オクトバルブとBMS(バッテリーマネージメントシステム)を用いるテスラのイノベーションとは?
おはようございます、@kojisaitojpです。私の期待に応えてというわけではないでしょうが、やらかしてくれる某自動車メーカーがいます(笑)。
俺に「マツダ(笑)」と言って欲しいかのようにやらかしてくれる。 https://t.co/IPNXCpDVXR
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 5, 2021
別に「マツダ」だから叩くというわけではないのですが、MX-30の場合は元々のバッテリー容量が小さすぎることだけではなく、BMS(バッテリーマネージメントシステム)にも欠陥があるようで、ただでさえ短い航続距離が更に短くなるという問題があるようです。
実際に画像にもあるように90マイルしか冬は走れないのであれば、キロに直すと約150キロ。以前何度か取り上げた、軽自動車規格の三菱i-MiEVでも上手くいけば出せてしまう航続距離です。
今日はこのBMS(バッテリーマネージメントシステム)の重要性と、テスラがモデルYに搭載した「オクトバルブ(Octovalve)」と呼ばれる電気自動車から生じる熱を状況に応じて適切に処理するシステムによって、それもソフトウェアアップデートによって進化させるという、テスラ社が既存の自動車メーカーとは別次元の水準に進化できた背景を説明します。
またこの「オクトバルブ」が「EVは寒さに弱い」という批判を返上する変化をもたらしたことについて述べた記事もありますのでこちらもご参照いただければと思います。
目次
バッリーマネージメントシステムを更に進化させるオクトバルブ
実は電気自動車で最も重要なのが「バッテリーの温度管理」だということを知ってますでしょうか?
バッテリーを外気の気温に合わせて温めたり、あるいは冷却することがバッテリーの航続距離や充電時間を調整するのがBMSと言われるバッテリーマネージメントシステムです。
テスラが他社より優れているのがこの「バッテリーマネージメントシステム」であり、先程のマツダMX-30はこのバッテリーマネージメントシステムに欠陥があるために思うような航続距離が出ないという問題につながっています。
またバッテリーの温度管理ができない車種(例えば日産リーフ)の場合は、急速充電を繰り返すとバッテリーが熱を持ってしまい、充電量が減ってしまう、長年これを繰り返しているとバッテリーの劣化にもつながるという欠点があります。
日産に技術がないわけではないようで、2021年発売予定の「アリア」にはBMSを搭載する予定です。
車に馴染みのない人であればiPhoneがいい例になります。iPhoneは11以降の機種に「電源管理システム」が搭載されており、バッテリーの持ちが急激に良くなったという事実があります。
そして搭載された「電源管理システム」を制御するのがiOSですよね、といえばやろうとしていることが実はテスラと全く同じであることがお分かりかと思います。
何度かAppleが電気自動車に参入するという話をしてきましたが、実はこういう部分を見てもAppleが戦える余地があると言えます。
さて今日はテスラが本題なので話を戻しますが、最新のテスラモデルYに搭載されてい「オクトバルブ」という温度管理システムが話題です。
先日の「日経Xtech」にこの「オクトバルブ」が特集されていましたので、こちらの資料も拝借しながら解説します。
先程「バッテリーマネージメントシステム」と言ったように、電気自動車の温度管理は通常はバッテリー、空調、パワートレーンなど各部分にそれぞれ温度管理システムがあるのが従来のやり方でしたが、モデルYからはこれを「オクトバルブ」によって一元管理するという話です。
全ての熱管理システムをオクトバルブに繋げて、熱を運ぶ水(クーラント)が流れる経路をソフトウェアによって制御するということです。
記事にもあるようにアウディ「e-Tron」にも熱管理システムは搭載されおり、モーターの熱を暖房に使うという工夫がされていますが、車両全体を一元的にコントロールするシステムはテスラモデルYが初ということです。
一元的に管理するということは、当然ですが各部位ごとに制御するのに比べて部品点数が少なくて済みますのでコスト削減につながります。
そして各車両の走行状況に応じて、ソフトウェアをアップデートすることにより性能をリアルタイムで向上させていくというのがテスラの真骨頂です。
この新しいシステムが導入されたモデルYは、それまでの車種より10%以上の航続距離アップを可能にしたとのことです。
ソフトウェアアップデートに関しては、先日も述べたリコールの件でなぜか叩かれる対象になっていますが、ハードウェアを交換しなくてもソフトウェアのアップデートにより、車の走行に関する部分を常に最新の状態にコントロールできるというメリットがあります。
いちいちディーラーに行かなくてもオンラインでアップデートされるというのはユーザーの利便性という面でも否定されるものではありません。
先日のリコールの件はソフトウェアのアップデートで十分と考えたテスラ社と、ハードディスク自体を交換する必要があると考えた当局の見解の相違によって生じたトラブルですので、今回扱うバッテリーマネージメントシステムの件とは全く別に考えるべきです。
ソフトウェアアップデートなのにディーラー行くの?
