こんばんは、@kojisaitojpです。前にも自動車ジャーナリストを名乗っている連中が「実は日本の自動車メーカーに都合の良い記事を書く下僕」であるということを述べましたが、その典型例です。
排他的EV推進論が日本を滅ぼす(岡崎五朗) – Yahoo!ニュース
日本で進む排他的EV推進論に潜むリスクを解説しました。
私から見ればむしろ「どこの国にも歓迎されてないハイブリッドを推し進めることが日本を滅ぼす」になります。
政府関係者が「トヨタへの配慮」と堂々と言ってしまっているのも残念な話です。世界で勝負にならなくなってきたから日本国内では保護するというのが本当にプラスなのか疑わしいところです。
協力して世界中に売り込んでくれるなら話は別なのですが。
内燃機関(エンジン)を搭載した自動車自体の販売を2035年から禁止するというイギリスの決定を批判していますが、結局それが世界の流れなのは否定しにくいです。
私も日本のハイブリッド車、プラグインハイブリッド車が優秀な技術であることは百も承知です。しかし世界シェアを取らない限りはどんなに優秀な技術でも無用の長物になってしまいます。
どうしてもハイブリッドを推進したいなら、ホンダだけじゃなく自動車メーカーが一丸となって、日本政府も巻き込みながら世界中で猛烈なロビー活動すればよかったのにと思います。
本日取り上げる「水素燃料電池車」も、他の国の自動車メーカーにはできないとても高度な技術であることは認めますが、「でも今から世界でシェア取れるの?」という同じ問題に直面することでしょう。
車が「発電所」になるのが水素燃料電池車
まず最初に「水素燃料電池車」はハイブリッドやプラブインハイブリッドのように「内燃機関(エンジン)」を持つ車ではないということから言っておきます。ですので「内燃機関(エンジン)を搭載した車は発売禁止」になった国でも問題なく売れます。
問題は発売がOkだとしても「そもそも売れるの?」という話なのですが、それは後の項で説明します。
仕組みとしては、車の中に水素を積んでおき、この水素が大気中の酸素と触れることで電気を生み出す、そしてその電気で車を走らせるという、いわば「車が発電所」のような役割を果たすのが水素燃料電池車のシステムになります。
ですので電気で車を動かすという意味では電気自動車(EV)も水素燃料電池車(FCV)も同じです。
違うのはその電力を充電によって賄うのか、車の中で発電させるのかという点です。
そして車の中で発電するために必要な水素を「水素ステーション」などと呼ばれる水素を提供する場所(ガソリンスタンドに近いイメージ)で補充しながら走ることになります。
発電しながらというのがポイントで、これにより電気自動車と比べて長距離を走れます。またガソリンの給油と変わらない時間で燃料となる水素を補充できるのも、充電に時間がかかる電気自動車より優れています。
というのが従来の議論でしたが、現在であれば例えばテスラのモデルSなどは500〜600キロ走れますので、この優位性は消えました。
とはいえ「車の中で発電させる方が電気を無駄に消費しないからいいんじゃないの?」と思ってしまいます。排出するものも水だけですし。
ところがその電力を発電させるための「水素」という物質に問題があるのが話を厄介にするところです。
欠点も多いのが「水素燃料電池車」
- 水素の運搬の危険性
- ガソリンスタンドのように気軽に作れない「水素ステーション」
- 燃料補給へのハードルが高い
まず子供の頃の理科の知識を思い出せば誰でもわかるように、「水素」は簡単に爆発する危険物質です。
ノルウェーの水素ステーションで爆発事故――トヨタなどFCVの販売を一時停止に
2019年6月10日、ノルウェーにあるFCV向け水素ステーションで大規模な爆発事故が発生した。これを受けて、トヨタと現代(ヒュンダイ)が同地での水素自動車(FCV)の販売を一時停止したと、アメリカの自動車専門メディア「InsideEVs」が報じている。 爆発事故は、ノルウェーのサンドヴィカにあるUno-Xの水素ステーションで起きた。Uno
このような爆発事故が日常起きてますし、水素を運搬するトラックの爆発炎上事故もよく起きています。
比較すると、ガソリンを運搬するタンクローリー以上に危険であると言えます。
次に「水素ステーション」の建設にお金がかかるのも難点です。大体一箇所の水素ステーションを作るのに5億円必要と言われており、これは電気自動車の充電施設が500万もあればできてしまうのと比較して、かなり高額です。しかも電気自動車の場合は自宅で充電できる環境の人もそれなりにいるわけで、明らかにコスパが悪いです。
ガソリンスタンドでさえ現在経営に四苦八苦しているスタンドが多く、閉店するスタンドも増えている中で、巨額の投資をして水素ステーションをやろうという経営者がいるのか疑問です。国が全額補助するとか言えば別でしょうが。
しかも水素は高圧ガス保安法の対象となるので、資格を持った係員が充填する必要があり、セルフのガソリンスタンドや充電ステーションのように気軽に充填できません。先ほども言ったように簡単に爆発するものですから仕方ありませんが。
ちなみに現在営業している水素ステーションは、営業時間が9:00〜18:00で土日休み、しかも事前予約制と公務員のような営業です。とてもじゃないが気軽に充填できる環境にありません。24時間営業でセルフというガソリンスタンドのような気軽さは「水素」という物質の危険性からとても期待できません。
その辺の駐車場やコインパーキング、場合によっては自宅のコンセントでも気軽に充電できる電気自動車と比較して明らかに劣る部分です。
日本の「ガラパゴス規格」を採用したくない主要国の事情
確かにこのようなトヨタが推進する「水素燃料電池車」の技術は、電気自動車よりも優位な点が多くある革新的なものです。
ただし現実問題として「今からどうやって水素ステーションを世界に普及させるの?」「EVの充電ステーションを世界中が優先的に整備している状況で、水素ステーションが割り込めるの?」という致命的に不利な点もあります。
先ほども言ったようにガソリンスタンドのように簡単に設置できないのが水素ステーションの泣き所なわけですし。
日本一国の話であれば政府の助けを借りてまだなんとかなるかもしれませんが、世界でシェアを取れないと敗北なのがグローバル化した現代の社会です。
「技術的に上だったら必ず勝てる」とは限らないのがビジネスの世界です。それが既に「ハイブリッドvs電気自動車」でも証明されつつあります。
前の記事でも述べたことですが、中国で予定されている2035年の「内燃機関(エンジン)を搭載した車の販売禁止」に今の時点では「プラグインハイブリッド車」が含まれてはいませんが、中国がある日突然「エンジン搭載した車は全て販売禁止」と言い出さないと誰が断言できるでしょうか?
