2022年7月ヨーロッパのEV統計から感じる変化とは?【PHEVはオワコンへ】
こんばんは、@kojisaitojpです。毎月恒例ですが、2022年7月のヨーロッパ主要国のEVランキングなどの情報が出そろっています。
でも奴らって「もうPHEVは限界だ」とは叫ばないんだよな。相変わらず支離滅裂な思考・言動(笑)。
— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) August 5, 2022
これはイギリスの統計に触れながらつぶやいたものですが、実は先に結論を言ってしまうとヨーロッパの主要国でいずれもPHEVの台数が減少し、BEVの台数が増えています。
私は先月このニュースを揶揄する目的で取り上げましたが、その通りの展開のようです。
奴らがドヤりそうなネタが出てきたけど要請してるのはヨーロッパの主要国ではない。
EU5カ国、ガソリン車の販売禁止5年延長要請 40年までに https://t.co/w6F5UpzHBA— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) June 27, 2022
「ヨーロッパもEV化にストップがかかってるんだ!」「もうEVは限界だ!」と叫ぶ人が増えるだろうなと予想してました。
EUの中のたったの5カ国、しかも主要国のフランスやドイツが関与してない時点で論外という予想でしたが7月の統計を見る限りそれが裏付けられたようです。
そこで今日は2022年7月のヨーロッパ主要国のEV比率や販売ランキングを見ながら「今ヨーロッパのEVシフトがどうなっているのか?」を考えてみます。
目次
EV比率が下がった?2022年7月ノルウェーに異変?
今日はヨーロッパでEVの比率が最も高いことで知られるノルウェー市場から取り上げます。
BEVが70.7%、PHEVが12.3%で合計が83.0%と前月同月のEV化率が84.7%から若干ダウンしたように見えます。
ところが前年同月はBEVが64.1%、PHEVが20.6%でしたからノルウェーではこの一年でBEVの台数は増加する一方でPHEVの台数が大幅に下がっていることがわかります。
その他のハイブリッド、ガソリン車、ディーゼル車はほとんど絶滅寸前です。
EV化率が下がっていることを取り上げて「ほら、やっぱりノルウェーでもEVの限界に気づき始めてるんだ!」と言う人はいるでしょうが、落ち着きましょう。
注意しなければならないのはこの「EV化率(電動化率)」は「BEV」と「PHEV」の合算だということです。
要は「Pluginできるかどうか?」を定義に区分してます。だからハイブリッド車はカウントされないのですが。
BEVの販売台数が増えてもPHEVの販売台数がガクッと減ればトータルの電動化率は下がります。
これを取り上げて「ノルウェーもようやくEVの限界に気づき始めたんだ!」と叫ぶことがいかに無意味なのかが分かります。
ですので「EVはオワコン」なのではなく「PHEVがオワコン」というのが現実です。
次に車種別のランキングを見てみましょう。
まず前提は7月なのでテスラの納車がほぼゼロであることを忘れてはいけません。
テスラがいないと首位は何とシュコダオートの「Enyaq」です。そして2位には久々にフォルクスワーゲン「ID.4」が登場です。
先月の記事でも述べましたが3Qからフォルクスワーゲンの生産再開の目処がついているというのが証明されています。この傾向はこの後取り上げる他のヨーロッパ諸国でも同様です。
そして3位には相変わらずの強さのヒョンデ「IONIQ5」もいますが、不気味なのはその後ろに控える「MG ZS EV」と「BYD TANG」です。
BYDの「TANG」は大型のSUVなのもあって先日発表された日本市場のラインナップには入ってませんが、ヨーロッパでは人気があります。
また「MG」という昔から輸入車に関心のある人であれば聞いたことのある懐かしのメーカーがあります。
とはいえ今の「MG」は一回破綻した後に中国メーカーに買収されてますので実質中国メーカーにカウントして差し支えありません。
既に中国勢が進出しているノルウェー市場ではBYDとMGが上位に入っているという事実は見逃せません。来年から日本市場にも入ってくるBYDの動向が気になるところです。
2022年7月のイギリスのEV化率は?
