電気自動車(EV)の補助金を巡る謎【補助金増額なのに増税?】

こんばんは、@kojisaitojpです。昨日は日本の電気自動車を巡る状況に色々言いましたが、多少なりとも変化が出てきているようです。

実際にヨーロッパ諸国の電気自動車に対する補助金は、

  • イギリスでは50,000ポンド以下の車両に最高3,000ポンドの補助金
  • フランスでは車両価格45,000ユーロまでのBEVにはこれまでより1,000ユーロアップの7,000ユーロを、車両価格50,000ユーロ且つWLTP航続距離が50km以上のPHEVには据え置きの2,000ユーロの補助
  • ドイツでは車両価格40,000ユーロ以下のBEV、PHEV、FCVの購入者(自治体を含む)は、今までの倍の6,000ユーロの補助金を受けることができ
  • オランダでも新しい補助金制度が導入され、EVの新車を購入・リースする人には4,000ユーロ、中古EVの購入でも2,000ドルの補助が出ます。

1ユーロを125円、1ポンドを140円くらいで計算すれば大体の補助金額がわかります。

金額で比較するとヨーロッパ諸国と大差がないような水準にようやくなってきたのですが、後で説明するようにこの補助金をもらうにはいくつかのトラップを潜り抜けないともらえないというちょっと意地悪な仕組みになるようです。

少々問題ありの補助金なのですが、それでもネット上では「EVだけずるい」のような批判をしている人もいます。

ですが国を挙げて「ゼロエミッション」を目標に温室効果ガスの排出量を減らそうとするのであれば電気自動車を買う人が得をする仕組みを作って、電気自動車を買う方向に誘導することは当たり前のことです。

ヨーロッパでは最速のノルウェーが2025年、他のヨーロッパ諸国も2030年〜2035年くらいにはガソリン車の販売を禁止する予定でいることから、電気自動車への買い替えを促すように税金面などの政策で誘導しています。

日本もようやくこの方向に進んだように見えるのですが、いくつかのトラップがあり、ここが日本特有の問題として厄介なことになりそうなので解説します。

補助金は世界水準になったものの本当に電気自動車を優遇してるのか?

「脱炭素」に関連した施策として、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を掲げており、目玉施策の1つとしてEVの普及率を向上させるというものがあります。

それが「EV(電気自動車)」の購入者に対する補助金支給の強化です。

現在は「EV(電気自動車)」の購入者に対して40万円の補助金を支給していますが、これを2倍の額である80万円にするという取り組みが検討されています。

ただし最初にも言ったようにここにはトラップがあります。

「自宅やオフィスの電気契約を再生可能エネルギー由来の電力に切り替え、EVへの充電設備を整えること」という余計な条件がついています。

つまり自宅に太陽光パネルを設置できるような家庭か、最低でも再生エネルギーに電力契約を切り替えて自宅に充電設備を設置するという投資ができる家庭のみに補助金を払うということです。

まぁテスラという会社は太陽光発電や蓄電池についても万全の準備をしており(ここがテスラのただの車メーカーとは違う強みなのですが、それはまた後日書きます)、設備を設けられる環境に住んでいる人であれば対応可能です。

しかし自宅がマンションで充電設備を自由に整えることができない人に補助金はなしということになってしまいます。

充電設備自体は数万円でできるものなので大きな問題はありませんが、賃貸マンションの場合オーナーの許可が得られるかどうかで明暗が分かれます。

同じ電気自動車を購入して80万の差がつくことこと不公平ではないでしょうか? 本気で電気自動車を普及させたいのか?と政府の意欲を疑ってしまいます。

しかしこれについても「補助金倍増検討案が太陽光発電などの再生可能エネルギー(再エネ)設備の設置などを条件とする方向で議論されている点は、当然正しい」のように政府や日本の自動車メーカーの太鼓持ちのようなジャーナリストがウヨウヨいて、呆れてしまうところです。

まぁ彼らは政府や自動車メーカーに不利なことを書くと仕事もらえなくなる立場ですから仕方ありませんが。

ただそれではせっかく「補助金もらえるなら電気自動車に買い換えようかな?」と悩み始めた一般の消費者の足を引っ張ることになってしまいます。

例によって例のごとく業界団体以外は誰も得しないシステムが、補助金という面でも見えてきます。

しかもそれだけではありません。補助金はあくまで購入時のものですが、購入後の税金という面では更に支離滅裂な話が出てきています。

補助金の一方で増税?