ソフトウェアアップデートを取り入れているメーカーはいるのですが、相変わらず対応は謎のところが多いです。
SIMはないですよ!!
ホンダのGPSですべて管理されてます!
新しいソフトウェアとか配信された場合とかディーラーでアップデート必要になります(*´-`)— せいや (@seiya00229) February 6, 2021
これは「ホンダ e」の件ですが、テスラのビジネスモデルを知ってしまうと「ソフトウェアのアップデートなのに何でディーラーに行かなくちゃいけないんだよ?」と思ってしまいますよね。
ソフトウェアで済むならオンラインでアップデートしろよと言いたいところですが、おそらく旧来の車メーカーにそういう発想はないのでしょう。
結局のところ「ディーラー」「整備工場」を使って高額な整備費用で儲けようという(今回のはリコールで費用がかからないにしろ)従来の発想から抜けられないんだなというのがわかる例です。
同じように旧態依然な車検をやる「水素燃料電池車」
こちらは「車検」の話ですが、某有名メーカーも同じようなことをやっています。
結局整備で儲けようという従来の構造を温存する気か。 https://t.co/xvYYcFCMdg
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 6, 2021
もちろん水素のタンクの点検とかは安全性の確保に絶対必要なんだという言い分はわかります。爆発でもしたら大変なことになるだろうというのは私でもわかることです。
問題はそこではなく、「結局電気自動車(水素燃料電池車も水素を使って発電するという意味で広義の「電気自動車」です)になっても従来のように車検整備で高額な費用をぼったくるモデルを変える気がない」ということです。
むしろ純粋な電気自動車を販売して整備に来る客がいなくなったら困るから、あえて手間のかかりそうな水素燃料電池車に固執しているのでは?という邪推すらできます。
ここにも従来のビジネスモデルを捨てる気のない自動車メーカーがいます。
「BMS」とソフトウェアでイノベーションを起こすテスラ
リコール対応を巡って最近テスラを叩く人が増えてきた印象がありますが、私からすると「今までのガソリン車では国産車しか知らないのかな?」と思ってしまいます。
国産車しか知らない人は理解し難いんだろうけど、ガソリン車の時からヨーロッパ車はこんな感じ。 https://t.co/O8xLu3he7i
— saito koji@次の海外旅行はいつ? (@kojisaitojp) February 6, 2021
これまでのガソリン車でも「初期ロットは買うな」というのがヨーロッパ車で言われていた格言でした。
要は安全性さえ確認できれば100%完成しない状態で市場に出してみる、で実際にトラブル・故障が起きたことからフィードバックして次のロットやマイナーチェンジでの改良につなげるというのがヨーロッパ車の基本コンセプトでした。
何度かネタにしてますが、その昔私が買ったシトロエン「C3 プルリエル」もあまりに欲しかったので日本市場投入前に並行輸入で買ってしまったのですが、あり得ないような故障の嵐でした(笑)。
ひどい時は警告灯が出ていて運転にも支障があるのでディーラーに持っていったらコンピューター診断で異常なしと言われる、「また変だったら来てください」と言われて帰ったら帰り道でトラブルが再発してエンジンストップで立ち往生とか笑えるトラブルがたくさんありました(笑)。
日本メーカーだとあり得ないですよね?
「石橋を叩いても渡らない」くらいの慎重さでテストにテストを重ねて、なかなか商品化しないのが日本メーカーの特徴でそれは一面では長所とも言えますが、今の時代でこれをやってしまうと世界でのスピード競争に致命的に不利です。
テスラの場合は「ディーラー」を設けない、可能な限りソフトウェアのアップデートで済ませようとするような従来の車メーカーとはやり方も考え方も違うゆえに叩かれやすいですが、このやり方が我々にもたらす恩恵も忘れてはいけません。
必要以上に欠点をあげつらって叩くという姿勢が日本メーカーのイノベーションの芽を潰しているかもしれませんので。
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