次にこの数ヶ月BEV・PHEVよりもハイブリッドが増えているイギリスを見てみましょう。
2022年7月はBEVが10.9%、PHEVが5.8%で合計が16.7%、前年同月はBEVが9%でPHEVが8%のトータル17%でしたから若干のダウンのようにも見えますが減ったのはPHEVだけです。
また2022年6月はBEVが18.1%、PHEVが5.5%の合計が21.6%だったことから「ようやくイギリスでもEVの限界が認識された」とはしゃぐ人がいるかもしれませんが、テスラの納車が集中する6月と全く納車がない7月の数字を並べるのは不適切です。
また2022年7月は自動車全体の月間売り上げ台数がこの16年間で最低の112162台、前年同月から9%下がっている中でBEVの台数が増えていることに注目すべきでしょう。
そして以前の記事で「テスラがいない月は起亜が首位」と1月の統計を取り上げた記事で紹介したのと同様に今月トップのシェアを得たのはヒョンデです。
今年1月のように起亜が1位になったりと韓国勢が猛烈にシェアを伸ばしているのがイギリス市場の特徴です。
2022年1月ヨーロッパのEV化状況からわかることとは?【ヒョンデ・起亜・中国勢の脅威】
毎月恒例のヨーロッパのEV化状況に関する2022年1月統計が出てきたので取り上げます。1月はテスラが全く納車しない月なので全体の売上台数やEV化率は下がってるように見えますが、前年同月比では大幅にプラスです。しかもどこの国でもヒョンデ(ヒュンダイ)や起亜が上位に入っており、着実にシェアを伸ばしていることがわかります。
また2位がフォルクスワーゲンでノルウェー市場同様に復活の気配、起亜も相変わらず強くて4位とテスラがいない月に上位に入るメーカーが順当に売れています。
ハイブリッドも32%とそれなりに売れてますが、実はこんなトラブルも起こっています。
これ以前も相手にされなかったロビー活動だけどまだやってるのかよ。
HV禁止なら生産撤退も トヨタ、英政府に警告 報道(時事通信)#Yahooニュースhttps://t.co/kdAgmaHVnH— saito koji@IONIQ5で日本全国移動中 (@kojisaitojp) July 31, 2022
トヨタがイギリス政府の定めた「2030年以降はZEV以外の販売禁止(要はハイブリッドは不可)」に反発し、「ハイブリッドが売れなくなる法律を撤回しないとイギリスに設置してる工場から撤退するぞ」と脅迫しているようです。
「日本のハイブリッドは世界一なんだ!」「だからヨーロッパは日本のハイブリッドを潰そうとしてる」とと叫んでいる方々が称賛しそうですが(笑)。
日本ではロビー活動の成果があったのか電動車というカテゴリーにPHEVのみならずハイブリッドも含めさせることに成功しましたが、本国の日本と違いイギリスはトヨタから見ると外国です。
外国で商売をするならその国の法律に従ったビジネスしかできないと思うのですが、謎の抵抗をしてるようです。
ますますトヨタが「環境保護に対して後ろ向きな企業」というイメージが強まると感じるのは私だけでしょうか?
そもそも自動車全体の売り上げ台数が大幅に減っている中でBEVだけが台数を増やしてるという事実を見れば今自動車メーカーが何をすべきかは明白だと思いますが。。。
2022年7月フランスのEV化率は?
