「ESG投資」「SDGs」で世界から見放される日本?【EVがハイブリッド?・再エネが原発?】
こんばんは、@kojisaitojpです。昨日は「ハイブリッド車」という中途半端な存在が中国から締め出されるという話をしましたが、こちらも世界からヒンシュクを買う話かもしれません。
まさか脱炭素を口実に原発稼働するつもりだったとはな https://t.co/YBip5575a1
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 8, 2021
世界の流れが「EV化」している中で「電動車」なるガラパゴスな定義を作ってハイブリッド車を温存(日本だけは2035年以降もハイブリッド車OK)、世界の流れが「再生可能エネルギー」に向かっている中で原発再稼働と何がなんでも世界の流れから外れようとしている行動が目立ちます。
「だって原発は二酸化炭素出ないから」「ハイブリッドの方がエコだから」という言い訳が飛んでくるのは目に見えていますが、それが世界で通じると思うのでしょうか?
こういうことを繰り返していると世界から日本という国、日本の企業が信用されなくなるだけだと思うのですが…。
いくら言い訳を重ねて正当化しようとしても「ESG投資」「SDGs」という観点からは完全にNGと見なされて日本から投資マネーが逃げていく可能性があります。
今日はこのように世界の流れから外れようとする日本が抱えるリスクについて語ってみます。
目次
「ESG投資」と「SDGs」が国や企業の評価を決める基準に
まず「ESG投資」と「SDGs」という言葉を知らない人向けに定義から説明します。
ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。
※持続可能な開発目標(SDGs)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年までの国際目標です。
(経済産業省「ESG投資」より)
一般的なイメージとしては株式投資というのは「その企業が儲かっているか?(利益)」「赤字の会社ではないか?(財務)」などの財務情報を基準に判断されるかと思いますが、それに加えて「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」も考慮に入れるということです。
例えば世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も2015年9月に責任投資原則(PRI)に署名し、その後の資金の運用では「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」も考慮に入れた投資をすることになっています。
ちなみに世界2位の年金基金は電気自動車でも有名なノルウェーです。この辺から「環境をうまいことビジネスにしやがって」と思います?
正解だと思います(笑)。電気自動車同様に「世界の株式投資のルール」のようなものをうまく作られたことは事実です。
GPIFもこれに加盟していますが、この協定は厳しくて、資産運用総額の50%以上を「ESG投資」にあてられない場合は除名されます。
実際に除名された投資ファンドなどもありますが、一旦除名されると今後投資を行う上でかなり不利になります。
要は投資する対象の「環境に対する配慮(現在ならCO2ゼロを達成しているか?またはそれに向けて行動しているか?」や「社会に対する配慮(会社が人権に配慮しているか?安全な製品を提供しているか?最近だと新型コロナ対策をきちんとやっているか?など)」、「ガバナンス(不祥事などの際に適切な対応ができているか?リスクマネージメントをしっかりやっている体制なのか?」などが儲かる儲からない以前にスクリーニングされるということです。
ですので環境以外にも例えば「粉飾決済(某自動車メーカーでありましたね)」とか「リコール隠し(これも自動車メーカー)」などがあればマイナス点が付きますし、他にも「女性の取締役が何割いるか?」「障害者の雇用に力を入れているか?」などの人権への配慮なども投資の基準になります。
その具体的な指標としてあるのが「持続可能な開発目標(SDGs)」であり、引用した画像にあるように全部で16項目あります。
などという基礎解説は私も小論文の授業をやる際には必ずしますので、目をつぶってでも言えますが(笑)。
さて、具体的にどのように運用されるかというと、例えばグローバル企業の中でもAppleやMicrosoftなどは自社の電源を100%再生可能エネルギーにするだけではなく、日本国内にもある部品などを納入する下請けつまりサプライチェーン全体にも「ESG投資」を意識して「100%再エネ」で工場などを稼働させるように要求してきます。
要求に応えられなかったら? もちろん取引は打ち切りです。AppleやMicrosoftとしても自社が「環境に優しくない企業」と見なされて投資マネーが流出することは避けなければいけませんので。
またそのような下請け企業にも「女性の役員がどのくらいいるか?」「障害者をどのくらい雇用しているか?」など「SDGs」を意識した調査も頻繁に行なっています。
大企業、特にグローバル企業であればあるほど「ESG投資」や「SDGs」に対する配慮をしっかりやっています。というかやらないと投資マネーが逃げていきます。
そのことが企業に対する「評価」、つまり株価として反映され、株価が上昇して時価総額が上がれば上がるほど企業価値が上がるという仕組みです。
つまり従来は「環境に配慮しても儲けにならない」と思われていた企業活動が「ESG」や「SDGs」を意識した経営をすることが利益の増大につながる構図が世界中で広がっています。
ちなみに私自身は「環境をネタに金儲け」をすることは大賛成で、それで経済が活性化するのであればどんどん推進すべきだと思っています。
「環境に配慮すれば儲けが増える」というインセンティブが企業の意識を高め、それが脱炭素などの流れにつながるのであれば誰にとってもメリットのあることですので。
「ハイブリッドも電気自動車」の詭弁は通じない?
