「EV化・自動運転化」したら運転席が「居住空間」になる?【内装・ソフトウェア・エンタメが中心】
おはようございます、@kojisaitojpです。先日EVの商品化を発表したソニーですが、早速「ソニーらしいな」と感じるコンセプトを打ち出してきました。
「移動空間をエンタメ空間に」という自動運転後の車内空間の役割の変化を理解できない自動車メーカーは生き残れないだろうな。
ソニーがEV市場に本格参入 目指すは「移動空間をエンタメ空間に進化」(マネーポストWEB)#Yahooニュースhttps://t.co/R70W3NUdU9— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 24, 2022
別な記事では「ウォークマンのモビリティ化」のような言い方をしてますが、ソニーの強みである音楽や映画、ゲームなどのコンテンツを車内で楽しめるようにというのが前面に出ています。
「移動空間をエンタメ空間に」などというと「車は人の命がかかってるんだ!」「車内でプレステをやるなんてけしからん!」と怒り出す人がいそうですけど(笑)。
ですがソニーがやろうとしてのはこれまでスマホなどで鍛えた「スマホ用のイメージセンサー(画像センサー)」とAIを活用した自動運転と「自動運転の際に車内の人間が退屈しないようなエンタメ空間」です。
当然ですが「エンタメ空間」を実現するためには「安全性」が保証されることが絶対条件になるのは言うまでもないことです。そのためのカメラ技術であり、自動運転を制御するソフトウェアなのですから。
反対にここが充実してないと「別にこれまでの車でもプレステ使えるじゃん」となってしまいわざわざ「ソニーのEV」を買う理由がなくなってしまいます。
ソフトウェアとコンテンツという既存の自動車メーカーにはない武器を手にEVに参入してくるのがソニーであり、Appleであり、テスラであると言うこともできます。
そこで本日はテスラやソニー、Appleなどの例から「EV化・自動運転化」が実現することによる「車内空間の役割の変化」について考えてみます。
ちなみに本日の記事は「自動運転なんかできるわけないだろ!」という認識が変えられない人は本日の私の記事を読む必要はない(というか読んでも理解できないでしょう)のでここでブログを閉じることをおすすめします。
目次
ソニー・テスラ・アップルにとって「EVの車内空間=エンタメ空間」
まずは「車内空間の位置付け」が違うのがわかりやすい例として未発売のソニーやアップルよりテスラの方がわかりやすいので取り上げてみます。
これはテスラの現行の(日本には未上陸)の「モデルS」の車内ですが、無駄なものが一切省かれた上にこれまで以上にゲームや映画が観れるというエンタメ方向を重視してるのがわかります。
などというと「運転中にゲームなんてけしからん」「テスラは安全性を軽視してる」とすぐ怒り出す人がいるでしょうけど、誰も運転中にゲームをしろとは言ってません。
テスラが今最も力を入れているのが自動運転技術であり、アメリカではこのようにベータ版が一部の安全運転をしていると認められるドライバーには配布され、このように実際に人の手を介さずに運転する様子が日々ネット上にアップされています。
テスラは元々「将来の自動運転」を視野に入れた設計を行っており、運転席周りの物理ボタンを極力排除する方針です。
前モデルのモデルSやモデルXから機能を中央のタッチパネルに集めてはいましたが、最新のモデル3やモデルYでは更に省かれて「実質ディスプレイとハンドルだけ」の状態になっていました。
これが新型の「モデルS」や「モデルX」になると更に研ぎ澄まされ、「自動運転の際に活用するエンタメ」が前面に出てきました。
この対極がシトロエンで、昔からステアリングに何でもかんでもボタンをつけたがる(シトロエンの言い分だとステアリングにスイッチがあればよそ見をしなくなるから)傾向があります。上記のステアリングは最新の「E-C4」のものですが、私辺りが見ると「相変わらずこういうところはシトロエンだな」と思うところです。
これだけだと「設計思想の違いだね」で終わるのですが、EVでこれをやるとEV化の後の「自動運転」が視野に入ってるかどうかの差になります。
実は「ドライバーの有無」を前提にしてるかどうかという点で既存メーカーとテスラでは根本の発想が違います。
自動運転が当たり前になると車内から「ドライバー」という役割が消えます。
となると当然「運転する」という行為がなくなって、車内にいることが退屈になります。
そこで移動時間を過ごすための「ゲーム」や「映画」などのエンタメが必要になり、既に大量のコンテンツを持っているアップルやソニーが強みを発揮する場面が来ます。
ここに認識の転換が起こります。これまでは車内空間は運転することが中心、映画やゲームなどのコンテンツ消費も可能ではありましたが、それはあくまでも運転を邪魔しない範囲での話でした。
ところが自動運転が当たり前になり、車内で自由に過ごせるようになれば車内空間の役割が変わります。
だからこそソニーやAppleがEVに参入しようとしてるということが理解できますでしょうか?
