猛烈な勢いで充電インフラを充実させるフォルクスワーゲンやテスラの狙いとは?【2021年3月の新車販売割合についても掲載】
こんばんは、@kojisaitojpです。日本の充電インフラを巡ってまた残念なニュースが流れてきています。
自動車4社が e-Mobility Power へ出資のニュースに、改めて「期待」を整理してみる https://t.co/Wc1tdZhU8d
これ、何でMX-30のマツダが入ってないの?
トヨタLEXUS UX300e、日産リーフ、ホンダHonda e、三菱 i-Miev(後継は日産と共同のiMK)って考えるとマツダがいないの凄く疑問。— 音羽ざくろ (@zakuromusic1994) April 10, 2021
これまでのNCS(日本充電サービス)の後継となる会社として、電力会社(東京電力と中部電力)が中心となって設立したe-mobilityPowerがありますが、ここに「トヨタ・日産・ホンダ・三菱」の自動車メーカーが出資するというニュースです。
まぁこれまでもトヨタディーラーだろうが日産ディーラーだろうが各ディーラーに設置した充電器はその会社のものではなくNCS(今後はe-mobilityPower)のものですので、公共の充電施設として誰でも利用できるものです。
既に指摘している人は多いですが「他の自動車メーカーはやる気ないの?」という話です。
軽自動車中心のいくつかのメーカーもそうですし、既に「MX-30」という電気自動車(BEV)を発売しているマツダが1円も出資しないのは本当に謎です。
まさか他社が作った充電インフラにただ乗りするつもりなの?と思ってしまいます。
何となく充電インフラというと電力会社がと思ってしまいがちですが、ヨーロッパやアメリカの例を見ても、テスラのように全てのスーパーチャージャーを自社で設置する会社にしても自動車メーカーが主導して設置しています。
今日はそんなヨーロッパの充電インフラの設置状況について述べた上で、最新の統計が出てきた2021年3月のヨーロッパの主要国における電気自動車の販売状況について取り上げます。
目次
「充電インフラの充実=電気自動車(BEV)の普及へとつながる」という姿勢のフォルクスワーゲン
まずは最近のヨーロッパにおける充電インフラについての記事を引用します。
Ionity Map Reveals Future Fast Charging Stations For 2021 In Europe
Ionity will open in new European countries and expand where it already is. Check the 30 new fast-charging stations it will have in Portugal, Spain…
「ionity」とはBMWグループ、ダイムラー、フォード、VWグループ、ヒュンダイグループが出資するヨーロッパの充電ネットワークです。
先日の「PowerDay」においてフォルクスワーゲングループは今後の電動化戦略の柱として「バッテリーの自社生産」と「充電ネットワークの充実」を掲げていました。
2025年までに欧州で18800基、米中加で約2万基以上の急速充電器の設置目標を掲げており、テスラのスーパーチャージャー並に自社で充電ネットワークを構築する姿勢を見せています。
しかも実用化がいつになるのかは不明確ですが、このようなロボットが駐車場内で充電して回るという構想も披露しています。
日本の駐車場でよく見られる充電スポットにガソリン車が駐車していて充電できないというトラブルがこれで解消されます。
先日は「工場の電力も100%再エネ」を目指すフォルクスワーゲンの試みを紹介しましたが、充電ネットワークの整備にもガチの本気を見せています。
ヨーロッパでは共同で設立した「ionity」、北米ではディーゼル不正の際に罪滅ぼしのような意味合いで作られた傘下の「エレクトリファイ・アメリカ」がすごい勢いで充電ステーションの設置を行なっています。
バイデン政権の唱える「全米50万ヶ所の充電ステーションの建設」という流れにも上手く乗っています。
お分かりでしょうが「自社が主導して充電ネットワークを充実させる」というのはテスラと全く同じ戦略です。
電気自動車(BEV)を売るメーカーが積極的に充電ネットワークを広げてユーザーが困らないようにすることが長期的には会社の売り上げ台数となって返ってくると捉えているようです。
あくまで噂の域の話ですが、テスラのスーパーチャージャーは設置だけで数千万の費用がかかるらしく、地権者に毎月の土地代も払う必要がありますので費用をユーザーから回収することはほぼ不可能なようです。
それでも「電気自動車(BEV)を普及させるための先行投資」として、テスラの場合だとサービススポットの設置よりも優先順位を上げて奮闘しています。
フォルクスワーゲンもこれに乗ってきたということは、充電インフラへの投資を渋る日本のメーカーなどは「やる気あるの?」という話になり、ユーザーから見放されるリスクもあります。
2021年3月のドイツの新車販売状況は?
まずはヨーロッパ1の自動車大国ドイツの統計です。
BEVだけでも10.3%と10%超え、PHEVと合わせると22.5%と前年同時期から見て2.4倍に増加です。
主な売れ筋の車種にはなんと「e-Up!」という若干古い車種がトップに入ってきたことが意外ではありますが、Aセグメントというヨーロッパでは人気のセグメント(軽自動車に近いサイズです)に当たる「ID.1」の発売がまだしばらく先なのもあって売れ行きが伸びたのでしょうか。
他はフォルクスワーゲン「ID.3」にテスラ「モデル3」と順当(とはいえまだギガベルリンが稼働していない以上テスラ車は割高なはずですが)に並んだ上で先日バッテリー火災の件で話題となったヒュンダイ「KONA EV」もランクインしています。
長年人気だったルノー「ZOE」がランク外というのも意外です。
2021年3月のイギリスの新車販売状況は?
