テスラとトヨタが組むと「逆シナジー効果」しかない?【顧客層が違い過ぎ】
こんばんは、@kojisaitojpです。最初に報道したのが「朝鮮日報」というのが謎ですが、まだこの話がくすぶっています。
ニュースの出所は中国と韓国なんだけど、トヨタとテスラが組むかもしれないと。トヨタの小型車にテスラのFSDを載せるみたいな。まだ考えてる段階で何も具体的な話ではない……今のところは。
Tesla and Toyota reportedly considering a SUV partnership https://t.co/5DUgbCOVlK
— Badger (@AkaTheBadger) April 1, 2021
情報の出どころをアメリカや日本のメディアにしないであえて韓国のメディアを使ってくるというのは人によっては「わざと当時国から出さないで世の中の反応を見る」という思惑もあるので別におかしなことではないと言っています。
「トヨタがテスラの車を作ったら品質良くなるんじゃないの?」とか「トヨタ車にテスラの最新技術が入ることでパワーアップするんじゃないの?」と提携によるシナジー効果を生み出すのでは?と期待感を込めてこの話をしている人がSNS上でも多いですが、私の目線だと「今の状況でこの2社が組んだらシナジーどころか逆シナジー効果しかないんじゃないの?」という悪い予感しかしません。
今日はこの「テスラと組んでもトヨタにいいことがない」「トヨタと組んでもテスラにいいことがない」という逆のシナジー効果が生まれるということを現在の日本が抱える痛い問題である「高齢化」と結びつけて語ってみます。
目次
悪い意味でビミョーなトヨタ「UX300e」と「LF-Z エレクトリファイド」
先日発表されたトヨタの新しい試みがこれです。
レクサスが次世代を象徴する電気自動車「LF-Z エレクトリファイド」が世界公開。スピンドルボディも注目(carview!) | 自動車情報サイト【新車・中古車】 – carview!
トヨタ自動車のプレミアムブランド「レクサス」は3月30日、次世代レクサスを象徴するEVコンセプト「LF-Z エレクトリファイド」をワールドプレミアした。LF-Z エレクトリファイドは、2019年に発表されたブランドの電動化ビジョン「レクサス…
まだコンセプトモデルであると言うのが残念なところではありますが、公表されているスペックが「搭載バッテリー容量90kWh、航続距離(欧州WLTC)が600キロ、最大充電出力150kW」とテスラやフォルクスワーゲンの最新モデルと比較しても遜色のないスペックです。
ただし「今発売するなら上出来だけど数年後に発売ならもう時代遅れのスペックだよ」というツッコミは入ります。あとは私が日々指摘しているように「バッテリー調達できるの?という疑問もまだ解決していません。
もし本気で電気自動車で勝負を挑むのであればなるべく早い時期にコンセプトモデルではなく市販モデルの発表が必要です。
とはいえ「E-TNGA」という電気自動車専用プラットホームを用いており、この後説明する「UX300e」辺りのようなガソリン車の延長で作ったEVと比べると大幅に進化しています。
ちなみに「TNGA」というのは「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」の略のようです。決して別な意味はありません。
4輪制御技術「ディレクト4」という日産の「e-Force」に近い水準(もしかしたら上?)の技術も搭載されていますし、このコンセプトに沿ったモデルを2021年中に商品化できるのであれば世界で勝負できる水準かと思います。
とはいえバッテリーの調達が上手くいっていないというのは私が以前からトヨタに対して指摘している点で、その悪い面が露呈してしまっているのが現在唯一「レクサス」ブランドで出しているEVが「UX300e」です。
「搭載バッテリー容量54.3kWh、航続距離(日本WLTC)315キロ、最大充電出力50kW」と「レクサス」ブランドであることを考えると平凡なスペックです。
車体サイズ的に近い水準である日産「アリア」や言うと怒る人がいるでしょうがヒュンダイ「ioniq5」やフォルクスワーゲン「ID.4」と比べても明らかに見劣りします。
ヒュンダイ「Ioniq5」が電気自動車(BEV)戦線に登場【モデルY・ID.4・アリアとガチバトル】
昨日のワールドプレミアにおいてヒュンダイ「Ioniq5」の具体的詳細が明らかになりましたが、電気自動車(BEV)の、それもSUVタイプの市場において「モデルY」「ID.4」「アリア」と互角に戦えるスペックの高い電気自動車を出してきました。特に「リビングルーム」と呼ばれるEVの特性を生かした室内空間は必見です。
「UX300e」の試乗レビューなどを見ていても「EVらしい回生ブレーキが弱い」など、EVの長所を生かすのではなくなるべくガソリン車の雰囲気を残すという仕上がりになっているようです。
内装もガソリン車のレクサスとほとんど変わらないデザインで、後部座席のセンタートンネル(本来はガソリン車用)もそのまま残させており開放感もありません。
という風に「レクサス」というブランドの割に、580万円という高価な車両価格の割にショボいというのが特徴です。
とはいえ今日はいつもの私のブログのように「だからトヨタはオワコンなんだ」というための記事ではありません。
むしろトヨタという会社の問題というよりも「日本」という国が抱える問題の側面もあるというのが今日の記事で言いたいことです。
トヨタとテスラが組んだら本当にプラスなの?
