「Apple Car(iCar?)」が提携するのはヒュンダイ?【日本メーカーはスルー?】

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おはようございます、@kojisaitojpです。オランダの2020年12月の新車販売台数を見ていたら、気づいたことが一つありました。

「どうせ電気自動車が売れてるって話だろ?」と思うでしょうが、もうそれは当然のことなのでいちいち強調する気はありません(にしてもこの新車販売に占める電気自動車の割合は驚異ですが)。

問題は売れた車種で「フォルクスワーゲンID3」「テスラモデル3」というヨーロッパでは当然出てくる車種の次が「ヒュンダイコナ」という事実です。

この統計とほぼ同時期にこんなニュースも飛び出しています。

まぁこのニュース自体は「Appleがヒュンダイを含めた数社と話をした」というだけですので、まだ何も決まっていないのが正直なところのようです。

ですが先程のヨーロッパでの販売台数などを見ると、AppleCarの生産を委託するパートナーとしてヒュンダイが選ばれても何も不思議はありません。

などというと世界の現実を理解できない方々が「韓国で作ったAppleCarなんて買えるか!」と噴き上がるのでしょうが、それなら「中国で生産されたiPhoneなんて当然買ってませんよね?」と私が嫌味を言う羽目になってしまいます。

今の話に「iPhoneが中国???」となった人にもわかるように、今日は「EMS」というAppleの生産方式から解説して、「少なくとも日本の車メーカーよりはヒュンダイの方がAppleに選ばれる可能性が高い」と私が考える根拠についても解説します。

なお「AppleCar」の方にスポットを当てた記事はこちらになりますのでよろしければご参照いただければと思います。

「EMS方式」で自らは生産しないビジネスモデルがApple式「ファブレス経営」

Foxconn(ホンハイ)
まず話の前提としてAppleの生産方式である「EMS」「ファブレス」について確認しておきます。

製造業におけるEMS(イーエムエス)とは、英語の electronics manufacturing service の略であり、電子機器の受託生産を行うサービスのことである。

製造業務に特化したいわゆる下請けとは異なり、EMSは契約を基に量産規模でのロット生産業務を担う点が特徴。また独自に部材調達、設計、配送など製造業務以外の工程にも入り込み、スケールメリットを活かす場合もある。 企業規模とは無関係に、自社では生産設備を保有せず(ファブレス)、製品の設計・開発や宣伝・販売といった自らの得意分野に経営資源を集中するビジネスモデルが広がりを見せている。この生産工程などを主体的に請け負う会社がEMSを行う企業である。製造に関わる一連業務の量的なアウトソーシングといえる。
Wikipedia「EMS(製造業)」より)

iPhoneやiPadなどAppleの主力製品の組み立てを担うのは英語名「Foxconn」として知られる台湾に本社のある鴻海精密工業(ホンハイ)です。

フォックスコンの工場

日本ではApple製品の製造を行っていることよりも「シャープ」の買収で有名になったかもしれません。

iPhone12のイメージ

台湾企業である鴻海精密工業(Foxconn)は多くのメーカーらの依頼によるPCや周辺機器の開発製造を請け負っており、本社は台湾ですが、実際の開発や製造の多くは中国内の工場で行っています。

例えば、香港に隣接する広東省深セン市などが最も有名です。

iPhone12のイメージ

先ほど言った「中国製のiPhone」というのはこういうカラクリです。

Appleだけではありません。我々に馴染みのあるものだとソニーのプレイステーションや任天堂のSwitchなども「Foxconn」が生産を委託されています。

日本で馴染みがある「下請け」と違うのは、発注者(例えばApple)と生産者(Foxconn)との関係性です。下請けの場合は、発注者から指定された部品を使用して生産するのに対し、EMSでは部品 調達などもすべて自社で行うのが特徴です。

フォックスコンの工場

また「下請け」は基本的に一社のみに依存して生産しますが、EMSでは顧客別に社内組織を作って情報流通を制限した上で、市場で対立する顧客それぞれから注文を受けています。

最大手の「Foxconn」ではApple(iOs)のみならず、AndroidやWindowsのプラットフォームを使った生産もやっています。先ほどのプレステとSwitchも思いっきり競合他社ですが関係ありません。

もちろん各企業の企業秘密を扱うので、情報管理が厳しく、特にAppleの厳しさは有名で、漏洩元となった同社関係者の解雇、また情報を入手した個人やジャーナリストらへの訴訟も辞さないことで知られています。漏洩の疑いのある社員に激しい尋問を加えて自殺に追い込んだとトラブルになったこともあります。

というAppleの生産方式をイチから語るとこれだけで長くなりますが、「ファブレス方式」と呼ばれる自らは生産手段を持たないやり方がApple式です。

ということは電気自動車も同じように「EMS」でやることはほぼ間違い無いわけで、その生産を委託される候補としてヒュンダイ自動車と接触したのでは?というのが冒頭のニュースです。

Appleの「EMS」のパートナーとして日本メーカーは論外?