次はフランスですが、フランスも前年同月比で自動車の販売台数が37%も下がっていることがまずは前提です。
そんな逆風の中で2022年7月のフランスではBEVが11.9%、PHEVが6.7%の合計18.6%で前年同月の15.9%から微増です。
フランスの場合はBEVもPHEVの両方が伸びていますが、前年同月はBEVが6.5%、PHEVが9.3%であることから考えるとBEVの方がかなり伸びています。
今年前半は20%超えが当たり前だったからか「フランス人もEVの限界に気づき始めた」とヤフコメなどではしゃいでいる人々が見られますが、そういう方々は「通常ならテスラが大量納車する月が6月」だということを忘れていますし、何より「伸び悩みの原因はPHEVが売れないこと」なのを忘れてそうです。
テスラがいない月はランキングもフランスは独特で、首位がルノー「メガーヌEV」、それに続くのがプジョー「e-208」ともはやEVでは古豪に入る「ZOE」と他の国と比較するとかなり特殊です。
ルノー「メガーヌEV」については以前取り上げたように日産「アリア」と共通のプラットフォームであることからかなり質の高いEVであることは簡単に想像できるかと思います。
ルノー「メガーヌ・e-tech」は以前も取り上げたこともありますが、同じアライアンスの日産「アリア」と同じプラットフォームを使用したEVで、価格が30000-35000ユーロ(約400〜460万)とアリアより安いことから売れるのは当然かもしれません。
他のヨーロッパ諸国と違ってフォルクスワーゲンがランク外なのも異常ですが、フォルクスワーゲン自体の生産能力がまだ復活途上であることを考えると納車ができない国がまだあるのは致し方ないところかもしれません。
2022年7月のドイツのEV化率は?
今回最後に取り上げるのがドイツ市場です。
ただし前提がこの数十年で最悪の売り上げ台数、前年同月比で34%も新車販売が減っていることは先に言っておきます。
そんな逆風の中で7月はBEVが14.0%、PHEVが11.5%で合計22.6%と、前年同月のBEVが10.8%でPHEVが12.8%で合計が22.8%から少し減ったように見えますが、減ってるのはPHEVだけでBEVはむしろ増えてます。
つまり「EV比率が下がったように見えるけど実はPHEVが減っただけでBEVは増えてる」というのは先に取り上げたノルウェーやイギリスと同様です。
しかも前年同月比で自動車全体の売り上げ台数が34%も下がっている(半導体不足やロシア・ウクライナの戦争の影響)にもかかわらずという話です。
ロシア・ウクライナの戦争によりガソリン価格をはじめとする燃料代が上昇してることがEVへのシフトを促しているという状況は変わっていません。
車種別ランキングもその影響からドイツにしてはかなり特殊な統計となっており、首位が先月に続いてフィアット「500e」、ようやく復活気配のフォルクスワーゲン「ID.4」と「ID.5」が合算で2位に入っています。
他にもフォルクスワーゲンは「ID.3」や「eUP」もランクインさせており、生産を再開した影響はドイツ本国が最もわかりやすい数字で出ています。
「ロシアから天然ガスが輸入できなくなったからドイツの脱炭素もEV化も終わり」とSNS上で叫んでいる方々はこのような数字を見て何を感じるのでしょうか?
「テスラもフォルクスワーゲンも思うように納車できない状態なのに前年よりEVが売れている」ことがいかに驚異かわかりますでしょうか?
半導体やこれまでウクライナから調達していたワイヤーハーネスにも目処がついてきたようで一気に反撃に転じるかもしれません。
テスラのギガ上海も生産を再開してますし、ギガベルリンも徐々に生産台数を増やしてくることでしょう。
このようにヨーロッパのEV市場で1位2位を争うテスラとフォルクスワーゲンの数字が伸びない中でもEVの販売台数が増えているという事実を認識すべきかと思います。
以前から私が主張しているようにロシア・ウクライナの紛争は「化石燃料への依存を止めよう」という方向、「だから再エネとEVにシフトしよう」という方向にに加速度をつける出来事になりそうです。
「脱ロシア依存」が進めば進むほど天然ガスをはじめとした化石燃料への依存は減り、再エネとEVへのシフトが進むのは必然です。
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