イギリスの3月のプラグイン車シェアは13.9%(BEVは7.75%)、前年同月比で約2倍に成長しているのはドイツ市場と同様です。
ドイツにしろイギリスにしろ、次のフランスにしろかなり厳しいロックダウンが強いられている中でもEVの売り上げ台数だけは昨年も今年も増加の一途です。
車種別の販売台数ではある程度数が売れてランク外に消えていたテスラ・モデル3が補助金対象から外れる前に、注文が集中しているようです。
また意外なところでは「マイルドハイブリッド」の売り上げ台数が増えているというのがありますが、これは「一時的なものではないか?」との分析があります。
というのも2030年以降はイギリスの法律ではマイルドハイブリッドも新車販売禁止の対象に入るからです。2030年まであと9年という年数を考えると「最後に乗っておくか?」的な買いが入っても別に不自然ではありませんので。
2021年3月のフランスの新車販売状況は?
フランスの3月の売り上げ割合ではBEVが8.5%で、PHEVと合わせて16.1%がプラグイン車になっており、昨年同時期の9.69%からの大幅な増加です。
反対にガソリン車・ディーゼル車の合計が65.8%と史上最低の数字になっています。
車種別の詳細は出ていませんが、モデル3が4524台で全体の29%を占めているというのが驚異です。
2020年は1年トータルで6477台、2019年は1年トータルで6455台ですが、2021年は既に3ヶ月で5763台と去年一昨年の一年分の数字を4月に更新することはほぼ確実です。
フランスでも日本同様にモデル3の大ヒットが始まったようです。
2021年3月のノルウェーの新車販売状況は?
最後はEVが嫌いな皆さんが顔も見たくない、国の存在すら否定したくなるであろうノルウェーです(笑)。
昨日の記事でも指摘しましたが、テスラ・モデル3、アウディe-Tronに続いて日産リーフが堂々の3位の売り上げ台数です。コストで勝るヒュンダイや起亜にも負けていません。
でも電気自動車を「日本には向かない」「時期尚早」などと全力で否定する方々は今も「日産リーフ」が最もEVの普及率が高いノルウェー市場で今も売れている、つまりきちんと日本ブランドの評価がされているというポジティブな側面はなぜか無視しますよね。
とはいえこのグラフの通りで既にガソリン車とディーゼル車を合わせてもシェアが10%くらいと、ノルウェーでは「内燃機関車(エンジン搭載車)」が少数派になり、消滅寸前の状況は変わりなく進行しています。
まぁこの国に関してあれこれ言っても「ノルウェーは水力発電ガー」と横槍が飛んできますのでこの程度の解説でやめておきます。
世界の流れは充電インフラを整備してEV化へ一直線
このようにヨーロッパ各国の2021年3月の売り上げ台数に占める電気自動車(BEVとPHEV)の割合を見ていると右肩上がりに上昇していることがわかります。
元からかなりの普及率に達していたノルウェーは例外としても、イギリス、ドイツ、フランスなどの人口が多くノルウェーとは桁違いの売り上げ台数を誇る国でも電気自動車の販売台数が毎年2倍かそれ以上のペースで増加しています。
この増加と冒頭で取り上げた「充電インフラの構築」が同時並行で急ピッチで進められていますので、自宅充電のみならず「外出してもどこでも充電できる」とむしろEVの充電を探す方がガソリンスタンドを探すより楽になると乗り換えが一気に進みます。
それを何度も用いた表現で「指数関数的上昇」と言います。
充電設備が増える・電気自動車の比率が増えるということは当然ですが閉店に追い込まれるガソリンスタンドが次から次へと出てくるでしょうから、いずれはドミノ倒しのように急上昇カーブを描いてEVの普及率が急激に上がる時がもうすぐ来ます。
その時になって慌てて「EVしか売れない」と騒いだところで後の祭りです。
日産のリーフだけのための広告なんて日本では見れないから貴重。 pic.twitter.com/UUcSEbdRaT
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) March 10, 2021
以前も引用したUEFAチャンピオンズリーグの広告ですが、日産だけが「リーフ」「アリア」の広告を出して孤軍奮闘している状況です。
日産が英国と欧州で日産アリアの弟分(ジュークサイズ)の新しい電気自動車を発売します。
新しい日産ジュークサイズの電気自動車は日産アリアの弟分になります。https://t.co/szDrrdkESl #日産アリア #EV pic.twitter.com/VYZzzv01O3— がす | テスラを楽しむ (@Gusfrin92486024) April 9, 2021
日本市場に投入する話は出ませんが(おそらくバッテリーの調達が限界なのでしょう)、イギリスとEU向けには更に1車種EVを追加するようです。
日本メーカーに関する明るい話はこれくらいという現実も残念ではありますが、「EVは時期尚早」だとか「EVになっても二酸化炭素排出量は変わらない」といくら日本国内で日本語で叫んだところで世界の流れは無視して前進していきます。
果たして生き残れるメーカーはどのくらいいるのでしょうか?
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