EVに関しては「エンジンがないから誰でも作れる」という乱暴な言い方から「車は人の命がかかってるんだ!そんな甘いものじゃない」という説教臭い言い方をする人もいたりで
ですがソニーやアップルにとってはそこは大きな問題ではなく(車両の生産はマグナ・シュタイヤーやフォックスコンなどに任せれば済む話)、中心は「自動運転を制御するソフトウェア」と「自動運転の車内を快適に過ごすためのコンテンツ」でしょう。
車両そのものはレクサスでテストしてるように車本体は主役ではないということか。
Apple、自動車ビジネスを本格展開へ iOS活用、自動運転車開発も https://t.co/cOZa72M02w @jidountenlabより— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 24, 2022
Appleの自動運転のテストがレクサスの車両で行われてることを見ても「車両本体そのものにはあまり興味がないんだな」というのが読めてしまいますよね。
もちろんデザインはAppleの企業イメージに関わる重要な要素ですから登場する際にはAppleにふさわしい洗練されたおしゃれな車体で登場するでしょうけど。
スマホが消えて以来日本ではすっかり名前を聞くことがなくなったファーウェイですが、自社のHarmonyOSを搭載したEVを既に中国で発表しています。
私がこの動画を見た感想は「走るスマホだな」なのですがいかがでしょうか?
ファーウェイのOSによる自動運転、必要なものは車内のタッチパネルからアプリやコンテンツをダウンロードと、まるで「スマホが巨大化してEVになっただけ」のようにも見えます。
これこそがアップルやソニーがやろうとしてることでしょう。
「走るウォークマン」「走るiPhone」とでも言えばいいでしょうか、自動運転が実現寸前まで来て車という乗り物の役割が変わりつつあることをテスラやソニー、アップルやファーウェイは敏感に感じ取っています。
この認識の転換ができずあくまで「車内の主役は運転するドライバー」という認識から抜けられないのが既存メーカーに見えてしまうのは私だけでしょうか?
既存自動車メーカーだと唯一ヒョンデ(ヒュンダイ)がIONIQ5の車内を「リビングルーム」に
既存の自動車メーカーだと唯一ヒョンデ(ヒュンダイ)だけは車内空間に新しい役割を与えようとしてるように思えます。
EVのメリットであるセンタートンネルのないフラットな車内、メルセデスSクラス級の3.0メートルという長いホイールベースを活用し、座席を自由自在に動かせる独特のレイアウトをヒョンデ(ヒュンダイ)では「リビングルーム」と呼んでいます。
従来であればかなりの高級車にならないと実現しなかった車内空間が簡単に実現しています。
実際にIONIQ5をこのように本当に「リビングルーム」のように使ってる人もいるようです。
家具まで置いてるところは「本当なの?」とツッコミたくなるところではありますが、フラットなベッドで車中泊ができていることからIONIQ5の車内空間の広さは実感できるかと思います。
実際にヒョンデ(ヒュンダイ)はIONIQ5にただの乗り物以上の役割を担わせようとしてることが公式の動画からも伺えます。
この動画だとIONIQ5の車内が結婚式の控え室になってますね。
他にも外部給電可能な長所を生かしてこんなキャンプもできることを強調してます。
既存の自動車メーカーの中でここまで「乗り物として以外の用途」をアピールしてるのはヒョンデ(ヒュンダイ)くらいです。
このように認識の転換ができているのを見ると「既存メーカーの中でもヒョンデは自動運転が当たり前になった後も生き残れるのでは?」と思ったりもします。
「EVの車内=運転するための空間」の呪縛から逃れられない既存メーカー
私も先日試乗したこのメーカーなども「おそらく技術はあるんだろうな」というところは認めるのですが…。
Gベクタリングの技術の高さから自動運転もいいものつくってくるとは思うんだが結局「人が主役」なんだよな(笑)。
マツダ コ パイロット2.0の有用性を公道で実感。2022年登場のラージ商品群に搭載されるシステムの進化版 | 自動車情報サイト【新車・中古車】 – carview! https://t.co/QNIf5FNirY— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 24, 2022