「ハイブリッド車」に関しては私のブログでは何回か取り上げてますし、昨日の記事でも「中国からハイブリッドが追い出されそう」という話はしました。
「ESG投資」の最初の「E(Environment)」の時点でつまづいてしまいます。「二酸化炭素を排出する化石燃料を燃やす車を生産している」というだけでESGの観点からは大減点です。
と私に言われると「いや、でもハイブリッドの方が環境にいいんだ」「世界の流れが間違ってるんだ」と言いたくなりますか?
そう思うなら私に対して日本語で文句を言うのではなく、今すぐ全世界へ向けて英語やフランス語、中国語で情報発信しましょう。
世界の流れを変えたいなら私に文句を言っても時間の無駄です(笑)。
ちなみに主なヨーロッパ諸国でガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車・PHEV車の販売が禁止になるのは以下の年からです(EUはPHEVも不可になります)。
- ノルウェー2025年
- スウェーデン2030年
- イギリス2030年
- ドイツ2030年(予定)
- フランス2040年(予定)
- オランダ2030年
- スペイン2040年(予定)
「(予定)」と書いた国に関してはまだ法律として成立していないだけであり、イギリスが2035年予定を2030年に早めたりもしたように早まる可能性こそありますが、遅くなる可能性はほぼないと思った方が良いでしょう。
アメリカに関してはこれまではカリフォルニア州だけが2035年以降エンジンを搭載した車そのものを禁止する(HVもPHEVもだめ)法律が成立していましたが、ワシントン州が追加です。
米ワシントン州が2030年までに内燃機関車の禁止を検討
。日本とは異なりHVも含めて禁止することが欧米の流れですが、私は禁止しなくてもEVに対するメリットが無くなり自然に売れなくなると見てます👀
Washington State Proposes Gas Car Ban By 2030 https://t.co/pSEBcdNBbu
— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) March 8, 2021
そもそもバイデン政権自体が元々「環境ビジネス」大好きの民主党政権ですし、バイデン大統領自身も就任初日に「パリ協定」に復帰し、「連邦政府の車両を全車EV化」などの政策を打ち出していますので、内燃機関車禁止の方向がアメリカ全体に広まっていく可能性は非常に高いです。
となるとハイブリッドを容認している日本が「まだ化石燃料(ガソリン・ディーゼル)を燃やして二酸化酸素を撒き散らしているのか」と批判される対象になります。
世界の流れが電気自動車(BEV)に向いている以上「いや、ハイブリッド車の方がエコなんだ」といくら力説しても相手にしてもらえないことでしょう。それぞれの国の法律で禁止されているハイブリッド車を走らせている国、ハイブリッド車を生産している企業は「環境への意識が低い国家や企業」と見なされてしまいます。
以前から言っているように「ルール設定」に失敗した以上「いや、実は」と言い訳をしても誰も聞いてくれません。
電気自動車(BEV)という「ルール変更」に適応する韓国勢と抵抗する日本勢【ウインタースポーツを見習え】
韓国の起亜自動車が「PHEVの賞味期限は2022年」と断言し、一気に11車種の電気自動車の開発・販売に踏み切ることを発表しました。2025年のノルウェーを皮切りにPHEVさえ販売できなくなる国が続出する中でハイブリッドに固執する日本勢が生き残る方法はあるのでしょうか?実はウインタースポーツの世界にヒントがあります。
「原発も二酸化炭素出ないから再エネだ」の詭弁も通じない?