冒頭の提携の噂についてですがレクサスに関してかなり進化したEVを用意できつつあるトヨタがテスラから最新のソフトウェア技術の提供を受けられれば更にプラスの効果を生むように思えます。
また常々品質の問題が指摘されているテスラからしても「トヨタの品質のプラットホーム」が加わってくれれば品質の向上を図れるとか、「もしトヨタのディーラーでテスラ車のメンテナンスでもしてくれるようになればかなり楽になる」と歓迎するテスラオーナーの声も聞こえてきます。
ですが私の見解だとこの2社が組むとロクなことがないという予想です。
「シナジー効果」というのが組むことによって2社の長所が合体して更にプラスの効果を生むという効果を指しますが、現在のこの2社が組むとむしろ負のシナジーにつながるのではないでしょうか?
例えばテスラユーザーの視点で見ると、
- トヨタと組んだら品質が上がる→日本車っぽい地味な作りになってテスラらしさが失われる
- トヨタディーラーで整備できる→ディーラーを介すると車両価格が上がる
このような展開が私のような素人でも予想できるところで、テスラユーザーが期待するようなシナジー効果はでないのでは?と予想できます。
ではトヨタからするとテスラのソフトウェアなどの最新技術を提供されるとプラスに働くでしょうか?
必ずしもそうではないと思います。
いつも「加齢臭ジャパン」とネタにしてるけど、根本の問題はこれ。 https://t.co/fz7uwWNAFq
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) April 1, 2021
もしトヨタ車やレクサス車にテスラの巨大タッチパネルが搭載されて全てを制御できるようになると言われても「こんなものどうやって使っていいかわからない」とか「ディスプレイが壊れたらどうするんだ!」と怒るユーザー、というか高齢者が多いかもしれません。
いや、それどころか高齢者のレクサスユーザー辺りからするとテスラのようにタッチするとドアノブが出てくるような仕組みだけで「ドア開かないんだけど」とディーラーに苦情を言う人も現れるかもしれません。
テスラユーザーからすると「アホか」と思うかもしれませんが、日本車しか慣れていない人のレベルは残念ながらその程度です。
そう考えると「トヨタと組むことでテスラの長所が失われる」「テスラと組むことでトヨタの長所も失われる」という「逆のシナジー効果」しか生まない提携のように思えてきます。
と言ったら驚きます?
「どうせいつものトヨタ批判でしょ?」と斜めに構えてこの記事を読まれている人が多いのはわかってますが、「トヨタだけの問題でもないよな」というのが本音です。
トヨタ自身の問題であると同時に日本が抱える問題
話がややこしいのはこの話だトヨタやテスラだけの問題ではなく、日本自体が抱える問題と結びついてしまうところではないかと私は見ています。
レクサスの内装が古臭い件、トヨタ自身が内装に関して保守的というのもあるが、それ以上にユーザー層が高齢だからあまり先進的にし過ぎるとかえって客離れを起こすというのがデカい
— 🐸かしけん🐸 (@Kashiken_N) March 30, 2021
レクサスの主要な客層に該当するのがある程度年齢層が高めというのがこうなってしまう原因だという話なのですが、この「高齢者の人口が多い」「お金を持っているのが高齢者ばかり」というのが現在の日本が抱える最も痛い問題かもしれません。
高齢者に合わせるのであればなるべく従来のデザインや内装をいじらない、例えばテスラのような斬新なディスプレイなんか搭載しようものなら「こんなものどうやって使っていいかわからない」とか「ディスプレイが壊れたらどうするんだ!」と怒る人の割合は、ハイテク機器に慣れている若者よりはお年寄りの方が多いことは(もちろん全員ではありません)否定できないところでしょう。
これが私が日々揶揄する「加齢臭ジャパン」の原因かと思うと虚しくなるところですが。
この部分はテスラユーザーの方々からすると想像もつかない部分でしょうけど、あの巨大ディスプレイをアナログなお年寄りに提供しても怒るだけで使いこなせるようになる人は少数派でしょう。
「じゃあそんな年寄り放っておいて俺たちだけで楽しもうぜ」と言いたくなる気持ちはよくわかりますし、私も個人の趣味としては同じように行動すると思います。その対象がモデルSになるかサイバートラックになるか両方なのかはまだ未定ですが。
しかしこの「お年寄りの方が人口が多い、お年寄りの方がカネを持っている」というのが日本の電気自動車化や昨日述べたような「CASE」への対応を遅れさせているという側面があることは否定できません。
ですので半分揶揄するような言い方をしましたが「テスラとトヨタが組むと逆シナジー効果でロクなことがない」というのは現在の日本の痛い問題を象徴していると言うこともできます。
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