「再エネ」「マイクログリッド」「EV」で格差を埋めるアフリカ【日本の方が後進国?】
こんばんは、@kojisaitojpです。先日南アフリカ共和国の話をした際に文字数がいっぱいになってしまい触れる余裕がありませんでしたが、他にもEV化に向けて突き進むアフリカの国がいくつもあります。
ガーナって再エネ大国だからな。「電気もロクにないくせに」と知らない奴がバカにしてはいけない。
SolarTaxi Adds The XPeng G3 To Its Growing Range Of EV Models For Sale & Leasing In Ghana! | CleanTechnica https://t.co/GsmWafiKw2— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 19, 2021
以前「中国の黒猫(Ora R1 Blackcat)」がガーナで販売されるという話をしたことがありますが、ガーナで購入(またはリース)可能なEVが12種類に増えたという記事です。
アフリカでも電気自動車(BEV)に市場を奪われる日本勢?【「ORA BLACKCAT」の脅威】
電気自動車化に向けて舵を切っているのは先進国だけではない、実は再生可能エネルギーの発電に適した自然があるアフリカも同様だということは前に話しましたが、ついにアフリカで「BlackCat」と呼ばれる中国の格安EVが販売され始めました。電気自動車で普及しないゆえに輸出する中古車もロクにない日本勢はいよいよピンチです。
XpengやBYDなど、私のブログで何度も紹介したことのある中国のEVメーカーが続々と進出しているようです。
今でも「ロクに電気も通ってないアフリカでEVなんか普及するわけねぇだろ!」とアンチEVの方々が息巻いているのですが、現実は変化しています。
先日は南アフリカのみの話で終わってしまったので、今日はそれ以外のアフリカをはじめとする新興国・発展途上国のEV化状況を取り上げてみます。
目次
中国産の格安EVが増えるガーナなどのアフリカ諸国
先日取り上げた南アフリカ共和国の経済水準ですと、売れ筋のEVがBMWi3、ジャガー・i-Pace、ポルシェ・体感してなどの高級車(もちろん買えるのはごく一部の富裕層だけです)でしたが、南アフリカ共和国以外の国でこれらの車を売るのは不可能に近いです。
そこでガーナの「Solar Taxi」社が取り入れたのが「中国からのEV輸入」です。
現時点で既にXpengやBYD、Donfeng(東風汽車集団)など複数の中国メーカーがEVの販売とリースを始めています。
Donfeng(東風汽車集団)に至ってはエジプトの「El Nasr」社と合弁でエジプトでEVを生産する計画も発表しており、アフリカ大陸の中でEVが生産される日も目前です。
Egypt’s El Nasr Automotive’s Agreement With Dongfeng Could Be A Good Template For Other Nations On the Continent
Several countries in Africa are looking at resuscitating old motor vehicle assembly plants or developing new assembly plants. The motor vehicle assembly industry, as well as the manufacture of associated components that boost downstream industries, are seen as a catalyst for economic growth, bringing much needed job creation opportunities. Ghana’s new Automotive Development Policy has […]
エジプトで生産された格安のEVをアフリカ大陸内やヨーロッパへ輸出しようという計画が既に発表されており、中国が至る所で影響力を拡大しているのが分かります。
他にもルノーが「K-ZE」という、ヨーロッパでは「Dacia Spring Electric」という私が以前ブログで紹介した格安のEVを販売していたりもします。
このラインナップに日本の自動車メーカーが全く顔を出さないというのも今のEVにおける日本勢の状況を物語っているようで残念な事実です。
「電力どうするんだよ?」とこの手の話をすると必ず言われますが「それいつの時代の話?」というのが今日のもう一つのテーマになります。
従来のように「電力会社から中央集権的に電力を供給してもらう」という電力供給のあり方しか思いつかないのであれば既に世界の流れから乗り遅れています。
送電網がなくても「マイクログリッド」でOK
発展途上国でEVの話をすると必ず「ロクに電気も通ってない国でEVなんか普及するわけねぇだろ!」とバカにされるのですが、確かにアフリカ大陸に電線を張り巡らし人の住む場所を全て電化させるのは不可能です。
人口密度が低く、集落が点在しているのがアフリカの特徴ですので送電網を全域に行き渡らせることはほぼ不可能、やったとしても膨大なコストがかかります。ここに発電所をつくり、送電線を敷設し、変電所を介して電柱・電線で電力供給するのはコスト面から非現実的です。
住む人全員に電力を提供するのであれば、中央集権的に発電所から電線を張り巡らすというアプローチではなくもっと「分散化」が必要ですが、これを可能にするのが「再生可能エネルギー」です。