AppleCarのイメージ
「AppleCarの生産をヒュンダイがやったとしたら叩くのに、中国で生産されたiPhoneを使ってるの?」と私が嫌味たっぷりに言ったカラクリはお分かりいただけたかと思います。

「いや、車とスマホは違う!」と反論する方もいるでしょうが、このブログでは再三語ってきたように「内燃機関(エンジン)車」と違って電気自動車は部品点数が少なく、主にバッテリーとモーターを使って走行するので、エンジンのように手がかからないのが最大の特徴です。

ですので現在はアメリカや中国の何十・何百のメーカーが電気自動車を競っていますが、いずれ一定の水準に達すると「コモディティ化」と呼ばれる、語弊を恐れずに言えば「誰でも生産できるもの」になります

今のスマホや液晶テレビ、冷蔵庫や洗濯機などの「家電」と同じ状態になります。

AppleCarのイメージ

Appleの立場からすれば、Appleが開発するものは「iOs」のようなシステムだけです。おそらく将来の自動運転を念頭に置いているのでしょうが、現在の「iOs」や「iPadOs」同様の電気自動車用のOs(ソフトウェア)を開発して自動運転やナビ、エンタメ系を操作するシステムの開発(とApple Storeのようなアプリ課金システム)が中心となります。

自動運転のイメージ

現在のiPhoneやiPadも端末の生産は先ほどの「Foxconn」に委託してるのと同じ構造です。

車本体の部分については、既存の自動車メーカーなどに「EMS」で発注するのが最もコストを抑えた開発になります。もちろんiPhone同様にデザインから車の細部までAppleの意図に沿った車両を開発することが求められるでしょうが。

ヤフコメなどを見ていると、その委託先がヒュンダイだったとしたらかなり不満を持つ方が日本には多いようですが、そもそも日産・三菱以外のメーカーがAppleの要求を満たすような電気自動車の開発に成功してるでしょうか?

ヒュンダイを侮れないのが「電気自動車」の時代?

ヒュンダイのロゴ
以前こんな記事を書きましたが、正直電気自動車に関してはヒュンダイが日本メーカー(日産・三菱は除外してもいい)より先に行っていることは否定できない事実です。

トヨタに忖度しているのか、「ヒュンダイの日本再上陸」のニュースには「水素燃料電池車」の販売を狙うようなことが書かれていますが、今のヒュンダイが最も力を入れているのは電気自動車(BEV)です。

ヒュンダイIconic5

特に「Ionic」という電気自動車専門ブランドを立ち上げ、今後発売予定の「Ionic5」「Ionic6」「Ionic7」などがの現在報道されているスペックが本当であれば、かなりレベルの高い電気自動車を販売してくる可能性が高いです。

いや、それどころか現行の電気自動車である「KONA」や「Ionic」、傘下の起亜自動車が生産する「e-Niro」「Soul EV」が既にヨーロッパ各国の新車販売ランキングに顔を出す位に健闘しています。

ヒュンダイコナEV

片や日本の電気自動車は「日産リーフ」のみ。

「侮れない」と私が挙げる根拠は「世界最大級の車載用バッテリー供給メーカーのLG化学」が韓国にはあることと、10数年前に「サムソン(ギャラクシーと言った方がわかりやすい?)」が日本ではiPhoneと一緒に散々バカにされていたのに、今やサムソンが世界シェア1位、Appleが世界シェア3位です(2位はファーウェイ)。

スマホと同じパターンを電気自動車もたどっていると感じるのは私だけではないでしょう。

Appleに選ばれるとは思えない日本の自動車メーカーの末路は?

ハイブリッドvs電気自動車
珍しく反響があったので引用しますが、

珍しくたくさんのリプといいねをいただいたツイートが誤植なのは恥ずかしいですが(笑)。

しかし、昨日のNIOの発表とトヨタが発表した「シーポッド」やホンダの「ホンダ e」などを見ていると、とてもNIOやテスラの水準の電気自動車をすぐに作れるような可能性は感じません。

仮に車体だけは作れたとしても、電気自動車の「心臓」のような役割のバッテリーの供給すら満足に受けられないだろうなというのは、最初から極めて少ない台数に販売を限定している「ホンダ e」などを見ていれば分かることです。

AppleのCarplay

「電気自動車はエコではないから作らないんだ」などといくら叫んだどころで、いや叫べば叫ぶほど「そんな会社に委託しないよ」とAppleのような会社なら感じることでしょう。Appleが求めるのは優秀なバッテリーとAppleがOS(ソフトウェア)をフルに活かせる完全自動運転につながるシステムを生かす電気自動車を生産してくれる会社です。

ヤフコメなどで「Appleは日本のメーカーと組むべきだ」とか叫んでる人が結構いましたが、Appleの立場で考えると「組むメリットないのに何で組むの?」と反論されて終了でしょう。

自動運転のイメージ

iPhoneやiPadの生産における「Foxconn」のような存在は日本にはいません。

同じことはAppleじゃなくても、仮にGoogleやFacebook、AmazonやMicrosoftが電気自動車を作ろうと思ったとしても感じることでしょう。

仮にヒュンダイが候補から外れたとしても、昨日紹介したNIOや少し前に紹介した「BYD」など中国にも成長著しい新興EVメーカーは複数ありますし、Appleの本国アメリカを見ても、既に電気自動車化を表明したハマーを始め、いくつもの新興EVメーカー(アメリカの新興EVメーカーは今後紹介して行きます)はあります。

まだマトモな電気自動車を作ったことのないトヨタやホンダなどの日本メーカーとAppleが組む可能性はほぼゼロなのが現実です。

こうして徐々に世界から距離を置かれていく日本の自動車メーカーの暗い未来(繰り返しですが日産・三菱だけは例外の可能性あり)が見えてきます。

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