実はEV先進村?白馬村が目指す「持続可能な社会」とは?【電力自給率100%超え】
こんばんは、@kojisaitojpです。先週長野県の白馬村までテスラ・モデルXで行った話はしましたが、滞在中に面白いことに気づきました。
この写真は白馬村の中心地のEV充電器の設置状況なのですが、明らかに多いと思いませんか?
東京都心のマップであればこのくらいあっても驚かないでしょうけど、私の自宅からも割と近い池袋周辺の充電器設置状況はこの程度です。
白馬の方が池袋より多いですね(笑)。
別にこれを狙って白馬へ行ったわけではなく(実際に宿泊した「コートヤードバイマリオット白馬」には充電器はありませんでした)、テスラ・モデルXの航続距離とカーシェアでの距離制限から最も走るのに適した場所という意味で選んだだけです。
というわけで今日は実は日本で最もEV充電インフラと再エネが進んでいる自治体の一つに思われる白馬村について紹介します。
目次
「再エネ100%」とEV普及への意識が元々高い白馬村
実は長野県白馬村は、北アルプス白馬連峰のもと、国内外の人々を魅了する山岳自然環境と、姫川源流をはじめとする美しい自然に恵まれた環境で、その環境を守るため、2050年における再生可能エネルギー自給率100%を目指す「白馬村気候非常事態宣言」を2019年12月に出しました。
その後温室効果ガスの排出量又は二酸化炭素を実質ゼロにすることを目標にする「ゼロカーボンシティ宣言」を2020年2月に行いました。
長野オリンピックで競技が行われたことからもわかるように白馬村はウインタースポーツなしにはやっていけない自治体です。
ですので地球温暖化により降雪量が減ってスキー場がオープンできないなどの問題が起きると死活問題です。
白馬村が出した「気候非常事態宣言」は以下の内容になります。
- 「気候非常事態宣言」により、村民ともに白馬村から積極的に気候変動の危機に向き合い、他自治体の取り組む模範となります。
- 2050年における再生可能エネルギー自給率100%を目指します
- 森林の適正な管理による温室効果ガスの排出抑制に取り組むこと等により、良質な自然循環を守ります
- 四季を肌で感じることができるライフサイクルや、四季を通じたアクティビティの価値観を、村民一人ひとりが大切にします
- 世界水準のスノーリゾートを目指すために、白馬の良質な「パウダースノー」を守ります
もちろんこの背景には白馬村を含む長野県全体が再エネに適した自然だという背景があります。
電力の8割を自給自足する先進県、小水力発電と木質バイオマスが活気づく
水力発電が盛んな長野県では電力需要の8割以上を再生可能エネルギーで供給できる。2017年度に自給率100%を目指して、農業用水路に小水力発電所を拡大中だ。森林資源を生かした木質バイオマスによるガス化発電、牧草地やゴルフ場の跡地を利用した巨大なメガソーラーの建設計画も始まった。
またこのエリアには地域限定の小規模発電を手がける会社も複数存在し、山々からの雪解け水を使用し、小水力発電に取り組んでいます。
小水力発電所により発電した電気は電力会社に売電し、地域循環ができるような仕組みの構築を創り上げ、白馬村内の電力自給率の向上、再エネ100%を目指しています。
「地域の、地域による、地域のための、地域主体にて小水力発電事業に取り組み、自給自足、地産地消に繋がる持続可能な地域作り」というコンセプトに私は大いに共感できました。
片や都会に戻ってくると「EVを推進するには原発ガー」的ななぜか「電気自動車=原発再稼働が必須」のようなことを言う人々に遭遇してしまい呆れてしまいます。
この有名な自動車ジャーナリストの方もその典型で、日本の自動車ジャーナリストの中では珍しくテスラの良さを熱く語っており、「このままじゃ日本の自動車メーカーが大変なことになるぞ」と日本メーカーの奮起を促すような発言も大いに共感できました。
ところが「電力」の話になると簡単に「原発再稼働当たり前でしょ?何反対してるの?」的なことをサラッと動画の中で言ってしまっていて、結局はただの車のことしか語れない、再生可能エネルギーを含む持続可能な社会というテスラの理念は理解できないんだなと残念な気持ちになってしまいました。
「EV化推進」と「EV充電器設置」にも積極的な白馬村
さて話を白馬村に戻して、今後はEVに対する試みを解説します。
白馬村では自治体をあげてEVを推進する試みとしてこのような試みも毎年行なっています。
白馬EVシェアリング|白馬村
令和2年度EVシェアリングは好評のうちに終了しました。沢山の皆様にご利用いただきましてありがとうございました。(利用率81.8%)
白馬村の村民と村内のホテルに泊まっている観光客は無料でEVのカーシェアができるという仕組みです。
毎年行われているようで年によって違いますが過去には日産リーフやフォルクスワーゲンe-ゴルフなどが提供されています。