極端にいえば太陽光パネルと蓄電池さえ用意すればどんな場所でも発電して電気を貯めることができます。
集落が点在しているのであれば、集落ごとに「マイクログリッド」を作って電力を自給自足できるようにすれば、送電網なしで電気のある生活が可能になります。
この試みをやっている日本企業が実はいくつもあります。
ガーナでマイクログリッド事業、太陽光+蓄電池で電力供給 – ニュース – メガソーラービジネス : 日経BP
INDETAIL(札幌市)は、ガーナでマイクログリッド事業に参入する。太陽光パネルと蓄電池を用いて、教育機関や教会などの5施設に電力系統から独立した再生可能エネルギー電力を供給する実証事業を今秋から…
今日話題にしたガーナでまさに事業を行なっているので取り上げましたが、発展途上国に「マイクログリッド」を作ることで各地域で電力を自給自足しようという試みです。
太陽光で発電すると日が当たる昼間は電力が余ってしまいますので、この余剰電力を蓄電池のみならずEVに充電すれば移動手段も確保できます。
実はガソリンスタンドを僻地に行き渡らせることよりも簡単にできてしまいます。
以前私のブログで「実はEVが向いているのは都会よりも田舎」と日本の文脈で述べたのと同じパターンです。わざわざ遠く離れたガソリンスタンドまで行かなくても自宅の電力で充電できるというメリットは都会よりもむしろ田舎の方が大きいです。
「EVは都会で乗るもの」は勘違い?【むしろ田舎の方が向いてる】
「EVは都会で金持ちが道楽で乗るもの」的な偏見が今でも根強いようですが、実は田舎の方が電気自動車に適した環境であることが知られていません。一軒家率が高くて自宅で充電することが容易、道路が空いてて電費も良い田舎の道路事情などEVは田舎でこそ向いている点、ガソリンスタンドが減少する今後はますますそうなる点について触れます。
とEVや再エネの話をすると必ず「机上の空論だ」と攻撃されてりしますが、「一箇所設置するのに何億円の投資が必要になる水素ステーションを日本中・世界中に行き渡らせることの方が全然非現実的では?」と思うのは私だけでしょうか?
「再生可能エネルギー」と「EV化」の流れはアフリカだけではなくアジアにも
今日はアフリカ、特にガーナのEV化と再生可能エネルギーについて解説してきましたが、この動きはアジアにも広まっています。
あの排気ガスまみれのジャカルタの道路が綺麗になるぞ。
インドネシア、2050年以降はEV・電動二輪車のみ販売へ(ロイター)#Yahooニュースhttps://t.co/b1atatqTYc— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) June 18, 2021
行ったことがあればお分かりでしょうが「あのインドネシアが?」と思ってしまいますよね。私は何度もインドネシアには行ってますけど、田舎は別としてもジャカルタの排気ガスなどはなかなか凄まじいものがあります。
これに対してもヤフコメなどでは「できるわけがない」とか「中国の陰謀だ」的な寒いことを言ってる人が多いですが、既にインドネシアも再生可能エネルギーへのシフトは始まっています。
インドネシアにおけるムアララボ地熱発電所の商業運転開始について
住友商事株式会社のプレスリリース(2019年12月16日 11時02分)インドネシアにおけるムアララボ地熱発電所の商業運転開始について
これは住友商事ですが、先日消化したケニアなどの件同様に日本メーカーが数多くインドネシアの地熱発電に参加しています。
インドネシアはアメリカに次ぐ世界2位の地熱資源を持つ国で、これをフル活用して「脱炭素」へ向けて動き出しているわけですが、世界3位の地熱資源がある日本でこの動きが全く出てこないのは本当に理解不能です。
少し前にはタイが2035年以降の全車EV化の方針が出ましたが、2021年に入ってからはヨーロッパなどの先進国だけではなく新興国・発展途上国でもこの動きが加速しています。
発展途上国こそ低コストかつ迅速に、1. 再エネ電力で電化、2. EVによるモータリゼーション、3. 低軌道衛星でインターネット開通、ですよね。
これらが教育水準を高めて、貧困問題や人口爆発問題の解決にも繋がると私は信じています。
— テスラ・ギガ・テキサス; Tesla Giga Texas ! (@horiaustin) June 19, 2021
実は発展途上国と先進国の格差を埋める強力な切り札となるのが「再生可能エネルギー」と「EV」だったりします。引用したツイートではそれに加えてテスラなどが現在進めている宇宙からインターネット回線を提供する「Starlink」によって情報の格差も埋まるということも言われています。
「Starlink」については以前取り上げたことがありますので、こちらをご参照ください。
「Starlink」と「サイバートラック」が「持続可能な生活」をもたらす?【テスラが導く未来】
テスラ車と「スペースX」で火星に行くことばかりがイーロンマスクのプロジェクトとして強調されがちですが、実は「Starlink」という衛星を使ったインターネットも実用化目前の段階まで来ています。テスラが提唱する「持続可能な生活」というコンセプトにこのStarlinkとサイバートラックが貢献する可能性があるので解説してみます。
「再生可能エネルギー」と「EV」に異常なほどの抵抗を示している国、「電気もロクに来ない発展途上国が」的に発展途上国・新興国に対して見下したような態度を取っている国が世界の流れからどんどん遅れていきます。
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