2021年6月ヨーロッパ主要国のEV化状況とテスラの販売台数は?【6月はテスラが最強の月】
こんばんは、@kojisaitojpです。6月で4半期末が終わったのもあり、上半期の様々なデータが出てくる時期になっています。
テスラの2021 Q2の製造・納車台数(速報値)が発表。
【製造】
✅モデルS/X:2,340台
✅モデル3/Y:204,081台
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✅合計:206,421台【納車】
✅モデルS/X:1,890台
✅モデル3/Y:199,360台
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✅合計:201,250台https://t.co/ntTt0h5Vuc pic.twitter.com/dIVof4rJYD— 🌸八重さくら🌸 (@yaesakura2019) July 2, 2021
テスラの4-6月の売り上げ台数が初の20万台超えというのが数日前にニュースになりましたが、引用したツイートの内訳を見ての通りで納車が始まったばかりの新型モデルSとモデルXはごくわずかです。
まぁ既にほぼ完成状態のギガファクトリー・ベルリンがまだドイツ当局からの許可が降りず操業できない状態ですので急激な増加は不可能かと思いますが、モデルSとモデルXの納車がスムーズに進めば2021年トータルで100万台も可能な水準です。
4月5月にテスラ車の売り上げ台数がいまいちだったことを取り上げて「もうテスラは終わった」のようなことを言っている人がいましたが、テスラは毎年4半期末(3月、6月、9月、12月)に納車を集中させる戦略だということを知らなかったのでしょう。
今日はそんなテスラの売り上げ台数も含めた、ヨーロッパ主要国のEV化状況についてまとめてみます。
目次
ガソリン車・ディーゼル車を合わせても2021年6月の首位は「テスラ・モデル3」のイギリス
まずはEV化率よりこの表を見た方がインパクトがあります。
首位が「テスラ・モデル3」になっていますが、他のランキングにある車種をよく見てみましょう。
「フォルクスワーゲン・ポロ」「トヨタ・ヤリス」「BMW3シリーズ」などガソリン車(ヨーロッパなのでディーゼル車も込み)です。つまりこのような誰もが知っている有名なガソリン車を抜いてモデル3が堂々の首位に上りつめたということです。
以前の記事でも指摘したことがありますが、イギリスでは既にEVに対する補助金の基準が変更になっており、車両価格30000ポンド以下のEVにのみ補助金(以前は50000ポンド以下)が出ますのでモデル3は対象外です。
「EVなんて補助金があるから売れてるだけだ」という批判を吹っ飛ばす2021年6月のテスラの販売台数です。
そして6月のEV化率はこのようにBEV単独で10.7%、PHEVと合わせた電動化率は17.2%と先月の14.7%から20%ほど増加、前年同月比だと2倍以上の増加です。
2030年には全ての内燃機関車の販売を禁止するイギリス(新車のみならず中古車も含む最も厳しい規制)ですので、EVへの需要は伸びる一方です。
それに関連してこの前の記事では「日産のサンダーランド工場にバッテリー工場が併設」という記事を書きましたが、ボリス・ジョンソン首相がお祝いに駆けつけるのも納得です。
昨日も言いましたが「世界のルール設定」に関しては歴史的に達人級に上手い「腹黒紳士(笑)」のイギリスがEVと再エネに全振りしているという事実は重く受け止めるべきかと思います。
2021年6月のフランスのEV化状況
次は先日の記事でもルノーが本格的にEVに取り組むことを表明したフランスを見てみましょう。
2021年6月はBEVが10.5%、PHEVと合わせた電動化率は18.8%と、前年同月が9.0%ですので2倍以上の伸びを見せています。
6月の具体的な車種別の詳細はまだ出ていませんが、1月〜6月のトータルで見ると「ルノーZOE」「プジョーe-208」「テスラ・モデル3」がほぼ互角で首位争いをしていると予想されています。
他には「ルノ・トゥインゴEV」や「フィアット500e」のようにコンパクトカーが上位を占めるのはフランスの特色が出たランキングになっています。
またそれに続く車種として「フォルクスワーゲン・ID.3」が5月と比較して2倍以上の台数がフランス国内に入っていることが確認されていますので、上位3台に続く売り上げ台数となる公算が高そうです。
2021年6月のスウェーデンのEV化状況
次は先日第二弾のEV化計画として「航続距離1000キロ、充電時間も半分」という2025年以降のプランを公表したボルボの本国であるスウェーデンを見てみましょう。
BEVは24.1%、PHEVと合わせた電動化率は49.4%と、前年同月の25.7%から約2倍の増加です。
車種別だと「MG ZS EV」が首位に立っていますが、「MG」というメーカーご存知でしょうか?