返却の際に充電残量80%でというルールはありますが、先ほど引用した規模で村内に充電器がありますので何も心配はいりません。
他にも「ジャパンEVラリー」というイベントを毎年開催しており、昨年は同時開催のイベント『EV&プラグインハイブリッド車 展示&試乗会』も開催され、日産リーフやHonda e、アウディe-tronスポーツバック、トヨタRAV4PHVなどのEVが試乗車(無料)として提供されていました。
ちなみに「ラリー」と名前がつきますが、これは「電気自動車で白馬へ行ってみよう」という意味のようで別に競争が行われるわけではありません。
詳細は実際に参加した方の記事をご覧いただければと思います。
第7回『ジャパンEVラリー白馬2020』長野県白馬村で開催 | EVsmartブログ
日本EVクラブが例年開催している『ジャパンEVラリー白馬』が、今年も長野県白馬村で開催されます。会場は白馬五竜スキー場。Honda eやアウディe-tronスポーツバックを体感できる『最新EV&プラグインハイブリッド車展示&試乗会』も同時開催されます。
このように「再生可能エネルギー」と「電気自動車」に力を入れている白馬村ですが、当然EV化のために必要不可欠な充電インフラについては、法人個人を問わず事業者にはEV充電器設置には補助金も出ます。
EV自動車用普通充電設備設置に対する助成制度|白馬村
白馬村では、CO2排出の削減を図り環境に優しい観光地づくりを推進していくため、電気自動車(いわゆるEV自動車)用の普通充電設備を設置する事業者又は個人に対し、新たに補助制度を創設しました。 概要は以下のとおりですので、ぜひ積極的な活用をお願いします。
事業所や宿泊施設、マンションなどの集合住宅の駐車場に充電設備を設置するのには環境省からも補助金が出ますので、自治体の補助金と合わせるとほとんど持ち出しなしでできる場合が多いのですが、このことが案外知られていません。
一般社団法人次世代自動車振興センター
CEV、EV・PHV用充電設備、水素ステーション、サポカーの補助金交付を行う一般社団法人次世代自動車振興センター。環境・エネルギーに優れた自動車の普及を促進しています。
白馬村のケースで考えると環境省からの補助金と自治体からの補助金を合わせれば宿泊施設や飲食店などの事業者はほとんど出費なしで充電器を設置できます。
このように街中の温泉にも充電器があります。
よく「うちは集合住宅だから充電ガー」とEVを拒絶する理由に使う人は多いのですが、実は集合住宅に設置する費用はほとんどが補助金で賄われるので、持ち出しがほとんどなしでできます。
このような事実を知らない、いや場合によっては見ようともしないで充電器設置を拒否する管理組合や管理会社がまだまだ多いのは非常に残念な事実です。
個々人の住宅になるので写真を撮ることは控えましたが、白馬村では駐車場に充電器のあるマンション・アパートも目撃することができました。居住者やオーナー・管理会社などに理解がある証拠かと思います。
「日本でもやればEV化できる」ことを教えてくれる白馬村
まぁ「白馬は自然が豊富で水力発電とかできるからEVEVって言ってられるんだ」「同じことが都心でできるわけないだろ!」的にアンチEVの方々が噴き上がるのは想定の範囲内でこの記事書いてますので(笑)。
電気自動車先進国の例としていつもノルウェーをあげる度に「ノルウェーが特殊なんだ」と言って無視するのと同様に「白馬が特殊なんだ」と無視するのでしょうか?
今度は同じ日本国内の話なのに。
誰も損しないシステム https://t.co/gImgoyEaAc
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) April 12, 2021
私がふと思ったビジネスモデルとして都心でも「自宅に太陽光とパワーウォールを設置して再生可能エネルギー100%の電気で充電したEVをカーシェアする」というのが浮かんでたりして構想を練ってますが、これに「ウォールコネクターを使用して自分のEVも自由に充電していいよ」というサービスを付け加えたら面白いなと思ったりもしました。
まぁ提案したところで「そんなビジネス絶対儲からない」とか「車業界の経験もないくせに車でビジネスやるな」とかボロクソに言われるんだろうなとは思いますが(笑)。
ただ数日前の記事でも述べたように「整備で儲けることが前提の従来の中古車店のビジネスモデル」はEV化で終わってしまうことがほぼ確実ですので他に収益を上げる方法を考えるときなのでは?と思います。
「ガソリン車」と「エンジン関係の整備」で儲けることができなくなるのを嘆くのではなく、次世代の自動車であるEVに合った新しいサービスを考え出すことが生き残るためには当然のことだと思うのですが、そういう意識でやっている中古車店にほとんど出会えないのも残念な事実です。
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