補助金に関してはこのように多少の問題はあるものの、ヨーロッパの電気自動車への乗り換えを推進している国と同等のものが用意されつつありますので、まだ理解できます。

しかし問題は購入後の税金(自動車税・自動車重量税など)の部分で、こちらについては椅子から転げ落ちそうになる議論が出ています。

先に言っておくと、

    現在は自動車取得税(購入時)は免除、自動車重量税も購入時と1回目の車検では免除(2回目以降は課税)、自動車税は最初の年は減税なし、翌年が減税(75%)、翌々年は減税はありません(排気量が最低レベルの扱い)。ただし東京都と愛知県だけは5年間自動車税が免税になります。

がこれまでのルールです。それが、

何と水素燃料自動車(世界で開発しているのはトヨタだけ)と天然ガス車(主にタクシー・バス)だけ優遇税制の対象にして、電気自動車は優遇から除外するという意味不明の政策が検討されています。
(自動車税は都道府県別の対応なのでどうなるかはわかりません)

これが本当に実行されるのかどうかは分かりませんが、政府・自民党の中にこのように「電気自動車を潰せ」という勢力がいることは間違いないようです。

というか正確には自民党の政治家のバックについている業界団体がという話ですが。

お分かりですね、電気自動車を推進したくないトヨタと先日のシェアライドでも散々批判したタクシー業界だけを優遇するという話です。

ちなみに車のことを勉強すればするほどタクシー業界が嫌いになります。自分の車で公道を走るともれなく更に嫌いになります(笑)。

こんなこと普通の自動車ジャーナリストは絶対に書けないでしょうが。

しかも補助金に関しては、先ほども言ったような巧妙な意地悪(?)が仕組まれています。

一方で電気自動車への補助金を増額しておいて、もう一方ではエコカー減税の対象から電気自動車を除外しようという謎の政策が検討されています。

どうもこのように「全方面にいい顔をしようとするけど、誰も得しない」というのが菅政権の特徴のような感じがしてきました。

身近な会社とかにもいますよね、みんなの話を聞いてみんなに良い顔しようとするけど、誰にも好かれない人って。

国のトップがそれではまずいのですが。。。

むしろ「この政策を絶対に実現しろ、責任は俺がとる」的な人物がリーダーに求められる要素です。

政治の話をするのはこのブログの目的ではないので、この程度にしておきますが、自動車は日本の基幹産業ですのでどうしてもこのように政治家の動き一つで方向性が決まってしまうので、話題にせざるを得なくなります。

世界の動きに逆行するようなおかしな判断をしないことを祈ります。

やっぱり日本は「ガラパゴス」への道を進むのか?

今日は日本の電気自動車に対する施策を「税金」という面から見てきましたが、やはりトヨタを始めとする日本の自動車メーカーに不要な配慮をしているように思えます。

アリバイ作り的に電気自動車への補助金を増額しておいて(しかも中古車は除外)、自動車税や自動車重量税など購入後の必要経費になる部分はむしろ増税して取り立てるという姿勢で来るのであれば、電気自動車への乗り換えを促進するのではなくむしろ阻害する方向に進む可能性もあります。

となると前回の記事でも述べたような「ガラパゴス化」へ向けて一直線に進んで、世界の流れに逆行してしまうことになります。

どうしてもハイブリッド車や水素燃料自動車を推進したいなら、政治家からも率先して世界各国に売り込んでいく必要があるところですが、今のところそういう動きもありません。

日本でしか通用しないハイブリッド車と水素燃料自動車が増殖して、世界各国で主流の電気自動車が全く売れなくて衰退していく日本の自動車産業という残念な未来が徐々に見えてきたかもしれません。

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