古くからの外車好きの方々なら聞いたことはあるかと思いますが、「MG F」や「MG TF」「MG ZT」などで有名なイギリスの老舗ブランドです。
1994年、ローバーとともにBMWに吸収され、その後中国の自動車メーカー、上海汽車集団(SAIC)の傘下に入っています。
ですので中国メーカーと言っていいのかイギリスメーカーと言っていいのか微妙なところですが(工場はイギリス国内にもあります)、EV投入によってヨーロッパへの再上陸に成功しています。
話を戻しますが、電動化率で見るとBEVが6.8%から3倍以上に増加しているのが特徴で、これは以前も解説したことがありますがボルボが昨年まではBEVよりもPHEVを中心に販売していたことが影響しています。
しかし昨年末の「XC-40Recharge」の販売開始からサブスク形式での提供で話題になった「C40 Recharge」が続き、更にボルボ自体が「2030年以降は販売する車は全車EV」というのを宣言したことで風向きが変わりました。
ちなみにこの「まずはPHEVで、徐々にBEVへ」という移行の仕方は、日本のように「充電インフラガー」「航続距離ガー」「寒さガー」と様々な理由を持ち出して頑なにEVを拒絶している層に「とりあえず電気で走れる車に乗ってみましょう」と体験させることからEV普及を始めるのに有効ではないかと個人的に考えています。
「まずプリウスPHVで電気だけで走れる状態を体験してからEVへ」というのは以前書いた記事がありますので、こちらをご参照いただければと思います。
プリウスPHVにみんなで乗ることがEV化への近道?【案外本気です】
これまでガソリン車しか経験がない、ハイブリッド車しか経験がないという人でも「プリウスPHV」であれば悩むことなくバッテリーのみで走るEV走行を体験できます。一旦バッテリーのみで走行する楽しみを知ってしまうと極力ガソリンスタンドに行かない生活になるようで、EVを試してみたいけど何となく不安という人にもオススメです。
既にEVに慣れたオーナーの方々からは「今更PHEVなの?」と指摘されたりもしましたが、乗ったこともないのにEVの悪口を言っているような層にまず電気で走れる状態を体験してもらう、電気だけで走れる状態を知ってしまうと「ガソリンを消費したくない」という意識が働いてなるべく電気だけで走行しようとすることは既に明らかになってますので、電気自動車後進国の日本で有効な方法ではないかと思っています。
2021年6月のノルウェーEV化状況
そして毎度のことですがEVが嫌い、EVを何がなんでも否定したい方々には名前を聞くのも嫌になっているであろうノルウェーです。
昨日の記事でも出したので今日は簡潔な説明にしておきますが、BEVだけでも64.7%、PHEVも含めた電動化率は85%と脅威の数字です。
もはやガソリン車とディーゼル車の売り上げを合わせても8.2%と、昨日も言ったようにガソリン車やディーゼル車を買った人ノルウエー人に「なぜ買ったんですか?」とインタビューしてみたくなる水準です。
ですがそんなノルウェーでさえ去年の同月は66.3%でしたので、この一年で急激に内燃機関車廃絶へ向けて加速していることもわかります。
車種別で見ると昨日は「日産・リーフ」が6位と健闘していることにスポットを当てましたが、首位はぶっちぎりで「テスラ・モデル3」、そしてそれに続くのが「フォード・マスタングマックE」や「シュコダ・エンヤック」と私が以前ブログで注目したEV2車種が上位にランクインしています。
2021年5月ノルウェーの驚異の電動化率とフォードのEV化【首位はマスタング・マックE】
2021年のヨーロッパの電動化比率などが明らかになってきましたが、電動化率80%を超えるノルウェーとPHEVからBEVヘの転換を図る意味で日本がモデルにしやすいスウェーデンを中心に取り上げます。世界で最もEV化が進むノルウェーではフォードの「マスタング・マックE」が早くも売上首位に立つなど多彩なラインナップが特徴です。
シュコダ(Skoda)「エンヤック」から感じる「EVのコモディティ化」とは?【兄弟車VW「ID.4」のGTXも紹介】