よく再生可能エネルギーを批判する方々が「日本の気候は再エネには向かない」などと太陽光も風力も地熱も否定することが多いですが、そういう主張をする方々はなぜか「原発」が「地震が多い日本には向かない」とは言いません。
自分に都合の悪いことは無視するのが特徴のようです。言い分としては、
- 運転時に二酸化炭素が出ない
- 運転コストが安い(経済効率)
- 実績があるので原発の安定供給が可能
ちょっと待てよと思いませんか? 特に「安定供給」というのは10年前の原発事故を無かったことにしたいのでしょうか?
東日本大震災のみならず先月の地震の際にもトラブルが起きているようですが。詳細をマスコミに出さないところが更に不信感をつのらせます。
こないだの福島沖のマグニチュード7.1の大地震で、原発で、とんでもない事が起こってるけど、気味が悪いぐらいテレビとかでは報道してない。かなり東電は焦ってる。
この状態が更に進行すると、また311のように爆発しちゃうけど、呑気なもんだよね。 pic.twitter.com/dU7ljRB7lp
— TOHRU HIRANO (@TOHRU_HIRANO) March 7, 2021
「二酸化炭素出ないから別にいいでしょ?」という言い分は安全性、人々の生命を危険に晒すという観点から全否定されることでしょう。日本という国家、東京電力という会社自体が「住民の生命・財産を危険に晒しても平気な会社なんだな」と世界から評価される可能性があります。
「SDGs」の観点からも最初の「Sustainable(持続可能)」という時点で「事故が起きたら持続できないだろ」と一発で却下です。
「脱炭素」「脱二酸化炭素」という表面だけ取り繕ってもそれによって人々の生命・財産を危険に晒すようなことをすればアウトです。
「風力発電」に対する批判として「鳥がぶつかるから危ない」と言って風力発電を否定しようとするのに、原発で人間の生命が危険に晒されることはスルーのようです。
このような国や企業に投資してもいいと思う「ESG投資」があるとは思えなくなります。
「ハイブリッド」「原発」と世界の流れから逸脱する日本
最近の日本政府や日本企業の行動を見ていると「世界がコロナで自粛自粛言っているのにGoToで感染拡大」「世界が電気自動車化している中でハイブリッドも容認」「世界が再エネに向かっている中で原発」とやることなすことがチグハグ、支離滅裂なように見えてきます。
一体何がしたいのでしょうか? 優先すべきものが全く見えません。
まぁ落ち着いて考えればGoToは旅行業界へのばら撒き、ハイブリッド容認は日本の自動車メーカーへの配慮、原発に関しては東日本大震災の頃から言われている「原子力村」への配慮と、よく見ると「利権」「業界団体」に対する配慮であることがわかります。
世界の流れ的に「〜の方向に行かないとまずい」というのをねじ曲げて国内の利権団体に配慮するというのは理解に苦しむことですが、やってる当人たちの中では「利権団体にきちんとばら撒いてるから選挙も安泰」くらいにしか思っていないのでしょう。
これでは「ESG投資」とも「SDGs」とも無縁、日本という国、日本という企業への評価が下がるだけです。
「自分の国のことを他の国にとやかく言われたくねぇんだよ!」的な逆ギレが飛んできそうな気がしますが、グローバル化した現代で自国だけ違うことをやるというのはとてつもなくリスクが高いです。
日本が世界から見放される、日本企業に投資していた海外の投資マネーが離れていって文字通り「日本オワコン」となる光景が見えてきて嫌な予感がします。
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