独裁政権で、昨日言ったことを今日にはあっさり反故にして真逆のことを言い出しても全く不思議のない国ですよね。
中国国内の自動車メーカーはほぼ全て電気自動車専門です。中国の自動車業界より日本の自動車業界に有利になる判断を中国がすると思えますか?
これに関しては「絶対にない」と断言できますよね?日常から「絶対」という用語はなるべく使わないように用心している私でも「絶対に中国政府は自国の自動車産業が有利になるように、エンジン搭載した車をプラグインハイブリッドだろうが発売禁止にする時が来る」と断言できます。
ハイブリッド技術の素晴らしさを訴えることにイギリスでも失敗した日本のメーカーが、中国を説得できるとは全く思えません。
世界の自動車販売台数の約半分を占めると言われる中国市場から追い出された車が世界を取れるわけない、それが世界の現実です。
同じようにヨーロッパでは、ディーゼルの不正で窮地に追い込まれたフォルクスワーゲンが起死回生の策として「完全電気自動車化」を言い出したわけで、日本車を優先しようという国があるとも思えない状態です。
アメリカを見ても歴史的に元々アメ車は「高燃費で故障しにくい日本車」に勝てなかったわけですから、電気自動車なら勝てると思って舵を切ってくる可能性が「グリーンエコノミー」を唱えるバイデン政権の誕生が確実になったことにより更に濃厚になってきました(元々貿易に関しては民主党政権の方が日本に大して強硬)。
困ったことにアメリカ・ヨーロッパ・中国と利害が一致してます。「完全電気自動車化で日本の車メーカーを倒せる」という利害で。
汚いと思う気持ちはわかりますが、この談合(?)をひっくり返す気概がトヨタや日本政府にあるでしょうか?
またこの状況であえて「水素燃料電池車」を積極的に取り入れて、日本の車メーカーに便宜を図ってくれる国が現れるでしょうか?あえて言えば水素燃料電池車を開発しているヒュンダイと韓国ですが、トヨタはヒュンダイと組む気はないようですし。
これが理解できない限りはどんなに優秀な技術でも「ガラパゴス規格」として、自国の外では全く通用しない無用の長物になってしまいます。
一生懸命電気自動車の揚げ足取りをする「既得権益」の側
あまり強烈に電気自動車を持ち上げると「EV厨」「EV原理主義」などとバカにされるのが日本の空気ですが、世界の流れが見えてしまうと実際は「電気自動車<ハイブリッドや水素燃料電池車」だということがわかっていても、積極的に推せなくなるというのが私の見解です。
個人的には「電気自動車にしても大してエコでもないよな」と思ってたりしますが、それ以上に現実的な判断ができない人が増えているような気がします。
視野が狭くなって「自国での認識=世界の認識」と勘違いしやすい日本人の悪い癖が、コロナの影響によって海外と触れる機会がなくなったことによってよりひどくなっているかもしれません。
日本の車メーカとズブズブの関係にある自動車ジャーナリストが日本語でいかに「EVは不要だ」と力説しても、それは自分の国の中でしか通用しない論理になってしまいます。
自国の市場で経済が完結する規模の国であればまだそれでも何とかなるかもしれませんが、自動車を輸出することが国の基幹産業の一つになっている日本でそれは無意味な、無駄な努力になります。
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■外国人バイヤーの不在で、ハイエースやランクルも値下がり中!
最近はコロナの影響により帰国してしまいましたが、元々中古車の業者オークションで外国人バイヤーから人気だった車の一つが「日産リーフ」だったこと、外国人バイヤーが減ったことによりリーフの中古車価格が下がったというところにも、世界の需要が何なのかというところに気づくきっかけになります。
一回の充電で走行可能な距離が100〜150キロくらいで、不評だった初代リーフでさえ外国人バイヤーには魅力的だったのですから、日本の車メーカーが本気で電気自動車を作るようになれば間違いなく売れると思うのですが。。。
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