「意外」というと失礼かもしれませんがオランダの2021年4月の新車販売で電動化率が20%を超えているのも驚異でしたがランキング2位にチェコの「シュコダ(Skoda)」の「Enyaq(エンヤック)」が入りました。フォルクスワーゲンと共通のEV専用プラットフォームを使い「ID.4」とほぼ同等のスペックに仕上がっています。
これに加えていよいよノルウェー市場には中国のNIOやXpengが上陸して販売を開始しますので、中国本土以外で初めて販売することになる中国勢がどのくらい上位に食い込んでくるかが来月以降の注目のポイントだとも言えます。
以前も記事にしましたがノルウェー市場で売れるようになったということは、「EUの安全基準をクリアした」ということですので、「EUの基準をクリアした自動車は日本でもアメリカでも全世界で売れる」という事実も見逃せません。
NIOやXpengのヨーロッパ上陸に関しては以前記事にしてますので、よろしければご参照ください。
ノルウェーにNIOが上陸することが衝撃な理由とは?【2021年4月のEV販売台数も掲載】
中国の新興EVメーカーNIOがついにノルウェー市場、つまりヨーロッパに上陸します。バッテリー交換ステーションも設置しながらの本気の進出です。中国メーカーが徐々にヨーロッパ市場に上陸し、世界進出を伺う位電気自動車が本格的に普及しているのが世界の流れです。2021年4月最新のヨーロッパの新車売り上げ状況も掲載します。
中国の新興EVメーカー「Xpeng」が実は脅威?【バックにアリババ・シャオミ・ホンハイ】
中国の新興EVメーカーである「Xpeng」について紹介します。2014年に創設されたNIOなどと並ぶ新興企業ですが、既にニューヨーク証券取引所に上場していたり、ヨーロッパへの輸出も開始していたりと実はBYDと並ぶくらい成長している企業です。今日はそんなXpengの販売車種であるG3やP7について紹介します。
世界では当たり前なのにEVだけ、テスラだけなぜか叩かれる「アジャイル」方式
先月からアメリカで納車がスタートしたテスラ「モデルS」に不具合があるという情報が色んなところから上がってきます。
「だって外車の初期ロットだぞ」で終わる話(笑)。 https://t.co/AuDBybnz71
— saito koji@次の海外旅行の前にEV購入? (@kojisaitojp) July 5, 2021
この手の情報を見て「ほら、やっぱりテスラは品質に問題がある」とか「安全性を軽視してる」と待ってましたというかの如くテスラの悪口をネットに書き込む人が現れます(笑)。
でも私からすると「外車の初期ロットなんてガソリン車の時からこんなもんでしょ」というのが感想です。
私もその昔シトロエンの「C3プルリエル」というオープンカーを発売直後に買いました(要は初期ロット)。
その結果不具合のオンパレードを経験し、特に「センソドライブ」と言われるセミオートマが壊れた際にはかなりの修理代がかかりましたが、一通りの不具合を修理した後はほとんど故障知らずで20万キロまで走ってくれました。
当時は「アジャイル」などという言葉が一般的ではなかったので使いませんでしたが、「外車の初期ロットは買うな」というのは当時から外車好きのオーナーの中では「常識」のようなものでした。
初期ロットを実際に市場に投入して、走行距離を重ねていく中で不具合を解消し徐々に完全なものに近づけていくという手法はヨーロッパ、アメリカの自動車では結構普通だったりします。
これを知らないでテスラを買って「ほら、こんなに不具合がある」「こんな安全性に不安がある車はダメだ」と叩く人が多いのですが、それを言い出したらガソリン車でもアメリカ、ヨーロッパの車を全て否定することになります。
「早く市場に投入して、後から不具合を修正する」というやり方と「完璧なものが出せるまで徹底的に石橋を叩き続ける」という日本メーカーのやり方の違いがはっきりと出る部分なのですが、現在の市場に
それがEVの世界だと顕著に現れるわけで、日本メーカーが日産リーフ以降本格的なEVを発売していない状況にテスラやフォルクスワーゲン、更には中国メーカーのEVがどんどん市場に投入されてシェアを奪っているのが今の状況です。
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