ以外だと「フィアット500e」しかない、しかもフィアット500eはサブスク(という名のリース)のみで提供という残念な状況です。
「5ナンバーの普通車のコンパクトEV」として本日紹介する「FunkyCat」がもし日本に上陸したら爆発的に売れる可能性があると思うのは私だけでしょうか?
フォルクスワーゲン「ID.3」や日産「リーフ」とも互角以上のコスパの「FunkyCat」
次は「FunkyCat」と同じようなサイズ、同じような価格帯でイギリスで販売されており、競合対象になると思われるEVとしてフォルクスワーゲン「ID.3」と日産「リーフ」を例に挙げて比較してみます。
まずはフォルクスワーゲン「ID.3」ですが、
- 搭載バッテリー容量58kWh
- 航続距離はWLTCモードで427キロ(EPAだと370キロ)
- 急速充電は130kWまで対応
航続距離や急速充電のスペックを見ると「FunkyCat」より明らかに上なのですが、先ほども出したようにイギリスでの販売価格が35835ポンド(約579万円)とかなり高くなります。
フォルクスワーゲンが全く生産できない状態なんだから仕方ないんだけどアンチが「これでEVも終わりだ」と歓喜しそう(笑)。 https://t.co/dj2rl4hLNf
— saito koji@クラファンへのご支援ありがとうございました (@kojisaitojp) May 13, 2022
しかもフォルクスワーゲンはロシア・ウクライナの戦争の影響をまともに受けてしまい、部品の供給が追いつかないため「2022年に販売できるEVはソールドアウト」という状態です。
「じゃあ日本勢の天下だ!」と歓喜したくなる人もいるかもしれませんが、日産「リーフ」は先ほどのランキングでも名前がありません。
「リーフ」のスペックも確認しておきますが、
- 搭載バッテリー容量40kWh
- 航続距離はWLTCモードで270キロ(EPAだと240キロ)
- 急速充電は50kW
価格で見ると最も安いグレードだと26995ポンド(約436万円)と「FunkyCat」より安いように見えますが、最安グレードだとプロパイロットなどの装備がありません。
「FunkyCat」と同等の装備のグレードになると29455ポンド(約476万円)と大差がなくなります。
以前取り上げたように日産「リーフ」は日本市場やアメリカ市場では値下げによって価格的に優位な立場になっていますが、ヨーロッパで見ると価格面でのアドバンテージがないのが現実です。
「日本メーカーの品質を評価して買ってくれる」となっていないのが現実です。
EVが「できない理由」を並べるのではなく「どうすればできるか?」を考えるイギリス
このようにヨーロッパで中国メーカーや韓国メーカーがEVをガンガン販売しているのを見ると「EVはエコじゃないんだ!」「電力が足りないから日本ではEVは普及しない!」などと次元の低い議論に終始している日本とは別世界に見えてしまいます。
「日本の充電インフラガー」というのも同様です。
よく出てくるEVへの批判として「集合住宅に住んでると自宅に充電器なんて設置できないんだ!」と怒る人がいますが、そんなことはイギリスでも一緒です。
英国で発表されたThe Papilio3ソーラー+250kwhバッテリー充電器パック 。
船舶コンテナをリサイクルして作られ、最大22kwを12ストールで充電可能。
自宅夜間充電は最もコスパが良いが英国の5割の世帯では出来ないので開発、僅か24時間で設置可能。 pic.twitter.com/zT2kT7Twlx
— 松野博 Hiroshi Matsuno (@stonecold2000) June 1, 2022
ロンドンは東京以上に集合住宅に住む比率が高い都市で、しかも敷地内に駐車場がないので路駐(日本でいうパーキングメーターを利用のようなイメージ)でという人が多い都市です。
「充電器を設置できないなら移動式の充電器を持って来ればいい」という発想が引用したTwitterの話です。
コンテナにソーラーパネルとEV充電器を設置して、移動式の充電ステーションにすればどこでも充電が可能になるという話です。
「電力ガー」「集合住宅ガー」とできない理由ばかり並べる日本人からすれば想像もつかないかもしれませんが、どこの国でもこれまでの内燃機関(ガソリン・ディーゼル)からEVへの転換は苦労を伴うものです。
ただ一点だけ違うのは「できない理由を並べて進化に抵抗する」のか「どうすればできるのか?を必死に考える」という点だけです。
移動式のコンテナを使うのは新しい話ですが、昨年私がロンドンへ行った際にも街の至る所で街灯やパーキングメーターから取った電源でEVが充電していました。
こちらはロンドンと並ぶくらい集合住宅に住む比率の高いパリで見かけたものですが、ロンドン同様です。
世界がこのように動いてるのだから「EVに大きなビジネスチャンスがある」と思う(だからこそクラウドファンディングもやりましたが)と思うのは私だけでしょうか?
それとも私の認識が狂っているのでしょうか?
これからの数年でどちらが正しいのかはっきりと結果が出ると思っています。
人気記事電気自動車専門のカーシェア・サブスク・EV販売店立ち上げのためのクラウドファンディングを始めます!