先日記事にしたように「MX-30」の「Gベクタリングコントロール」という車両制御技術は非常にレベルが高く、EVではほぼ避けることができないと現時点で言われてるピッチング(前後の揺れ)をほぼ抑えることができています。
ついにマツダのEV「MX-30」に試乗して大黒PAの充電器を使った話【Gベクタリングが快適?】
これまで多くのEVに乗ってきた中で試乗したことのない数少ないEVの一つ、マツダ「MX-30」に試乗してきた感想をお話しします。「Gベクタリング」がもたらすEVとは思えない制御技術の高さ、テスラのデザイナーにも受け継がれる上質なデザインは高評価せざるを得ません。また噂の大黒PAの充電器も試してきたので結果を報告します。
私自身がマツダ車はこれまでほぼ乗ったことがありませんでしたが、技術力の高さはよくわかりました。
乗る前は「EVの中でMX-30が最も乗り心地が良い」などという結論になることは全く予想できませんでしたから。それもガソリン車の段階から「シトロエンC6」などでハイドロニューマチックサスペンションを体験して「不快な揺れを感じない車内がどんな感じなのか?」を十分知ってる私が言うことになろうとは(笑)。
ですのでマツダが現在開発中の「マツダ コ パイロット」という自動運転技術も(本格的な自動運転はその次の「マツダ コ パイロット2.0」から)かなりのクオリティに仕上げてくるんだろうなという予想はできます。
しかし決定的にズレてるのが「運転の主役は人」という設計思想です。
まぁ「走る歓び」だの「人馬一体」だの常に運転するドライバーを主役、中心に据えるのがこの会社の根本の思想なのが電動化・自動運転化と新たなフェーズを迎える自動車業界において不利に働く予感がします。
実は世の中の圧倒的多数の人間に「走る歓び」なんて無縁だという車好き以外には当たり前の事実(笑)。
— saito koji@2022はぴあアリーナ→バルセロナへ (@kojisaitojp) January 24, 2022
「人(ドライバー)が主役でそれをアシストするのが機械」だと本日開設してきたソニーやテスラ、アップルなどとは根本から発想が逆になります。
記事にあるような「非常時には人に代わり運転を行ってクルマを安全に停車させ異常発生を外部に知らせる、または安全な場所にクルマを退避させる」ことができる技術であれば自動運転レベル4位まで可能になりそうですが、おそらく機械に運転を全面的に任せるという段階になるとこの会社の根本の思想と衝突してしまいます。
そうするとMX-30のように「車自体は素晴らしいけど価格ガー、航続距離ガー」とか「そもそもロータリーレンジエクステンダーなんかいらないからバッテリー容量増やせ」などと何かピントのずれたトンチンカンなものができてしまう可能性があります。
世の中には「運転が好き」という方が一定数いて(多分どちらかというと私もこっちに分類されると思いますが)、そういう方々は怒るでしょうが、「EV化→自動運転」と自動車が進化していくことはほぼ確定ですので、今後車移動におけるドライバーの役割はどんどん低下していくだけだと予想しています。
もちろん人間が運転すること自体が違法になることはないと思いますが、徐々に隅っこに追いやられていくことは間違いありません。
ちょうどそれは「内燃機関(エンジン)が廃止され公道を走れなくなっても、サーキットなどで金持ちの道楽として運転は残る」のと同じように「自分が運転するなら自動運転より危ないから保険料は3倍ね」などのコストを払うことで存続するでしょうけど。
今までは「運転する」ことが当たり前だったから何となく「人が主役」だったものが「人が主役」「機械が主役」の2つの選択肢に増えたことにより「じゃあ自分は運転しなくていいや」と思う人がかなりの数出てくると私は予想してます。
と実は内燃機関(エンジン)がEVになる以上に「車内空間の役割」を問い直す、正確には根本から変えてしまうのが自動運転なのではないでしょうか?
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